艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

6 / 185
鯉住くんは明日朝勤です。
なので初春姉妹と遊んだ後は、そのまま仮眠室に泊まる予定。仮眠室はもちろんシャワー付。
いくら寮が近くても、チャリで往復30分近くかかるのが、仮眠室に泊まる理由ですね。
軍事施設なので、緊急出勤なんてことももちろんあります。
それもあって、少しの時間でも睡眠時間を確保したいようですね。


第6話

子日さんが人生ゲームをテーブル(こたつタイプ)に展開し終わり、各自席に着く。

……といっても、座っていないのは俺と初春さんだけなんだけどさ。

 

初春「さて、わらわも座るかのう」

 

スッ

 

初春さんが、残っている場所に入る。

これでテーブルの席は4辺全部埋まってしまったことになるが、

俺はどこに入ろうか。

 

……というか隣に座っても大丈夫な子はいるだろうか。

これは気にしておくべきポイントだろう。

これぐらいの年齢の女の子だと、

恥ずかしがる子と気にしない子が半々くらいだと思うけど……

 

初春「何を突っ立っておるのじゃ。貴様もはよう座れ」

 

そう言うと初春さんは、隣にもうひとり入れるだけのスペースを開けてくれた。

うん。気にしすぎだったかな。

 

子日「あっ!姉さんずるいですよぉ!」

 

若葉「……こちらも空いている」

 

初霜「私も隣で遊びたい!こっちに座って!」

 

バンバンバン!!

 

自分の隣にスペースを開け、みんなして床をバンバンしている。

 

ああ、気にするポイントはそこじゃなかったかぁ……

みんな素直でお兄さん感心です。素直なのはいいこと。うん。

しかしあれだ。これはこれで困る。

どうしたら波風立てずに着席できるか……

 

(もてもて)

 

(おあついことです)

 

(このたらし)

 

キミらはちょいちょい、人が考えてる最中に煽ってくるよね。

私は今脳みそフルスロットルなのですよ?茶々を入れないでいただきたい。

お菓子食っておとなしくしてるように。オーケー?

 

初春「こら、貴様ら!鯉住殿はわらわが連れてきたんじゃから、

わらわが一番楽しむべきなのじゃ!ここは譲る場面ぞ!」

 

子日・若葉・初霜「「「えー、ずるーい」」」

 

初春さんナイスアシスト。

ああ、なんかこの感じ、すごい懐かしい……

一番上のお兄ちゃんお姉ちゃんってこんななのよね。

親戚の上の子もこんなんだったよ。

あの頃は楽しかったなぁ。何にも考えず遊んでて……

……いや、今だって十分楽しいけど。

 

初春「つべこべいうでない!ほ、ほら、貴様もさっさと座らんか!」

 

バンバン!

 

ちょっと照れながら、妹たちに対抗して床をバンバンしている。

微笑ましい。

 

鯉住「はは……それじゃ失礼しますよ、っと。

みんなもスペース開けてくれてありがとね。お礼に今度お菓子買ってあげるよ」

 

子日「えっ!?やったぁ!!」

 

若葉「……本当だな?」

 

初霜「嬉しい!鯉住さん、ありがとうございます!」

 

フフフ。ババを引かせちゃった子にはちゃんとフォローを入れるのだ。

仲よく遊ぶには機嫌を損ねないのが一番大事。

俺の経験値を甘く見てはいけない。

 

初春「……むぅ」

 

隣からプレッシャーを感じる……

我慢してね。初春さん。バランスとらなきゃなのよ。

こっそりまたお菓子買ってあげるから。

 

鯉住「それじゃ下準備しましょう。銀行は俺がやりますよ」

 

若葉「……気が利くな」

 

鯉住「それほどでもありません」

 

初霜「ええと、車に棒を刺して……と」

 

・・・

 

下準備が終わり、いよいよ開始することになった。

ルーレットを回す順は、じゃんけんで勝った子日さんから時計回りだ。

 

子日「やったぁ!子日が一番だよぉ!」

 

若葉「……それだけで勝敗は決まらない」

 

初霜「わくわくしますね!鯉住さん!」

 

鯉住「そうだね。すっごい楽しみ」

 

みんなニコニコして楽しそうだ。

俺もつられて自然と笑顔になってしまう。

なんて幸せな空間なんだ……

 

(ねのひさんにいきおいがある……ムチャムチャ)

 

(はつしもさんに……こんぺいとうひとつ……モキュモキュ)

 

(わかばさんのあんていかんにかけます……ペロペロ)

 

お前ら何してんだ。俺の目には賭け事をしているように映ってるぞ?

