艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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鼎大将組以外の世界情勢について


このお話は基本ギャグのため、頭すっからかんで楽しんでもらえるように頑張っています。
だからそこまでシリアスな場面はないかと思います。

しかしそれは鼎大将組が、ギャグ時空の連中だからであって、他の鎮守府や世界情勢などは、かなり厳しいものとなっております。

日本や欧州諸国は艦娘を大量に所有しているのでまだよいですが、発展途上国に分類される国々は、まぁひどいものです。

海沿いでは生活できないため、人口の8割以上は内陸部に集中。
必然食糧問題やインフラ整備問題などが急浮上、犯罪率も急上昇。
貧富の格差も非常に大きく、富める者貧する者の二極化が甚だしいです。

確実に日本は恵まれている方、というか、世界で深海棲艦登場前の秩序を維持できている国は両手指で収まるほどしかなく、そのうちの一国です。
ですので、その国の中でもトップクラスに好待遇な提督たちは天狗になるのです。
以前ちらっと書いたように、本当に優秀であるということも、それに拍車をかけます。

そして5年前の本土大襲撃を境に、深海棲艦の襲撃は鳴りを潜めており、日本海軍という組織の随所にゆるみが生じてきています。
それは、軍資金横流し、わいろ、部下への暴行、派閥争いといった形で表在化してきています。

大本営筆頭秘書艦である大和の悩み、苦しみは、この部分に起因しています。
彼女にはシリアス部分をひとりで背負ってもらって、少しかわいそうかな、と思っています。




第44話

 

鼎大将の急襲から一晩明けた朝。

ラバウル第10基地のメンバーは全員そろって会議室へと集まっていた。

 

ちなみに鼎大将一行はポポンデッタ港の宿に泊まっている。

明日の朝一番で返事を聞きに来る、と言って去っていった。

どうやら港町で南国バカンスを楽しもうということ。こちらに言いたいことだけ言って、好き勝手やるらしい。

 

 

「……みんな、今日は重大な話がある。よく聞くように」

 

「なんだよ提督。全員呼び出しなんて、珍しいじゃねぇか」

 

「そうね~。天龍ちゃんの言う通り、全員揃ったのって初めてなんじゃない~?」

 

 

天龍龍田姉妹の言う通り、普段は掲示板(ホワボ)に次の日の予定を記すスタイルなため、全員顔を合わせるのはこれが初めてだったりする。

 

 

「まぁ、どうしてもそれぞれ別の業務を頼むからね……」

 

「それでなんなのさ一体。別に忙しいわけでもないからいいけどさ~」

 

「昨日大将がいらっしゃった関係ですか?

どちらにせよ北上さんの貴重な時間をあまり奪わないでいただきたいです」

 

 

さすが大井は優秀である。察しが良い。

北上への意見についてはいつもの事なので触れない。

 

 

「そう。大井の言う通り。大将からこんな提案があったんだ」

 

 

そう言って、昨日貰った書面を長机の上に置き、隣に座る叢雲から時計回りで回していく。

あの塾生募集みたいな書面を回し読みする部下の艦娘たち。

目を通したものから順に、顔をしかめていく。

 

 

「なんですか?これ……

学習塾の生徒募集にしか見えないんですけど……」

 

「私にもそう見えますね……でも内容は真面目。春季大演習ですか」

 

 

やはり鯉住君同様の感想を漏らす、夕張古鷹コンビ。

 

 

「へぇ~。そういえばそんな時期だったわね。

私達の……は以前の話ね。聡美ちゃんの鎮守府でも研修受け入れやってたわ~。

今回もあるの?個別研修?」

 

「そうみたいです。一ノ瀬さんのところ、今回も募集掛けてるみたいですよ」

 

「個別指導~?どんなことをやるのかしりたいかも」

 

 

足柄は少し前まで受け入れ側だっただけあって、心得たものである。

そして秋津洲から出てきた疑問は、誰もが気になっていることだ。

面倒見のいい足柄が、その疑問に答える。

 

 

「個別指導というだけあって、研修内容は艦娘の個性に合わせたものになるわ。

鎮守府によって傾向は違うけど、細かい調整は相手を見てするのよ。

例えば攻めるのが好きな艦娘であれば、戦闘技術を教えるのが得意な艦娘が教官となるわ。聡美ちゃんのところでいえば、鳥海や霧島ね。

戦術的な戦闘を好む艦娘であれば、頭脳戦が得意な艦娘が教官ね。こっちは香取や伊8かしら」

 

「ふ~ん。秋津洲はそのあたり、よくわからないかも」

 

「まぁ、まだアナタ戦闘してないものね。仕方ないことよ」

 

 

 

「つまり提督、ウチからも、この研修に参加者を出そうということなんですね?

