艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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まだマジメ……だと思います。

早くスナック感覚な話に戻りたい……
次回くらいからもどれるかなぁ……?





第79話

「なんだ……

せっかくアナタが聡美ちゃんと結婚して、横須賀第3鎮守府のみんな、大勝利!!

……って展開になるかと思ったのに……」

 

「露骨にガッカリしないで下さいよ……

そもそも一ノ瀬さんと俺じゃ、つり合いが取れないでしょうに……」

 

 

縁談はあくまで元帥からの一方的なものと知り、肩を落とす足柄。

 

 

「あのねぇ……

アナタがダメだったら、聡美ちゃんと釣り合いの取れる男なんていなくなるわよ?

そもそも聡美ちゃんが結婚できないのも、高嶺の花過ぎて誰も寄り付かないからなんだから。

本人はその気があるのにそんな現状なの。見てて居た堪れないのよ」

 

「それはもうしょうがないでしょう……

高嶺の花というか、背後のプレッシャーがヤバいというか……」

 

「ちょっと!しょうがないとか言わないでくれる!?

聡美ちゃんがどれだけ、来る日に備えて女を磨いてるか知ってるでしょ!?」

 

「す、すいません……」

 

 

実は一ノ瀬中佐の結婚は、横須賀第3鎮守府の全員の悲願だったりする。

 

限りなく不老不死に近い自分たちとは違い、人間には時の進みがある。

女盛りの年頃があまり長くないことを考えると、どうしても応援したくなってしまうとのこと。

 

普段から良くしてもらっているという信頼があるからこそ、こういった空気にもなるというものである。

彼女の鎮守府運営は、実に健全かつ手本となるようなものなのだ。

教本に運営方法が載ってもおかしくないほどなのだ。

 

……内容が将棋一色でなければ、間違いなく教本に載っていただろう。

 

 

「まぁ、落ち着きなさい。

私としては良き話だと思うのだが、こればかりは少佐の意見が最も重要なのだ」

 

「うー……!

鯉住君、今は引くけど、私、諦めないから!

絶対に聡美ちゃんとアナタをくっつけてみせるわ!!」

 

「足柄さん……勘弁してください……ホントに……」

 

 

他の足柄も同じなのかはわからないが、彼女に関しては、目的のためには手段を選ばない節がある。

かなり強めに警戒していないと、いつの間にか縁談が成立していた、なんてことにもなりかねないのだ。

自身の教官であったこともあるので、彼も重々それは承知している。

 

警戒すべきことがまたひとつ増え、胃が痛くなる鯉住君。

 

 

「どうにもすまなかったな。

話が想定外の方向に向かってしまって」

 

「い、いえ、気にしないで下さい……

ところで元帥、何故私なんかに政略結婚の話をしたのですか?

先ほどは何やら、私の階級を上げる必要があるとおっしゃっていましたが……」

 

 

恐る恐る、先ほどの話を蒸し返す。

 

ただの一介の少佐であり、まだまだ経験も浅い自分が、何か重要な計画のキーマンになるということ。

とてもではないが、まったく信じられない。

 

 

……確かに演習前に大和からも言われたように、いくつか功績は残している。

 

転化体ふたりが部下に加わっちゃったことで、意図せず欧州の状況を好転させた。

それ以前にも、建造やドロップ、初邂逅などをやらかした。

 

しかしながら、そもそも転化体のことを表に出せない以上、それに関連したことは功績として残すことは出来ない。

そのうえ残りの功績だけでは、重要な計画の一員として選ばれるには不十分だろう。

 

 

……それでは何故、自分に白羽の矢が立ったのか?

 

全く元帥の意図が読めない以上、話を蒸し返して、もう一度詳しく聞いてみるしかない。

胃が痛くなる気がするが、そうするしかない。

 

 

「そうだな。そこから話すべきだった。

……ここから先は最重要機密であるので、ふたりとも、口外無用で頼む」

 

「え゛っ……? 最重要……?」

 

「わかりました」

 

「あくまで少佐次第だが……

先程話した誰かと少佐が籍を入れてくれれば、今から話す計画は、実現に向けて大きく進むことになる。

それを踏まえて聞いてくれると助かる。

無理強いはしないが。あくまで少佐次第だからな」

 

「は、はひ……」

 

 

俺次第だ、って2回も言われた……

なんともいえないプレッシャーを感じる……

 

 

「籍を入れてくれればですって!