あれだからな?今のお前ら、競馬場のおっさんだからな?

見た目を女の子からおっさんにして、

食べてるものをお菓子から焼き鳥にしたら、

完璧に競馬場のおっさんだからな?

容姿とアイテムでだまされると思ったら大間違いだぞ?おぉん?

 

子日「それじゃ回すよ!」

 

 

・・・

 

 

鯉住「初霜さん、高所得ルートに進むんだね。ギャンブル性高いのに。正直意外」

 

初霜「えへへ。普段堅実に戦ってるぶん、遊びでは楽しむんです!」

 

鯉住「あー、そういう考え方ね。いいじゃない……あ、人気アイドル(年収8.0万ドル)」

 

初霜「よっしゃあ!」

 

子日「あー、ずるいよぉ!初霜ちゃん!子日はバーテンダー(年収3.0万ドル)なのに!」

 

若葉「……バーテンダー……かっこいいな」

 

鯉住「若葉さんは建築家(年収6.0万ドル)だったね。それっぽいと思うよ」

 

若葉「……もっとかっこいい職業がよかった。

……それより一番似合ってるのは、鯉住さんのエンジニア(年収5.5万ドル)だろう」

 

鯉住「まさか人生ゲームでも、現実と同じ道を選ぶことになるとは思わなかったよ……

基本給まで完全に一致しているとは……はは……」

 

(つまらないおとこ……ムチャムチャ)

 

(もっとぼうけんするべき……モキュモキュ)

 

(おんなのこにあいそつかされそう……ペロペロ)

 

鯉住「はい、そこ!外野はヤジ飛ばさないように!

堅実だとか、安定感があるとか、もっと言いようあるでしょ!?

あと賭け事は禁止ですからね!!」

 

(((えー)))

 

鯉住「当たり前です!未成年は賭け事しないように!

それは大人のたしなみなのです!」

 

(((ぶーぶー)))

 

子日「鯉住さんは妖精さんと仲良しなんだね!」

 

若葉「……すごい。本当に話せるのか」

 

鯉住「いやぁ、仲良しというかなんて言うか……」

 

初霜「普段どんなこと話してるんですか?私、気になるわ!」

 

鯉住「いや、まあ、その……あんまり知らない方がいいと思うよ……」

 

初春「そうなのか?」

 

鯉住「そうなんですよ……ロクでもないことしか話してないので。

……まあ、会話できるのは確かなので、

妖精さんの方からメッセージがあるようだったら、その時はちゃんと伝えますよ。

そんなことがあるかはよくわかりませんが」

 

初春「ふむ。その時はよろしく頼むぞ」

 

鯉住「任せてください」

 

初春「とっ、とと、次はわらわの番じゃの。それい!」

 

クルクルクル……

 

ピタッ

 

初霜「……あっ」

 

若葉「……これは……」

 

鯉住「人気アイドル……」

 

子日「初霜ちゃんと被っちゃったね!」

 

初春「ということは……」

 

鯉住「アルバイトです」

 

初春「何故じゃあ!納得いかんぞ!わらわも艦隊のアイドルなのじゃあ!」

 

鯉住「諦めてください。それは那珂ちゃんです。初春さんはアルバイトです」

 

初春「うおおん!妹に先を越されるなど……うう……」

 

初霜「ドンマイですよ!初春姉さん!」

 

初春「うう……本人に言われとうない……」

 

鯉住「大丈夫大丈夫。まだ転職エリアもありますからね!

気を取り直して行きましょう!」

 

初春「……そうじゃの。次じゃ次!はよう回すのじゃ!」

 

鯉住「はいはいっと」

 

・・・

 

子日「今日は何の日!?」

 

初霜「給料日!」

 

子日「正解!」

 

・・・

 

初春「あああ!転職できなかった!!」

 

鯉住「慎重に選考を重ねましたが、今回はご期待に沿えない結果となりました」

 

初霜「初春様の今後のご活躍をお祈りいたします」

 

初春「ぬおお!やめろ貴様ら!祈るでない!

何故かよくわからぬが、そのセリフはとんでもなく心に響くのじゃあ!!」

 

若葉「……そんなに取り乱さなくても」

 

・・・

 

鯉住「……あっ」

 

子日「えーと?意見の違いから離婚……」

 

鯉住「なんてこった……子供一人いるのに……」

 

(しごとにかまけてばかりでかじをせず……)

 

(いくじにつかれたつまはじっかにそうだん……)

 

(そのままふうふなかがひえていき、とりかえしのつかないことに……)

 

鯉住「やめろ!やめてください!お願いします!