素晴らしいチャンスじゃないですか!

ちなみにどの鎮守府が研修先候補なんですか?」

 

 

夕張の質問を受け、渋い顔をする鯉住君。

 

 

「……一ノ瀬さんのところと、加二倉さんのところ……」

 

「提督の先輩さんのところですね……いいと思います!

でも提督、なんでそんなに憂鬱そうなんですか?」

 

「だってなぁ……どっちにしても地獄の研修になるのは目に見えてるんだし……

みんなを送り出すのが不安で……」

 

 

昨日叢雲にたしなめられて尚、この弱気発言である。

彼の性格からして、過保護になってしまうのは仕方ないことかもしれない。

しかしそんな提督を見かねて、ちょっとイラっと来た叢雲が厳しい一言を。

 

 

「アンタまだそんなこと……いいわ、そういうつもりなら……

みんな、昨日の事で、私から言っておきたいことがあるの。聞いてちょうだい」

 

「お、おい……叢雲……」

 

 

鯉住君に構わず話を進める叢雲。

他のメンバーは、彼女の珍しい行動にみな注目している。

 

 

「昨日大将と話してるときね、コイツはあろうことか、研修の話を断ろうとしたわ。

その理由、なんだと思う?

『私達を危険な目に合わせたくない』って言ったのよ?」

 

「あー……」

 

 

この段階まで来て、未だ煮え切らない態度をとっていたのが徒となった。

キレイにまるっと叢雲に暴露されてしまった。

 

……彼が恐る恐るメンバーの顔を眺めると……

 

 

 

 

 

「……うっ」

 

 

 

 

 

皆一様に、恐ろしい表情をしている。

これは間違いなく、ひとり残らずブチ切れている。考えるまでもなくわかる。

 

 

「ち、違うんだよ、みんな……」

 

「何が違うと言うんですか……!?」

 

「護る事が本分の私達に向かってぇ……師匠は、そんなこと言っちゃうんですかぁ……?」

 

 

怖い。普段温厚な古鷹と夕張とは思えない、声のトーンの低さだ。

 

 

「提督、ない。それはないよ。全然ない。ありえない」

 

「体中の穴という穴から、魚雷ぶち込みましょう……」

 

「ひえっ……」

 

 

怖い。いつも笑顔の北上が真顔だ。あと大井のオーラで背景が歪んでいる。

 

 

「私達、随分舐められちゃってるみたいね」

 

「提督には失望したかも」

 

「……」

 

 

怖い。足柄は獲物を狩る狼の目をしている。秋津洲は養豚場の豚を見るような眼をしている。

 

 

「何言ってんだおめぇ……?俺たちにケンカ売ってんのか……?

俺たちはなぁ!提督のペットじゃねぇんだぞ!?」

 

「お人形遊びがしたいならぁ、ひとりで引き籠って楽しんでてくれないかしら~?」

 

「うぁ……」

 

 

怖い。天龍は直接攻撃に出る一歩手前。ほぼ胸ぐらをつかみかけている。龍田は笑顔だが目が笑っていない。大井とは違う毒属性のオーラが見える。

 

 

 

 

 

「……あの……えと……すいませんでした……」

 

 

この状況にはいくらなんでも耐えられない。

彼には謝るという選択肢しか残されていなかった。

 

流れるような動きで座布団ごと後退し、きれいなフォームで土下座を決める。

まさに男の命乞い。26にして初のガチ土下座である。

 

 

「そういうのいいですから。顔をあげてください」

 

 

古鷹による、古鷹とは思えないほど冷たい声が響く。

 

 

「はい……」

 

 

覚悟して顔をあげる鯉住君。

目の前にはこちらを非難するエネルギーにあふれた瞳が9対。

その9者9様の眼力に、決めた覚悟が一瞬で砕かれる。

 

 

「提督さ、何でアタシ達が怒ってるかわかる?慎重に答えなよ?」

 

「わからないようなら、本当に雷撃処分します」

 

「そ、それは……」

 

「なんで俺達艦娘が、何倍も弱ぇ人間如きに、保護されなきゃなんねぇんだよ!!