元帥からここまで言われるなんて、もうこれは事実婚じゃないかしら!?

みなぎってきたわ!!早速婚姻届を取り寄せましょう!

聡美ちゃんには私から連絡いれておくから!!」

 

「事実婚って、そういうことじゃないですからね?

一ノ瀬さんに連絡なんてしないで下さいよ……?

絶対に首を突っ込まないでくださいね……」

 

「少佐の言う通りだ。

今から話す計画が、外部に漏れるのは避けたい。

一ノ瀬中佐なら構わないが、第3者に知られる可能性がある行動は避けてくれ」

 

「うぅ~……歯がゆい……歯がゆいわっ!!

……でも仕方ないわね。

なんといっても最重要機密ですもの……」

 

「うむ。理解してくれて助かる。

最重要機密だからな」

 

 

最重要機密ですって。

 

最重要機密って、一介の少佐程度が知っちゃっていいものなの?

 

鼎大将といい、先輩3人といい、その部下の皆さんといい、大和さんといい……

俺に軍事機密を暴露しまくるのが、最近の海軍のトレンドなの?

 

ほら、もう胃が痛くなってきた。

おうちかえって、ぜんぶわすれてねむりたい。

あ、ここがおうちだったっけ……ははは……

 

 

 

・・・

 

 

 

「日本海軍は現在、欧州からの救援要請と、西太平洋における深海棲艦の大規模攻勢対策という、ふたつの大きな作戦を抱えている。

それは先ほど話したな?」

 

「……ええ。把握できているつもりです」

 

「あら、欧州の救援ですって?

そんな話になってたの?」

 

「ああ、さっき足柄さんは居なかったからね。

今欧州では、北大西洋の深海棲艦ボスが、北海にちょっかい出してるらしいんだよ。

アークロイヤルが北海のボスをやってたらしいんだけど、彼女がこっちきてパワーバランスが崩れたんだってさ」

 

「にゃっ!?

アークロイヤルが鳥海と同じで転化体だってのは知ってたけど、海域ボスだったの!?

道理で全然実力がつかめないわけだわ……!」

 

「足柄さんほどの実力でも、底が見えませんか」

 

「全然見えないわね。

鳥海相手に対局してる時と同じ感じ」

 

「あー……そのレベルですか……流石は欧州の海域ボスですね……

ホントになんで、俺みたいな普通の奴についてくる気になったんだろ……?」

 

「「 普通? 」」

 

「なんでふたりそろって疑問形なんですか……」

 

 

足柄はともかく元帥にまで変な奴扱いされ、ガックリと肩を落とす鯉住君。

彼を『普通の人』扱いしてくれる相手は、すでにどこにもいないのだが、そのことに彼はいつ気付くのだろうか?

 

 

……そんな感じで話が脱線してしまった。

このままでは話が進まないので、路線を元に戻す元帥。

 

 

「そう。

その実力者であるアークロイヤルから、先ほど話を聞いてな。

欧州における、深海棲艦の動きの裏を取ることができた。

真実は深海棲艦同士の小競り合いが起こっているだけで、人類をどうこうしようということではないようだ」

 

「あら。それなら安心ね」

 

「うむ。その通り。

ただし、こちらがそれを知っていると公表することが出来ない以上、それを踏まえた行動をとらなければいけない。

日本海軍が緊急で対応しなければならないのは、こちらの案件だな」

 

「……オリーヴィア提督に伝えてあげたいんだけど、それは大丈夫かしら?」

 

「ああ。ローマ君の古巣のことか。

口外しない、情報の出どころは伏せる、この2点が守れるのならば構わない」

 

