重巡洋艦 古鷹改(Lv39 足柄改二(Lv88
重雷装巡洋艦 大井改(Lv36 北上改(Lv19
軽巡洋艦 夕張改(Lv25 天龍改(Lv32 龍田改(Lv28
駆逐艦 叢雲改(Lv26
水上機母艦 秋津洲 (Lv2
秋津洲のレベルが未出撃なのに上がっているのは、大本営でちょっとだけ頑張ったからです。
事務や知識向上でも、ちょっとは経験値が入るものと思ってください。
少人数で毎日の遠征、近海哨戒、出撃を回しているので、練度の上がり方は比較的早いです。
また、この世界では、改、改二はポケモンの進化みたいなものです。
特定の練度あたりになると、勝手に服装と艤装が変わります。
Bボタンは無いので、U-511提督は血の涙を流さないようにお気を付けください。
「……私は横須賀に行こうと思います」
なんと、意外にも手を挙げたのは、普段主張しない大井だった。
「……ちなみに動機を聞いても?」
「はい。構いません」
「それじゃ、話してみて」
「提督が私達のことを甘く見てると分かったので、見返してやろうと思っています」
「……なんか、その……本当に申し訳ない……」
いつも通り事務的な対応だが、やっぱりまださっきのことを許してくれていないようだ。
辛い……
「いや、でも、自分の事を棚に上げて話すけど、本当にすごいハードなんだよ。あそこの研修。
俺の鼻を明かしてやりたい、程度の覚悟では、認められない」
天龍龍田姉妹のように、明確な動機があれば信じて送り出せる。
しかしそのような弱い動機では、到底乗り越えられないほどハードな研修なのだ。
彼は横須賀第3鎮守府で見た。
自身の研修中にも、艦娘研修は行われていた。そこで何が起こっていたのかを……
・研修プランは彼が知る限り5段階だったが、その中で一番易しいプランでも、あまりの辛さに廊下で倒れる艦娘が居た。
・彼が深夜目を覚ましてトイレに行った際に、艦娘研修が行われているのを発見した。さらに言うと、その艦娘はその前日もその翌日も、鯉住君が起きている間は常に研修を行っていた。
つまり研修中の彼女は、おそらくほぼ睡眠をとっていなかった。
・足元がおぼつかないほど疲労した研修中の艦娘が、教導艦に連れられ、演習場に向かうのとすれ違ったことがある。案の定彼女は口から煙を吐き、半ば死に体となってドックに運び込まれた。
・結局その艦娘は、研修期間満了まで耐えきれず、1か月でドロップアウトしてしまった。
……とまぁ、鯉住君が把握しているだけでも、十分にヤバい証拠がそろっている。
だからこそ、半端な覚悟の者は送り出すことはできない。
たとえ自分が非難されようとも、である。
「提督は、また私達のことをバカにするのですか……?」
「いやいや……そうじゃないよ。
俺もさっき叱られて反省したから、キミたちのことは、今までよりも深く信じることにした。
だけどね。そんな動機では、キミが研修に耐えられず、潰れるのは目に見えている。
潰れると分かり切っている者を送り出すことはできない。わかってくれ」
「……」
大井が不満そうな顔でこちらを睨んでくる。
美人ににらまれるとすごく怖い。
「……それじゃアタシがいこっかな~。横須賀」
会話が途絶えたところで、北上が立候補してきた。
これもまた予想外だ。北上は強くなることに、そんなに興味がないと思っていた。
「き、北上が……? 正直意外なんだが……」
「別にアタシは戦闘好きってワケじゃないけどさ、このままだと軽巡組の中で、私だけ置いてかれちゃうじゃん?
やっぱりそれは嫌なわけよ」
「……北上と大井は重雷装巡洋艦では」
「そういう細かいことは気にしな~い。気持ちの問題だよ。わかる?」
「うーん……まぁ、わかる気もするな……」
「それに提督だってさ、アタシたちが強い方が指揮しやすいでしょ?
