艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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事後処理回その1

どうしても冗長になってしまうので、さらっと流し読みしていただくのもいいかと思います。





第62話

 

 

ラバウル第1基地・第2艦隊のメンバーに加え、新入りふたり(強制加入)と共に、拠点であるラバウル第10基地まで戻った一行。

 

現在は一晩明け、一旦落ち着いている状態だ。

 

第2艦隊のメンバーはラバウル第1基地に戻らないといけないのだが、ダメージを負っている者もいるため、一旦第10基地預かりという扱いとした。

もちろん高雄によって、第1基地の提督である白蓮大将には許可を得てある。

 

 

高雄が連絡を取った際、大将は電話口で彼女たちの無事を大いに喜んでいた。

その時の高雄の嬉しそうな表情は忘れられない。

 

そしてそのあと、大将は事の顛末を聞いて大爆笑していた。

その時の高雄の般若のような表情も忘れられない。

 

 

 

ちなみに他の第2艦隊のメンバーは現在以下の状態である。

 

大破して肉体にダメージの及んでいた照月は、高速修復材使用ののち、艦娘寮(旅館)で療養中。

身体のダメージは残っていないが、溜まった疲労はメンバー内でも一番だ。今もぐっすりと寝ている。

2,3日はゆっくりしていってもらうことになるだろう。

 

能代は入渠後、引き続き照月の看病。

後輩である照月に、轟沈の危機をおして護られたのが、相当堪えているようだ。

今回の戦闘での負担は少なかったものの、責任感の強い彼女には、この事実が重荷となってしまっている。

彼女がそこから解放されるには、照月の回復しかないだろう。

早くふたりとも元気になってほしいものだ。

 

榛名は入渠時間が長かったため、高速修復材を使用し、これまた療養中。

照月ほどではないものの、彼女も艦隊の最大火力として気を張っていたため、精神の負担はなかなか大きい。療養は必要だろう。

落ち着いてくれるか少し心配だったが、艦娘寮(旅館)の雰囲気を気に入ってくれた模様。一安心だ。

興味本位で現れた、英国妖精シスターズと仲良くしていたのが印象的。

どう見ても彼女のコスプレをしている妖精さんもいるので、仲間意識を感じたのかもしれない。

 

飛鷹・隼鷹の軽空母姉妹は、榛名同様、高速修復材を使用し、その後療養中。

……のはずだったのだが、旅館に浴衣というシチュエーションにテンションが上がりまくってしまって、ふたりで酒盛りを始めていた。

高速修復材を使うことなかったかなぁ……なんて思っていたら、ふたりして高雄に説教を食らっていたので、許してあげることにした。

 

 

 

そして高雄はというと、入渠を終えて一晩明けた今、執務室で鯉住君、叢雲のふたりと情報共有を終えたところだ。

 

 

彼女たちは全員、艦隊全滅の危機と隣り合わせであった。皆一様に疲労が溜まっている。

そして高雄はその艦隊の旗艦だったのだ。精神的疲労は誰よりも大きいはずである。

そんな状態でもするべきことを優先するあたり、さすがは第1基地筆頭秘書艦。

 

ちなみに情報共有であれば、秘書艦ふたりも同席してもらうのが普通だが、今回は共有というより報告といった面が大きいので、同席は叢雲のみ。

古鷹には他の第2艦隊のメンバーの世話を頼んで、席を外してもらっている。

 

 

 

「……それで鯉住少佐。

色々と口頭報告していただいたところ申し訳ないですが、詳細な説明をしていただきたいです……」

 

「あ、はい……わかりました……

起こったことを即日で伝えておらず、申し訳ありません……なにせ報告する暇もなかったので……」

 

「別に報告を怠るつもりはなかったんだけど、結果としてそういう形になっちゃったのは、申し訳なかったと思っているわ」

 

「い、いえ、謝ってもらうことはありません……

というか、これだけの変化をたった2日で起こすなんて……

どこをどうしたら、こんな事態になるんでしょうか……?」

 

「あの……なんていうか、本当に申し訳ない……」

 

 

 

ここ2日で起こった、たった今報告を終えた出来事と、高雄も知っている出来事

 

・艦隊に3名加入(高雄には1名加入予定という報告をしていた)

・艦娘寮(旅館)の増築

・研修メンバーの第二次改装実装含めた研修報告

・艦隊メンバー全員とのケッコンカッコカリの導入

 