「あぁ、よかったわ。

地中海は激戦区だから、普通の海域維持でも大規模作戦並みらしいのよね。

そんな状況で遠征なんてできるわけもないし、実情くらいは知ってないと、やってられないでしょうから」

 

「自然な流れとしては、ローマ君経由での伝達が良いだろう。

機密漏洩と捉えられない程度で頼む」

 

「了解」

 

 

さらっとローマの名前が出てきた事に、疑問を感じる鯉住君。

彼女には研修中に随分お世話になったので、彼もよく知っている艦娘なのだ。

 

一介の鎮守府所属艦娘が、元帥と知り合いというのもおかしな話だ。

交換留学ということなので、その手続きの際に面識があったのだろうか?

大本営も同じ横須賀鎮守府なので、顔合わせする機会が多いのだろうか?

 

本題から逸れるのはいただけないが、どうしても気になり聞いてみることにした。

 

 

「あの……元帥はローマさんとお知り合いなのですか?」

 

「……うむ……知っていると言えば知っている」

 

 

……なんだか歯切れが悪い。

どんなことでもスパっと話す元帥らしくないなぁ。

 

そう思っていたところ、足柄から補足が入る。

 

 

「あら、提督は知らなかったの?

元帥は私達のファンクラブの一桁ナンバーよ?」

 

「……え?」

 

「……足柄君。その話は、元帥としてはすることができない」

 

「ああ、そうだったわね。

『本業は一切関与させてはならない』だったかしら?

鮫島総理もめんどくさい決まり作ったわねぇ。

ま、メンツがメンツだし、仕方ないというのはわかるけどね」

 

「……とにかくその話はここで終わりだ。本題に戻るぞ。

それでいいな?少佐」

 

「は、はい……」

 

 

第3よこちん将棋会ファンクラブは、とんでもないメンバーで構成されている。

そのことは知っていたが、まさか元帥まで会員だったとは……

 

しかも何千人といる中での一桁ナンバーとか、ガチ勢じゃないか……

 

これ以上この話題を広げることは、盛大な藪蛇になることを理解し、元帥の指示に従う鯉住君なのであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「……おほん。

日本海軍が現在抱えている作戦は、その2件。

しかしそれとはまた別に、全員の同意を得られているわけではないが、大きな目標をひとつ定めている」

 

「大目標というやつですか?」

 

「うむ。その認識でよい。

その話の前置きとして、ひとつ聞かせてほしい。

……ふたりは『ハワイに深海棲艦の本拠地がある』という噂を聞いたことがあるだろうか?」

 

「ああ、聞いたことがあります。

ネットで定期的に出てくる都市伝説ですよね」

 

「私も知ってるわ。

有名なコラージュ画像も見たことあるわよ」

 

 

 

 

 

インターネットの匿名掲示板では、定期的にこの話題が上る。

 

『ハワイは全ての深海棲艦を統べるボスに支配されている!

そしてハワイにいた人間はまだ生かされていて、深海棲艦の指揮下に置かれている!

その証拠がこの写真だ!!』

 

こんな内容に、一枚の写真が添えられる。

 

その写真は、ハワイを写した衛星写真であり、

ハワイ本島を中心に、周辺海域一面に広がる深海棲艦の群れを確認することができる。

 

さらに解像度を上げると、その写真には衝撃の光景が見られる。

ハワイ本島の海岸に、姫級と思われる深海棲艦に首を垂れる、原住民のような恰好をした人間達が見て取れるのだ。

 

 

……しかしこの写真、色々と疑問が残る。

 

 

そもそもハワイと通信が途絶えたのは、深海棲艦出現時。10年前。

隔離された島で、文明に頼り切った現代人が、そんなに長期間サバイバル出来るとは思えない。

そして深海棲艦に共通する『人類に対する憎しみ』も踏まえると、人類がまだ生存している可能性は限りなく低い。

 

 

そしてそれを前提にして考えると……

 

 

誰がそんな非現実的な話を語りだしたのか?

 

そもそも人間を支配する、などという回りくどい事をする深海棲艦がいるのか?