おかしいと思わねぇのか、テメーはッ!!」

 

「ち、違う!そんなつもりは……!俺はただ……」

 

 

スッ

 

 

弁明しようとした彼の目の前に、龍田がどこから取り出したのか、自前の薙刀を突き付ける。

 

 

「ウッ……」

 

「あら~? 聞こえなかったのかしらぁ~?

今はぁ、提督がぁ、なんで私達が怒ってるのか説明してくれる番よね~?

余計なことを話しちゃう舌ベロはどこかしら~?切り落としますよぉ~?」

 

 

こ、怖いよぉ……!いつもより口調が甘ったるいのが逆に怖すぎる……!

話の内容も怖すぎる……!

 

 

「……はいはい。みんなが怒ってるの見たら、冷静になっちゃったわ。

龍田もその辺でよしてあげなさい。提督がしゃべれないでしょ」

 

「……しょうがないなぁ」

 

 

足柄さんのフォローで龍田が薙刀を引っ込めてくれた。た、助かった……!

やっぱり足柄さんはできる女だ!俺、信じてたよ!

 

 

「あ、ありがとう足柄さん」

 

「これで話せるでしょ?何で私達が怒ってるか説明なさい。早く」

 

 

あ、ダメだこれ。

冷静になったって言ってたけど、まだ怒りの炎はメラメラしてるわこれ。

 

まな板の上の鯉状態。チカラなく口を開く。

 

 

「……はい。

私が、皆さんの気持ちを考えず、勝手に、独断で行動をとったのが原因です……」

 

「だからその、私達の気持ちが何なのかっていうのを聞いてるのかも。バカなの?」

 

 

いつも無邪気な秋津洲ですら怖い。

 

 

「すいません……

何と言いますか、護ることを信条としている皆さんにとって、私のような軟弱者に護られるというのは、その、屈辱だったということですよね……?」

 

「それだけですか?」

 

「え」

 

「それだけだとしたら、少し違いますし30点です。

もちろんそれだけじゃないですよね、師匠?」

 

 

夕張……たのむからその右手に持ったモンキーレンチを置いてください……

左手にパシンパシン打ち付けているのを見ると、次にそのレンチが振り下ろされるのは、俺の頭なんじゃないかと思ってひやひやするんです……

 

 

「は、はい……

ここの鎮守府の理想は、『やりたいことをやりつつ、みんなで協力し合えるひとつのチーム』と自分で言っていたにもかかわらず、私は独断専行で要らぬ心配をしました……

そして、皆さんが得られるはずだったチャンスを……この鎮守府の他のメンバーのために強くなりたいという気持ちを、踏みにじりそうになったからです……」

 

「はい。よく言えました。

それがわかっているなら、もう二度とこのようなことはしでかさないように。

いいですね?」

 

「はひ……わかりました、古鷹さん……

今後そのようなことが起こった場合、必ず皆さんに相談させていただきます……」

 

「ったくよぉ……俺が認めた提督なんだから、眠てぇこと言わないでくれよなぁ。頼むぜ?」

 

「はひ……すみませんでした、天龍さん……」

 

「はぁ……。昨日日向さんが言ってたこと、身に沁みてわかったでしょ?

これに懲りたら、もっと私達の事信用なさいな。それも提督の務めよ?」

 

「ゴメンよ、叢雲……そしてありがとう……」

 

「アンタはせいぜい、私達に『護りたい』と思わせるよう努力なさい。

所詮アンタひとりじゃ駆逐イ級一匹すら倒せないんだから、私達が護ってあげるってのよ。感謝なさい」

 

「はひ……」

 

 

部下からの総攻撃を食らい、メンタルが大破してしまった鯉住君。

今彼は、やっちゃったなぁ……ただでさえ付き合い浅いのに、見限られちゃったかなぁ……

なんて、だいぶネガティブになっている。

 

 

そんな彼は、

『部下たちと強い信頼関係が築けているからこそ、ここまで皆が感情を露にすることができた』

という事実には、到底思い至らないのであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「それじゃ、誰がどこに研修に行くか決めましょ。

……ほら、アンタもいい加減調子戻しなさい」

 

「……そうだな。一応ここのトップだし、しっかりしなきゃな……

こんな俺で申し訳ないが、付き合ってくれると嬉しい……」

 

「さっきも言いましたけど、分かってくれたんなら大丈夫ですって!