・第2艦隊のメンバーの救援成功

・上級の実力を持つ姫級2体の無力化

・艦隊に2名加入(元姫級であり現姫級)

 

 

 

「とりあえず緊急性がない話題は、書類での後日報告で問題ありません。

ツッコミどころは多いですけど……

その……旅館建設とか……異例の多重婚とか……」

 

「旅館については、申し訳ないです……英国妖精さんたちがハッスルしちゃいまして……

ケッコンについては、そっとしておいて下さい……私もいっぱいいっぱいなんです……」

 

「なんといいますか……

心中お察しできないですけども、ご愁傷様と言いますか……」

 

「お気遣いいただき、申し訳ない……」

 

 

ちょっと目を離した隙に、建物もメンバーもその関係性も、全てが様変わりする鎮守府。そんな鎮守府見たことも聞いたこともない。

高雄が現実感を感じ取れないのも、無理もないことだろう。

 

そんなふわふわした状態の、彼女の何気ない一言を耳にした叢雲は、ムスッとしながら話に割り込んできた。

 

 

「ちょっと高雄さん。結婚した相手にご愁傷様って、初めて聞いたんだけど。

流石にそれは失礼なんじゃない?」

 

「あぁ、ゴメンね叢雲ちゃん……

なんだか少佐を見ていたら、自然に口からその言葉が出てきちゃって……

アナタ達の仲を悪く言うつもりなんて無かったの。許してちょうだい……」

 

「よしなさい叢雲……高雄さんは悪くないんだから……

確かにそう言われてもおかしくない状態だもの……

だいぶ厄介なことになっちゃったよなぁ……」

 

「……」

 

「……叢雲?」

 

 

彼の発言を聞いた叢雲は、裏紙利用のためのA3用紙を何枚か使って、なにか折り紙を始めた。

 

そして……

 

 

 

スパァンッ!!!

 

 

 

「ッッッ!!!??」

 

 

叢雲は折り紙して作ったハリセンで、鯉住君の頭に一発お見舞いした。

 

 

「あのねぇ……!

高雄さんは百歩譲っていいけど、アンタがそういうこと言うのは許さないわよ!

私との結婚が厄介だとでも言いたいわけ!?

もうちょっとデリカシーを持ちなさいよ!この唐変木!!」

 

「す、すまん……そういうつもりじゃないんだ……!」

 

「最初の頃から、なんにも変わってないんだから!

いい加減そういうところ直しなさいよね!!」

 

「いや、ほんと、申し訳ない……」

 

 

確かに指輪を送った相手に、その言葉はないわよねぇ……

怒りを隠そうともしない叢雲を前に、自分の事を棚にあげて、そんなことを考える高雄。

 

先ほど聞いた話(半ば強制的にケッコン指輪を渡すことになった)を踏まえると、彼からそういった感想が出るのも致し方ないとは思う。

しかしそこは高雄も年頃の女性である。

どうしても色恋に対しては、理性よりも感情。叢雲の気持ちの方に共感してしまう。

 

 

 

・・・

 

 

 

叢雲と鯉住君の夫婦漫才を見ながら、高雄は考える。

 

 

まさか彼が鎮守府の部下全員とケッコンをしているとは……

 

彼女達の過去を知る高雄だからこそ、尚更その事実は受け入れがたい。

 

 

元々人当たりがよく、良い子であった古鷹が、彼に好意を抱くのはまだわかる。

相性もよさそうであるし、お似合いだろう。

彼と話している時の古鷹の目は物理的に輝いており、彼のことが大好きなのだろうことは、誰の目にも明らかだった。

 

叢雲についても同様だ。

初期艦として、ともに苦難(やらかし)を乗り越えた仲だし、絆が生まれるのは当然といえば当然だろう。

ツンツンした態度は生意気とも取られかねないが、彼女は本当は相手のことを考えられる、優しい性格をしている。

それくらいなら鯉住少佐はわかっているだろうし、それをわかってくれて、甘えられる相手に惹かれるのは、納得できる話だ。

 

 

……そのふたりが指輪を望んだのは、まだわかる。

しかしながら、クセの塊のような他の3人までもが指輪を望んだというのは、正直信じられない。

 

 

天龍については、色恋とはまるで無縁の性格だ。

 

第1基地にいた頃から、彼女は常に出撃したがっていた。

しかしその好戦的な性格とは裏腹に、彼女の艦としての性能は低く、駆逐艦よりはマシ、程度だった。

 

