艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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艦娘尊敬フィルターについて

主人公の鯉住君には艦娘尊敬フィルターが存在します。
彼は艦娘の赤城に助けられて以来、艦娘のことをヒーロー的な目で見ているということです。

分かりやすく例えると、ウルトラマンと人類みたいな関係だと思い込むようにしています。
だから彼は、艦娘を恋愛対象として見ることはないんじゃないでしょうか。

でも悲しいことに、彼は人並みにはエロいので、気を抜くと艦娘のこともエロい目で見てしまいます。艦娘は美女ぞろいなので仕方ないことではあります。
一ノ瀬中佐のとこでの混浴対局で女性の裸には慣れましたが、それでも気になるものは気になるということです。
そしてその度に、ヒーローをそんな目で見てはいけないと自制しています。難儀な考え方をしていますね。

ちなみに彼のフィルターを通り抜けられるのは、呉の明石だけです。
しかしその理由は、厄介な奴認定されているから、というものでありますので、恋愛的なものに発展するかと聞かれれば、はなはだ疑問です。




第40話

……なぜか大和さんと友達になってしまった。

布団貸して欲しいって言いに行っただけなのに、どうしてこうなったのだろうか……

 

あれから部屋に戻り、秘書艦のふたりに目的達成の報告をした後、自由行動とした。

どうやらその間にしてくれていた相談の結果、自由に出歩ける範囲は、大本営とその付近の町としたようだ。

 

まぁ順当だろう。

大本営のある町なので、艦娘が出歩いていてもおかしな目で見られることもないようだし。

……まぁ、艦娘目当てで街にやってくる輩が結構いるようなので、そういった意味でのおかしな目はあるようだけど。

 

そういうわけで、今から本日の疲れを癒すために爆睡しようと思っていたのだが……

 

 

・・・

 

 

「私はこのあんみつっていうのを食べてみたいかも!!」

 

「あらいいわね、秋津洲ちゃん。私は何にしようかしら? きんつばと抹茶でいいかしら」

 

「私はかき氷にします。蜜は何がいいでしょうか……」

 

「……」

 

「私はそうね、わらび餅を……あ、売り切れてる……不幸だわ……」

 

 

忘れてた。甘味処に連れて行く約束してたんだった。

というわけで今現在、大本営にある『甘味処 間宮』に全員でやってきたというわけだ。

 

……ホントに全員である。なぜか足柄さんと山城さんまでついてきた。

俺アナタたちに奢るなんて言った覚えはないんですけど……

 

ていうか、さっきからずっと叢雲が無言だ。

ものっすごい真剣な顔をしながら、メニューとにらめっこしている。

確かに大本営なんて早々来ないし、『甘味処 間宮』なんて名店あちらにはないから、このチャンスを存分に活かしたい気持ちはわかるけども。

やっぱりキミ甘味大好きなんじゃないか……

 

 

「悪いわね、鯉住君。私達にまで奢ってもらっちゃって」

 

「え……? 俺アナタたちに奢るなんて一言も……」

 

「龍太さんの口座には、印税がたっぷり振り込まれているわ」

 

「あ、じゃあ気にしなくてもいいわね。葛切りも追加しましょ」

 

「私もお饅頭を追加で……なに?つぶあんは売り切れ? 何なのよもう……」

 

「えっと……はい……」

 

 

なんか押し切られてしまった。

……まぁ、こうなったらもう細かいことを気にしても仕方ない。存分に楽しんでもらおう。

日頃の感謝も込めて、といったところか。

 

 

「それじゃみんな、今日は好きなだけ気になったものを食べるといい」

 

「それは……提督に申し訳ないです」

 

「いいんだよ、古鷹。

むしろそうやって、いつも気にかけてくれるキミには、存分に満足してもらいたい」

 

「ええと、その……本当にいいんですか?」

 

「足柄さんや山城さん見てごらんよ。好き放題してるでしょ?

キミもあれくらい好きに頼んでいいから」

 

「わぁ……!! ありがとうございます!!」

 

 

キラキラした目でメニューに目を移す古鷹。

彼女は普段遠慮がちなので、いつも自分のことは後回しにしてしまう。

こういった機会ができたのは良かった。

 

本当にうれしいのか、彼女の眼からは、なんかこう、キラキラした光が本当に飛び出している。

 

 

「そういうわけだから叢雲も、そんなに必死でメニュー選ばなくてもいいんだよ?

欲しいものは全部頼んでいいから……」

 

「ちょっとアンタは黙ってて!

