艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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個別面談その1

1回でふたり分入れたかったけど、ひとり分になってしまいました。
やっぱり尖ったキャラを動かすのは楽しいですね。




第64話

高雄を古鷹に部屋まで送ってもらった後、アークロイヤル(元深海棲艦)と天城(元深海棲艦)への個別面談を敢行することにした。

 

アークロイヤルは魚好きということがわかるのでまだいいが、天城についてはよくわからない。

藪をつついて蛇を出したら、鎮守府どころか、辺り一帯の諸島から人間が消え去る可能性も十分にある。

慎重に、相手の反応を見ながら、話を進めないといけない。

胃が痛いが、いつかは向き合わなければならない問題でもあるし、腹をくくって臨むとしよう……

 

 

「わかってるとは思うけど、おかしな発言しないでよ?

アンタはたまに物凄くデリカシーがないんだから」

 

「わかってる、わかってるって……

彼女たちを怒らせたらヤバいってのは、重々承知してるから……」

 

「多分あのふたりが本気になったら、私達総出でも止められないわよ。

冗談抜きで頼んだから」

 

「やっぱりそうか……気を引き締めてかかるよ」

 

「わかってるならいいのよ」

 

 

結局なんだかんだ悪態をつきつつも、叢雲は着いてきてくれた。

本人曰く「秘書艦たるもの鎮守府メンバーの個性くらい把握しておくべき」ということだった。

まさしくその通りな正論ではあるが、本当のところは、自分のことを心配して着いてきてくれているのだろう。

いつも通りではあるが、不器用で優しい彼女らしい。ありがたい話だ。

 

 

「そう言えばさっき部屋に戻ってたけど、何してたのよ?」

 

「ちょっとね。必要になるかもしれないと思って、色々と準備してたんだよ」

 

「……? まぁいいわ」

 

 

 

・・・

 

 

移動中

 

 

・・・

 

 

 

とんとんとん

 

 

彼女が待機している部屋のふすまをノックする。

まだ部屋割りが済んでいないので、仮部屋扱いだ。

 

 

(誰かしら?)

 

「あ、私です。鯉住です」

 

「私もいるわよ」

 

(あら、Admiralと秘書艦のムラクモね。

いいわ。入りなさい)

 

 

ガララッ

 

 

「失礼します」

 

「お邪魔するわよ」

 

「かしこまらなくていいわ。

それで、わざわざ訪ねてくるなんて、どういった用件かしら?

貴方、提督なんだから、私を執務室に呼び出せばよかったんじゃなくて?」

 

「ええと、貴女に個人的な話が聞きたくてお邪魔したんです。

ですので執務室まで呼び出すこともないと思いまして……」

 

「あら、そうなの。

てっきりジャパニーズ・ヨバイかと思ったじゃない」

 

「よ、よば……!違いますって!

こんな真昼間から、秘書艦連れて、そんなことしませんって!」

 

「あはは!ジョークよ、ブリティッシュ・ジョーク。

それで、なんの話かしら?答えられることなら答えましょう」

 

「ハァ……勘弁してくださいよ……

それじゃ、色々とお聞きしようと思いますが、あまり難しいことは質問しないと思います。

気楽に受け答えして下さい」

 

「別にそんなに気を遣わないでもいいのに。

貴方は私のAdmiralなのよ?」

 

「それとこれとは関係ないですよ。

上司だから偉そうにしていい訳でもないでしょうし。

……それでは掛けさせていただきますね。叢雲は手前でいいかな」

 

「いいわ。それじゃ失礼するわね」

 

 

部屋の中央にある、多分すごくいい木を使った机。

そこに備え付けてある、これまたいい木を使った座椅子に、ふたり並んで腰かける。

それを見て、窓際の椅子に優雅に腰かけていたアークロイヤルも、対面の座椅子に腰かけてくれた。

別にそのままで良かったのだが、気を利かせてくれたようだ。

 

イギリスで地べたに座る習慣はないはずだが、こちらに合わせてくれたのだろう。

彼女は涼しげな顔をしながら、お姉さん座りで座っている。

ドレスっぽい制服にシワがつかなければよいが……

 

 

「そのままでも良かったのに……気を遣わせてしまってすみません」

 

「いいのよ。それで、聞きたい事とは何かしら?」

 

 

・・・

 

 

「ええとですね……

私達はまだ貴女達について、まったく知りませんので……

この鎮守府でやりたいこととか、得意なこととか、聞いておきたいと思いまして」

 

「あら、殊勝な心掛けね。

部下の嗜好を把握しておこうだなんて、流石はAdmiral」

 

「恐縮です。それで、何かやりたいこととか希望はあります?」

 

「そうね……」

 

 

アークロイヤルは軽く握りこぶしを口の前で作り、しばし考える。

 

 

「水族館と生け簀を造ることは確定として、料理もしていきたいわね」

 

「……ん?」

 

 

……なんだろうか。なんかおかしな発言があった気がしたんだけど……

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!なにかおかしなこと言いませんでした!?