 

現在ハワイの衛星写真を見ると、深海棲艦の姿はぽつぽつとしか見られない。

そしてハワイ本島は廃墟が写し出されるばかりで、人っ子ひとり確認できない。

あの写真が真実だとするなら、オンタイムの衛星写真はどう説明するのか?

 

 

このような話し合いが毎度毎度起こり、結局は

 

 

『写真はコラ画像。噂はただの都市伝説』

 

 

という結論に落ち着くことになる。

 

 

 

 

 

「ふむ。それを知っているなら話が早い」

 

「ええと……その都市伝説が、何か関係してくるのでしょうか……?」

 

「……先ほど私は、今から話す件は最重要機密だと言ったな?」

 

「え、ええ……」

 

「最重要機密というのはそれだ」

 

「「 え……? 」」

 

 

 

「既に君たちも知っていることだ。

 

『ハワイに全ての深海棲艦のボスがいるという都市伝説は真実』

 

これが最重要機密だ」

 

 

 

「「 ……ええええ!!!??? 」」

 

 

 

驚きのあまり叫び声をあげるふたり。

 

それもそのはず。

あんなに胡散臭い都市伝説が、実は本当だったというのだ。

 

とても信じることなどできないが、それを元帥の口から聞かされた以上、嘘だと切り捨てることは出来なくなった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!

そんな誰もが知っているような話ですよ!?

普通は軍事機密なんて、一般人が知ることなんてできないものでしょう!?」

 

「些細な機密なら少佐の認識で正しい。

しかしな、本当に隠したい秘密は、公開してしまうのだ。

これは昔から行われている手法だな」

 

「ちょっと私も驚いちゃったわ……

あまりにも信ぴょう性がない話だし、てっきり嘘だとばかり……」

 

「諜報活動では、何かを隠そうと思ったら、それを白昼堂々と人前に晒すのが定石だ。

今回もこのやり方に従ったに過ぎない。

結果として誰ひとりこれを真実と捉える者は出てこず、居たとしても陰謀論者として認識される。

……君達も、これが真実とは信じられなかっただろう?」

 

「はー……おっしゃる通りで……

ということはあの写真は……」

 

「想像の通りだ。

世間でコラージュ写真として出回っている写真が真実であり、現在インターネットで閲覧できる衛星写真こそが、加工済みのコラージュ画像なのだ」

 

「……狐につままれたような話ね」

 

「『秘密というのは、大事に大事に、人目に触れない金庫に隠されている』。

誰もがそう考える。

その思考の穴こそが、最も発見されにくく、最も堅固な『金庫』となるのだ」

 

「そ、そうなんですね……

なんだか世界の闇を見てしまった気分です……」

 

「人間を知れば知るほど、こういった事もわかるようになっていく。

少佐はまだ若いのだ。こういった経験を積んで、成長していけばよい」

 

「私もまだまだ未熟だってこと、思い知ったわ……

一歩前に進むための、大事なヒントを得られたかも……!」

 

「それはなにより」

 

 

自分の常識が壊れる経験を、またひとつしてしまった鯉住君。

何とも言えない表情をして固まっている。

 

そんな彼を見つつ、元帥は事もなげに話を続ける。

 

 

「……それでそのハワイの深海棲艦についてだが、我々は彼女とコンタクトを取ろうと考えている」

 

「えっ……!?

なんでわざわざそんな危険な真似を……?

こう言っては何ですが、日本とハワイは地理的に離れているし、メリットは薄いのでは……?

