艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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資材について

実はこのお話の中でも、かなりトンデモ設定なのが資材についてです。
艦娘とか深海棲艦とか、存在がトンデモな題材なので、いまさら何をという感じでもありますが。

この世界では

燃料→海水 弾薬→石 鉄鉱石→石 ボーキ→砂

です。

ただしその辺のものではダメです。
どこかから染み出している不思議エネルギーに晒されたものでないといけません。

この不思議エネルギーが沸いてくるスポットが資材マスで、そこで回収できる海水や石が資材になる、という感じです。




第35話

 

嵐のような川内の登場と、怒涛の新情報で、一気にげんなりしてしまった4名。

 

とても長い時間が過ぎたように感じるが、実はまだ秋津洲が退出してから1時間ほどしか経っていない。

 

 

「ええと、大和さん、どうしますか……?話を続けますか……?」

 

 

鯉住君が言う話とは、彼の研修の話である。

川内の登場により中断してしまったが、その話はまだまだ序盤だった。

 

 

「……はい、お願いします。

毒を喰らわば皿までといいますし……」

 

「わかりました、それでは続きを……

といっても、加二倉さんのところでの研修は大体あんな感じだったので、一ノ瀬さんのところでの話をしたいと思います。

実を言えば加二倉さんのところでは他にも色々経験したのですが……もっと詳しく聞きたいですか……?」

 

「いえ、もう大丈夫です。もう結構です。聞きたくないです」

 

「は、はい……」

 

 

毒を喰らえば皿までと言っていた大和だが、その毒で死んでしまっては元も子もない。そう考えたようだ。

加二倉中佐のところの話を切り上げ、次の話に進むように鯉住君に促している。

あんなおかしな話は他の鎮守府では早々ないだろうし、ここらで切り上げるのが上策と捉えたらしい。

 

 

「わかりました。それでは一ノ瀬さんのところでの研修のお話をしますね。

あそこでの研修は、私にとっては、加二倉さんの研修よりもハードでした……」

 

「え゛っ」

 

「念のために前置きをしておくと、あの鎮守府も大概おかしいです。

ご自身の常識フィルターを少し緩めて聞いてくださいね」

 

「あっはい……」

 

 

今更何故そんな前置きをするのか。さっきの話の時はそんなものなかったのに。

嫌な予感に表情が固まる大和。

今日はそんな予感しか感じていないが、仕方ないことである。

 

 

「まずあの鎮守府の異常性からお話ししますね。

あそこでは将棋が強い艦娘ほど、戦闘も強いです」

 

「!?」

 

「いやいや、アンタ何言ってるのよ……そんなわけないじゃない……」

 

「そうですよ提督……将棋と戦闘なんて、全然別のカテゴリじゃないですか……」

 

 

先ほどまで空気に徹していた秘書艦ふたりが、口を開く。

川内ショックからようやく立ち直ったらしい。

 

 

「だから言ったでしょ?常識フィルター緩めて、って。

普通はその通りなんだけど、あそこでは俺の言ったことが普通なの」

 

「どういうことなのよ……」

 

「意味が分かりません……」

 

「深く考えないように。考えるだけ無駄だから。

……ともかく、あの鎮守府の艦娘は全員将棋をたしなんでいまして、将棋の実力に戦闘の実力も比例しています。ここまではいいですか?」

 

「はい……」

 

 

よくない。

よくないが、それを口にしたところで、どうしようもないことくらいはわかる。

 

 

「そういうところですので、私の研修の9割は将棋の特訓でした」

 

「え……提督のアンタが将棋習ってどうすんのよ……?