なんだか思うんだけど、提督って戦闘中に指示出すとき、アタシたちに遠慮してる気がすんだよね~
そこんとこ、どうよ?」
話が少しずれ、北上から指揮についての指摘が入る。
・・・
……実は北上の指摘は正しい。
鯉住君は自身の研修を、佐世保、横須賀、トラックの順でこなしてきた。
これはわかりやすく言うと、所属艦娘の能力が高い順でもある。
各鎮守府の所属艦娘平均練度は以下の通り。
佐世保第4鎮守府 …… Lv255
横須賀第3鎮守府 …… Lv82
トラック第5泊地 …… Lv72
参考・大本営 …… Lv75
参考・一般的中規模鎮守府 …… Lv46
つまり彼の艦娘の能力基準は、最初にみっちり戦闘を叩きこまれた、佐世保第4鎮守府のものとなってしまったのだ。
だから彼の脳裏には常に、頭おかしい動きをする艦娘の姿が見えている。
その姿と現実とのギャップがうまく埋められず、指揮をうまく執ることができない、という現状がある。
もちろん鼎大将はこうなることを予想済みで、この順番で研修プランを組んだ。
どうせ将来的には強力な艦隊を指揮する機会があるだろうから、高いレベルに慣れさせる方が、後々有利になるという発想だろう。
・・・
「……いつから気づいてた?」
「たまに提督が指揮してるのを横から見てたじゃん?そんとき」
流石は北上。勘が非常に鋭い。
ここの北上はセンスで戦闘をするタイプで、かなり光るものを持っている。
「……すまなかったな、黙ってて」
「どうせアレでしょ?さっきみたいな理由でしょ?
『アタシたちが弱いせいで指揮がうまく取れない、なんて言えない』とか思ってたんでしょ」
「……いや、その……
俺がうまく指揮が取れないのは、そういうわけじゃ……
調整……そう、調整がうまく取れていない俺のせいだから……」
「はい言い訳無用~。図星~。
……だからそうやって、みんなの問題をひとりで抱えてると、解決できるものも解決できないじゃん?
そういう時はさ、はっきり相談してほしいんだよね。
ね~?大井っち?」
「……」
大井はぶすっとした顔で鯉住君を睨んでいる。
「そうか……大井も気づいて……」
「当たり前じゃんか。
この中で一番、提督の指揮で戦闘してきたのって、大井っちとフルちゃんだよ?
なんか変だって気づくのは普通っしょ」
「ふ、古鷹ももしかして……」
「あぁ、私はそこまではっきり気づいてませんでしたが……
何か違和感がある指揮だとは思っていました」
指揮がうまく取れない理由があまりにもなものであるため、こっそりと克服しようと考えていた。
しかし歴戦の艦でもある彼女らには、筒抜けだったようだ。
「そうか……情けなくなるな……」
「ま、着任一か月の提督にそこまで求めるのも酷ってもんじゃないの~?
アタシは他のとこ知らないから、よくわかんないけどね~。
研修中はどうだったの?足柄さん?」
「そうねぇ、私も結構不思議だったのよ。鯉住君の指揮が下手だって聞いて。
聡美ちゃんのところで行った演習では、問題ないように見えたから。
でも理由を聞いたら納得ね。艦娘の練度によって指揮も変わるから、そのギャップについていけてなかったのねぇ」
「全くその通りで……」
「だーかーらっ。アタシが提督のために一肌脱いでやろうじゃん、ってことなのさ。
今回の研修で実力つけて、楽させてあげよう、なんてね~。
こんなに優しい部下なんていないよね~。感動で泣いてもいいよ?」
北上が冗談交じりでハンカチを手渡してくる。
言っていることはかなり、本格的に、嬉しいことなのだが、いつもの北上節のため、なんとも微妙な空気である。
「すまないなぁ……頼りにさせてもらうよ……」
「なんだ。泣かないの? つまんない人だよ全く」
「そう言われましても……ん?」
ここで鯉住君にひとつの考えが浮かぶ。
大井が研修に志願してきた、いや、志願してくれた理由は、北上が今言ってくれたことと同じではないのだろうか?