いつもの調子に戻ってください!提督!」

 

 

古鷹が笑顔でこちらを励ましてくれた。

天使が見える。さっきまで堕天使だったというのに。

 

 

「……む。古鷹だけじゃなくて、私も提督の事は信頼してるんですからねっ!

提督からももっと頼ってもらわないと、悲しくなっちゃうじゃないですか!」

 

 

夕張も励ましてくれた。嬉しい。ホントに俺はいい弟子に恵まれたよ……

 

 

「キミたち……ありがとうな……」

 

「ハイハイ。調子が戻ったんなら、いちゃついてないで、さっさと話進めなさい」

 

 

叢雲がパンパンと手を叩きながら、話を戻してくれた。

 

 

「そ、そうだな。自分なりに案を考えてきたから、聞いて欲しい……」

 

 

 

 

 

「個別研修に出すにしても、この鎮守府を空にする事はできない。

それに加えて、先方の受け入れ体制も踏まえると、一ノ瀬さんのところ、加二倉さんのところ、そのどちらも2名が限界という結論になった」

 

「うん、まぁそんなところよね。

個別研修ってだけあって、確実にひとりは教導に当たることになるから、中規模鎮守府じゃ受け入れ可能人数も少ないのよねぇ」

 

「そう。足柄さんの言う通り。

だから他所からの参加者のことも考えると、最大でも研修に出られるのは4名ということになる。

……さっきまではこれで十分と考えていたんだけど……」

 

「だけど?何かあるのかも?」

 

「キミたちに叱られて思い直した。

キミたちが心に抱いている、護りたい、チカラをつけなきゃいけない、って気持ちを大事にしないと、ってさ。

だから俺も今回の件に関しては、謝罪の気持ちも込めて、全力で当たりたいと思う。

……ということで、ウチでも個別研修をすることにした」

 

「……何?私、聞いてないんだけど?」

 

 

怪訝な顔をする叢雲。

 

 

「言ったでしょ。思い直したって。

俺が本気で艤装メンテについて指導するのを、研修として、鼎大将に公表してもらうつもり。

一応研修だから、他所からも受け入れはすることになると思う。

でも受け入れると言っても、よそからはほとんど希望者なんていないだろうし、身内での技術特訓みたいな感じになるだろうけどね」

 

「ふーん……まぁ、急な話だし、告知も小規模にするって言うなら、参加者はほとんど集まらないかしらね」

 

「ただでさえウチは居住空間がほぼ一杯なんだから、受け入れ自体厳しいしね。

だから君たちの中で、希望する者は、俺が全力で今まで培った技術を仕込む。

大規模作戦中でも問題なく、仕事を十二分に回せるくらいにはなってもらうつもりだ」

 

「あ!ハイ!私、参加します!」

 

「私も提督と一緒に頑張るかも!」

 

 

すぐさま立候補する夕張と秋津洲。

彼女たちは鯉住君の弟子であるので、当然といえば当然だが。

 

 

「わかった。そんな気もしてたしね。

とはいえまだ概要説明の途中だ。その話はもうちょっと後で」

 

「「 はーい 」」

 

 

 

「そして全力と言うからには、鼎大将にも研修受け入れを何とかお願いしようと思う。

あそこは大規模鎮守府だから、受け入れ人数は多いとは思う。

だけど急な申し出だし、これもふたりくらいが限界だろう。

そもそも受けてくれれば、の話だけれど」

 

「アンタにしちゃ珍しいわね。身内とはいえ、誰かに無理を言うなんて」

 

「キミたちの心を裏切ったんだから、これくらいはしないと納得できない。

それに鼎大将もわかってくれるさ」

 

「……そ。わかったわ」

 

 

 

・・・

 

 

 

「……というわけで、まとめるとこのような感じだ。

 