もっと提督として必要な技能とかあるんじゃないの?」

 

「だから言ったでしょ?あそこでは、将棋強い=他の能力も高い、って方程式が成り立つの。

だからとりあえず将棋に強くなれば、提督としての実力もアップするってわけ。わかった?」

 

「わからないですけど、受け入れなきゃいけないことはわかりました……」

 

「そうするしかないから、それでいいよ。

そういうわけで、私は2か月間、みっちり将棋漬けの毎日を送ったんですが……

日々のスケジュールが殺人的で……」

 

「そ、そうなんですか……

ちなみにどのようなスケジュールだったのですか……?」

 

 

渋い表情をしている鯉住君に質問する大和。

その質問を受け、彼は元気なく説明を始める。

 

 

 

「朝は日が昇る前から起床。そして朝食までの間に詰め将棋3手詰めを10問解く。

そして朝食。食堂では常にプロの対局DVDが流れているので、その解説を聞きながら、艦娘の皆さんとディスカッション。もちろん将棋の。

それから昼食まで、ぶっ続けで担当艦娘の方による将棋指導。

昼食も朝食同様。

午後にしても午前と同じでマンツーマン指導。これが19時まで。

晩も同様にして食事を済ませたら、入浴。入浴中は一緒に入っている誰かと、一局目隠し将棋を打つ。

それが終わったら風呂上がりに、近いレベルの艦娘と対局。

全部終わると大体23時頃になっているので、そこからは泥のように眠る。

 

……こんな生活を無休で続けていました……」

 

 

 

「「「 うわぁ…… 」」」

 

 

過密スケジュールとかいうレベルではない。本人が殺人的というだけはある。

話を聞く限り、彼は将棋するか寝るかのどちらかしかしていない。

加二倉中佐の研修よりもハードと言っていた意味がようやく分かった。

 

 

「……ん? アンタ、お風呂では誰かと目隠し将棋って言ったわよね」

 

「そう。最初はホントに辛かった……なにせ駒の動きしか知らないレベルだったんだよ?

それがいきなり、駒の動きだけ相手に伝えて頭の中で将棋を打つ、目隠し将棋なんて……」

 

「いや、問題はそこではなく。

提督は、その、つまり、いつも誰か、その、女性と一緒に入浴されてたってことですか……?」

 

「ああ、そうだね」

 

「そうだね、じゃないわよ! 何してんのよ!?」

 

「そ、そうですよ提督!! いくら何でもそれはないです!」

 

 

ナチュラルに混浴していた鯉住君に、驚きを隠せない秘書艦ふたり。

それはそうだろう。年頃の男女が平然と混浴するのが、日常であっていいはずがない。

 

 

「いやいや、それ提案してきたの一ノ瀬さんからだからね?俺がセクハラしたみたいに言うの、やめてくれない?

皆さんそれはもうびっくりするくらいのプロポーションだったけど、それにムラムラするような余力はその時点で残ってなかったしさ……

第一俺としては、風呂くらい、ひとりでのんびり入りたかったんだからね?

風呂の中でまで、脳をいじめたくなかったんだからね?」

 

「そういうことだったら、最初に断ってくださいよ!」

 

「古鷹の言う通りよ!アンタにはデリカシーってものがないの!?」

 

「いやいや……俺に特訓プランを説明してきたときの、あの少年のように輝いた眼をした一ノ瀬さんには、何も言えなかったんだって……」

 

「それでも断りなさいよ!大体他の艦娘も、何でオーケー出したのよ!?」

 

「いやね……一ノ瀬さんが、俺の棋力を一気に高めるためだ、って説明したら、みんな納得しちゃって……ノリノリになっちゃって……」

 

「何なんですかそれ……別の世界の話ではないですよね……?」

 

「うん。すぐそこの横須賀での出来事だから……」

 

 

鯉住君にデリカシーが欠けているのは事実だが、ここでの2か月の特訓でそれに拍車がかかったのも事実である。

おかげで今の彼は艦娘が中破大破したくらいでは動じないようになった。

技術工だったころは、女性の裸など縁がなかった彼だが、今となっては艦娘の裸を見ても「頑張ってスタイル維持してるんだなあ」くらいにしか思わなくなってしまった。

それが良いことか悪いことかは、誰にも分らないことではあるが。

 

 

「まぁともかく……そんな感じで日々を過ごしたんです……

おかげで私の棋力は、その辺で行われる小さな大会なら、100%優勝できるくらいにはなりました……」

 

「何というか……本当にお疲れ様です……」

 

 

提督としての研修の話を聞いていたはずが、いつの間にか地獄の将棋研修の話になっていた。

最早ツッコミすら思いつかない大和である。

 

 

「それで……結局鯉住少佐は、提督としての実力は向上したのでしょうか……?