大井も自分の指揮の欠点に気づいていたようだし、それをサポートするために、実力をつけてくれようとしたのでは……
いや、でも、常に一定の距離を置かれているイメージのある大井がそんなこと……
一体どうなんだろうか……
「その、大井、ちょっといいか?」
「……なんでしょうか?」
「もしかしてだけど、キミは、その……」
「違います。勘違いしないでください。
私は提督にバカにされるのが許せなかっただけです。
あと、北上さんが行くのなら、私も行きますから。いいですね?」
「あっはい……」
本人曰く、違うということらしい。だいぶ食い気味に否定されてしまった。
やっぱりそうだよなぁ、と、頭をかく鯉住君である。
「提督提督」
「……どうした北上? まだ何かあるのか?」
「加点1だよ」
「かてん……?」
「あ~、気づいてないか。やっぱ今のなし。
それよりもさ、横須賀行きはアタシ達でオッケーなの?」
「ああ。問題ない。
北上が話してくれた内容はホントにありがたいことだし、キミは一度決めたらやる子だしね。
大井も多分、何と言うか、大丈夫だと思う」
「わかったよ~」
「了解しました」
これで横須賀行きのふたりも決まった。
次は呉で研修をしたい子がいないか確認しよう。
そう思っていると、何か言いそびれていたのか、北上から話しかけられた。
「あっ、そうだ。ね~提督~?」
「……ん? どうした?」
「アタシたちってば、提督の言うメチャクチャ厳しい場所に行くわけじゃん?」
「まぁ、そうなるが……」
「だからさ、戻ってきたらご褒美ちょうだい」
「……う」
まさかのおねだりであった。
彼の脳裏に、以前北上と行った、プレゼント選びの記憶がよみがえる。
……すっごいダメ出しされたなぁ……
「……商品券とかでいいか?」
「は?」
「いや、何でもないよ……その時はまたプレゼント選ぶから……」
「それでいいんだよ、まったく……どうしてくれようかと思ったよ……」
呆れ顔で鯉住君に目を向ける北上。
返答を間違えたらどうなっていたのだろうか?考えたくもない。
その会話を見ていた各方面。ご褒美と聞いては黙っていられない。
「おい提督!ずりーぞ!北上達だけ!
俺にもなんか買ってくれよ!シルバーのアクセサリーとか、カッケー奴!」
「あら~。私も素敵なプレゼント、欲しいな~」
「わ、私だって!師匠からのプレゼント、もっと欲しいですもん!
楽しみにしてますからね!」
「みんなだけもらって秋津洲だけ無しなんて、ありえないかも!
また間宮に連れてって欲しいかもー!!」
「あ、私も連れてってね。古鷹も行く?」
「え、えと……提督が良いと言ってくださるなら……」
「そうねぇ、私は何がいいかしら?
最新の圧力鍋なんていいかもしれないわね。横須賀でいいの見つけたのよね~」
怒涛のおねだりラッシュに圧倒される鯉住君。
さっきも心底たじろいでいたが、今はまた別の意味でたじろいでいる。
「わ、わかった。わかったから。
確かにとても大変な2か月間になるだろうから、無事にやり遂げたら、みんなで町にでも出かけよう。
ポポンデッタ港の田舎町じゃなくて、そうだな……
俺が住んでた呉にでも、旅行に行こうか」
「「「 異議なし!!! 」」」
とても賑やかになった、ラバウル第10基地の会議。
やはりこういう賑やかな雰囲気が、この基地には合う。そう思う鯉住君であった。
……ちなみにこの後、残った枠を埋めるように人員配置が決まった。
結果はこのような感じ。
横須賀第3鎮守府(一ノ瀬中佐のとこ)…… 北上 大井
佐世保第4鎮守府(加二倉中佐のとこ)…… 天龍 龍田
ラバウル第10基地(ここ) …… 夕張 秋津洲
呉第1鎮守府(鼎大将のとこ) …… 叢雲 古鷹
残留(兼 秘書艦・戦闘要員) …… 足柄
叢雲が秘書艦から離れることで少し悩んだが、足柄が説得した。
自身の実力をつけるのも大事、という話をしたのだ。
叢雲もそれには納得し、呉の研修参加に踏み切ることができた。
これにて第2章・完となります。
次回からは第3章。
一回りも二回りも成長したラバウル第10基地の面々がみられるかと思います。
彼ら、彼女らの事、応援していただければ嬉しく思います。