2か月間・個別研修

 

横須賀第3鎮守府(一ノ瀬中佐のとこ)…… 戦略訓練 2名

佐世保第4鎮守府(加二倉中佐のとこ)…… 実戦訓練 2名

ラバウル第10基地(ここ)     …… 技術訓練 2名

呉第1鎮守府(鼎大将のとこ)    …… 総合訓練 2名

 

もちろん、必ず出なければいけない、ということではないし、この鎮守府の守りも欲しいから、参加不参加は君たちの意思に任せる。

判断に迷うようなら、各鎮守府での研修経験がある俺が疑問に答えるから、気兼ねなく何でも聞いてくれ」

 

 

情報をまとめる鯉住君と、真剣にそれを聞く部下たち。

みんな真剣にどうするか考えているようだ。

 

……一部を除いて。

 

 

「おう、提督! 俺は佐世保に行くぜ!」

 

 

いつも通りの調子で、威勢よく天龍が声をあげる。

 

 

「お、おい、天龍、キミ全然資料見てないだろ?ホントに大丈夫か?」

 

「あ? だって一番戦闘力が上がるのって、佐世保での研修なんだろ?

だったら行く以外ありえねぇよ!」

 

「そ、そうか。確かに天龍は、いつも出撃したいって言ってるもんな。

キミの意見を尊重することにするよ」

 

「おう!サンキューな!」

 

 

鼻息荒く意気込む天龍を見て、少し心配な鯉住君。

そんな中、さらなる心配事が……

 

 

「あら~。天龍ちゃんが行くなら、私も参加しようかしら~?」

 

「た、龍田!? あそこは本当にヤバいぞ!それでいいのか!?」

 

「だ~いじょうぶよ~」

 

 

天龍が行くから、という凄い理由で、佐世保行きを志願する龍田。

 

……出会ってまだ龍田のことをよく知らない段階であれば、いくら押しに弱い鯉住君でも、この意見、問答無用で突っぱねていた。本当にあそこは人外魔境なのだ。

 

しかし彼女のことを以前よりも知った今、「天龍と一緒」ということが、どれだけ彼女にとって大きいことか理解できるようになった。

そういうことで、不安は残るが、鯉住君は龍田の意見を認めることにした。

 

 

「そうか……わかった。認める。

ただしふたりとも、今から言うことをよく聞き、心にとどめておいて欲しい」

 

「「 ??? 」」

 

 

改まって何か言おうとする鯉住君を、ふたりはクエスチョンマークを頭に浮かべながら見つめる。

 

 

「研修が始まったら、『いつでも戻れる場所がある』なんて考えないように」

 

「? そこは、いつでも帰ってきていい、とかいう場面じゃねぇの?

いや、研修終了までは帰るつもりねぇけどさ」

 

「違うんだよ天龍……

『いつでも帰れる』なんて思った瞬間に、心が折れるんだ。

だから必死で一日、いや、その瞬間を生きるんだ。そうすることでしか、あそこでは生き残れない。わかったな?」

 

「……提督がそこまで言うなんて、こりゃ相当みたいだな」

 

「うん。そう。だから最初、渋ってたんだよねぇ……」

 

「……ハン!上等じゃねえか!やってやんよ!

なぁ提督!絶対サイキョーになって戻ってくるから、楽しみにしとけよ!」

 

「うふふ~。私も天龍ちゃんに置いてかれないようにするわ~。

もしかしてぇ、天龍ちゃんよりも、ず~っと強くなっちゃったりしてぇ」

 

「バカ言え!俺の方が強くなってやるからな!」

 

「ふふっ。そうか、わかった。キミたちふたりを信じるよ」

 

「! ヘヘッ!任せとけって!」

 

「あらあら。うふふ~♪」

 

 

この様子なら、なんとかなるだろう。

ふたりともしっかり前を向いているし、ひとりじゃないことは、とても大きなことだ。

 

鯉住君が満足そうにしていると、他方から手が挙がる……

 

 

 

 




艦娘個別研修は基本的に艦娘が教導します。
でも鯉住君は、自分が教導するつもりのようですね。教えられるのが彼だけなので、仕方ないですが。

キリがいいので、とりあえずここまで。
中途半端でゴメンね。

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