いくらなんでも、そんな施設造れませんって!」

 

「Admiralも魚類の素晴らしさが分かっているのでしょう?

だったら全く問題ないはずよ」

 

「確かに魚は大好きですけど、問題ありますって!

一介の軍事施設が、そんな軍用以外の巨大施設、造れませんよ!」

 

「何言ってるの?

私達が今いるこの建物は、軍用施設ではないでしょう?」

 

「……うっ」

 

「それに鎮守府棟だって、そういう名前がついたワフウケンチクというものでしょう?

ここに軍事施設らしいものなんて、何一つないじゃない」

 

「……」

 

「水族館や生け簀が増えたところで、何も違和感はないわ。

違うかしら?Admiral?」

 

「えーと……」

 

 

言われてみればその通りだ。

というか、言われるまで気づかなかった。

 

ウチって軍事施設のくせに、豪農屋敷と、倉と、旅館しかないんだよなぁ……

そう言われてみれば、軍事施設感0%だよなぁ……

どうしよう……なんか彼女の提案に納得しかけてる自分がいる……

 

何故か頭おかしい提案を受け入れ始めている提督を見て、叢雲がため息交じりにそれをフォローする。

 

 

「はぁ……あなたね。

流石にそんなに大きくて、鎮守府運営に関係ない施設は作れないわよ。

大本営から許可なんて下りないわ」

 

「あら。そんなこと気にしないでもいいでしょう?

勝手に造ってしまえばいいじゃない」

 

「ただの中小規模鎮守府に、そんな横暴が許されるわけないでしょ……」

 

 

平然とワケの分からない事を言う英国艦に、困惑顔の叢雲。

しかしそんな彼女も、アークロイヤルの次の発言に、目を丸くすることとなる。

 

 

「許されるわ。

許可を出さないというなら、私が『あちらの』姿で、欧州から部下を全員呼び寄せ、日本海軍に大規模攻勢を仕掛ける。そう伝えればね」

 

「……!?」

 

 

この人とんでもないこと言いだした……!

自分の要求を通すためなら、使えるカードは容赦なく使う姿勢。

良くも悪くもイギリス的である。

 

これには叢雲も閉口。

その様子を見て、胃をキリキリさせながら、鯉住君がフォローする。

 

 

「あー……それは勘弁してください……

これ以上目立ってしまうと、色んなところから目をつけられてしまいますので……」

 

「ではAdmiral。水族館と生け簀の建造を進めても、問題ないわよね?

いつから動き始めるのかしら?」

 

「いえいえ……そもそもそんな巨大施設なんて造れる資金ありませんし……」

 

「資金?何を言っているのかしら?

fairy(妖精)に頼めばいいじゃない。

ほら、アナタのお供のfairy達もやる気満々みたいよ?」

 

「えっ……?」

 

 

彼が気付かないうちに、いつもの妖精さん3人が、ふよふよ浮いていた。

 

頭にはねじり鉢巻き、両手にはノコギリとノミ、カラフルな法被を着て、鼻息荒くドヤ顔している。

どう見てもやる気満々だ。

 

 

「おい、お前ら……まさか……!?」

 

 

(ごちゅうもんいただきました!)

 

(ひさしぶりのおおしごと!)

 

(さすがにきぶんがこうようします!)

 

 

「まだ確定事項じゃないから!

ちょっと落ち着きなさい!その大工道具を手から離しなさい!!」

 

 

(もうておくれです!)

 

(さいはなげられた!)

 

(くーりんぐおふは、みたいおうです!)

 

 

「お前らぁ!こういう時だけやる気満々になるのはやめろォ!!

なんでそんなにやる気なんだ!?

いつも俺をからかうくらいしかしないじゃないか!?」

 

 

((( こうはいたちには、まけられない! )))

 

 

「なに英国妖精シスターズに対抗意識燃やしてんのォ!?

そのやる気はもっと別のことに使ってくれない!?」

 

 

こうなると最早、彼の言葉でも抑えられない。

というか、元々あまり制御なんて利かせられないのだが……

 

 

((( とつげきじゃーっ!!! )))

 

 

フワーッ!!

