艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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個別面談その3

元深海棲艦組は、色々と枠組みにとらわれないようです。
精神的にも、物理的にも。


天城(未成空母)

天城はもともと巡洋戦艦として起工されたものだが、建造途中で航空母艦に変更された。
ワシントン海軍軍縮条約で、戦艦・空母の保有数が制限されたが、建造中の戦艦を中止にする見返りとして、各国とも二隻まで建造中止になった戦艦を空母に改造することが認められ、日本では巡洋戦艦として建造中だった「天城」と「赤城」を空母に改造することにした。
しかし、関東大震災で建造中の天城が破損して、同様にワシントン海軍軍縮条約で建造中止が決まっていた戦艦「加賀」が「天城」に代わって空母に改造された。

wikipediaより


第66話

「ちょ、ちょっと!?

天城って言ったら正規空母の……雲龍型2番艦・正規空母『天城』でしょう!?」

 

「あー……そっちにもなれますよ……?」

 

「そっちにもなれるぅ!?」

 

「元々『あちらの』姿では、航空戦も砲雷撃戦もやろうと思えばできましたし……

こっちの姿でもおんなじなんじゃないですかね……ふわぁ……」

 

「そ、そんな他人事みたいな……」

 

 

その後彼女に色々質問し、以下のことが明らかになった。

 

 

・通常時は天城型1番艦・戦艦『天城』の状態だということ

・ちなみに高速戦艦(巡洋戦艦)らしい

・雲龍型2番艦・正規空母『天城』とは、いつでもコンバート可能

・現在装備している艤装は、主砲2門と副砲1門、機銃1機

・それがコンバートすると、艦攻1部隊、艦爆1部隊、艦戦1部隊、高角砲1門に変わる

・なぜかそっちの状態で装備している艦攻は、ソードフィッシュMk2

 

 

……ツッコミどころ満載だが、本人がそうだと言う以上、そうなのだろう。

 

トラックの三鷹少佐のところで交流のあった、翔鶴さんみたいなものなのだろうか?

彼女も正規空母と装甲空母でコンバートできるし……

 

いや、でも、彼女のコンバートは、あくまで艤装(カタパルト)交換という面が大きいし……

艦種自体が丸々変わるなんて、聞いたことがないぞ……

 

あ、一応艦種が変わる艦娘は、千歳千代田姉妹がいたっけか……

とはいえ彼女たちも、そこまでの大転換ではないし……うーん……

 

もしかして聞いたことないだけで、実際は知られていることなのだろうか?

なんだかんだ言って、まだ新米提督だしなぁ……

 

 

鯉住君が混乱しつつも色々考えていると、天城からひとつ提案が入る。

 

 

「そうですね……これ以上説明するのも面倒くさいですし……

実際に見てみますか……?」

 

「見てみるというと……艤装ですか?」

 

「ハイ……部屋にあると邪魔なので、昨日北上さんに倉庫まで運んでもらいました……

実際にコンバートしてみますので、それを見て納得してください……」

 

 

そう言うと天城は、布団の中でもぞもぞし始めた。

怠け者の彼女にしては珍しく、外に出る気になってくれたようだ。

 

 

「ありがとうございます。

わざわざ説明するために、外に出て下さるなんて」

 

「いいですよ……他ならぬ提督のためですし……

こんな素敵な場所と食事を、提供してくれたお礼です……

一肌脱がさせていただきますよ……」

 

「恐縮で……すッ……!?」

 

 

会話しながら、もぞもぞ布団から出てきた天城。

それを見て鯉住君は絶句することになった。

 

 

 

何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとアンタァ!!

なんで何も着てないのよォッ!!??」

 

 

もうすでに彼女は、一肌どころか全部脱いでいたからだ。

 

女性の美しさを極めたと言っても過言でないプロポーション。

それを目にした鯉住君は、石化したように固まってしまっている。

 

一ノ瀬中佐のところでの混浴対局でも、相手はタオルを身につけていたので、ガチの全裸を見るのは実は初めてだったりする。

 

 

「え……?

服なんて着ていたら、布団の気持ちいい感触が味わえないじゃないですか……?」

 

「そういう問題じゃないでしょ!?

