艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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同じ艦娘といっても、それぞれ微妙に違ったりします。

例えば鯉住君のところの龍田は、天龍が色々やらかすのを面白がるような、愉悦部的な性格をしていますが、
別のところの龍田は、天龍大好きで提督にすら心を許さない、内向的な性格だったりします。

艦としての性能はほぼ変わりありませんが、そういった性格の個体差は結構大きいようです。




第34話

いつの間にか姿を現していた川内に驚く4人。

噂をすれば影が差すとは言うが、影どころか実体が現れるとは誰も思っていなかった。

 

 

「せ、川内さん!何故大本営に!? というかどうやって入ってきたんですか!?」

 

「え? ちょっと重要な報告があってね。ていうか普通に入ってきたよ?」

 

 

川内の目線の先には、外された天井板と、穴の開いた天井が。

 

 

「だから! 天井は出入り口じゃないって何度も言ったじゃないですか!」

 

「え~? だって扉から入るとノックしなきゃいけなかったり、色々マナーがあってめんどくさいじゃない?」

 

「何でそういうことを気にすることができるのに、よりにもよって結論が『天井から侵入』なんですか!?」

 

「天井から入るときのマナーってないから、そっちの方が気を遣わなくていいじゃんか」

 

「小学生みたいな屁理屈を言うんじゃありません!」

 

 

口をすぼめてブーブー言う川内と、まるでオカンの如く注意する鯉住君。

その様子を見ると、何度か繰り返されたやり取りのようだ。

 

それを見て唖然とする秘書艦たちと、何かにおびえる大和。

 

 

「相変わらず龍ちゃんはお固いんだから……

ま、いいわ。重要な報告があるのよ。ハイ、大和さん」

 

 

叱られるのがめんどくさくなったのか、川内は話をそらし、懐から取り出した書状を大和に渡す。

 

 

「……はひっ! な、なんでしょうかっ!?」

 

「ん。 これ加二倉提督からね。重要書類だからね~」

 

「わ、わかりました……それでは確認させていただきますね……」

 

 

かろうじて正気を取り戻した大和は、川内からの書状を受け取り、目を通し始めた。

 

 

「川内さん……なんで加二倉さんは電報を使わなかったんですか?

わざわざ佐世保からここまで来なくても良かったでしょうに……」

 

「もし電報で重要文書送ったら、どっかに情報流出しちゃうかもしれないじゃん?

実際それで昔は痛い目に遭ったんだし。

『同じ轍を踏むのは愚か者』だよ」

 

「あぁ……確かに加二倉さんはそのセリフ、よく使ってましたよね。

ていうか普段の事務はガバガバなのに、そういうところだけしっかりしてるんですね……」

 

「ム。龍ちゃん、私達のことバカにしてないでしょうね……?」

 

「してませんよ……バランスが極端に悪いって言ってるだけです」

 

 

暇な時間ができたので、雑談を繰り広げるふたり。

 

……どうやら文書の情報量はそこまで多くなかったようである。

そんなに長い時間は経っていないのだが、大和は全文を読み終えたのだろう。書状を折りたたんでいる。

 

しかしよく見ると様子が変だ。カタカタとカラダを震わせている。

 

 

「せせ、川内さん……これって本当のことなんですか……!?」

 

「そりゃそうだよ。 わざわざ私がこっそり来たくらいなんだから」

 

「そんな……嘘よ……信じられないわ……」

 

 

大和の様子が明らかにおかしい。

鯉住君はこの事態を収めるために、川内に内容を確認することにした。

 

 

「や、大和さん、大丈夫ですか……?

川内さん、報告の内容って何なんですか?聞いていいなら教えてくれませんか?」

 

「え?いいよ。 龍ちゃんも知ってることだし」

 

「ちょ……俺も知ってるって、まさか、ひょっとして……!!」

 

「多分お察しの通りかな。龍ちゃんのためにみんなで捕ってきたアイツのこと」

 

「やっぱりィ!!

超重要な報告じゃないですか!何で今まで放っておいたんですか!何か月前の話だと思ってるんですか!」

 

「だって大本営って遠いんだもん。なんかのついでじゃないと足が伸びないっていうか」

 

「そういうとこぉ!!

