艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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艦娘の服装


この世界では艦娘が制服艤装を着ているのは、基本的に仕事中だけです。
鯉住君も言ってましたが、なぜか艦娘の艤装は大概露出度が高いので、みんなそれで外に出るのは恥ずかしいのです。

それでも防御力アップが見込めるため、有事の際に備えて、鎮守府内では艤装を身につけるのが恒例となっています。

それ以外のプライベートな時間では、皆さん私服を着用しています。
私服は大体の艦娘が通販で購入しており、機能性よりはビジュアルを重視するようです。
その辺はお年頃の女の子。おしゃれにも興味アリなのです。





第42話

 

 

「……はぁ」

 

 

執務室の座椅子に腰かけ、ため息をつく鯉住君。

久しぶりに自身の鎮守府に戻ってきて、気が抜けているようだ。

 

 

「ほら、さっさと切り替えなさいよ。今日から通常業務でしょ?

提督がそんなに腑抜けてたら、みんなやる気が出ないじゃない」

 

 

そんな情けない姿の提督を見かねて、これまた座椅子に腰かける秘書艦・叢雲がたしなめる。

ようやくいつもの風景に戻ってきた、という感じだ。

 

 

 

……たったの2泊3日ではあったのだが、彼にとっては非常に濃厚な出張だった。

 

カリスマ的存在の大本営筆頭秘書艦・大和との邂逅。

3人の先輩提督からの伝言ついでの、常識をポイした艦娘たちの来襲。

新たな仲間の予期せぬ追加。

秋津洲と大和のメンタルケア。

熱帯魚仲間が増えるという、嬉しい出来事。

その熱帯魚仲間の古鷹とふたりで出かけたことによる、各方面からの追求。

帰りの乗船時に行われた、色々黙ってたことに対する叢雲からの説教。

 

イベントがあまりにも盛りだくさんで、とてもじゃないが数日間の出来事には感じられない。

というよりも自分が提督として着任して1か月程度しか経っていないということが、そもそも信じられない。

 

 

 

そんな風に思いを馳せながら、遠い目をしている鯉住君。

それを見て、秘書艦の叢雲も、彼同様にため息を漏らす。

 

 

「はぁ……アンタが疲れてるのはわかるけど、もっとシャキッとしなさいよ。

今だって古鷹と軽巡のみんなが近隣哨戒に出てくれてるのよ?

ダラダラしてたら申し訳ないとか思わないわけ?」

 

「……それもそうだな……さっさと仕事終わらせちゃおうか」

 

「もっと覇気を出して……まぁいいわ。

アンタの言う通り、さっさと仕事終わらせましょ」

 

 

提督に活を入れる叢雲だが、彼女にしても相応に疲れている。

さっさと仕事を終わらせて休憩したいという意見には賛成なのだ。

 

そんな様子でのろのろと仕事を再開したふたりだったが……

 

 

ガララッ!

 

 

「失礼するわね! 提督!叢雲!お昼は何を食べたいかしら!?」

 

「うおっ……!

足柄さんですか……ノックぐらいしてくださいよ……」

 

「堅いこと言いっこなしよ。それで何がいいの?

候補としては、カツ丼、カツカレー、ヒレカツ定食なんかがあるわ!」

 

「全部カツじゃないですか……」

 

「私の得意料理ですもの!揚げるわよ~!」

 

「いや、まぁ、一ノ瀬さんのところに居たころから知ってますが……

……そうですね、秋津洲も一緒に料理するんですか?」

 

「ええ。彼女もやる気だったから、手伝ってもらうことにしたわ。

提督に喜んでもらうかも!って言って張り切ってたわよ?

懐かれてるわね~」

 

 

ニヤニヤしながら鯉住君をからかう足柄。

彼女の言う通り、大本営でフォローを入れて以来、彼は秋津洲に随分と懐かれている。

 

 

「からかわないでくださいよ……

とにかく、秋津洲はまだ料理に慣れていないでしょうから、簡単な手伝いができるものにしてくれますか?」

 

「わかったわ。それじゃ、野菜でも切ってもらおうかしら。

というわけで、今日のお昼はカツカレー!やるわよ~!」

 

 

ピシャン!

 

 

メニューが決まるが早いか、勢いよく退出する足柄。

やっぱり自由にしてマイペースな性格のようだ。

 

 

「……嵐のような人だよな」

 

「私、足柄とうまくやっていけるか、若干不安なわけよ……」

 

「そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。細かいことは気にしない人だから……」

 

「私が心配してるのは、あの人のそういうとこなのよ……」

 

 

確かにしっかりきっちりしている叢雲とは相性が悪いかもしれない。

その通り、と言わんばかりに、何とも言えない顔をしている叢雲である。

 

 

 

・・・

 

 

 

足柄の襲来にもめげずに仕事を続けるふたり。

鎮守府を留守にしていた分の報告書がたまっているため、いつもより集中して取り組んでいる。

 

そんな中、またもや執務室に来訪者が……

 

 

ガララッ

 

 

「提督!艦隊帰還しましたっ!」

 

「……ああ。お疲れさま、夕張。哨戒はどうだった?何か問題あったかい?」

 

「哨戒については問題ありません!哨戒については!