人前に出るときにはちゃんと身だしなみ整えなさいよおっ!!

さっき私達が入る前に時間あったじゃないのっ!!

それに……なによその……!!

なんでそんなに痩せてるのに、胸だけ……そんなにッ……!!」

 

「どうしたんですか……?そんなに大声出して……?

訪ねてきたのはそちらからじゃないですか……理不尽ですねぇ……」

 

 

困り顔で腕をL字に組みながら、頬に手をあてている天城。

腕の上に胸がのっかっている。

世界水準越えの九九艦爆が格納庫からはみ出ちゃっている。

 

それに対し、不意打ちを喰らってフリーズする鯉住君と、テンパる叢雲。

 

 

……硬直する彼の頭の中では今、理性と本能が戦っている。

 

こんなすごい光景見逃しちゃいけないけど、叢雲に処される未来しか見えないから、やめとけやめとけ!……というのが理性の声。

 

こんなすごい光景滅多に見られないし、彼女も気にしてないんだから、今のうちに目に焼き付けておいても、かまへんかまへん!……というのが本能の声。

 

大した違いがないようにも感じるが、それはそれ。

理性で目を逸らそうとしても、本能が目を背けることを許さず、その場で固まることになってしまった。

女性経験皆無な彼には、男のサガと女性への好奇心に抗える術はないのだった。

 

 

 

「アンタはぁッ!何をそんなにぃッ!じっくり見てんのよおぉッ!!」

 

 

ガシイィッ!

 

 

「イタッ……ウガアァァッ!!

やめっ……ヤメテッ!!頭が割れるっ!!砕けるっ……!!」

 

 

視界を塞ぎつつ彼に折檻するために叢雲がとった行動は、アイアンクローだった。

艦娘の怪力で頭蓋骨が圧迫され、悲鳴をあげる鯉住君。

 

 

「そんなに!嘗めまわすような視線でぇっ!!

天城のこと眺めてんじゃないわよぉっ!!

そんなに大きいのがいいわけっ!?ホント最低!このクソ提督ッ!クズ司令官ッ!」

 

 

なんか色々混じってる気がするが、彼女には思うところがあるのだろう。

彼が処されるのも仕方ない気がする。

 

 

「悪かった!悪かったから放してえっ!もう見ないからっ!!」

 

「アンタはいつもそうやってっ!!私の心を傷つけるんだからぁっ!!」

 

「そ、それ、どういうことぉっ!?キミには何もしてなくない!?

それに今回は俺のせいじゃないでしょ!?」

 

「やかましいっ!!」

 

 

ギリィッ……!!

 

 

「わ、割れる……!

ストップ!そ、それ以上いけない!

殺傷沙汰になっちゃうから!マジでストップゥ!!」

 

「あらあら……なんだか大変ですねぇ、提督……ふわぁ……」

 

 

 

・・・

 

 

 

その後なんとか叢雲に解放してもらい、天城には制服艤装を身につけてもらった。

 

無事頭が粉砕されることもなく事が収まり、一安心の鯉住君。

心の奥底ではもっと見ていたかったとか思っているが、それを表に出すと事故死不可避なので、無意識にストッパーをかけている模様。

 

 

「さあ、落ち着いたみたいだし、行きましょう……」

 

「は、はい、お願いします……」

 

「まったく、のんびりして……騒いでた私がバカみたいじゃない……

誰のせいでこんな騒ぎになったと思ってるのよ……」

 

 

 

・・・

 

 

工廠へ移動中

 

 

・・・

 

 

 

「聞いた話だとこの辺に……あった……

見てください……これです……」

 

「おお……!これは確かに、戦艦の主砲だ……!!」

 

 

天城が案内してくれた場所を見ると、確かにそこには戦艦艦娘のものと思われる艤装が置いてあった。

この鎮守府には戦艦艦娘がいないうえ、彼も初めて見る艤装であるため、彼女のものだということは間違いない。

 

技術屋として結構マニアックな彼は、初めて見る艤装にテンションが上がっている。

 

 

「それじゃ天城さん!

