艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ケッコンカッコカリの扱い

前回明石(と鼎大将)がやらかしたケッコン指輪ですが、他ではこんな扱いになってます。
(このお話での指輪は、ゲームと違い、提督との信頼に応じて練度がちょっとだけ上がる艤装、という扱いです。
上限解放という機能は、知る人ぞ知る隠し機能です)


・呉第1鎮守府(鼎大将のとこ)

所属年数5年以上、第1もしくは第2艦隊編成組、練度が50以上(目算)。これらのどれかを満たす艦娘全員に支給。一人前の証。
理由は単純。提督との信頼関係が強くなり、指輪の効果が出るのが、これらの条件あたりからだから。


・横須賀第3鎮守府(一ノ瀬中佐のとこ)

将棋のランキングで、トップ10(第10席まで)に入ると支給。ランカーの証。
誰もが指輪の取得を目的に、日々腕を磨いている(将棋の)。
ちなみにランカー落ちすると、指輪は返上となる。


・佐世保第4鎮守府(加二倉中佐のとこ)

練度が上限になると支給。真の仲間の証。
指輪を持つ者が誰かひとりでも攻撃を受ければ、全員で潰しに行く。
通称『連番指輪』。血判状的な。


・トラック第5泊地(三鷹少佐のとこ)

秘書艦任命の際に支給。秘書艦経験者の証。
しかし秘書艦経験者は3名しかいないため、ほとんどの部下には支給されていない。
ここのメンバー的には、あまり指輪にこだわりはない模様。


・一般的な鎮守府

男性提督は、初期艦娘やエース艦娘、男女の仲にある艦娘など、特別視する相手に渡すことが多い。
そもそもの話、効果が発揮できるほど、多数の部下と信頼関係を築けている提督は稀。
さらにそういう提督は指輪の複数運用を好まないので、複数運用する者は少数派。
人選に問題があり、ギスギスしてしまうことも。

女性提督にしても、艦隊にとって特別な相手に渡すというのはほぼ同様。
ちなみに『実力向上艤装』という意味合いで渡す。
こちらはギスギスすることは、ほぼない。






第52話

 

 

 

 

「おま……! どうすんのコレぇ!?」

 

「どうもこうも、全員に配っちゃえばいいじゃない」

 

「そんなの成立するわけねぇーーーだろうがぁ!!

誰が好き好んで、俺みたいな奴から結婚指輪受け取りたいってんだよぉ!

仮だとしても!練度が上がるっていっても!

女子に片っ端から指輪渡すなんて、できるわけねぇって!」

 

「……?」

 

 

明石は怪訝な顔をして、頭にクエスチョンマークを浮かべている。

なに言ってんだ、コイツ?とか思ってるに違いない。

 

 

なんで俺が言ってることが伝わらないの!?

日本語分かるよね!?これだから明石は苦手なんだよォ!!

 

 

(このごにおよんで……)

 

(おうじょうぎわのわるい……)

 

(さっさとわたして、らくになるです)

 

 

楽にはならねぇよ!重いものを背負うことになるよ!

それ以前にオコトワリされまくって、俺の心が絶望の海に轟沈するわ!

 

 

鯉住君が頭の中で、てんやわんやしていると、部下の皆さんが次々と口を開く。

 

 

「俺は貰うぜ!ケッコン指輪!

これで俺の真のチカラが解放されるんだな……!!フフ……楽しみだぜ!!」

 

「そうね~ 私も、と~っても楽しみ~」

 

 

キミたちはそうだよな!知ってた、けど!

それでも俺としては、心の準備が整ってないんだよ……!

何とか先延ばしに……!

 

 

「ふむ。桃色にしてはやるではないか。

鯉住殿!わらわの左手薬指にそれをはめるのじゃ!」

 

「姉さん、落ち着いて!鯉住さんが困っちゃうよ!」

 

 

キミもそうだよな!知ってた!

子日さん、その荒ぶるお姉さんを抑えててください!

キミにはまだ早いから!もっと大人になってから、ふさわしい男性と一緒になってください!

 

 

「師匠!下さい!指輪!好きです!

一番弟子なんですから、一番最初に下さい!結婚してください!」

 

「う゛ええぇぇっ!?」

 

 

ゆ、夕張!?キミもなのか!?

ていうか、なんか、とんでもないこと言わなかった!?

確かにデートしてくれとか言われてたし、万が一くらいにはもしかしたらと思ってたけど……!?

た、多分それはあれだよ、思春期特有の、恋に恋してるってやつだと思うよ!?

こんなアラサーにキミみたいなかわいい子が惚れるなんて、あっていいはずがない!

思い直してくださいお願いします!助けてください!

 

 

 

怒涛の参戦にたじろいでいる鯉住君。

そんな彼のもとには、まったく縁がないと思っていた人物たちも……

 

 

「ちょっとアンタ!

天龍や夕張に言い寄られて、鼻の下伸ばしてんじゃないわよ!」

 

「む、叢雲……!