だから彼女に与えられる役割は、そのすべてが遠征。

一見そうは見えないが面倒見がよく、だらけがちな遠征メンバーをよくまとめてくれていたのが、遠征の度に声がかかる大きな理由だった。

やりたいことと自分の適性がかけ離れているということ。気の毒な話だ。

 

不満を口にしつつも遠征に向かう彼女の姿は、ひとつのよくある光景となっていたため、彼女が新天地を求めて異動を願い出た時も『それはそうだろうな』という意見が大半であった。

正直言って、層の厚い第1基地に、彼女の戦闘員としての居場所はなかった。

 

 

……そんな彼女が、まさか出会って数か月、しかも要望を積極的に叶えてくれているわけでもない提督に、あそこまで懐いているとは……

……とてもじゃないが信じられない。

 

今までの第10基地の戦闘報告を思い返すと、彼女が出撃した回数は、片手で収まるほど。

海に出ることは多くとも、大部分が遠征。その状況は、第1基地に居た時と、そう変わらない。

戦闘大好きな天龍の希望を満たせる内容ではないはずだ。

 

それだというのに、何故天龍は指輪効果が発揮されるほど、彼に信頼を置いているのだろうか……

指輪が練度上限解放機能を備えていて、天龍がそれを知って指輪をねだったということだが、そもそも信頼が強くないと効果が発揮できないのだ。

一体何があったというのだろうか……本当に謎だ……

 

 

 

龍田にしても、まったく予想外だ。

 

第1基地に居た頃の彼女は、まったく心の内がわからない存在だった。

唯一読み取れたのは、天龍のことが大好きで、彼女をからかって楽しむことが多い、ということくらいだろうか。

 

天龍と一緒なら別にどんな命令でも構わないし、逆に天龍と一緒じゃなければ、まったくやる気を出さない、といった感じだった。

 

それでも任務については、どんな状況でも最低限はこなすため、扱いに困るというほどではなかった。

だから龍田と周囲との関係は、あくまでもビジネスライクなものだった。

 

……そんな彼女が鯉住少佐の命令(というかお願いに近いが)ならば、天龍と一緒でなくともやる気を出していたのだ。正直我が目を疑った。

さらに任務達成の際、彼にお礼を言われた時に見せた、彼女のいい笑顔。龍田とはそこそこ長い付き合いになるが、あんな眩しい笑顔、初めて見た。不覚にもドキッとしてしまったくらいだ。

 

少なくとも、大好きな天龍と同じくらいには、彼のことが好きなのだろう。

ホントにこの数か月で何があったのだろうか……

 

 

 

そして、極めつけは大井である。

 

彼女の性格は、龍田以上によくわからない。

第1基地に居た頃の彼女は、常に他人とは一定以上の距離を開けており、その態度はよく言えばクール、悪く言えば冷徹だった。

そのため、言い方は悪いが、彼女は鎮守府内で孤立してしまっていた。精神年齢の低い駆逐艦などからは、怖がられて避けられていた。

 

そんな現状をどうにかしようと思って、こちらから距離を詰めようとしても、冷たくあしらわれるし……

誰にでも平等な対応を心がけてはいるが、彼女に対してはあまり良い印象を持っていなかった。正直苦手だった。

ひどい話かもしれないが、彼女の異動が決まった時、心の底でホッとしてしまった。

 

だから彼女が鯉住少佐に対して、冷たくもとれるが、感情を滲ませた態度をとっていたのは、衝撃的だった。

姉妹艦である北上の存在がとても大きいことはあるのだろうが、それにしても、誰にも心を決して開くことのなかった、あの大井が……

 

 

 

鯉住少佐は、彼女たちに対して、いったいどんな接し方をしてきたのだろうか……?

 

たったの数か月で、どんな艦娘でも心を開いてしまう接し方……

……駄目だ、よくわからない。

 

 

 

あまりにも仲の良い喧嘩を見ながら、若干その甘い空間に胸焼けしながら、高雄はそのようなことを考えるのだった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「ま、まぁ、なんと言いますか……先ほどの失言については、失礼いたしました……」

 

「す、すみません、高雄さん。お見苦しいところをお見せして……

ほら、叢雲も一緒に謝ってくれよ……」

 

「……ふんっ」

 

「……なんかもう、すみません……」

 

「い、いえ、大丈夫です。悪いのは私ですので……

そ、そうだ。それらの件についての報告は、書面で構いません。

それよりも、今一番の問題である、例の彼女たちの扱いについて話を聞かせてくれませんか?」

 