はいこれ!報告書です!」

 

 

バッ!

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

なんだろうか、夕張の様子がおかしい。

いつも落ち着きがある彼女にしては珍しく、なんだか攻撃的だ。

 

 

「それで提督!お話したいことがあるんですけどっ!

今お時間よろしいですよね!?」

 

「え……いいけど……どしたの?」

 

「あ、私席外すから。自分で蒔いた種は自分で摘み取りなさい」

 

 

スッ

 

 

意味深なセリフとともに、呆れた顔で退出する叢雲。

 

 

「あ、ちょ、叢雲、それってどういう……」

 

「逃がしませんよ提督!」

 

 

ガシッ

 

 

叢雲を追いかけようと立ち上がった鯉住君の両腕を、夕張はがっしりと掴む。

決して逃すまいという堅い意志が感じられる。

 

 

「ちょ、夕張、痛い痛い!

いつものキミらしくないよ!?一体どうしたの!?」

 

「一体どうしたはこちらのセリフです!しっかりと説明してもらいますからね!!」

 

「なにをぉ!?」

 

「とぼけないで下さいっ!古鷹に聞いたんですよ!?

横須賀でふたりでデートしてきたって!!」

 

 

どうやら哨戒任務中に、古鷹からそのことを聞いたらしい。

彼女も随分楽しそうだったし、仲の良い夕張に話したくなったのだろう。

 

しかし当事者のふたりは、夕張が言うようなつもりではなかった。

 

 

「ちょ……そういうのじゃないって……

ふたりとも暇だったから、一緒に街に出て買い物してきただけなんだって……」

 

「だぁからっ!そういうのをデートって言うんですよっ!!

古鷹もそういうつもりは無かったって言ってたけど、誰がどう見てもそんなのデートに決まってるじゃないですかぁっ!!」

 

 

ブンッ!ブンッ!

 

 

「ゆ、夕張っ……ゆすらないでっ……」

 

「なんで北上さんと古鷹はよくて、私はダメなんですかぁっ!?

ズルいですっ!!私も師匠とデートしたいっ!!」

 

 

ブンッ!ブンッ!

 

 

「わわ、わかったっ……!今度……一緒に出かけよう……!」

 

「出かけるじゃないですっ!デートです!デート!」

 

「お、おえっ……わかった……今度……デートしよう……」

 

「ホントですね!?私しっかり聞きましたからね!?言質取りましたからね!?」

 

「ウソつかないから……離して……うぷっ……」

 

「よしっ!それじゃ次の非番にデートするってことでいいですね!」

 

「はい……それで……いいです……」

 

 

夕張にゆすられ過ぎて、ぐったりしている鯉住君。

しかしまだ夕張の追求は続く。

 

 

「それはそれで、ありがとうございますですけど!

まだ聞きたいことはあるんですからね!?」

 

「うえっぷ……な、なんでしょうか……?」

 

「なんで秋津洲ちゃんまで弟子にしたんですか!?

私に何の断りもなくっ!」

 

「なんでと言われても……秋津洲が活躍できるのは、艤装メンテだと思ったから……」

 

「それは正しいと思います!

でも私に相談もなく弟子に取るなんて、どういうことですか!?

私が教えてもらえる時間が減っちゃうじゃないですかっ!!

もっと師匠とふたりで……じゃなくて、マンツーマン指導してほしいのにっ!」

 

「それは、安心してほしい……

弟子に取ったからには、俺が責任もってふたりとも面倒みるから……一人前になるまで……」

 

「せ、責任もってくれるんですかっ!? 私の事をっ!?」

 

「それは、当然だよ……俺、師匠だし……」

 

 

なんだか変なところに食いつく夕張。

なんだか誤解がある気がするが、話を進める鯉住君。

 

 

「秋津洲も夕張と一緒でいい子だから、しっかり教えてやらないとと思って……

弟子入り希望してきたのは、秋津洲の方からだけど……」

 

「ふ、ふーん。そういうことなら仕方ないかなぁ、なんて」

 

「すまなかったな……キミの気持ちも考えないで……」

 

「もう!いいんですよ!師匠も誠意を見せてくれましたし!」

 

「そ、そうか……なんだか急に上機嫌になったな……」

 

 

夕張の言う誠意というのがよくわからないが、どうやら危機は脱したらしい。

……と思っていたのだが……

 

 

「それと最後にひとつ!」

 

「うへぇっ!? まだなんかあるの!?」

 

「師匠が大本営に行く前、みんなにプレゼントあげてたでしょう!?」

 

「あ、ああ……みんなには迷惑かけちゃったからな……」

 

「その様子だと気づいてないですね!?