あまりそういった能力がつくような話ではなかったと思いますが……」

 

「ああ、私もなぜかはわかりませんが、本当に指揮能力は向上したみたいです。

研修前は右も左もわからないような初心者でしたが、研修が終わった際に艦隊を指揮してみたところ、スムーズに指示が飛ばせるようになっていました」

 

「えぇ……なんで……?」

 

「すいません……それは私にもよくわからず……」

 

 

本当に効果がある研修だったらしい。

将棋がうまくなると艦隊指揮能力も上昇するとか、あそこだけ時空が歪んでいるとしか思えない事実である。

 

 

「まぁ、だからその、なんだかんだ言ってあそこの皆さんには感謝してると言いますか……

毎日脳がフル回転で、死にかけたことも何度もありましたが、それでも提督をするうえで必要な経験を積ませてもらった恩は、とても感じていると言いますか……」

 

「そうですか……とにかく全面的に腑に落ちない話でしたが、鯉住少佐は納得されている様子ですし、よかったですね」

 

「ええ」

 

 

今回はなんの爆弾投下もなく話が終わり、ホッとする大和。

普通はそんな頻繁に、大本営が吹っ飛ぶような話題がある方がおかしいのだが、彼が話しているのは普通ではない人物についてである。

大和がそんな当たり前のことに安堵するのも致し方ない。

 

ちなみに大和は、それだけ理不尽な環境に放り込まれて尚「感謝している」と言える鯉住君に対し、結構強めに好意を抱いている。

そんな彼と同じ話題を共有できる喜びは、日々苦労している彼女だからこそ感じられるものなのだろう。

 

 

・・・

 

 

未だ混浴のくだりを気にしているのか、秘書艦ふたりはジト目を向けているが、無事に話は一段落した。

 

ちょうどそのタイミングで、ノックの音がする。

 

 

 

……コンコンコン

 

 

 

「あ、はい。どうぞ」

 

 

ガチャリ

 

 

「失礼します。作戦終了!秋津洲、帰投したかも!」

 

「お、早かったじゃないか。おかえり。どうだった?うまくいったかい?」

 

「ふっふ~ん、大成功かも!」

 

「そりゃよかったじゃないか」

 

 

ニッコリと笑みを浮かべる秋津洲。

どうやら何事もなく性能試験は終わったらしい。一安心する鯉住君。

 

そんな彼に向かって、秋津洲は一枚の書類を差し出した。

 

 

「はい、提督!

なんか係のお姉さんに、これを持って行ってくれって言われたかも」

 

「ん? これは一体……?」

 

 

秋津洲から書類を受け取り、それが何なのかチェックする。

……どうやら性能試験の結果のようだ。

 

 

「……性能試験のデータなのか。

……それにしても、これはなかなか、なんとも……」

 

 

書類の中身に目を通し、複雑な表情を浮かべる鯉住君。

その反応が気になった大和は、書類を見せてもらうことにした。

 

 

「すみません、鯉住少佐。

私にも性能試験の結果を見せていただいても宜しいでしょうか?」

 

「あ、はい……どうぞ」

 

 

受け取った書類に目を通していく大和。

その表情は鯉住君同様、曇ったものとなっている。

 

 

「これは……なかなか……」

 

「ですよねぇ……」

 

「わ、私達にも見せてくれないかしら?いったいどんな内容なのか気になるわ」

 

「おふたりの表情から察すると、ちょっと心配ですが……」

 

「……そうですね。秘書艦のおふたりも目を通してみてください」

 

 

大和から書類を受け取り、目を通すふたり。

やっぱりその表情はどんどん曇っていく。

 

 

「ええと……なんて言ったらいいのかしら……」

 

「……秋津洲さんはもう中身を見たんですか……?」

 

「んーん。まずは提督に見せようと思ったから、まだ見てないかも」

 

「そう……アンタ、しっかり言葉を選んで結果を伝えなさいよ。

秋津洲泣かせたら、ただじゃおかないからね……?」

 

「わかってるよ……しかしこれは、どう言ったものか……」

 

 

困り顔の鯉住君。

それもそのはず。書類の内容は以下の通り。

 

 

・・・

 

 

・・・性能試験考査・・・

 

