艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ちょっと毛色を変えてみたうえ、長くなっちゃいました。
読みづらかったら申し訳ありませんm(__)m


ハイパー北上様によるあだ名一覧

叢雲……ムラっち
夕張……バリっち
古鷹……フルちゃん
天龍……天龍
龍田……たっちゃん
秋津洲……アッキー
足柄……足柄さん
明石……明石さん
初春……はっちゃん
子日……ねのっぴー
アークロイヤル……あーちゃん
天城……あまぎん





第86話

本日は快晴なり。絶好の出撃日和だ。

いつもの波止場には、提督含め7名の人影が見える。

 

 

「今日は見事に晴れたから、予定通り難しい海域に出向こうか。

艤装もしっかりメンテしておいたからね」

 

「ありがとうございます!提督!」

 

「フフフッ!久々の戦闘……腕が鳴るわねっ!

私を楽しませてくれる相手はいるのかしら?

行くぞ天城!Swordfish Festival(ソードフィッシュ祭り)といこうかっ!」

 

「ふわぁ……今日の私は戦艦ですよ……?

そんなことより、私としてはさっさと終わらせて、布団に戻りたいです……」

 

「なんていうか、だいぶアクの強いメンツねぇ」

 

「うふふ~。5-5だってぇ。

頑張りましょうね~?天龍ちゃん」

 

「っしゃー!!腕が鳴るぜぇ!!

俺が旗艦なんて、さすが提督、わかってるじゃねぇか!」

 

 

 

本日の作戦はこんな感じ。

 

 

・目標

 

「レベル5特務海域(5-5)の解放」

 

 

・戦力

 

旗艦

軽巡洋艦『天龍改二』

 

随伴艦

軽巡洋艦『龍田改二』

戦艦  『天城』

重巡洋艦『古鷹改二』

重巡洋艦『足柄改二』

正規空母『Ark Royal』

 

 

戦力的にはぶっちゃけ過剰も過剰である。

これに加えて鯉住メンテ班の手が入った艤装を装備しているため、鬼に金棒状態。

 

だから全員緊張感の欠片もなく、のんきなものだ。

今も天城が欠伸をし、それにつられた古鷹が欠伸を嚙み殺している。

 

ちなみに古鷹と足柄が組み込まれているのは、上限突破組の保護者役として活躍を期待されているからだったりする。

本当に厄介なのは深海棲艦ではなく、自由な味方の扱いだったりするのだ。

なんとも言えない話である。

 

 

「まぁ正直苦戦することはないと思うけど、万が一ということもあるからね。

気は抜かないように、そして羅針盤には絶対に従うように。いいかい?」

 

「「「 ハッ!! 」」」

 

 

シュビッっと敬礼するメンバー。

ゆるゆるな鎮守府だが、こういうところはしっかりしている。

 

 

「それじゃ秋津洲がおにぎり作ってくれたから、持って行ってくれ。

たくあんもついてるから」

 

「おー!ひとり3つもあるじゃねえか!」

 

「うふふ~。 私は太っちゃうから1個でいいわ~」

 

「それなら私がもらいますね……もぐもぐ……」

 

「天城さん……もう食べてる……」

 

「ま、いいじゃない。戦艦は大食艦だし」

 

「これがジャパニーズ・オニギリなのね!初めて見たわ!」

 

 

ピシっとした敬礼もどこへやら。

遠足に出向く小学生のようなテンションで、出撃していく面々なのであった。

 

 

 

・・・

 

 

数時間後

 

 

・・・

 

 

当初の予想通り、何の苦労もなくボス艦隊の元へとやってきた面々。

天城のあほみたいな広範囲索敵により、一度も迷わずあっさりと辿り着くことができた。

そのせいか羅針盤にくっついてる妖精さんは、やることなくて暇すぎるためぐっすり寝ている。それでいいのだろうか。

 

ちなみに道中の敵は精強だったが、それはあくまで一般的な鎮守府の一般的な艦隊から見ての話。

いろんな壁を突破した艦娘たちの前では、鎮守府周辺の駆逐イ級と、さして変わらない扱いでしかなかった。

 

……というか実際は、アークロイヤルが深海棲艦に伝わるようなオーラを出して、言外で『こっちに手を出したらわかってるわよね?』という物騒なメッセージを発していたので、大体の深海棲艦はブルブル震えて近づけなかった模様。

特務海域だというのに、戦闘自体がほとんど発生しなかったとかいう、謎の現象が起きることになった。

 

 