あの時にプレゼント貰ってないの、建造されたての秋津洲ちゃんと、私だけなんですよっ!!」

 

「……あっ」

 

 

そうだった。

あの時にプレゼントを渡した相手は、秘書艦のふたりに天龍龍田姉妹、そして北上大井姉妹である。

鎮守府に所属していたメンバーで、プレゼントを渡していないのは、夕張と秋津洲のみ。

 

秋津洲については建造直後であり、プレゼントどころではなかった。

しかし夕張については、すでに立派な鎮守府の一員であったのは間違いない。

 

ということは、夕張ひとりだけがハブにされたと感じるのは仕方ないことと言える。

 

 

「あー……確かに……」

 

「デートを断られて、さらにひとりだけプレゼント貰えなかった私の気持ち、師匠は考えたことあります!?

目の前で北上さんと大井さんが嬉しそうにプレゼントの話してるのを、指をくわえて見てることしかできなかった私の気持ち、考えたことあります!?」

 

「す、すまない……」

 

 

再度ヒートアップしてきた夕張。

何とかなだめようとするも、自分に原因があるのは明白である。

どう言っていいのかわからず、たじろぐ鯉住君。

 

 

「少しでも悪いと思ってるなら、私に特別なプレゼントをください!」

 

「と、特別なプレゼント……?」

 

「そうです!特別ってわかるプレゼントです!

今度のデートの時に、何か買ってください!」

 

「……わかった。俺の気遣いが足りなかったのは確かだしな」

 

「約束ですからね!

それじゃ次の非番の日ですよ!?忘れないでくださいねっ!」

 

 

ピシャン!

 

 

「……」

 

 

威勢よく夕張が出て行き、静かになった執務室。

どうしていいやらわからず、立ち尽くす鯉住君。

 

 

ガララッ

 

 

「……ただいま」

 

 

夕張が出て行き、ほとんどノータイムで叢雲が入ってきた。

これはあれだろう。さっきまでのやりとりを扉の外で聞いていたのだろう。

 

 

「……おかえり叢雲。もしかしなくても、聞いてた……?」

 

「責任取るって言ったんだから、ちゃんと責任取りなさいよ?」

 

「えぇ……?」

 

 

やっぱり聞いてた。しかも夕張と同じところに反応していた。

だが今はそこに突っ込んでいる場合ではない。問題は別のところにある。

 

 

「その……叢雲さん? ひとつお願いがあってですね……」

 

「なによ? 夕張のプレゼント選びなら、手伝わないわよ?」

 

「……」

 

「アンタからのプレゼントが、北上と一緒に選んだものだって聞いて、

私だって何とも言えない気分になったのよ?

あれだけ慕ってくれてる夕張にも、そんな思いさせるつもり?」

 

「いや、だって……俺のセンスって、かなりひどいらしいし……」

 

「北上と大井のプレゼントは、アンタだけで選んだんでしょ?

だったら今回もひとりで選びなさい」

 

「そんなぁ……」

 

「せいぜい悩みなさいな。

まったく、なんで夕張はこんな奴を気に入ったんだか……」

 

 

 

・・・

 

 

 

足柄と夕張の襲来にもめげずに仕事を続けるふたり。

例によって仕事はいつもより多いため、いつもより集中して取り組まざるを得ない。

 

そんな中、またもや執務室に来訪者が……

 

 

トントンッ

 

 

「……はい、どうぞ」

 

 

ガララッ

 

 

「失礼します。緊急連絡です」

 

「大井じゃないか。どうしたんだ?緊急連絡?」

 

「はい。つい今しがた、鼎大将が部下を連れてお越しになりました」

 

「……へ?」

 

「いや、ですから、鼎大将がお目見えになりました。

事前に連絡があったのではないのですか?」

 

 

なに言ってんだこいつ?と言いたげな表情を浮かべる大井。

何故かと言えば、鼎大将から事前連絡があったはずだと、彼女は考えているからだ。

緊急訪問があるなら、多少なりとも事前連絡があると思うのが普通。

大井がそう考えるのも無理はない。

 

しかし相手は普通の提督ではない。あの3人の師匠である。

 

鯉住君がギギギと叢雲の方を向くと、無表情で書類仕事を続けていた。

聞かなかったことにしたいらしい。

 

 

「そ、そうか……ありがとな、大井。

ちなみに大将一行はどこに通してくれたんだ?」

 

「客間……いえ、会議室に通させていただきました」

 

「わかった。急な話だったのに、対応してくれてどうもありがとう」

 

「いえ、当然のことをしたまでです。それではあとはお願いします」

 

 

そう言って一礼すると、大井は退室していった。

 

 

「……なぁ、叢雲。

秘書艦のキミも来た方がいいと思うんだけど、どう思う?」

 

「……いったい何の事かしら?

私は今書類仕事しなきゃいけないから、遊んでる暇はないのよ……」

 

「……気持ちはわかるけど、現実見ような……」

 

「……」

 

「ほら、いきますよ……」

 

「……」

 

 

ずるずる……

 

 

 

大本営で常識崩壊の危機を乗り切ったと思ったら、まだ続いていた模様。

 

現実逃避気味の秘書艦を引きずって、自身の師匠の下に向かう鯉住君なのであった。

 

 

 

 




もうちょっと第2章は続きます。
もうちょっとですけどね。
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