寮にしては珍しくペット可。追加費用が必要だけどね。
鯉住「……」
カチャカチャ
初春「……」
じーっ……
鯉住「……」
グリグリ
初春「……」
じーっ……
……き、気まずい。
見学するって言ってたけど、本当に見てるだけだとは……
いや、真剣に自分の艤装メンテを見てくれるのは嬉しいんだけど、
無言はさすがにきついですって。初春さん。間が持ちません。
妖精さん、ちょっと助けてくれませんか?
なんかこう、間を持たせるための作戦とかないですか?
(りーどするのです)
(おんなのこをたいくつさせてはいけない)
(おとこでしょ?)
はい。具体性のないアドバイスありがとうございます。
こんちくしょう。
こいつらも見た目は女の子だから、いい知恵をくれるかもと思ったのに……
ちょっと期待しちゃった俺がバカだったんや……
くそう、ニヤニヤするんじゃない、お前ら。これでも俺必死なんやぞ。
……仕方ない、自分で何とかしよう。
鯉住「は、初春さん」
初春「な、何じゃ?」
鯉住「その……何か最近楽しいことありました?」
(ぜろてん)
(しつぼうしました)
(かいしょうなし)
うるさいな!文句言うならネタをくれ!
いいだろ別に!当たり障りない話題でも!
職場の同僚との会話なんてその程度なんだから、
これ以上のクオリティを期待しないで下さい!
初春「そうじゃのう……楽しいこと……」
鯉住「ほら、最近は大規模作戦もありませんし、
結構自由時間あるじゃないですか。
どこか遊びに行ったり、趣味にいそしんだりとかしてたんじゃないですか?」
初春「そういえば、先日非番の日に姉妹皆で過ごしたのじゃ」
鯉住「姉妹って言うと、初春型の皆さんですか」
初春「うむ。わらわと子日、若葉、初霜の4人じゃな」
鯉住「ああ、なんというか、微笑ましいですね」
初春「……わらわたちの事、子ども扱いしておらんか?」
鯉住「そ、そんなことないですよ」
ごめんなさい、子ども扱いしてます。
(うそついた)
(どろぼうのはじまり)
(こいずみだけにこいどろぼう)
世の中にはついていいウソと悪いウソがあります。
これはついていいウソなんです。
(いいわけよくない)
(うそつき)
(おとなってきたない)
そこはかっこよく処世術と言っていただきたい。
キミたちも大人になればわかるよ。たぶんならないだろうけど。
鯉住「そ、それより、4人全員お休みなんて珍しいですね
その日は遠征がなかったんですか?」
初春「そうなんじゃよ。今日と同じ感じでのう。
遠征ルートと通商ルートが被ったので遠征は中止になったんじゃ」
鯉住「あれ?通商ルートって普通固定じゃないんですか?
なんで遠征ルートと被ったんですか?」
初春「通商ルートの方に深海棲艦反応が出たから、
遠征ルートの方に航路をずらしたんじゃよ。
その時は和歌山沖に深海棲艦が出現しての。
遠征部隊の代わりに第1艦隊が出撃したんじゃ。
こういうことはしょっちゅう起こるので、みんな慣れっこじゃな」
鯉住「へぇ、そうなんですか。全然知らなかったです」
初春「そりゃそうじゃよ。これ軍事機密じゃからの」
鯉住「ファッ!?」
初春「ちなみに今日は高知沖に深海棲艦が出現したぞ。
戦艦1隻、雷巡2隻、軽空母2隻、駆逐艦1隻だったみたいじゃな。
なかなか歯応えがある相手じゃと日向殿が言っておったわ」
鯉住「絶対それも軍事機密でしょ!?ダダ洩れじゃないですか!
ちゃんとコンプライアンス順守して!!
俺そんなこと知りたくないですから!巻き込まないで!」
初春「え……?」
鯉住「なにいってんだこいつ?みたいな反応しないで下さい!
俺ただの技術班ですからね!?軍人じゃないから!!
それ知っちゃいけない立場なんですって!」
初春「まあまあ、些細な事なんだから気にするでない」
鯉住「ん゛ん゛ん゛!!」
機密保持認識ガバガバすぎぃ!
もっと情報の重要性を認識して!
でも初春さんは悪くない!小学生なんだもの!
悪いのはやっていいことと悪いことの区別を教えなかった保護者です!
しっかりと教育を施してください!
お前の事だよ!クソ提督!
鯉住「初春さん、真面目な話、軍事機密はその辺でしゃべっちゃダメですからね……?
機密って言うだけあって、ちゃんと話が漏れちゃいけない理由があるんですからね?」
初春「むー、仕方ないのう……」
何故か俺がしょうもないこと言ったみたいになってる。
不可解な事だが現実はいつも理不尽。仕方ないね。
俺が理不尽をかみ殺すことで、
初春さんの情報に対する姿勢が少しでも良くなればいいのである。
これが大人の義務。仕方ないね。
悔しくなんかない。俺大人だもん。悔しくなんかないもん。
(やせがまん)
(つよがり)
(すごいくやしそう)
だから煽るんじゃないよ!わかってるんならほっといて!
強がってる人は温かい目で見るものなの!