性能は可・不可で判別し、

可の場合はS-Eの6段階評価で記載する。

 

 

秋津洲型 1番艦 水上機母艦 『秋津洲』

 

砲撃性能…E

雷撃性能…不可

対空性能…E

装甲性能…D

対潜性能…C

回避性能…C

索敵性能…C

燃費性能…D

艦載機搭載性能…E

速度性能…E

 

 

水上機母艦対象・装備兵装一覧

 

装備可能兵装

飛行艇・各種水上機・小口径主砲・副砲・大型ソナー・爆雷

 

装備不可兵装

甲標的・大発動艇・対地ロケット・小型ソナー

 

 

総合戦闘性能…E

 

戦力としての役割を担うには、非常に心もとない能力であると判断する。

 

 

・・・

 

 

「ねぇねぇ、どうだったの? 私も知りたいかも!」

 

「そうだねぇ……何と言おうか……」

 

 

いくら何でもこの評価は、無慈悲過ぎはしないだろうか……?

しかし戦場に立つ以上は、ハッキリとしておかなねばならない内容であるのも事実。仕方のないことではある。

 

……しかしホントに秋津洲にはどう言ったものか。

これをそのまま伝えれば、心が折れて泣き始めてしまうのは目に見えている。

そんなことになれば大本営に来たこと自体が辛い思い出になり、心に大きな傷を残してしまいかねない。

 

叢雲は泣かせたら許さないと言っていたが、鯉住君もそれには同意見。

臆病なところはあるが、秋津洲はいい子なのだ。そんな思いをさせてはいけない。

 

……意を決した鯉住君は、慎重に伝え方を考えながら、口を開く。

 

 

「……秋津洲、これは君の戦闘力の評価だからね。それをよく踏まえて見てみるように」

 

「ど、どうしたの提督?なんだか真剣な表情かも……」

 

「まぁ、まずは目を通してみて。ハイ」

 

 

書類を受け取った秋津洲は、目を通し始めた。

それを見て不安げな表情を浮かべる面々。

 

予想通り秋津洲の顔は青ざめていき、目には涙が浮かんできた。

 

 

「こ、これ……あんまりかも……!ひどすぎるかも……!」

 

「そうだよねぇ……容赦ないよねぇ……」

 

「こんなんじゃ、私は役立たずって言われてるようなものかも……

どうしよう……どうすればいい……?」

 

 

縋りつくような視線で、鯉住君に助けを求める秋津洲。

 

 

「別にそんなに気にしなくてもいいよ?」

 

「そんなこと言われても無理かも……だって私……」

 

「別にいいじゃないか。戦闘が苦手だって。俺だって戦闘苦手だし。

その書類は秋津洲の戦闘能力を測ったものであって、それ以外の能力については見てないだろ?」

 

「提督は人間だからいいけど、秋津洲は艦娘だから、それじゃいけないかも……戦闘ができない艦娘なんて……」

 

「いけないことないさ。現に戦闘できない艦娘だっているし」

 

「え……? そ、そうなの?」

 

 

予想外の返答に、キョトンとする秋津洲。

 

 

「うん。間宮さんとか伊良湖さんとか、明石とか。

彼女たちはみんな、戦闘ができなかったり不得意だったりするけど、艦隊には欠かせないメンバーだよ。

彼女たちがいるだけで、艦隊の勝率はものすごく上がるんだ」

 

「そうなんだ……そんな人たちがいるの、知らなかったかも……」

 

「ああ。知らなかったんだね。秋津洲は生まれたてだからかな……

ともかく、戦闘ができなくてもみんなの役にはたてるってこと。実際俺も、海軍の中でのそういうポジションをねらってるし」

 

「でも秋津洲にできることなんて……」

 

「あるよ」

 

「……?」

 

「秋津洲の初邂逅報告をするために色々調べたんだよ。

キミは艦だった時代、二式大艇の工作艦みたいな立ち位置だったんだよね?」

 

「……うん」

 

「てことは、今のキミも、そういった関係の仕事が好きなんじゃないかな?」

 

「……言われてみると確かに、大艇ちゃんとか艦載機とか調整するのは好きかも」

 