というか、出撃でなく、コンタクトを取る、ですか……?」

 

「うむ。少佐の意見は尤も。

実際大本営内でも、少佐と同様の意見が大勢を占めるため、

私の意見は相手にされていない」

 

「ですよね……

それでも元帥は、それを実現しようとしているのですか……?」

 

「そうだ。

正確にいえば私だけではなく、呉鎮守府の鼎君、ここラバウル基地の白蓮君、トラック泊地の尼子君。パラオ白地の平君が、賛同してくれている。

しかし他の将官からは『論外』と切り捨てられてしまっているな」

 

「そんな淡々と……」

 

 

自身の方針が歯牙にもかけられていないというのに、この落ち着きよう。

元帥がいくらそういった性格とはいえ、何かあると考えるべきだろう。

 

 

「確かに日本にメリットがあるかと言えば否と言うしかないうえ、

『コンタクトを取る』という目的の出撃では、同意を得るのに無理がある。

しかしこの作戦は、なんとしても実現しなくてはならない」

 

「な、なぜそこまでして……

そんな荒唐無稽とも言える作戦を思いついた理由は、いったい何なんですか……?」

 

「それはまだ伝えることができない。

何故コンタクトを取ろうとしているのか、そしてそれが成功したらどうなるのか、それについても同様に伝えられない。

……だが、人類が今の状況を打開する、最も重要な一手となるのは確実だ。

少佐はこの話を聞いて、どう思うだろうか?」

 

「それは……」

 

 

 

怒涛の情報ラッシュに考えがまとまらない。

突拍子もない話に現実感が全くわかないのだ。

 

……こういった時は、自分が思ったことをそのまま口に出すのが一番。

幸いにして、それが許される相手だということもある。

 

少しの逡巡の後、口を開く鯉住君。

 

 

 

「……少なくとも、人類の未来のためになるというなら、実行するべきだと思います。

しかしその作戦が多大な犠牲を伴うもので、艦娘の皆さんに大きな負担がかかるというのならば、賛成できません」

 

「鯉住君……貴方、またそんなこと……」

 

「違いますよ、足柄さん。

貴女達のことを籠の鳥扱いしようとか、そういうことじゃないです。

艦娘の犠牲の上に成り立つ人類の繁栄なんて、偽物だと思っているだけです。

 

……キミたちを使い捨てて、人類が一歩前に進む。

それはつまりキミたちのことを、『使い捨ての道具』扱いしているのと同じだ。

キミたちは人間ではないけれど、道具でもない。

もう軍艦だった時とは違うんだ。

ひとりひとりに意思がある、人間とそう変わらない存在なんだよ。

 

そんな友好的な隣人を、自分たちと多少違うから、都合よく言うことを聞いてくれるからと言って『道具扱い』した挙句、それが無かったかのように忘れ去るくらいなら、人間はこのままでいい。

 

……新しい歴史はキミたちとともに創るべきなんだ。

もっと言えば、深海棲艦まで含めたうえで、一緒に創っていくべきなんだ。

人類だけしか見えていない奴に……俺は人類の運命を任せる気はない」

 

 

真剣な顔で、鯉住君は足柄に向かって言い切る。

 

いつも控えめな彼にしては強い口調だ。

それだけ今の意見が彼にとって譲れないものであり、今の彼を形作っている考えでもあるということなのだろう。

 

 

「……そう。そうよね。……ありがとう」

 

「当然のことですよ。普通です。それが普通。

……ということで元帥、手放しで賛成できるとは言い切れないのですが……

……元帥?」

 

 

無意識に足柄にすごいこと言った鯉住君であるが、元帥からの質問に答える途中だった事を思い出す。

 

深海棲艦で埋め尽くされる海域に突っ込む以上、犠牲はかなり出てしまうことだろう。

あまり意に沿えるとは思えない意見を口にしてしまったため、恐る恐る様子をうかがう。

 

 

「……フフフ」

 

「げ、元帥……?」

 

「あぁ、ようやく鼎君が君のことを『少なくとも自分以上にはなる』と言っていた意味がわかった。

……もちろん艦娘の犠牲を出さずに作戦は遂行するつもりだ。

安心してほしい」

 

「そ、そうですか……それなら作戦には賛成です」

 

 

常に平静な元帥が笑っているのを見て、面くらってしまった。

鼎大将からの謎の高評価はいつものことだが、まさか元帥にまでその話をしているとは……

 

自分の知らないところで話が大きくなっていると知り、先ほどから少し収まっていた胃痛が再発してきた。

 

 