そんなこんなで、ついにボス艦隊が目視できる距離まで来た。

 

 

「はー……道中雑魚ばっかりでつまんなかったぜ……

アイツらはちったぁ、歯ごたえがあるヤツらだといいんだけどな」

 

「争いが少ないのはいい事じゃないですか……

弾薬の消費も抑えられますし」

 

「あら~。

古鷹ちゃん、妙高教官みたいなこと言うのね~」

 

「ふわぁ……あまりにも退屈で、私眠くなってきました……」

 

「もうちょっと頑張りなさい。

あの艦隊をどうにかしたら、お弁当にしましょ」

 

「フム……こちらに対して悪意を向けているところをみると、アイツらには知性という知性がなさそうだな。

さっさと沈めて、マグロの回遊を見ながら食事にしようか」

 

 

一応目の前にボス艦隊が居るのだが、この有様である。

 

 

 

……緊張感の欠片もない一行だが、その一方で敵の艦隊には、強力な艦が揃っている。

 

 

旗艦

航空戦艦『南方棲戦姫』

 

旗下

戦艦  『レ級elite』×1

正規空母『ヲ級改flagship』×1

駆逐艦 『ハ級後期型』×2

潜水艦 『ヨ級elite』×1

 

 

「アナタタチガ……憎イ……!

何度デモ水底ニ……落チテイクガイイ……!!」

 

「キャハハハハッ!!」

 

 

南方棲戦姫の怨嗟の声と、狂気じみた戦艦レ級eliteの笑い声が、辺りに響き渡る。

 

その迫力に見あった実力を持つ、かなり強力な編成なのだが……

 

 

「おお。なかなかビリビリくるな」

 

「そこそこ強いみたいね~。

……あっ、せんすいか~ん」

 

 

バシュッ

 

 

……ボゴォゥン……!!

 

 

潜水艦『ヨ級elite』 撃沈

 

 

 

 

 

「ナッ……!?」

 

「さっさと終わらせるわよ。行きなさい、お前たち」

 

 

パタパタッ!!

 

 

何故か深海棲艦の時と同じく、マンタを発艦するアークロイヤル。

 

 

「!!??

コ、ココハ通シマセンッ……!!

全艦、艦載機ヲ射出ッ!!」

 

 

……ブウゥーンッ!

 

 

負けじと艦載機を発艦する南方棲戦姫。

それに呼応して、戦艦レ級elite、ヲ級改flagshipも、大量の艦載機を発艦。

 

 

「あー。この動きだと、練度はあんまりだな。

……オラアッ!」

 

「私もやるわよ~」

 

 

パラララッ!

 

 

ボボウゥンツ!!

 

 

天龍龍田の対空により、発艦したそばから撃墜される艦載機。

かろうじて発射された艦上攻撃機の魚雷も、古鷹、足柄の重巡コンビにより、撃ち抜かれていく。

 

 

「あら、丁寧な魚雷処理じゃない、古鷹。

研修で相当頑張って来たのね」

 

「はい。熊野教官の1時間耐久魚雷処理訓練で、随分鍛えられました」

 

「へ~。

私も聡美ちゃんのところにいた時、呉第1の熊野とは何度か演習したわ。

彼女に見てもらってたのねぇ。

道理でそつがない動きに仕上がったわけだわ」

 

「ありがとうございます……えいっ」

 

 

ボボウゥン!!

 

 

駆逐艦 『ハ級後期型』 2体撃沈

 

 

 

 

 

「クソォッ……!!」

 

「おーい。

降参して、もう悪さしねぇって誓うなら、許してやってもいいぜー?」

 

 

「……舐メナイデッ!」

 

「ッアアアッ!!」

 

 

……ボボボウゥンッ!!!

 

 

南方棲戦姫と戦艦レ級eliteが、激昂して主砲を連射する。

 

しかしその砲弾の軌道はシンプルなものであり、艦隊のメンバーはひょいひょいとかわしていく。

 

 

「キャハハハッ!!」

 

「おっ」

 

 

バシュウッ!!

