艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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提督の暴走その1

片っ端からぶち込んだ結果、大変情報量が多くなってしまいました。
読んでいて「アカン、よくわかんない」と思った方は、無理せず天龍ちゃんのように「へー、すごいんだなー」といった反応で、読み流していただければと思います。

ちなみにいつも彼についている妖精さん3人衆は、現場監督として出張っています。
だから彼の傍に居る妖精さんは、今回に関してはいつもと違う面々だと思ってください。




第68話

 

「フフフ!みんな、よく集まってくれた!

これから始まる一大工事にひとり残らず駆けつけるなんて、みんな勘がいいな!

優秀優秀!」

 

「て、提督……一体どうしちゃったんですか……!?

数時間前まではいつもの提督だったじゃないですか!?

なんでそんなにハイになっちゃってるんですか!?」

 

「何故って?簡単だよ、古鷹!!

これから様変わりする鎮守府のことを考えると、落ち着いてなんていられないからさぁ!愉快愉快!ハハハァッ!!」

 

「て、提督がおかしくなっちゃった……!

どうしよう……」

 

 

茫然としている叢雲から情報が引き出せないと判断した古鷹は、直接提督にこの異様な光景を問いただすことにした。

しかし結局、満足できる答えは返ってこなかった。

 

彼女は自身の提督の変貌についていけず、涙目になっちゃっている。

今日は大変なことばかりだ。

 

 

「せっかくみんな揃っているんだし、今から鎮守府土地利用計画について説明するッ!

ホワイトボードに注目!」

 

 

すごい勢いの提督に誰も逆らえず、言われるがままにホワイトボードの前に移動する一同。

あるものは興味津々に、あるものは茫然としながら、あるものは心底不安そうにしながら、またあるものは冷静に情報分析しながら、この状況に臨んでいる、

 

 

「心の準備はいいかっ!?

土地利用計画のコンセプトは『みんなで創ろう楽しい鎮守府』だっ!

これから何をしようとしているか説明するぞー!!」

 

 

パンパンッ!

 

 

彼がそう言って手を叩くと、お付きになっている妖精さんが、ホワイトボードに黒マーカーで色々書き始めた。

 

彼女のヘルメットには『改革本部』の文字が。

どうやらここが、散っていった妖精さんを束ねる本部だということだろう。

椅子も屋根もない波止場の一角だというのに。

 

 

 

・・・

 

 

 

・計画名

 

『楽しい鎮守府改造計画』

 

 

・主目的

 

『自然と一体となりながら、お魚を立派に育てよう』

 

 

・要綱

 

一定レベルの自給自足を念頭に置いた土地改革のための各種工事。

妖精さん印の浄水器から出てくる純水で、各種設備を運営する。

 

 

第1班 『増養殖・農耕班』

 

荒地の農地転用工事

休憩小屋の建造

ミミズコンポスト作成

ため池作成

山葵田作成

渓流魚用(イワナ・ヤマメ辺りを予定)生け簀の作成

 

 

第2班 『旅館改造班』

 

冷水冷却用配管の設置(現在の上水と置換含め)

発酵小屋の併設

養蚕部屋の増設

隣接スペースにプール作成

 

 

第3班 『淡水魚水族館建設班』

 

建物の建造(2階建て)

生け簀からの引水パイプ設置

多数のアクリル水槽の作成・設置

水温別にエリア分割

オーバーフロー施設の作成

排水パイプを港まで延長

 

 

第4班 『製塩加工班』

 

製塩小屋の建設

浄水器からの塩輸送ベルトの作成

製造製品(食卓海水塩)の保管庫建造

余剰塩の海中投棄ベルトの作成

 

 

 

・・・

 

 

 

「「「   」」」

 

 

「ハハハッ!!

やるんなら徹底的にッ!妥協は死ッ!!

みんなで鎮守府を、生産性溢れる素敵施設へと生まれ変わらせようじゃないかぁっ!!」

 

 

(きゃーきゃー!!)

 

(かっこいいーっ!!)

 

(やだ……ほれちゃいます……!)

 

(だいてーっ!)

 

 

言葉が出ないとはこのことだ。

なんだろうこれ。ツッコミを入れるとかいう次元ではない。

彼の頭がどうかしているということしかわからない面々。

 

豪快に腰に手を当て、ガハハと笑う提督を見て、なんも言えねぇ状態である。

 

 

「おぉーっ!!なんだかよくわかんねぇけどスゲェな!