防諜管理は徹底してるのに、報連相が雑過ぎるんですよ!」

 

「だーいじょうぶだって。さっさと知ってどうにかなる内容でもないし。

よその国とかにまでバレなきゃ、こっちとしては問題ないし」

 

「一応大本営が上部機関なんだから、もっと大事にしてあげて!お願い!」

 

 

 

 

 

同席している秘書艦のふたりは、状況に圧倒されて口を挟めずにいた。

 

ニコニコして頭の後ろで手を組んでいる川内とは対照的に、困り顔で激しいツッコミを入れている自分たちの提督。

そしてその隣では、大和が青ざめた顔をして虚空を眺めている。

 

何なんだろうか、このよくわからない空間は。

 

 

「ねぇ古鷹……これって私達も参加しなきゃいけないのかしら……」

 

「……そうせざるを得なくなる予感はします……」

 

「やっぱり……? そうなるわよねぇ……

あまり関わりたくないけど、そういうわけにはいかない流れよね……これ……」

 

「まったくもって同意見です……」

 

 

何か大きな流れを感じ取った二人は、しぶしぶそれに身をゆだねることにした。

 

 

「大和さん、その、ご気分がすぐれないところ悪いんだけど、私達にもその書状、みせてもらえないかしら……?

提督はもう察してるみたいだし、問題ないと思うんだけど……」

 

 

……スッ

 

 

大和は遠い目をしながら、無言で叢雲に書状を差し出す。

 

……どれだけ彼女にとって衝撃的な内容なんだろうか?

恐る恐る書状を開き、覗き込むふたり。

 

 

 

 

 

『先日戦艦レ級旗艦個体を鹵獲し、現在我が鎮守府で飼育中である。

鎮守府運営に特段問題はなし。引き続き恒常的運営を継続する。

何か問題があるようなら、使者の川内に質疑応答をしていただきたし。

 

以上

 

佐世保第4鎮守府 加二倉剛史』

 

 

 

 

 

「「 …… 」」

 

 

ちょっと何言ってるのかわからず、フリーズするふたり。

 

 

「飼育中って……戦艦レ級ってカブト虫か何かだったかしら……?」

 

「加二倉中佐って達筆なんですねぇ……」

 

 

よくわからないことが起こった時は、こんな反応をしてしまうものらしい。

 

自分たちに現状を受け入れるキャパシティはこれ以上残っていない。

そう感じたふたりは、そっと書状を折りたたみ、大和に返却した。

そして先ほど同様、空気であるように努めることとした。

 

 

 

 

 

「それじゃさっさと詳細説明しちゃうね。いい?大和さん?」

 

「あ……はい……」

 

「んーとね。

龍ちゃんが敵の艤装にも興味あるって赤城さんに伝えた事が原因で、そうなったんだけどさ」

 

「人を諸悪の根源みたいに言わないで下さい!」

 

「言ってないじゃん、そんなこと。人の話に割り込んじゃダメでしょ。めっ。

……まぁいいや。続き続き。

それを聞いた赤城さんが、他のメンバーに話したら、みんなやる気になっちゃってさ。

だったら捕まえてこようか、って」

 

「……」

 

 

何でそれで、よりによってレ級フラッグシップなんだろうか……

近隣のイ級でも捕まえればよかったのでは……

 

そう思うものの、ショックで言葉が出てこない大和。

 

 

「そんで提督に何捕まえるか相談したらね、『どうせ捕まえるなら、多種多様な艤装を積んでるやつにしてこい』っていうからさ、成程、だったらレ級でいいじゃん!ってなったの」

 

「あの時はビックリしましたよ……

なんか捕まえるとか言って出撃したから、てっきり俺は、食糧確保のために漁に出るものだとばかり……」

 

「まあ似たようなもんだよ。

それでレベル5海域の特務エリアまで出張って、みんなして苦労しながら捕まえてきたわけよ」

 

「あの……なんであえてフラッグシップ個体なんでしょうか……」

 

「ああ。最初に見つけたから」

 

「えぇ……」

 

 

レベル5海域の特務エリア(ゲームでいう5-5)は、最難関海域のひとつに位置付けされる。

ここに出撃する権利を持つ提督は、数えるほどしかいない。それほどの危険区域である。

 

わざわざそこまで行って、サンマ漁感覚で、誰もが恐れる強敵を鹵獲してきたということらしい。

聞かなきゃよかった、と、心の底から後悔する大和である。

 

 

「ええと、はい……わかりたくありませんが、現状はよくわかりました……

しかし本当にそんな強大な敵を鎮守府で飼育?できているのですか……?」

 

「あ、うん。

どうやらアイツ、三度のご飯より戦闘が好きらしくてね?演習相手にちょうどいいのよ。

そんで疲れたら寝ちゃうから、手間もかかんないのよ。

いやー、いい拾い物したよね~。清霜も遊び相手ができて喜んでたし」

 

「……こ、鯉住少佐……」

 

 