私は今、どういう順番で注文すれば、すべての甘味の美味しさを100%堪能できるのか、入念なプランを練っているのよ!!」

 

「……さいですか」

 

 

思った以上にガチ勢じゃないかキミ……

若干引く鯉住君。

 

 

「ねー提督。私もいっぱい注文してもいいの?」

 

「いいよ。ただし食べられなくなっちゃうといけないから、ひとつずつ注文するようにね。

そうするんなら、いくらでも食べていいよ」

 

「わーい!嬉しいかも!提督大好きー!!」

 

「こ、こら、引っ付くんじゃありません」

 

 

引っ付いてくる秋津洲を引っぺがす鯉住君。

気が付くと、隣にいい笑顔のウエイトレスさんが立っていた。すごく恥ずかしい。

 

 

「うふふ。ご注文はお決まりですか?」

 

「あ、その……はい。

すみません、店内でうるさくしてしまって……」

 

「この程度ならまるで問題ありませんよ。お気になさらずご歓談ください」

 

「ありがとうございます……

それじゃみんな、順々に注文していってくれ」

 

 

この光景を見てウエイトレスさんは、鯉住君たちのことを、親戚の集まりか何かだと勘違いしている。

艦娘も多く訪れるお店なので、普通は気づきそうなものだが、彼女はそうだとは気づかなかった。

何故なら、提督がこんな威厳のない扱いをされていることなど普通は無いうえに、皆私服であるからだ。

 

そんな勘違いをされているとはつゆ知らず、なんだかわちゃわちゃしながらも、無事に甘味を奢るというミッションを達成した鯉住君なのであった。

 

 

・・・

 

 

大量の甘味を奢ったあとは、各自解散とした。

 

まだ時間は早いのだが、疲れ切っているカラダに大量の糖分をぶち込んだ今、眠気に対抗する手段は残っていない。

 

そういうわけでもう寝たいのだ。

正直にそう言ったら、秘書艦のふたりはトロンとした目で全面同意してくれた。

彼女たちも同じ状態だったのだろう。

 

秋津洲が、まだいろいろ一緒に見て回りたい、と言ってゴネたが、足柄さんが付き添ってくれることになった。

甘味の分のお礼ということなのだろう。そういう気遣いはできるのになぁ……

 

山城さんはどうやらトラック第5泊地のメンバーのために、お土産を買いに行くらしい。

やっぱり彼女は仲間想いでいい人だ。一緒に働いていた時から知っていることではあるけども。

 

……というわけで自分の部屋に戻り、シャワーを浴びたところだ。

今日はもう色々あり過ぎて、これ以上何もする気にはなれない。

というか眠すぎる。もう寝よう……

 

 

・・・

 

 

……目覚めたら、朝の陽ざしが窓から差し込んでいた。

ん? 朝の陽ざし……?

 

 

時計を確認する。

 

 

……ウソやん。昨日寝たのって、確か……17時くらいだよ?

俺何時間寝てたの?……今は……朝の8時だから……え?何、15時間も寝てたの?

 

……それだけ疲れてたってことか……

まあ当然と言えば当然か。昨日は色々あり過ぎた……

 

 

何とも言えない気分でベッドから抜け出て、普段着に着替える。

今日は完全に自由行動と決めていたのは幸いだった。

こんな時間まで寝てしまうとは思っていなかったからだ。

もし予定を決めていたら、寝坊してしまったことだろう

 

 

「さて……今日は何をするか……」

 

 

少し重い頭を支えながら、今日の予定を考える。

明日の出航は確か10時ごろだった。なら今日はそこそこ遅くまで、色々とできるだろう。

 

 

「ならば……やるべきことは決まってるな」

 

 

ラバウルにいてはできず、本土ではできることと言えば……

 

 

「熱帯魚ショップ巡りだよな!!」

 

 

そう。彼の趣味は艤装いじりだけではない。

熱帯魚飼育という趣味も、彼の中で大きなウエイトを占めている。

 

そうと決まれば善は急げ。

スマホで近隣のショップを探すとしよう。

 

 

・・・

 

 

検索中

 

 

・・・

 

 

「おお、結構あるじゃないか」

 

 

なかなか最近は熱帯魚が趣味というのは珍しいというのに、近くの町には3件もショップがあるようだ。

俄然楽しみになってきた鯉住君。

 

 

「よし、それじゃ出発……と言いたいところだけど、まだ8時だし、あと2時間はしないと店が開かないだろうな……どうしたものか……」

 

 

中途半端な時間の余り方だ。どうしようか悩んでいると……

 

 

(だったらわたしたちにかんみをおごるです)