なんか俺にも手伝わせてくれよ!提督!」

 

「まるでお祭りね~。私まで楽しくなっちゃうわぁ。

本当にこれが全部実現したらぁ、この鎮守府、自給自足モデル区画になっちゃうかも~。

有機物循環も完璧だしぃ、ホントに凄いな~。

提督って、す~っごく頭良かったんだね~」

 

「これは……素晴らしいっ……!!

ここまで魚類のことを念頭に置いた施設群を造ろうとはッ……!!

その思慮の深さ……私達が生まれた深海よりも、なお深いッ!!

決めたぞAdmiralッ!!私は貴方に永遠の忠誠を誓おうッ!!」

 

「子日も手伝うよっ!!

鯉住さんや妖精さんたちと一緒に、色々造ってみたいっ!」

 

「うむ!わらわもようわからんが、鯉住殿がやろうとすることじゃ、きっとスゴイことに違いない!

子日よ!一緒に手伝おうぞっ!」

 

「なんだいなんだい!?

海水塩の製造って製塩業でも始めるのかい!?

いやー、それならちょっと分けてほしいねぇ!

つまみの揚げ物に合う塩なら大歓迎だよ!!」

 

 

……いや、一部に関してはテンションアゲアゲだ。

よくわかってない組と、よくわかり過ぎている組がそれである。

 

 

「そうだな……!

これだけじゃわからんメンバーも多いだろうから、俺が直々に現場を案内しよう!

……そこのキミ!

俺がいない間に本部に相談があれば、連絡を入れてくれ!

トランシーバーは持っているか!?」

 

 

(おえらびいただき、こうえいですっ!

こちらが、とらんしーばーですっ!)

 

 

「完璧じゃないか!エライぞ!

ご褒美にアメちゃんをあげよう!!」

 

 

(ははーっ! ありがたきしあわせ!)

 

 

「それじゃ視察に移ろう!みんな、ついてきてくれ!!」

 

「「「 は、はい…… 」」」

 

 

 

・・・

 

 

 

ぞろぞろ……

 

 

彼がまず案内したのは、比較的高所に位置する区画である。

先ほど叢雲と一緒に呆れていた、あの段々になっている更地だ。

 

そこの上段。

そこでは現在魔法のようなスピードで、ため池が造成されている。

 

 

「まずはここに、浄水器から出てきた水を貯める。

低水温の純水では、生きた水とは言えないからなっ!

ここには落ち葉や砂利を敷き詰めるつもりだ!

そうすることで微生物のチカラを借り、ミネラル、有機物を水中に溶かし、同時に水温も多少上昇させる!」

 

 

(たいちょー!たいちょー!)

 

 

「ん?どうした?何か問題があったのか?」

 

 

(『ようぞんさんそのうど』のそくていがおわったです!

けっかは10みりぐらむぱーりっとる!)

 

 

「おぉ!そんなにあるのか!

溶存酸素が10mg/Lもあれば、全く問題ないな!

お前らー!水面撹拌水車は造らなくてもいいぞー!!」

 

 

(りょうかいですー!たいしょうー!)

 

(だいぶしごとへりますねー!)

 

 

「ここはそんなところだな!

個人的には小型草食獣や、水生昆虫の定着なんかも狙っている!

カゲロウやトンボが来てくれれば、生体循環もはかどるからなっ!

さぁ、次に行こう!」

 

「「「 はい…… 」」」

 

 

・・・

 

 

「次はこの中段だ!ここでは、上段から流す水を利用して、山葵(ワサビ)の栽培を行う!

せっかくの冷水、活用しないともったいないからなっ!」

 

「あら。ワサビがあれば、和食のレパートリーも広がるわね」

 

「その通り!新加入の天城からヒントを得たんだ!

(天城山はワサビの名産地です)

これでより一層、アクセントの効いた食事が食べられるようになるぞッ!!」

 

「まぁ……美味しい食事がもっと美味しく……?

それは……素敵ですね……」

 

「比較的貧栄養でも栽培可能なワサビなら、条件にピッタリだからなっ!

では次!」

 

 

・・・

 

 

「ここの下段を生け簀とするっ!

生体としてイワナやヤマメの導入を視野に入れている!

販売するつもりはないから、多少小規模になるが、問題ないだろうっ!