何を言ってるのかはわかるが、理解が追い付かない大和。

彼女にできることは、事情を知っている様子であり、常識的な鯉住君に、涙目で助けを求めることだけであった。

 

その視線を受け、大和の求めるものを120%理解した彼は、通訳を開始することにした。

 

 

「ええとですね……

まず確認しておきますと、今の話に出た戦艦レ級は、大和さんの想像通りのレ級で間違いないと思います。

友好的な個体とかではないです。普通の鎮守府に居たら、大惨事になるやつです」

 

「あ、はい……」

 

「そのレ級なんですが、どうやら天性の戦闘狂の様で……

最早本能といえばいいでしょうか……とにかく常に暴れまわりたがるんです。

深海棲艦すべてがそういった性質を持つかは不明ですが、レ級についてはそういった存在の様です」

 

「あ、龍ちゃんにひとつ補足。別に深海棲艦が全部戦闘狂ってわけじゃないよ?

『カエレ!』とか『クルナトイッテイル』なんて言ってくる、戦闘したがらない奴もいるしね」

 

「そ、そうなんですか……って、それは置いといて……

ともかく、レ級はそんな奴ですから、佐世保第4鎮守府での演習相手として、最適というわけで……」

 

 

どこをどう解釈したら、超絶凶暴な戦闘狂が演習相手に最適、なんていう発想になるのだろうか?

その辺に違和感を感じない程度には、鯉住君もだいぶ毒されてしまっているようだ。

 

 

「し、しかし鯉住少佐、加二倉中佐やあなたは人間じゃありませんか……!

深海棲艦なら真っ先に人間を攻撃するはずです!

何故ふたりとも一緒に生活していて、無事で済んだんですか!?襲われなかったんですか!?」

 

「いや、それがですね……日常的に襲われてました……」

 

「え、ちょ……」

 

「『オモシロイ!ニンゲンガリダー!』なんて言いながら、よく追い掛け回されてました……」

 

「……よく生きてましたね……」

 

「はい……おかげさまで、学生時代の深海棲艦へのトラウマが、別のトラウマで上書きされることになりました……」

 

 

今の鯉住君は、そんじょそこらの深海棲艦が発する悪感情ではまるで動揺しなくなっている。

なにせレ級フラッグシップの狂気に2か月も晒され続けたのだ。そうもなろうというもの。

 

 

「レ級としてはじゃれあってるだけのつもりだったようなので、本気で殺しにかかられなかったのが不幸中の幸いでしたね……」

 

「龍ちゃんにはいつも護衛つけてたんだから、殺しにかかられても大丈夫だったってば」

 

「川内さん……そういう問題ではないんですよ……」

 

「……何というか、お疲れさまでした、鯉住少佐……

ちなみに、加二倉中佐も追い掛け回されていたんでしょうか……?」

 

「ん~ん。 提督は私達のボスだって、レ級も本能的に理解してたからねー。

手を出したら誰かに半殺しにされるのが目に見えてるし、提督の指示はしっかり聞いてたよ?」

 

「えぇ……深海棲艦が人間に従ってるなんて、前代未聞ですよ……」

 

「私達のしつけが良かったんだろね。きっと」

 

 

自慢げに腕組みしてドヤ顔になっている川内。

聞けば聞くほどよくわからなくなってくる現状を前に、大和はこれ以上の質問を諦めることとした。

最悪あとで鯉住君に聞けばよいし、むしろそうしたい。

 

 

「わ、わかりました、川内さん……

わざわざご足労いただき、ありがとうございました……」

 

「あ、もういいのね。それじゃ本題に入るけど……」

 

「ファッ!? ほ、本題ッ!? まだ何かあるんですかぁッ!?」

 

「うん。 といっても大本営にはもう用事は無くてね。

提督から龍ちゃんに伝言だよ」

 

「うええっ!? 本題って、俺に対してですか!?」

 

「そだよ~」

 

 

突然の流れ弾にひどく動揺する鯉住君。

 

一体なんだというのだろうか……?深海棲艦を飼っているのがオマケになるほどの伝言……

そもそも今日自分が大本営に出頭することになったのがバレていたとか、どんだけ耳が早いんだろうか……

 

 

「それじゃ伝言ね。

『武蔵が最近欲求不満になってきているので、暇を見てこちらに来て欲しい』ってさ」

 

「……マジで?」

 

「マジ」

 

「それは……マズいですよ……今すぐ佐世保行きのプランを立てないと……」

 

「いや~、話が早くて助かるわ~。

みんなも龍ちゃんに会いたがってたし、早めに来てね!待ってるよ!

それじゃ皆さん、またね~」

 

 

シュバッ!