妙にリアルなストーリーを作るんじゃないよ!他人事だと思えないだろ!」

 

初霜「そ、そんなに動揺しなくても……」

 

若葉「……妖精さんたちはなんて言ってたんだ?」

 

鯉住「まだキミたちは知らなくていいことだよ……うん……」

 

初春「ま、まあ、その、あれじゃ……

い、いざとなったら、わらわがもらってやるからの……」

 

鯉住「初春さんは優しいなぁ……ありがとう……」

 

子日「姉さんフリーターで生活力ないけどね!」

 

初春「やかましいわ!!」

 

・・・

 

初霜「やった!臨時収入です!仕事が絶好調!10万ドルゲット!」

 

鯉住「おー!いいなぁ」

 

若葉「……流石人気アイドル」

 

初春「10万ドルと言うと……1200万円くらいか」

 

鯉住「これはテレビの特番かなんかに呼ばれたりしたのかな?

人気アイドルはだてじゃないねえ」

 

子日「いいなぁ、初霜ちゃん!」

 

初霜「頑張ってアイドル活動してきた結果です!」

 

・・・

 

若葉「……絵画の購入……5万ドル払う……」

 

子日「これは結構痛いね、若葉ちゃん」

 

若葉「……いや、でも……建築家で自宅には有名絵画……悪くない」

 

鯉住「あ、確かに。すっごいおしゃれ。

有名デザイナーズマンションとか手掛けてそう」

 

初霜「若葉姉さんの自宅、結構な豪邸だもんね」

 

鯉住「これは自分でデザインした豪邸ってことかな」

 

若葉「……フフ。5万ドルなら、いい買い物だったな」

 

初春「若葉はポジティブじゃのう」

 

・・・

 

初春「……! おお!きた!きたぞ!

埋蔵金を掘り当てた!20万ドルゲットじゃあ!!」

 

若葉「……おめでとう。初春姉さん」

 

初春「これで大分追いついてきたぞ!まだ1位はあきらめないのじゃ!」

 

初霜「まだまだ追い抜かれないよ!」

 

鯉住「……フリーターで埋蔵金掘りあてるって、

初春さん、なんかすごい人生を送ってるなぁ……」

 

子日「夢を追ってたら、ホントに掴めたってことかな?」

 

鯉住「これはテレビでインタビューされてもおかしくないね」

 

初春「ふふん。わらわの素敵な人生を語ってやるのも、やぶさかではないのう!」

 

初霜「あ、その時のインタビュアーは、人気アイドルの私でお願いするわ!」

 

・・・

 

子日「ああーっ!私の家が地震で倒れちゃったよう!!」

 

鯉住「あらら。新しい家を買わないといけないね」

 

若葉「……おススメはこの家。いいデザイン」

 

鯉住「おっ。その家も若葉さんのデザインかな?」

 

若葉「……そうだ。力作だぞ?」

 

子日「むー。でも結構高いよぉ……バーテンダーにはちょっとつらいかも……」

 

初春「それなら、わらわと同じマンションに来るのもいいのではないか?」

 

子日「うーん、マンション……やっぱり一軒家にします!」

 

初春「なぜぇ!?」

 

子日「子日はよくうるさいって言われちゃうから、

お隣さんがいない方がいいと思って!!」

 

鯉住「!! おぉ……子日さんはいい子だなぁ……!お兄さん感動したよ……!

こんど何かいいもの買ってあげるからね……!」

 

子日「ホントに!?鯉住さん!わぁい!」

 

初霜「子日姉さんだけずるいわ!」

 

・・・

 

鯉住「はい、ようやくゴールっと」

 

初春「これで全員ゴールしたの」

 

若葉「……それでは結果だな」

 

鯉住「オッケー。それじゃ決算するから、ちょっと待ってね」

 

 

決算中……

 

 

鯉住「……はい!お待たせしました!それでは順位の発表です!!」

 

子日「何位かな!?ワクワクするね!!」

 

初春「最後の方で臨時収入があったり、かなり追い上げたからの!

これはわらわが1位かのう?」

 

初霜「初春姉さんには負けませんっ!私が1位じゃないかしら!?」

 

若葉「……さて、どうかな」

 

鯉住「フフフ。かなり僅差だったよ。では発表!!

 

1位 初霜さん 42.6万ドル!

2位 初春さん 41.8万ドル!

3位 若葉さん 36.3万ドル!

4位 俺    30.4万ドル!