せっかく来たので、装備してみてもらえませんか!?」

 

「いいですよ……では……」

 

 

提督の言葉を受け、けだるげに艤装を身につける天城。

ものぐさな彼女も、さすがに一度動き出せば、ある程度アクティブになってくれるようだ。

 

戦艦特有の巨大な艤装を身につけた天城は、とてもサマになっている。

 

 

「かっこいい!やっぱり大型艦は迫力がありますね!」

 

「うふふ……気に入ってもらえたようで、嬉しいですわ……」

 

 

人に褒められるという初の体験に、喜んでニコッと微笑む天城。

それとは対照的に、叢雲がブスッとした顔で話しかける。

 

 

「ふ~ん、そう。

前からわかってたけど、アンタやっぱり、私達みたいな小型艦よりも、天城みたいな子の方が好きなのねぇ。ふ~ん」

 

「正直言うとそうだねぇ。

やっぱり大型艦にはロマンを感じるよ。

……あぁ、いや、だからって彼女だけ優遇しようとか、そういうことじゃないんだよ?

そこはほら、個人的な趣味だからさ。

キミたちもみんな同じように大事だから、安心してくれよ」

 

「そういうこと言ってるんじゃ……ハァ……

……まぁいいわ。それでほら、天城がコンバートできるの見せてもらいに来たんでしょう?

さっさとやってもらいなさいよ」

 

「そうだったな。

……それじゃ天城さん、空母になってみてもらえますか?

艤装の交換が必要でしたら協力します」

 

「あ、いえ……すぐに変われますので……では……」

 

 

ピカーーーッ!

 

 

彼女が艦娘化した時と同様、彼女のカラダが眩い光に包まれる。

 

あまりの眩しさに目を閉じたふたりが、目を開けると……

 

 

「はい……これで完了です……」

 

「おー……!」

 

「艤装が、変わってるわね……」

 

 

早着替えならぬ、早換装。

さっきまで背負っていた厳つい戦艦の艤装は、飛行甲板を搭載した空母のものへと変わっている。

 

 

「戦闘中や遠征中は、装備の関係で換装できませんが……

それ以外ではいつでも換装できます……」

 

「はー……アンタ達、本当に何でもありねぇ……」

 

「普通換装って、それなりに艤装の交換とかで手間がかかるんですけど……」

 

「まぁ、私達はどっちの姿にもなれますから……

その感覚で、換装もできちゃうといいますか……」

 

「すごい話ですねぇ」

 

 

 

・・・

 

 

 

天城の換装を見せてもらった後、ふたりは執務室に戻ってきた。

情報をまとめて、大和への報告時に活用するためだ。

 

 

「なんだか色々と凄かったねぇ」

 

「凄かった、ね……アンタ、アレ、思い出してるんじゃないでしょうね……」

 

 

ジト目で提督を睨む叢雲。

 

 

「ち、違うから。天城さんの裸なんて、思い出してないから」

 

「図星じゃないのよ……ホント、最低な男ね……」

 

「す、すまん……」

 

「ハァ……まぁいいわ。

さっさと情報まとめるわよ」

 

「あ、ああ」

 

 

叢雲は紙とペンを用意し、メモ書きの準備を整える。

 

 

「そうだな……まずは……」

 

 

転化したふたりについて、まとめていく。

 

 

まずはアークロイヤルについて

 

 

 

調査結果

 

・無類の魚好きで、漁師が大嫌い。

・視野は広く、魚を食べることについては理解がある。

・ただし、大事に食べないと逆鱗に触れる。

・生け簀と水族館を現在進行形で建築中(提督お付きの妖精さんが実働)。

・実は料理にも興味があり、肉料理が得意。

・深海棲艦の艤装を出すことができる。

 

 

タブー

 

・魚を無下に扱う。

・彼女がやると決めたことを邪魔する。

 

 

 

「まぁ、こんなとこかな」

 

「そうね。どう見積もっても変な奴だけど、話が通じるからなんとかなりそうね」

 

「一番怖いのは、魚を大事に扱わなかった場合かな……気をつけないとなぁ……」

 

「あとはあの人の動きを邪魔することかしらね……

そこはアンタ、信頼されてるみたいだし、大変なことにならないよう、釘刺しとくのよ?」

 