餌の調達の関係もあるからな!それでいいか!?アークロイヤルッ!?」

 

「是非もないわ!Admiral!!

あの淡水魚図鑑で見た、気品ある美しい渓流魚が、私の直ぐ傍にっ……!!」

 

「ハハハッ!それならいい!

もし物足りなくなったら、俺に言え!なんとかしてやる!」

 

「Thank you, Admiral!!

貴方と出会えたのは、運命だったのね!よくわかったわ!!」

 

「そうかもな!

ちなみに餌としては、これから案内するコンポストのミミズや、養蚕の際に出てくるカイコのサナギを利用する!もちろん畑の作物に湧く芋虫も対象だ!

これから収穫することになるタロイモも、でんぷん餌として有効だろう!

あと採卵、稚魚の成育については、これも後程案内する水族館のバックヤードで行う!

水族館はただの娯楽施設にあらず!研究施設でもあるからな!

繊細な作業をするのにはうってつけだ!」

 

 

専門的な話過ぎて全くついていけない一行。

しかしそんな中でも、何か疑問があったのか、龍田が手をあげる。

 

 

「ねぇ提督? ひとつしつも~ん」

 

「む。どうした龍田?」

 

「別に餌を自前で用意しなくても、業者から買ってきちゃダメなの~?

提督ってお魚好きだしぃ、そうすればもっと数を増やせるんじゃないの~?」

 

「おお、いい質問だな。答えは簡単。

市販の餌には手ごろなタンパク質として、肉粉や魚粉が入っているからだ」

 

「別にそれでもいいと思うんだけどな~?」

 

「まぁそこは好みの問題だな。

そもそも肉粉や魚粉を餌にするくらいなら、加工前の肉や魚を食べる方がいい。

養殖はそもそも、3を使って1を作る、非効率的な食糧生産方法なんだ。

なんていうか、それを踏まえて、その点を克服してやらないと、個人でやる意味はないと思う。

美意識の問題だよ。やるからには徹底的に、機能美に溢れる仕組みを作りたい」

 

「あら~ 提督ってぇ、意外とそういうところにこだわるんだ~」

 

「やるからにはな。それに理由はまだあってな。

わざわざ粉状加工するということは、加工前は人間用の食材として適していない、という話でもある。肉骨粉とかはそれに当たるな。

まぁ、それについては業が深すぎて、あまり触れたくはないな……」

 

「? ふ~ん?」

 

「キミたちは知らなくていいんだ。

……これについては終わりっ!さぁ、次に行くぞッ!!」

 

 

・・・

 

 

「どうだ?広いだろう!

ここが一面の畑になる予定だ!」

 

 

次に彼が案内してのは、さっきの3連池のすぐ近くにある更地。

例によって妖精さんたちが均している途中である。

 

だいたい広さは500㎡(10m×10mが5つ。5a)くらいだろうか?

かなりの広さである。

 

 

「なー提督。いったい何作るつもりなんだ?教えてくれよ」

 

「もちろんだ、天龍!

ここでは養蚕のための桑畑を作るとともに、

蕎麦、サトウキビ、大豆、タロイモで輪作(農地ローテーション栽培)をしていく予定だ!」

 

「へー。なんか色々作るんだな。

ちなみに作物を選んだ基準って、なんなんだ?」

 

「桑は、今言ったように、カイコの餌だな」

 

「タロイモは、ここの気候で無理なく栽培できる作物だから。

里芋の代わりにもなる」

 

「サトウキビもタロイモと同様だ。

上質の砂糖が取れればまたまた料理もウマくなる!

それに加えて、砂糖を絞った後の搾りかすを餌とした、草食性魚類の養殖もしくは家畜の飼育も考えている」

 

「大豆は、連作障害を防ぐためだ。

マメ科の作物の根には、根粒菌という菌がいてな。空気中の窒素を土中に取り込んでくれるんだ。それが良い肥料になる。まぁ、輪作の定番だな。

それとついでに味噌も作ろうと思っている」

 

「最後にだな、蕎麦は夕張が食べたいって言ってたからだ」

 

 

「……ふえっ!? わ、私!?」

 

 

まさか自分の名前が出てくるとは思っていなかったので、ビックリして変な声を出してしまう夕張。

 

 

「研修中に、蕎麦を食べたいって言ってただろ?」

 

「い、言いましたけど……そんな前にちょっとだけ口に出したこと、覚えてくれてたんですね……」

 

「ハハハッ!!