そんなことは……というか、助けてくれ!

全員分あるっていったって、俺から指輪貰いたい子なんて、そんなにいるはずないだろ!

天龍、龍田、初春さん……と、ゆ、夕張だけだろ!?

キミもそんなこと言われても困るよな!?」

 

「わ、私は、アンタがどうしてもって言うなら、貰ってやってもいいわよ?」

 

「叢雲ォ!?」

 

「せ、せっかく強くなれるチャンスなんだから、必死で研修して強くなった私が、そのチャンスを逃すわけないでしょ!?

他に意味なんて無いわ! か、勘違いしないでよね!?」

 

「いや、そりゃ他に意味なんてないだろうけど!」

 

「……フンッ!」

 

 

ボグウッ!!

 

 

「イ゛エァアッ!!」

 

 

鯉住君にタイキックが炸裂する。

 

 

「うぉお……なんで……このタイミングで……!!」

 

「うるさいわね!このヘタレ!」

 

「どういうことなの……!」

 

 

今日一番のキレの良さを見せるタイキックに、崩れ落ちる鯉住君。

 

 

「て、提督!大丈夫ですか!?」

 

「あぁ……古鷹か……

すまないが……助けてくれないか……?」

 

「え、ええと……」

 

「もう俺ひとりじゃ……にっちもさっちも……」

 

「わ、私にも指輪下さいっ」

 

「……」

 

 

……?

 

 

「古鷹……すまないが……助けてくれないか……?」

 

「無かったことにしないで下さい!私にも指輪下さいっ!」

 

「なんでぇっ!?

古鷹まで、なんで俺を裏切るんだぁッ!

キミも強くなりたいの!?そういうキャラじゃないでしょ!?」

 

「だって……みんながもらうなら、私も……」

 

「それ一番ダメなやつだからぁ!!こういう時には流されちゃダメェ!!

いくら仮とは言っても、結婚だよ!?

キミみたいに強くて優しくてかわいい子が、そんな流れとかで決めていいことじゃないんだって!!」

 

「そ、そんな、かわいいだなんて……」

 

 

 

「「 せいっ! 」」

 

 

ゴッ!

 

 

「ヘアァッ!!」

 

 

どさくさに紛れて、なぜか古鷹を口説き始めた鯉住君に、明石と夕張のダブルスパナが炸裂する。

 

 

「だから師匠は、古鷹と良い雰囲気にならないで下さい!!

それは私の役割でしょう!?」

 

「TPOに合わせた言葉を選んでくださ~い」

 

「明石テメェ……夕張まで……」

 

「いいからさっさとみんなに指輪配りなよ。もうあきらめちゃってさ」

 

「いやだ! こんな流れじゃ、断りたい子も断れないだろ!?

そ、そうだ、キミもそう思うだろ、大井!?

いつも冷静に物事を判断できるキミなら、こんな状況で決めていい話じゃないことくらい、分かるだろう!?」

 

「……」

 

「お、大井……?」

 

「諦めてさっさと配ってください」

 

「大井ぃ……」

 

 

なんてこった……

冷たい目をした大井から、無慈悲な鉄槌を振り下ろされてしまった……

もしかしたら大井から見放された……?

 

 

「私達が研修を経て強くなったのは、この鎮守府の一員として活躍するためです。

それだというのに、さらなる強さを得られる艤装を明石さんが用意してくれたというのに、それを提督の私情で無駄にしようというのですか……?」

 

「……うっ」

 

「それとも私達のことが信頼できていないということですか?

その艤装は信頼がないと効果が発揮できないですものね」

 

「そ、そんなことはない!」

 

「だったらさっさと全員に配ってください。

断られたとしても、それは真摯に受け入れるべきことでは無いですか?」

 

「う……」

 

 

突然のガチ正論である。

冷静な大井なら、この大騒ぎを鎮めてくれはしないかと期待したが、とんでもない方向性で沈静化してくれた。

 

ここで断るのは流石に……!

 

いや、しかし、彼女たちにはもっといい相手が……!!

もっと幸せにしてくれる相手が、いるのではないか……!?

 

 

(あなたがしあわせにするのです)

 

(じぶんでまいたたね、かりとって?)

 

(おとこのかいしょうみせて?)

 

 

チクショウ……!ぐぬぬぬ……!!

いつもならツッコミを入れるところだが、今回は状況的にあしらえる内容ではない……!

 

男の覚悟を決めることになるのか……!?

こんな飲み会で!?酔っ払いたちに囲まれて!?

 

人生の選択は突然だと言うけど、こんなに突然なの!?

道を歩いてたら雷に打たれた、くらいの感覚よ!?

いかづちじゃないわ!かみなりよ!?