「まぁ、たくさんの人に迷惑かけるようなことはしないだろうから、そこまで心配してないけどね。

いい意味でプライドが高いっぽいし。

なんていうか、自分に甘くないっていうか……厳しいわけでもないけど……」

 

「そこはもう任せるわ。

私じゃ、あの人には敵いそうにないもの。なんかこう、相性的に」

 

「あー……わかる気がするな……」

 

「だったら頼んだわ」

 

「オッケー。それじゃ次は天城さんかな」

 

 

天城について

 

 

 

調査結果

 

・何よりもだらけることが好き。

・それと同じくらい、三度のご飯も好き。

・索敵範囲は半径50㎞。

・出撃に抵抗があるわけではないが、心の準備が必要。

・高速戦艦と正規空母のふたつの姿をコンバート可能。

・裸族。

 

 

タブー

 

・食事を抜く

 

 

 

「天城さんについては、あまり心配なさそうだね」

 

「そうね。アークロイヤルとは違った意味でマイペースだけど、危険ということはなさそう。

仕事もしっかりしてくれるって言うし、ウチとしては全く問題ないわね」

 

「美味しい食事が提供できなくなったら、どうなっても知らない、とは言ってたけど、そんなことにはさせないしねぇ」

 

「もしそんなことになったら、私達だって戦わないわよ」

 

「腹が減っては戦はできないからなぁ。

ま、心配ないでしょ」

 

「ウチでの扱いについては、だけどね。

大和さんへの報告では、色々と頑張るのよ?」

 

「あー……そうだねぇ……」

 

 

驚異の索敵範囲に、これまた驚異の完全別艦種コンバート。しかも一瞬で。

もっというと初期装備はなぜかイギリス製艦載機らしいし、そもそもの話、彼女は元深海棲艦。

 

どれをとっても、異常事態である。

実働性に関しての問題は全くないが、事例報告としての問題は山積みと言ったところ。

 

それを思う鯉住君は、眉間に手を当て、渋い顔をしている。

 

 

「大和さんにはいつもお世話になってるから、できるだけ負担のないように報告をあげたいけど……そうもいかないかぁ……」

 

「そこはもう仕方ないわね……いつも大変な大和さんには悪いと思うけど……

……ん?……ていうかアンタ、大和さんにいつもお世話になってるって、どういうこと?

私達が会ったのってあの時だけだし、普段は高雄さんに報告してるじゃないの」

 

「あー……そういえば言ってなかったか……」

 

「……アンタ、何隠してんのよ……?」

 

 

よからぬ流れを感じて、一気に不穏な表情になる叢雲。

 

 

「別に隠してたつもりじゃないんだけどさ、大和さんとは友達付き合いしてるんだよ」

 

「友達付き合い……?」

 

「そう。お友達。

なんだか大和さん、いっぱいいっぱいでさ。

本音で話し合える友達がほしいってことで、友達になったんだよ」

 

「いつの間に……」

 

「大本営で布団の申請しに行ったじゃない?

あの時だよ」

 

「アンタ……『大和さんは元気になってくれた』とか言ってたけど、実際はそんなことになってたのね……」

 

「元々連絡先も交換してたしねぇ。

メール友達って感じかな。たまに電話もするけど」

 

「はぁ……まぁ、アンタがどんな交遊関係もってようと、私には関係ないけど……

相手は大和さんだから、安心だろうし……」

 

「そうそう。そんな気にすることじゃないよ。

むしろこういう報告しないといけない時に、普段から交流あるお陰で、話をスムーズに進められるだろうし」

 

「……はぁ……」

 

「ど、どうしたんだ?ため息なんかついて……」

 

「ほっといて頂戴。

アンタには絶対わからないから」

 

「お、おう……」

 

 

予想通り色々とあったが、なんとか無事に面談を終えることができたのであった。

 

 

 




大和側から週2くらいのペースで連絡が来るので、鯉住君は律儀に毎回相手しています。
話題は些細なものから軍事機密まで多岐にわたる模様。
さすがに軍事機密関係は、記録に残らない個別回線で通話してます。

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