「やっぱり。夕張や北上と話してるの見かけたから、そうじゃないかと思ったんだよね。

……よし。キミの役割はこれで決まったな」

 

「え、ええ?」

 

「キミのウチでの役割は、二式大艇含め、艦載機全般のメンテ要員です。

これから存分に活躍してもらうから、心するように」

 

「は、はい」

 

「もし何かわからなかったら、俺が教えるから、何でも聞いてくれていいよ」

 

「わ、わかったかも!」

 

 

秋津洲の顔には笑顔が戻ってきた。

自身の短所に悩む彼女に、長所を教え、それを活かした立ち位置を提供する。

この作戦は無事に成功したようだ。

 

秘書艦のふたりはホッとしているし、大和はニコニコしている。

自分の行動が間違っていなかったと確認でき、ホッとする鯉住君。

 

……しかしそのまま終わってはくれなかった。

気を抜いていた彼に、秋津洲からの純粋で鋭い一言が。

 

 

「そうだ、提督! 私も夕張と一緒で、弟子にしてほしいかも!」

 

「あ、ちょ……む、叢雲、これはな……」

 

 

突然の秋津洲の弟子入り希望に、うろたえる鯉住君。

大体のメンバーにバレているのは知っているが、色々とあったせいで機会を逃し、叢雲にはまだこの話はしていない。

もし叢雲がまだ気づいていなかったとしたら事だ。今の精神的に弱っている彼女に、さらなるダメージを与えかねない。

 

 

「……知ってるから気にしないでいいわよ。

私に今まで黙っていた件については、帰ってからでいいから」

 

 

幸い叢雲も気づいていたようだ。ムスッとしてはいるが、ショックを受けたという感じではない。

今の様子を見ると、鯉住君から言い出すのをずっと待っていてくれたようだ。

申し訳ない気分と、帰ってからどうしようという困惑が、同時にわいてくる。

 

 

「そ、そうか……すまないな、叢雲……

それじゃ秋津洲。弟子というのは何ともむず痒いけど、キミにも色々と、俺が知っていることは教えるようにするよ」

 

「やった!これで私も提督のお弟子さんかも!」

 

 

なんとか無事に事態を丸く収めることができ、ホッと溜息をつく鯉住君。

 

……しかし悲しいことに、まだ事態は収まっていなかった。

扉の方から声がする。

 

 

「やるじゃない鯉住少佐」

 

「あ、係のお姉さんかも。まだいたの?」

 

「秋津洲ちゃん、扉は開けっ放しにしちゃだめよ?

いくら早く提督に報告したかったからって、マナーを忘れたらいけないわ」

 

「あ、ごめんなさいかも……」

 

「うん、よろしい。わかればいいのよ」

 

 

秋津洲が開けっ放しにしていた扉のところで、ひとりの艦娘が壁に背をつけて話を聞いていた。

どうやら秋津洲をここまで案内してくれた係の人のようだ。全然気づかなかった。

 

社会経験がまだまだの秋津洲に、マナーを注意してくれたのはありがたい。

盗み聞きしている者が、マナー違反云々をどうこう言える立場ではないとは思うが……

 

……というかあの姿、いや、まさか……そんなはずは……

 

 

「……秋津洲を案内してくださったようで、ありがとうございます。

ところで、得意な戦法は何ですか?」

 

「基本にして頂点。棒銀しかありえないわ」

 

「やっぱりィ!

あなた横須賀第3鎮守府の足柄さんでしょう!?見たことあると思ったんですよ!」

 

「あら?何でバレちゃったの?」

 

「得意な戦法聞かれて、ノータイムで将棋の話するのなんて、あそこのメンバーしかいないでしょうに!」

 

「あー、盲点だったわー」

 

「だからアナタ達は常識がおかしいんですから、いい加減そこを分かってください!」

 

 

秋津洲の件が丸く収まったのはいいものの、何やらまだまだ波乱は続きそうな予感。

 

きょとんとする秋津洲の隣では、大和と秘書艦ふたりが、不測の事態に備えて呼吸を整えていた。

 

 

 

 




まだまだ受難は終わらないぞ!みんな頑張れ!

大本営でのやり取りが終わったあたりで2章終了というところですかね。
そんな感じになりそうです。

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