「あぁ……それは、何とかしないといけないですよね……

何とかできる自信は全くないですけど……」

 

 

深海棲艦でもあり、艦娘でもある例のふたり。

今までに前例がないケースであることから、どういった扱いをして良いか、計りかねている。

 

 

「しっかりしなさいよ。

よくわからないけど、アンタ、アイツらから認められてるみたいだし」

 

「そう言われても、俺自身もなんでこうなったか、よくわかんないんだよ……」

 

「そこは頑張って何とかしなさい。本人たちに聞き出すなりして。

ウチのトップなんだから、それくらいしなさいよ」

 

「そうは言ってもなぁ……叢雲も古鷹から聞いただろ?

あの人たちがここに来た理由と、来るまでにやらかした色々をさ……

あんな災害級の爆弾みたいな人たち、俺の手に負えないって……」

 

「あまり思い出したくないわ……」

 

「もうなんか、国際問題ってレベルじゃなかったもんなぁ……」

 

 

 

・・・

 

 

 

鯉住君、高雄、古鷹の3名は、6-5からの帰路、艦娘へと変化した彼女たちから聞き取り調査をしていた。

 

何故欧州を縄張りとしている彼女たちが、太平洋までやって来たのか、聞いておきたかったからだ。

海域ボスとして十二分な実力を持っている彼女たちが、わざわざ地球を半周してきた。

理由によってはこれは人類全体の未来を揺るがす一大事である。

 

……しかし彼女たちの返答は……

 

 

『カラフルな熱帯魚を見たかったから』

 

『たまには動け、と言われたから仕方なく』

 

 

休日に遊びに行くような感覚で移動してきただけだった。

これには3人とも椅子からずり落ちるほど脱力した。

 

 

……しかし、こんなくっだらない動機でも、災害レベルの彼女たちが動くというだけで、人間世界には一大事が引き起こされる。

彼女達から旅路の話を聞いた3人は、顔面蒼白となった。

 

 

 

彼女たちが通ったルートは以下の通り。

 

 

まずドレスの深海棲艦が、北海からジブラルタル海峡まで、イギリス・ベルギー間のドーバー海峡経由で空母棲姫を迎えに行く。

 

空母棲姫がせっかくの南国だからという理由で、空母夏姫にスタイルチェンジする。

 

大西洋を中米に向かって横断。移動時は魚をよく見るため海中を進む。

 

中米でカラフルな熱帯魚に興奮した後、パナマ運河経由で太平洋入り。

 

北太平洋をウロウロした後、東南アジアの魚も見ようということで、太平洋に面したラバウルに到着。

 

 

こんな感じだったらしい。

 

 

その話だけ聞けば、欧州人特有の優雅なバカンスといったところ。

 

では何故3人の顔面がひきつったのか?

その理由は、世界で起こった大事件と彼女たちの移動がリンクしていたからだ。

 

 

 

約1年前

 

『ドーバー海峡強襲』

 

この事件では、戦線を維持しきれず、多くのイギリス人、ベルギー人が命を落としたという。

ロンドンも襲撃され、精鋭部隊による抵抗もあってなんとか全壊は防げたものの、甚大な被害を受けたようだ。

 

記録では『多大な被害を被るも、敵の撃退に成功』とされていた。

しかし当の本人が言うには、『部下が勝手にやったことだから、あまり覚えていない。むしろこれから見る熱帯魚にワクワクしていた覚えがある』とのことだった。

 

どうやら彼女に着いていこうとした部下たちが、勝手に暴れただけのようだ。

はた迷惑すぎる。

 

 

 

約7か月前

 

『カリブ海・船舶連続襲撃事件』

 

中米のキューバ沖に広がるカリブ海。

ここで艦娘護衛中のタンカーや客船が悉く沈められる事件が起こった。

人間だけでなく艦娘への被害も甚大で、これによりカリブ海周辺国家の海軍は大打撃を受けた。

 

これもやっぱり彼女のやらかしたことで、『大型船のモーター音のせいで、観察中の魚が驚いて逃げてしまった。当然プッツン来たので、片っ端から沈めることにした』とのこと。

 

今もって原因は謎とされているのだが、真相はこんなロクでもない理由だった。

彼女が港町を見つけなかったことだけが、不幸中の幸いと言ったところか。

 

 

 

約半年前

 

『パナマ運河半壊』

 