 

 

「アハハッ!すごいわねAdmiral!貴方fairyと話ができるの!?

ますます気に入ったわ!私の主はやはり、貴方しか居ないようね!」

 

「アンタの様子見てると、もうあの子たち、抑えられないみたいね……」

 

「ゴメンな叢雲……」

 

 

すんごい楽しそうに笑うアークロイヤルと対照的に、あきらめムードなふたり。

 

妖精さんたちは、やる気に任せて退室してしまった。

もう止まらないし、止められないのだろう。

というか、細かい話なんてしなかったのに、水族館とか生け簀とかが、どういうものかわかるんだろうか……?

 

 

「はぁ……まぁ、もう起こってしまったことは仕方ないです……必要経費だと思って諦めます……

何が完成するのか予想できないのが、心底恐ろしいですけど……」

 

「細かい調整は私がしてあげるから、安心なさい」

 

「お任せしますね、アークロイヤルさん……」

 

 

時間は過去に巻き戻せない以上、起こったことをいい方に解釈するしかない。

 

そうだ、水族館と生け簀という2つの施設を造ることで、欧州で暴れていた彼女を満足させることができるんだ……

そう考えれば、コスパ最高な投資だったと言えなくもないのでは……?

 

 

「それと私、料理もしてみたいのだけど。

ここの料理長は誰なのかしら?和食というものを作れるのかしら?」

 

「あ、ああ……ちょっとショッキング過ぎて、料理をしてみたいって言ってたの、忘れてました……

ここでは重巡洋艦の足柄さんが料理長をしてくださってます。

和食に興味があるんですか?」

 

「そうね。和食はジャパニーズ・トラディショナル・フードなのでしょう?

ここはイギリス領だったパプアニューギニアらしいけど、日本海軍に居るのだから、和食を習得してみたいというのは、おかしい話ではないでしょう?」

 

「それは、まぁ、そうですが……しかしですね……」

 

「? どうしたの、Admiral?」

 

「言いづらいことですが、和食にはですね……

その、貴女の尊敬する魚を使った、魚料理というものが数多くありまして……」

 

 

アークロイヤルが魚類を異常なまでに崇め奉っているのは、当然把握している。

だからこそ魚料理などさせることはできない。

 

魚を切り刻んだり、釜茹でにしたり、果ては踊り食いなんてのもあるくらいなのだ。

それを知った彼女が激怒してしまったら、バッドエンド不可避である。

 

しかしそんな鯉住君の危惧に反して、アークロイヤルの反応はサッパリしたものだった。

 

 

「何を言っているのかしら?

そんなこと知っているに決まっているでしょう?

その程度の知識ならあるわ」

 

「え、えぇ……?

てっきり『崇高な魚を料理するなんて、人類には許されない!』なんて言うと思っていました……」

 

 

そんな提督の言葉を聞き、呆れた顔で返答するアークロイヤル。

 

 

「あのねぇ、Admiral……私のことをなんだと思っているの?

魚類の素晴らしさは留まるところを知らないわ。そんな狭い了見で、彼らのことを見ているわけではないのよ?

魚類の素晴らしさのひとつは、その数の多さをもって、地球の生態系を支えているところにあるわ。

だから他の生物に、その尊い命を提供するのも、魚類の役目なの。

私達は最大限の敬意をもって魚類を調理し、その命をいただくのよ。

実に神聖な行いだわ……それに、なんというか……少し背徳的で……いいのよね……」

 

「あっ……(察し」

 

 

毎度のことながら魚類について語り始めた彼女は、片手を頬に当てながら、うっとりとした表情を浮かべている。

 

これはあれだろう。

あまりにも魚類への愛が深すぎて、『魚を調理して食べる』という行為に、いやらしさを感じているということだろう。

話の途中までは感心して聞いていた鯉住君だが、最後の最後で台無しである。

 

隣を見ると、叢雲はドン引きしていた。

スゴイ表情をしながら、座椅子を後ろに下げ、距離を取っている。

 

 

「そ、そうでしたか……

まぁ、それなら構いません。足柄さんにも話を通しておきますね。

しかし、それだけ魚を愛していながら、魚を食べるということに理解があるとは……

正直甘く見ていました。すみません」

 

「ふふ。Admiralなら私の考え、分かってくれると思っていたわ。

やはり貴方は同志よ」

 

「そ、それはありがとうございます……」

 

 

相手に認められているのに嬉しくないという不思議。

 

 

「魚を食べるというのは非常に意味のある行為なの。人類の原罪よ。

だからこそ、無差別に、自身が食べる以上の殺戮をするというのなら、容赦はしないわ。

特に漁師は許せない人間の職業のひとつね……!