夕張は大事で大好きな一番弟子だからな!当たり前だろう?」

 

「あ、ありがとうございます!

……ん? だ、大好きぃ!?」

 

「ああ!もちろんだとも!これ以上ないくらい好きだぞ!

素直で、美人で、笑顔が素敵で、一生懸命な夕張を、嫌いになる理由がない!

妖精さんたちもそう思ってるぞ!」

 

 

(ばりぃちゃんは、がんばりやです!)

 

(めろんちゃんは、にんきものですよー!)

 

(ゆうばりんがめんてしたぎそう、とってもちょうしがいいです!)

 

 

「ほらな?」

 

「し、ししょ……ふえぇ……」

 

 

プシュー……

 

 

「鯉住く~ん。妖精さんが何言ってるか、私達には聞こえないから。

あと破壊力あり過ぎ。夕張ちゃん、頭から煙だしちゃってるじゃん」

 

 

一発轟沈をしてしまった夕張を見て、一斉に彼にジト目を向ける此処のメンバー。どストレートな表現に顔を赤くする第2艦隊のメンバー。

 

この反応の差は、彼のことを知っているか否かによるもののようだ。

 

 

「ああ、そうだったな、明石!

キミたちには妖精さんの声が聞こえなかったか!

うっかりしてたよ、すまんね!」

 

「そこじゃないんだけど、今のキミに何言ってもダメだよねぇ……」

 

 

・・・

 

 

「キミたちがこれから引っ越す艦娘寮、まぁ、旅館だな!

あそこでも大きな工事をしてもらっているぞ!

英国妖精シスターズに陣頭指揮を執ってもらっている」

 

「あの榛名や霧島、お姉さまたちにそっくりな妖精さんですね!

スゴイです!あんな立派な建物を造れるだなんて!」

 

「あの子たちには研修中も随分世話になったからな。

今のウチには欠かせないメンバーだよ。

……それでやっている工事というのが、配管の再設置だ。

元々冷房を使うには貧弱な電源しかないから、浄水器から出る冷水で、旅館全体を冷やしてしまおうというワケだ。

そのために配管を、くまなく床下や壁の裏に通してもらっている。

それと目安として、約10℃の冷水が、配管を出終わるころには25℃程度になっているよう、流量調整してもらっている。

これはあれだな。排水先を同時増設しているプールにしているためだ。

流石にそれ以下の温度では体が冷えすぎる」

 

「ちょ、ちょっと提督!

確かに暑いから冷房代わりにってのはわかりますが、なんでそこでプールが出てくるんですか!?」

 

「なんだ?古鷹はプール嫌いか?」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

「いいじゃないか!ここは暑いんだし、プールのひとつやふたつあっても!

俺もたまに泳ぎたくなるんだけど、ここら辺の海岸は砂浜じゃないから、海には入れないんだよ!」

 

「理由が私利私欲過ぎますぅ!!」

 

「大丈夫大丈夫!

艦娘のための慰安施設ってことで、何とかなるだろ!大和さん優しいし!」

 

「も゛ーーーっ!!

お願いだから、いつもの提督に戻ってくださぁいっ!!」

 

「俺はいつも通りだっ!!ハハハッ!!」

 

 

半泣きで懇願する古鷹を意に介さず、楽しそうに笑っている鯉住君。

誰がどう見てもいつも通りではないが、酔っ払いが酔ってないというようなものなので、誰にもどうしようもない。

 

 

「大井っち聞いた!?プールができるってさ!!

メッチャ楽しみじゃない!?」

 

「そうですね!北上さんと熱い太陽の下でプール……!素敵……!」

 

「プールだって!秋津洲、プールって初めて!

とっても楽しみかも!」

 

「そうね。私も楽しみよ。

今度聡美ちゃんたちを呼んであげようかしら?」

 

 

結構楽しみにしているメンバーもいる模様。

艦娘への慰安という名目も、実は的を得ていたりするようだ。

 

 

・・・

 

 

そんなこんなで鎮守府大開発ツアーはもうちょっとだけ続く。

 

現段階でおなか一杯のメンバーだが、提督の暴走を止められるものはいないのだった。

 

 

 

 




文字数は少ないけどここまで。

情報爆弾を作ってはいけない。反省してます。

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