中米と南米の境にあるパナマ運河。

ここが何者かの強襲を受け、多大な人的被害を出す事件があった。

施設の多くはかろうじて無事だったため、現在はパナマ海軍(現地艦娘もいます)直轄設備として機能している。

 

当然これをやらかしたのは例の魚好きであり、『海路が狭く、水深も浅かったので、どうしても目障りな人間を知覚範囲に入れなければならなかった。だから見ないで済むよう、視界に入る前にマンタで掃除した』とのこと。

 

彼女からしたら、バルサン焚くような感覚だったようだ。

ホントにやめて欲しい。

 

 

 

そして彼女たちが止まらなかった未来に、なにが起こるはずだったのか。

 

 

どうやら彼女たちは、このまま東南アジアの熱帯魚を堪能しつつ、インドネシア、フィリピン、シンガポールなどを横切って、インド洋に向かうつもりだった模様。

そしてそれらの島国で熱帯魚が多く生息しているのは、島の近海。つまり人類の生活圏とダダ被りしている。

 

……つまり、ここで彼女たちが止まらなかった場合、海中からの突然の強襲が、進行ルートで繰り返される羽目になっていた可能性が高い。

いや、可能性が高い、というより、本人から『港町があったら見つけ次第潰していたはず』と物騒すぎる言質を取っていたので、それは確定事項だったようだ。

 

 

 

聞き取り調査の結果、こんな事実が明らかになった。

 

この話を聞いて、『羅針盤は正しかったんだなぁ……』と、3人ともしみじみ思うこととなった。

 

高雄達がギリギリまで追い詰められたものの、結果だけ見れば、

『轟沈者なし、災害クラスの強敵を2体も無力化、未来に起こる大規模惨劇を未然に防ぐ』

といった、とんでもなくラッキーな展開となったのだ。

本来知覚できないバタフライエフェクトを実感することになるとは、夢にも思わなかった3人である。

 

 

 

・・・

 

 

 

「今回はっきりさせとかなきゃいけない点を整理してみますね……

1つ目は、彼女たちの今後の立ち位置について。

2つ目は、深海棲艦と艦娘の姿が、自由に切り替え可能だという事実をどうするか。

3つ目は、彼女たちのやらかしたことへの対応。

この辺が、何とかしなきゃいけないところになるでしょうか……」

 

「そうですね……鯉住少佐のおっしゃる通りです……

そのどれもが、国際問題級の案件ですけども……」

 

「なんか、言葉にしてみると、どうしようもない気がしてくるわね……」

 

 

「「「 ハァ…… 」」」

 

 

3人そろってため息をつく面々。

こんな話、どこから手をつければいいのだろうか?

 

少なくとも、この面々だけで結論を出せる話ではない。

 

 

「……そういえば鯉住少佐。

昨日私が入渠している間に、お師匠でもある鼎大将に連絡を取っていたそうですね?

なにか助けになるような話は無かったんでしょうか?」

 

「あー……そうですね……

ちょっと今回の件で重要な内容があったので、高雄さんには悪いと思いましたが、早急に鼎大将に連絡を入れさせていただきました。

本来直属の上司である、白蓮大将か高雄さんから話を通すべきだとは思うんですが、何分事情が事情だったので……

申し訳ございません……」

 

「いえ、とんでもありません。お気になさらず。

しかし少佐、『重要な内容』とは、どのことを言っているのですか?

どの案件も重要すぎる物だと思うんですけど……」

 

「あぁ……そうですね……

まぁ、高雄さんなら問題ないかな……口も堅いでしょうし……」

 

「えっ……それってどういう……」

 

「実はですね。今回の件、例のふたりの艦娘化ですが……

ドロップ扱いではありません」

 

「……? ちょっとアンタ、どういうことよ?

艦娘が顕れるパターンなんて、建造かドロップだけでしょ?

確かに今回の件は、かなり異質なケースだと思うけど……」

 

「違うんだよ叢雲……今回のケースはね……『転化』って言います」

 

「て、転……化……?」

 

 

聞きなれないワードに、不穏なものを感じる叢雲と高雄。

ただでさえいっぱいいっぱいなのに、もっとヤバい情報が飛び出る気配をひしひしと感じる。

 

後で少佐から胃薬貰おう……

 

そんなことを考える高雄であった。

 

 

 




艦これも第2期になって初めてのイベントが開催されますね。
どんなイベントか楽しみだなぁ(怯え

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