5位 子日さん 29.7万ドル!」

 

初霜「やったー!!勝利、勝利だわ!」

 

初春「むう。惜しかったのう。まあ2位ならよいか」

 

子日「うーん。おうちが潰れちゃったのが痛かったかなぁ」

 

若葉「……可もなく不可もなく。おしゃれで悪くない人生だった」

 

(ふふふ。はつしもさんのしょうりです)

 

(くそう)

 

(こんぺいとうが……)

 

お前ら賭け事は禁止って言ったやろがい。

目の前の皆さんの輝くような笑顔で、浄化されてしまいなさい。

 

鯉住「いやー、いい感じに終わったね。

人生ゲームなんてすごい久しぶりだったけど、昔と変わらず楽しめたよ」

 

 

今回のゲームでは、みんなかなり個性的な人生を歩んだ。

 

初霜さんは人気アイドルとして順風満帆に過ごした。

仕事での臨時収入があったり、結構な豪邸に住んだり、まさに芸能人って感じ。

子供も二人生まれて幸せな家庭を築いていた。

そういえば早い段階で結婚してたけど、

人気アイドルだし、そのことは発表していなかったに違いない。

ううむ、抜け目ないな。

 

反対に初春さんは激動の人生を送っていた。

終始アルバイトだったにもかかわらず、

埋蔵金を掘り当てたり、株で一儲けしたり、古物商免許をとったりしていた。

なんだろう、これ。今はやりのフリーランスってわけでもないな……

なんて言ったらいいかわからないけど、物凄いパワフルだったのは確かだ。

 

若葉さんは非常に安定していた。

建築家として堅実に資産をため、趣味の芸術品を購入するといった生活。

子供は一人で、大きすぎる出費も、ハプニングもなく淡々とゴールした。

なんか若葉さんっぽいなあ、と思わざるを得ない。

本人も納得してるようだし、若葉さんはアーティストとして才能があるのかもね。

 

子日さんは、他の3人と比べると、ちょっと不遇だった。

バーテンダーとして働いていたのだが、色々とトラブルに見舞われ、

なかなか資産を溜めることができなかったようだ。

それでも子供が3人と子宝には恵まれていたし、

ご主人とのダブルインカムでしっかり暮らしていたことだろう。

なんかうちの親戚と似た境遇だなぁ。親近感湧いちゃうよ。

 

俺は、まあ、あれだ。

なんかこう……資産はそこそこ以上になったんだけど、

結局最後までシングルファーザーだった……

なんかね、しっかり家庭を築いている他の皆さんを見てるとね、

悲しみとか焦りが心の中に出現してくるわけですよ……

あれ、おかしいね?ゲームなのにね?

妙に現実とリンクさせてくるのはやめてほしい。

はやく彼女を作らないとなぁ……と黄昏る私であった。まる。

 

 

鯉住「う、うん。楽しめた……楽しめた……よね?」

 

初霜「はい!楽しかったわ!」

 

初春「そうじゃの!やはり大人数で遊ぶと楽しめるのう!」

 

若葉「……大満足だ」

 

子日「鯉住さんが来てくれたおかげだよ!ありがとう!」

 

鯉住「そりゃよかった。こっちこそ呼んでくれてありがとうね」

 

・・・

 

初春「それじゃ、次は何をして遊ぼうかのう」

 

初霜「うーん……あ!そうだ!

せっかく鯉住さんが来てくれたんだから、鯉住さんのお話を色々聞きたいわ」

 

鯉住「え?俺の話を?」

 

初春「おお、いいのう!わらわもそれは気になるぞ!」

 

若葉「……悪くない」

 

子日「それじゃこれから、質問ターイム、だねっ!」

 

鯉住「うーん、そんなに変わった人生送ってきたわけじゃないから、

あんまり面白くないかもしれないけどね」

 

初春「そんなことはないぞ。

わらわたち艦娘は、ほとんど鎮守府から出ないのじゃ。

ちょっとした話でも新鮮なものよ」

 

鯉住「なるほど。それもそうか。

それじゃ残ったお菓子と果物でも食べながら、お話ししようか。

話せることならなんでも答えるからね」

 

初霜「やった!それじゃ私から質問するわね!」

 

思っていた以上に人生ゲームは盛り上がった。

そしてまだまだ遊ぶ時間はたっぷりある。

いつもよりも楽しい時間に、心躍らせる5人であった。

 




無垢な4人の怒涛の質問ラッシュが鯉住を待ち受ける!
果たして鯉住は子供の夢を壊さず、満足させることができるのか?

次回「なあに、子供の質問に答えるなんて朝飯前さ」!

お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。