「うむ。それならば、先ほど縁談を切り出した理由も理解してくれるだろう。

多数の同意が得られない作戦。ならば実力で黙らせるしかない。

この作戦に参加する者は、少なくとも将官で固めねばならんのだ」

 

「そ、そういうことだったんですね……」

 

「そうだ。

当然ではあるが、姻戚となっただけで地位を上げられるはずもない。

が、しかし、その状態ならば、一介の提督ではなく実力者の近縁と見られる。

周りからの見る目が変わり、昇格も容易くなるだろう」

 

「あー……」

 

 

 

……つまりこういうことである。

 

 

実行すること自体が無理難題な作戦を強行するために、実力と階級を兼ね備えた人材が必要。

 

先ほどの演習で大本営第1艦隊に肉薄した鯉住少佐なら実力は十分。

足りないのは実績と階級だけ。

 

実績については、非公開なものを含めて考えれば、将官でも出せないようなものが揃っている。

これから活躍の場を与えれば、いくらでも積むことができるはず。

しかし昇級は、実績を積んだからといってすぐに行えるものではない。

 

そこで考えられる裏技。

実力者と政略結婚することで、強引に周囲の評価を上げる。

 

それには元帥とつながりができるお孫さんとの結婚か、

大本営筆頭秘書艦として活躍している大和との結婚、

そして、鼎大将と深いつながりがあり、本土大襲撃の立役者である一ノ瀬中佐との結婚が、彼の人脈も考えると現実的。

 

 

 

……鯉住君にとっては、完全に寝耳に水の案件だ。

なにせ今回の視察は、自分のやらかしに対するお叱りと、転化体についての確認程度だと思っていたからだ。

 

まさかまさかの大抜擢。

小市民的なメンタルを持つ彼には、まったく飲み込めない話だ。

 

 

「君の年齢からすると、年が近い、20代中盤から30程度の相手である方が良いと考えた。

だから君と交友関係にある一ノ瀬中佐か、大和君との縁談を薦めたかったのだが……」

 

「だ、だが……?」

 

「先ほどの話を聞いて、

君にこそ、私の孫娘を嫁がせてやりたいと思うようになった。

どうだ?自慢の孫だ。真剣に考えてみないか?」

 

「うえぇ……!?

え、ええとですね……お孫さんの気持ちもあるでしょうから……

その話はお断りさせて……」

 

「ダメよ!やっぱり鯉住君は、聡美ちゃんと結婚するべきよ!!

元帥といってもそこは譲れないわ!

聡美ちゃんを幸せにできるのは、彼しかいないのよ!!」

 

「あ、足柄さん……話がややこしくなるので……」

 

「一ノ瀬中佐には他の将官との縁談を持ちかけても良い。

それならば足柄君の心配することにはならないだろう?

だからここはひとつ、孫を紹介させてもらって……」

 

「それじゃダメよ!

いくら元帥とはいえ、彼以上に聡美ちゃんを幸せにできる相手を、連れて来ることができるとは思えないわ!

だから聡美ちゃんに今すぐ連絡して……!!」

 

「いや、しかしな……」

 

「譲れないわ!」

 

 

 

やめて……ヤメテ……

ふたりとも……私のために争わないで……

 

 

ハイライトさんがどこかへ行ってしまった遠い目をしながら、

一昔前の少女漫画の主人公のようなセリフを、脳内でリピートする鯉住君なのであった。

 

 

 

(やれやれ。またふらぐをたてたのですか?)

 

(とんだおんなのてきですね)

 

(こうなったら、ぜんいんめとるしかないですね)

 

(それはめいあん)

 

(かんむすとびじんでできた、すてきなはーれむ……)

 

 

((( はーれむきんぐ・こいずみ…… )))

 

 

 




ちなみに彼はこの話を『今はまだ答えられない』という曖昧な返事で濁した後、元帥に鎮守府案内をしました。

鎮守府に似つかわしくない施設群を見て、元帥は大層驚いていたようで、『やはり君しかいない』と、固めてほしくない決意を固めてしまったようです。



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