 

 

「!!?」

 

 

気がつくと彼の肩に、妖精さんがのっかっていた。

いつものメンツである。

 

 

「お、お前たち、ついてきてたのか!?」

 

(くうきよんでかくれてました)

 

(われらはいちれんたくしょうなりー)

 

(きのうみたいにかんみをおごるです)

 

 

まるで姿を見せないものだから、てっきりラバウルに残してきたものだと思っていた。

どうやら空気を読んで、今まで隠れていたらしい。

 

 

「お前ら、よく甘味処で我慢できたな……

そういう我慢とかできない奴らだと思ってたぞ……」

 

(このおとこしつれいですー)

 

(くうきくらいよめる)

 

(おわびにかんみをおごるです)

 

「はいはい……時間もちょうど持て余してるし、奢ってやろう。

ちゃんとおとなしくしてたご褒美だぞ」

 

(わーい)

 

(さすがあにき)

 

(かんみだやっほう)

 

 

艦娘に奢って妖精さんに奢らないというのもかわいそうだろう。

そんなわけで再び甘味処に行くことにした鯉住君一行。

大本営は軍施設なので、朝は非常に早い。『甘味処 間宮』も同様に早朝から営業しているのだ。

 

 

 

……というわけで再び間宮にやってきた。

着席し、妖精さんたちにメニュー表を見せる鯉住君。

 

大本営所属の艦娘たちは、この時間はもう仕事に入っている。もちろん他の職員もそうだ。

彼女たちが間宮で甘味を食べていくのは、仕事前の朝5時台あたり。もしくはお昼か、仕事終わりの19時ごろ辺り。

 

つまりどういうことかというと、この時間はちょうど誰もいないタイミングなのだ。

鯉住君たち以外のお客さんは、誰一人いない。貸し切り状態である。

 

 

ワイワイしながらメニューを眺めている妖精さんたちをボーっと見ていると、誰かから声をかけられた。

 

 

「うふふ。連日のご来店、ありがとうございます」

 

「……あ。あなたは」

 

 

テーブルの横で話しかけてきたのは、長い髪をポニーテールにした、エプロン姿の女性。

昨日自分たちの注文を取ってくれたウエイトレスさんだ。

 

 

「どうも、昨日ぶりです……」

 

「うふふ。ご利用ありがとうございます。鯉住少佐」

 

「!?」

 

 

なぜか自分の名前が知られていることに動揺する。

一言もそんなこと名乗ってなかったのに、なぜこの女性は知っているのだろうか?

 

 

「ええと……どうして私の名前を……」

 

「昨日あまりに楽しそうにしていたものですから、店主の間宮に確認してみたんです。

そしたら、アナタがたがラバウル第10基地からお越しになった面々だと教えてもらえまして……」

 

「そ、そうなんですか……

しかし何故間宮さんも、私のことを知っていたんでしょうか……?

お会いしたことなどないのですが……」

 

 

不思議そうにする鯉住君を見て、微笑むウエイトレスさん。

 

 

「どうやら愛宕さん経由で伝わっていたらしいですよ?

全く見たことのない艦娘……秋津洲ちゃんでしたっけ? 彼女を連れているから間違いない、って」

 

「あぁ、愛宕さんから……納得です」

 

「私、昨日の時点で全く気づきませんでしたよ?

どう見ても仲のいいご家族とか親戚の集まりにしか見えませんでしたから。

間宮から、あの人は提督だ、って聞いたときは驚きました。こんな提督さんもいるんだ、って」

 

「……やっぱり私、提督に見えないでしょうか……?」

 

 

ちょっと気になって質問する鯉住君。

実は昨日、愛宕に「提督らしくない」と言われたのを、まだ引きずっていたりする。

 

 

「まぁ、なんというか……見えるとは言えないというか……見えないですね」

 

「そ、そうですか……」

 

 

言葉を選ぼうとしても選びきれなかった感じが、逆にグサッとくる。

 

 

「ま、まぁ、そういうわけで、私達としてもご挨拶しといた方がいいのかな、と思って、声をかけさせていただきました」

 

「……? 一体どういうことですか?ご挨拶?」

 

「はい。私の名前は伊良湖。艦娘です」

 

「……あー……そういうことですか。

艦娘だから提督に挨拶を、ということですか。

すみません、気づかないで。お顔は拝見したことがあったのですが……」

 

 

顔を見たことがあると言っても、

「しょうがくせいでもわかる! かんむす・しんかいせいかん とらのまき」の

デフォルメちびキャラ挿絵のことなので、実物に気づかなかったのは仕方ないともいえる。

 