奴らほど、魚一匹一匹の命を軽んじている者どもはいない……!!

世界からいツカ消シテヤラナイト……!!!」

 

 

ズオオッ……!!

 

徐々にヒートアップしてきたアークロイヤルから、どす黒いオーラが溢れ始めた!

焦ってそれに待ったをかける鯉住君。

 

 

「わー!!ストップストップ!!

出ちゃってます!あっちの姿が少し漏れてきてますから!!

正気に戻って!お願い!」

 

「……あら。私としたことが」

 

「頼みますよ……本当に……

あちらの姿で怒り狂われたら、私達には止められないんですから……」

 

「自分を制御できないなんて弱者そのものよね。失礼したわ」

 

 

なんとか元に戻ってくれたようだ……冷や汗で手のひらが湿っている……

 

気を取り直してアークロイヤルに再度尋ねる。

 

 

「……なんだか色々ありましたが、ほかに要望はありますか?

せっかく人類に危害を加えないと約束してくれたんですから、ある程度なら融通利かせますよ?」

 

「もう結構よ。十分だわ。Thank you, Admiral」

 

「そうですか、それならよかったです」

 

 

 

・・・

 

 

 

聞きたいことが聞けたし、無事(?)彼女の希望も満たせた。

本来の目的は達成できたので、もうひとつの目的を果たすことにする鯉住君。

 

 

「……それでは、せっかく私達の艦隊に加入してくれたんですし、歓迎の意味を込めて、ひとつ渡したいものがあるんですが……」

 

「……なにアンタ。いつの間にそんなもの用意してたのよ?

私達には何もよこしていないクセに……」

 

 

ジト目で鯉住君のことを睨む叢雲。

研修終了のご褒美をまだ渡していないので(ケッコン指輪はノーカンの模様)、その事を言っているのだろう。

 

 

「い、いや、用意していたわけじゃないんだ。

彼女は魚好きってことだから、喜んでくれると思って……」

 

 

そう言って1冊の本を取り出す鯉住君。

表紙には『世界の淡水熱帯魚事典』と書かれている。

 

 

「なにアンタその本……魚の事典?」

 

「そう。俺が昔から大事にしてる本」

 

「さっき部屋に戻ったと思ったら、それを取りに行ってたのね」

 

「彼女なら淡水魚は見慣れてないと思うし、喜んで大事にしてくれるとも思ったからね。

俺が高校生の頃に買った本だから、ずいぶん昔のものだけど……

アークロイヤルさん、こんなものしかなかったですけど、いかがでしょう……か……」

 

 

本を渡そうと思ってアークロイヤルの方に視線を向ける鯉住君。

喜んでもらえるか気になっていたのだが、そんな心配は吹き飛んでしまった。

 

何故なら……

 

 

「あ、アド、Admiral……!!

そのひょう、表紙の写真……!!何なの……その、美しすぎる魚はッ……!!」

 

 

興奮しすぎて、両目の瞳孔を開きながら、

ガタガタ震えるアークロイヤルが目の前に居るからだ。

 

 

「え、ええと……これはネオンテトラと言いまして、南米のアマゾン水系に生息する、とてもベーシックな熱帯魚です……」

 

「み、見せてッ!!そ、その本、をッ!!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 

あまりの興奮で言葉に詰まるアークロイヤル。

そんなエネルギー溢れる彼女の頼みなど断れず、本を渡す鯉住君。

 

 

「こ、こんなっ!!こんな美し……美しいッ!!!」

 

 

ペラペラペラッ!!

 

 

「「 うわぁ…… 」」

 

 

もの凄い勢いで図鑑をガン見する彼女に、またしてもドン引きするふたり。

喜んでくれたどころではない。

猫にマタタビ、馬にニンジン。

あまりの興奮で鼻血を流していることにすら、気づいていないようだ。

 

 

「美しいぃ……!!

世界の河川にはッ……こんな……こんな未だ見ぬ魚類たちがッ……!!

フロンティアッ……!シャングリラッ……!!

此処にあったのねッ……!!!」

 

 

 

「……帰ろうか、叢雲……」

 

「うん……」

 

 

すでに自分のワールドに没頭している彼女を背に、いそいそと部屋を去るふたりなのだった。

 

 

 

 

 




ちなみにアークロイヤルの得意料理は肉料理なようです。
イギリス艦ですが、メシウマ艦となります。
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