 

 

一通り言いたいことを言った川内は、先ほど入室した天井から退出していった。

瞬きほどの一瞬で姿が見えなくなる速さで動けるのは、世界広しといえど彼女くらいのものだろう。

 

嵐のような来訪に、みんなの精神は疲労度MAXになってしまった。

 

 

「「「 …… 」」」

 

「こ、鯉住少佐……武蔵が欲求不満ってどういう……」

 

 

難しい顔をしている鯉住君に対し、残るチカラを振り絞り、先ほどの言葉の意味を尋ねる大和。

いくら恐ろしく恐ろしいとはいえ、自分の妹だ。事情を知っておかねばならないような気がする。

 

しかし欲求不満とは、どういうことだろうか?

言葉の意味をそのままとると、結構いやらしい響きにも聞こえるが、状況的にそうでないことは誰にでもわかる。

 

 

「あのですね……もともと私は技術工で、艤装のメンテナンスをしていたんです」

 

「あ、はい。それは存じております」

 

「なら話が早いですね。

それでいつか、武蔵さんに『音に聞くキミの実力を見てみたい』って言われて、艤装メンテをすることになったんです」

 

「え、ええ」

 

「そこまで言われては下手な仕事はできません。

妖精さんと協力して全力で仕上げたんですが、出来上がった艤装を装備した武蔵さんが暴走してしまって……」

 

「ぼ、暴走!?」

 

 

不穏な単語に緊張が走る大和。

 

 

「あ、いえ、制御が効かないとかそういうことではありません。

どうやら私の仕上げた艤装に、想像以上に満足してもらえたようで、『フハハッ!滾るぞ!!ここまでとはなぁ!!』って言いながら、その足で勝手に出撃しちゃったんです……」

 

「えぇ……何してるのよ、武蔵……」

 

「おっしゃる通りで……

それで慌てて加二倉さんに相談に行ったら、『護衛にふたりつけるから安心しろ』って、さらっと流されまして……

結局武蔵さんの捜索役として龍驤さんと、もしもの時のアシスト役として妙高さんが出撃したようです」

 

「それで……どうなったのですか……?」

 

「ええとですね……

なんか3人揃ってノリノリで暴れてきたらしく、レベル4海域の深海棲艦を相手にやりたい放題やってきたようで……」

 

「れ、レベル4……! もしかして……!!」

 

「? どうしたんですか? 大和さん」

 

「そ、それって大体半年前のことなんですよね!?」

 

「え、ええ。私があそこで研修を始めて1か月経ったくらいのことだったので、それくらいになります。

しかし大和さん、なにか心当たりが……?」

 

 

いきなり動揺し始めた大和。

今の話の中で何かに気づいてしまったらしい。

 

 

「はい……

丁度半年前に、佐世保区画でレベル4海域から深海棲艦が消える、謎の現象が話題になったんです……

深海棲艦が決戦の準備を整えているとか、他の生物のように周期的に移動しているとか、色々な憶測が飛び交ったのですが……」

 

「あぁ……そんなことが……」

 

「真実はそういうことだったんですね……」

 

「そのようですね……ていうか、暴れてきたとは言ってたけど、まさか1海域殲滅していたとは……

武蔵さんが中破してるのを初めて見たから、激戦だったってのはわかってたけど……」

 

「どうしよう……こんなこと報告しても、誰も信じちゃくれないわ……」

 

 

あまりにもあまりな事の真相に、頭を抱えてしまった大和。

報告書をまとめるうえで、どうやったらまともな内容に仕立てることができるのだろうか?

なにせ真実は『艦娘3名がノリに任せて暴れまわった』である。

こんな報告書、誰も信用しない。

 

 

「そりゃそうですよねぇ……心中お察しします……

まぁ、そういったわけで、その時の感覚が病みつきになった武蔵さんは、たまに私のメンテした艤装で出撃するようになったんです」

 

「……では、欲求不満とは……」

 

「そろそろ暴れまわりたいから、艤装のメンテをしに来い、ということです」

 

「……うちの妹が……申し訳ありません……」

 

「大和さんの気にすることでは……むしろこちらこそ火種を作ってしまい、申し訳ありません……」

 

 

どちらからともなく、頭を下げるふたり。

その姿は実に哀愁漂うものだったと、一部始終を見ていた秘書艦ふたりは後に語ったのだった。

 

 

 

 

 




鯉住君含め、鼎大将組はギャグ時空の存在なので、色々とはっちゃけています。

加二倉中佐の鎮守府が頭おかしいのはわかってもらえたかと思いますが、それと同じくらい他の弟子の鎮守府も頭おかしいです。
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