 

「いえ、お気になさらず。

これから間宮や私達伊良湖の誰かが、少佐の鎮守府に着任すると思いますので、代わりにご挨拶を、と思いまして」

 

「……??? その話って、もう終わったんじゃないですか?」

 

「……え?」

 

「いや、だって……間宮さんや伊良湖さんの代わりに、横須賀第3鎮守府の足柄さんが着任したじゃないですか……?」

 

「え……?」

 

「え……?」

 

 

何だこれ……話がかみ合わない……

 

い、いや、待てよ……

足柄さんがウチに来ることになったのって、そういえば、昨日の今日だった。

 

もしかしてだけど……

 

 

「もしかして、伊良湖さん、つかぬ事をお聞きしたいのですが……」

 

「は、はい。どうぞ」

 

「間宮さんと伊良湖さん宛てに出した異動依頼って、まだ有効だったりします?」

 

「ええ。有効です。

というか現在、間宮・伊良湖の中では、誰が少佐の鎮守府に着任するかで、結構にぎわっているんですよ……?」

 

「……」

 

 

あ、足柄さん……!やってくれたなあの人……!

てっきり間宮・伊良湖で異動できる方がいないから、足柄さんが名乗りを上げてくれたもんだと思っていた……!

でも本当は、まだ間宮・伊良湖ネットワークの中で相談してる最中だったのだ……!

そういうのガン無視して異動願いだしたのか、あの人!

 

そういうことしちゃダメでしょ!?海軍規範というか最早これはマナーじゃない!?

そういうの守って!お願いだから!

 

 

「あのですね……こちらのために骨を折ってくださっているところ、非常に申し訳ないのですが……」

 

「え? え? ど、どうしたんですか!?」

 

 

・・・

 

 

説明中

 

 

・・・

 

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

露骨に伊良湖さんはガッカリしている。

こちらへの異動を前向きにとらえてくれていたのは嬉しいが、逆に申し訳ない気持ちになる。

 

 

「す、すみません、ホントに……皆さんの貴重なお時間を台無しにしてしまって……」

 

「いえ、少佐はまるで悪くありません……

でも残念です。少佐のところに行きたいと、手を挙げていた子は多いって言うのに……」

 

「え゛っ……なんで!?

間宮さんも伊良湖さんも、すごく忙しいんでしょう!?

私、ダメもとで異動願いだしたんですよ!?」

 

「いや、だってその……あのようなことを言われたら、支えてあげたくなるじゃないですか」

 

「!? な、何のことですか!?

私は今まで一度も間宮さんにも伊良湖さんにもお会いしてませんよ!?」

 

「直接お会いしていませんが、書籍で……」

 

「……あっ」

 

 

そう言えば書いていた。

第3章の将来の展望について、で、大規模作戦中には駐屯所のような運営をしたいと書いた。

 

そのあたりに、給糧の重要性も書いていた。

そこには普段軽視されがちな、料理人の重要性と、日ごろのねぎらいの言葉を綴っていたのを思い出した。

 

 

「あんなに嬉しいことを言ってくれるんなら、この人の下で働きたい、って……」

 

「なんだか、その……いろいろと申し訳ありません……」

 

「いえ……大丈夫、とは言えないと言いますか、非常に残念ですが……

決まってしまったものはもうどうしようもありません……非常に残念ですが……」

 

 

本当に残念そうにしている伊良湖。

重ね重ね申し訳ないです……ウチの将棋ジャンキーが……

 

 

(きまったよー!)

 

(あんみつ、ところてん、くずきり……かんみのとらいあんぐる!!)

 

(よ、よだれがおさえきれません……!!)

 

 

こちらのことなど意に介さず、ずっとメニューとにらめっこしていたらしい。

妖精さんたちから、注文を取れ、と催促がかかった。

 

 

「そ、そうだな、注文しようか。

お話の途中ですが、注文宜しいでしょうか?」

 

「……はい。 何なりと……」

 

「……なんだかもう、何と言っていいか……」

 

「いえ……気にしないでください……」

 

 

意気消沈の伊良湖に注文を取ってもらい、妖精さんたちに甘味をふるまった。

妖精さんたちは満足してくれたようで何よりだが、お会計の時もどよーんとしていた伊良湖を見て、居た堪れない気持ちになる鯉住君だった。

 

 




あの人は勝利のためなら、多少の事は気にしない人です。
それは本人にとって多少の事だったりするので、若干厄介。
鯉住君にはうまく手綱を握ってもらいたいですね。
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