 

 

「う……うぐぐ……!!」

 

 

「あーあ、提督悩んじゃったよ。大井っちも素直じゃないねぇ」

 

「……なんのことでしょうか、北上さん」

 

「別に隠さなくても、提督なら大丈夫だって」

 

「……」

 

 

 

・・・

 

 

 

何が何やらわからない状況になってしまった歓迎会。

そこに足柄と秋津洲が最後の料理を運んできた。

 

 

「……あら? なんなの?この雰囲気。

なんだか不穏な空気が流れてる気がするんだけど、私の気のせいかしら?」

 

「あ、足柄さ~ん。やっほ~。

……お、食後のデザート!?すっごい美味しそうじゃん!」

 

「ふふ。せっかく南国に来たんだから、フルーツ入りの寒天ゼリーを作ってみたわ。

なかなかうまくできたわよ?」

 

「秋津洲も寒天溶かすの手伝ったかも!」

 

「やるじゃ~ん、あっきー!

やっぱりお食事の〆はデザートだね~。うまそ~!」

 

「そう言ってもらえると、作った甲斐があるわ。

……で、この状況は何なのかしら?」

 

「あ~。それがね、かくかくしかじかで」

 

「……ふーん。そういうこと」

 

 

北上から事の顛末を聞いた足柄は、デザートの乗ったお盆を机に置き、歩き出した。

 

 

 

スタスタ……

 

 

カパッ

 

 

キュッ

 

 

 

「「「 あっ 」」」

 

 

なんと足柄は、流れるような動作で指輪入りの小箱を開け、中身のケッコン指輪を指にはめた!

 

 

「……で、これが書類ね。

えーと……それじゃ提督、ここにサインしてちょうだい?」

 

「あっ……はい……」

 

 

キュキュッ

 

 

「……! すご……!

思った以上に効果があるわね!この艤装!みなぎってきたわ!!

これ凄いわね!提督!」

 

「……はい……」

 

「さて、と。

それじゃみんな、さっさと指輪はめて、提督にサイン貰っちゃいましょ!

早くしないと、せっかく作ったデザートがあったまっちゃうわ!!」

 

「わかったかも!

足柄さんと同じようにすればいいの?」

 

「そうよ~。

デザートには適温があるんだから、さっさと済ませて、早く食べないとね!」

 

「は~い!それじゃこれはめて……んしょ。

提督、書類にサインして欲しいかも!」

 

「……おぅ」

 

 

キュキュッ

 

 

「はいはい!それじゃみんな、指輪はめた子から順に列作ってね~

提督も早く済ませちゃってね?

今度のデザート、自信アリなんだから!」

 

「わぁ……それは楽しみだなぁ……」

 

「「「 …… 」」」

 

 

 

なんか解決した。

 

結局全員に指輪を進呈したのちに、

ある者はハイテンションで、ある者は複雑な表情で、またある者はげんなりした表情で、

足柄特製寒天ゼリーを堪能したのであった。

 

鯉住君がげんなり組だったのは、言うまでもないことである。

 

 

 

 






丸く収まってよかったですね(ちからわざ)



鯉住君が研修組にかましたメールテロ抜粋



To 叢雲

元気してるかい?

今日は書類がいつもより多くてね。
書類をそろえているうちに、ホッチキスの針が無くなってしまったんだ。
それで補充しようとしたんだけど、いつもの棚に替えが無かったんだよ。
それで小一時間探すことになってしまったんだ。

こんなこと、ここにきてから初めてだ。
俺が知らないうちに、いつもキミはしっかり揃えてくれていたんだね。
キミに頼りっぱなしだってことを、改めて思い知ったよ。いつも一緒にいたときは気づかなかったのにね。

キミは優しくて、気が利いて、俺にはもったいない秘書艦だ。
でも強がって無理をしてしまうところがあるから、あえて言うけど、決して無理をしてはいけないよ?
キミは余計なお世話だって言うかもしれないけどね。

キミが帰ってくる日を待ち遠しく思っているよ。
それでは。




To 大井

無事でいるかい?

今日は足柄さんに、開放済み海域の哨戒に出向いてもらったんだけどね。
とても平和で、波ひとつない、穏やかな海だったって報告を受けたよ。

それも全部、キミがあの時、夜戦まで粘って戦艦級を仕留めてくれたからだ。
まだまだウチは戦力的に心許ないし、俺の指揮も全然だ。
そんな中、キミが真剣に、必死で戦ってくれた成果を、今日は実感したんだよ。
改めてありがとう。キミが来てくれてよかったと心から思うよ。

普段はそう見えないけど、本当はキミは心優しく、思いやりのある子だと思ってる。
初めて北上に会った時に、感動で泣いていたのを今でも覚えているよ。
大切な人に会えて、嬉し涙を流せるんだ。
キミほど優しい子、そうそういないさ。

みんなのためを思って頑張っていることだろうけど、頑張りすぎてはいけないよ?
みんなのためと頑張るのは素晴らしいけど、自分も大事にしてほしい。

元気なキミに会える日を、楽しみにしているよ。
それでは。




こんなメールちょいちょい送ってました。テロですね。



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