それが大人の流儀なの!処世術なの!覚えとくように!
鯉住「ま、まぁそれは置いといて……
初春さんたち4人でその日は何をして過ごしたんですか?」
初春「む、そうじゃったの。
その日はみんなで人生ゲームなる遊びをやったんじゃ。
これがなかなか面白くてのう」
鯉住「人生ゲームですか。いいですね。俺も好きです」
人生ゲームか。すごい懐かしいな。
小さい頃はよく、正月とか夏休みに親戚のみんなと遊んだもんだ。
ただのすごろくって言ったらそこまでだし、
子供だから職業なんてのもよくわからなかったけど、
何故か無性に楽しかったなあ。
そういえば当時はサラリーマンっていう職業があると信じていた。
そのせいで小学校の時なりたい職業にサラリーマンと書いたら、
不思議な顔をされた。
しかし初春さんたち4人で人生ゲームか。
完全にそれ親戚の寄り合いの時の子供たちだな。
微笑ましいってレベルじゃないぞ。
初春「単純な遊びじゃったのに、なかなか奥が深くてのう
何時間も遊んでしもうた」
鯉住「うん。わかりますよ。
遊ぶ度に状況が変わるんで何度でも楽しめるんですよね」
初春「そうなんじゃ。
最初に遊んだときはわらわは弁護士で安定した人生じゃったのに、
次に遊んだときはアルバイトで家も買えなかったのじゃ……」
鯉住「ハハハ……よくあることです。
それも含めて面白いんですよね」
初春「そうそう。わかっておるのう。
何度目かの時に若葉が大家族になったときは皆で笑ったものじゃ」
鯉住「あー。子供5人くらいですか?」
初春「いやいや、そんなものではない。
なんと男の子6人、女の子2人、合計8人じゃ!」
鯉住「すっげぇ!それは俺も初めて聞きましたよ!」
初春「そこから子供手当のマスに止まったときは、
あの若葉が珍しくガッツポーズしておったぞ」
鯉住「あのクールな若葉さんが……よっぽど嬉しかったんでしょうね」
初春「そうそう。
若葉はMVPをとったときでもあんなに嬉しそうにしたことはない。
ああ、話していたらまた遊びたくなってきたのう……
……そ、そうじゃ、貴様、今日仕事の後、何か予定はあるか?」
鯉住「ん?ありませんよ」
初春「その……なんじゃ……わらわたち4人とも今日は非番じゃ。
だからその……一緒に遊ばんか?」
鯉住「ん~、そうですね」
どうしようかな……
せっかく誘ってくれたんだからお邪魔したい気持ちもあるけど、
福ちゃん(ミドリフグ)達にご飯あげないといけないしなあ……
(やっぱりだめおとこです)
(おとめのさそいをぺっととくらべるなんて)
(このとうへんぼく)
キミたち辛辣すぎない!?
ご飯が食べられないみんな(フグ)のこと考えたら、悩むでしょ!?普通!?
(((……)))
あつ、すいません。私が悪かったです。
だからそんな冷めた目で見ないでください。
(こいずみさんはゆうせんじゅんいがおかしいです)
(はんせいしてください)
(おとこのせきにんをとるのです)
なんかキミたち異様に圧が強いね……
まあ、みんな(フグ)のご飯は仕方ないか……
ごめんよ、明日は少し豪華なご飯(テトラのクリル)をあげるからね……
初春「だ、だめかのう……?」
鯉住「い、いえ。誘ってくださってありがとうございます。
お邪魔させてもらいますね」
初春「そ、そうか!!それじゃ部屋の片づけをしておかねばの!
またあとでのっ!!」
タタタッ
鯉住「あっ、初春さん……」
走っていってしまった。
艤装の見学はもういいのだろうか?
まあほとんど終わったところだったから、あとは仕上げだけなんだけど。
(わたしたちないすあしすと)
(いいしごとした)
(おかしをよこすのです)
仕事はまだ終わってないよ。キミたち。
まあもうすぐ終わりだし、今日のおやつをあげてもいいかな。
(さすがわかってる)
(あまいものをよこすのです)
(こんぺいとうをしょもうします)
鯉住「はいはい……今日は一粒ずつな」
(もっとほしい)
(ふたつぶよこすのです)
(せいかほうしゅうぶんうわのせ)
鯉住「……昼飯のこと、忘れてませんか?」
(((……)))
鯉住「ハァ……まあいいよ。手伝ってくれてるわけだしな。
2粒ずつ進呈しようではないか」
(ヒューッ!)
(さすがこいずみのあにき)
(やはりうつわがでかい)
鯉住「ほいほい。調子いいんだから……
さて、残りの仕上げ、最後の一息といきますかね」
(((おーっ)))
人生で初めて女性の部屋という神秘の空間に足を踏み入れる鯉住君。
しかし彼には親戚の子供と遊ぶ感覚しかない模様。実に残念。
乙女心を傷つけずにこの山を乗り越えることができるのか?
人生という名のイバラの道を突き進む5人!
果たしてこの修羅場を乗り越え、
全員無事にゴールまでたどり着くことができるのか!?
次回「子日、ちょっとお休みするね…」!
お楽しみに!