 

 

砲撃の雨の中、なんと戦艦レ級eliteが、自身も砲弾を尻尾の艤装から放ちながら突撃してきた。

さらに言うと、魚雷も発射しながら。とんでもない神風特攻である。

 

しかも突撃先は旗艦の天龍。

旗艦を潰して一気にアドバンテージを取ろうということだろう。

それを本能でやってくるあたり、さすがはレ級eliteといったところ。

 

しかしながら、相手が悪い。

 

 

「ギャアァAAAHHHッッッ!!!!」

 

「おうおう、随分イキがいいな」

 

 

本能のまま砲雷撃と白兵戦を同時に仕掛けるレ級eliteだが、佐世保でもっとヤバいレ級の世話をしていたこともある天龍である。

なんなくこれを捌いていく。

 

 

「グッ……!!」

 

「どうにもイマイチだなー。

もっと相手の動きの先を読まねえと」

 

「グ……ギャアァァッ!!」

 

「なんて言っても無駄か……おりゃぁっ!!カウンターッ!!」

 

 

ズバアァンッ!!

 

 

天龍ブレードが、レ級の尻尾艤装を切り落とす!

 

 

「ギギッ……!!」

 

「生まれ変わりがあるのかわかんねぇけど、次やる時があったら楽しみにしてるぜ」

 

 

ズシャッ!!

 

 

「ア……アァァ……」

 

 

戦艦 『レ級elite』 撃沈

 

 

 

 

 

「天龍ちゃ~ん、ステキよ~」

 

「なんであの猛攻を、あんなに軽々かわせるんでしょうか……?

意味が分かりません……」

 

「天龍の実力は、ちょっと異次元なところまでいってるみたいね……

私じゃもう相手にならないかも……?」

 

「足柄さんまで、あちら側に行かないで下さいね……?」

 

「古鷹の心労が大変なことになっちゃうものねぇ」

 

「そういうことです……

それにしても、天龍さんも天龍さんですが、アチラもアチラですよね……」

 

 

古鷹の視線の先には、南方棲戦姫の砲撃をハエでも払うようなしぐさ(裏拳)で、いなし続けるアークロイヤルが。

 

 

「クソッ……何故当タラナイノ……!?」

 

「ハァ……殺気がまるで足りないわね。

相手の目を見るだけで『死んだ』と思わせるくらいにはなりなさい。

……Sword fish Shoot !!(ソードフィッシュ射出)」

 

 

片手間でマンタを使い空母ヲ級改flagshipを沈めつつ、どこかから取り出したソードフィッシュ小サイズ(カジキの子供)をぶん投げるアークロイヤル。

小サイズだが、全長1.5m、重量100㎏はある。

レーザービームばりの速度で、敵の砲弾を吹き飛ばしながら飛んでいくカジキ。

 

 

ズギャアァァンッ!!

 

 

それが南方棲戦姫にぶっ刺さる。

 

 

「ッッ!!……アアアァァァッ!!」

 

 

「うっわ……あれ痛すぎるだろ……」

 

「敵ですが、かわいそうになってしまいます……」

 

「zzz……」

 

 

息も絶え絶えの南方棲戦姫。

そんな彼女にアークロイヤルはさらっと言葉を投げる。

 

 

「私ハ……モウ……ヤラレハシナイ……ハズダッタノニ……」

 

「貴様程度の実力で、私にキズをつけられると思うな。

私は Her Majesty's Ship ……女王の艦娘にして、艦娘の女王だ。

……もっとも今は、身も心もAdmiralのものだが。フフッ!」

 

「ウゥ……モウヤダァ……グスッ……」

 

 

カジキがどてっぱらを貫通して、かわいそうな感じになってしまった南方棲戦姫は、黒い煙と共に沈んでいってしまった。

加害者に惚気られるという意味不明な状況に、なんか最期は半泣きになっていた。

そんな可哀そうな彼女を見る艦隊メンバーの視線は、哀れみに満ちていたという……

 

 

 

 

 

……色々普通とは違う戦闘だった気もするが、いまさらな話である。

無事にボス艦隊を撃破し、海域解放達成となったのであった。

 

 

「……はいはい、それじゃ折り返し地点についたわけだし、みんなでお弁当食べるわよ」

 

「足柄さん……こんな感じで、本当に良かったのでしょうか……」

 

「いいんじゃない?結果は同じだし。

細かいこと気にしてたら、鯉住君の相手なんてできないわよ?

知ってるでしょう?」

 

「それはそうですけど……

はぁ……まぁ、しょうがないですよね……」

 

 

常識がまだ残っている古鷹にとっては疑問の残る勝利だったが、無傷の大勝利であるのは事実。

釈然としない気持ちは後で提督にぶつけようと決意しつつ、お弁当を広げることとした。

 

 

「っしゃー!メシだメシ!

もっと戦いたかったのもあるけど、こっちはこっちで楽しみにしてたからな!」

 

「そうね~。

すっごくいい天気だから、ご飯も美味しいだろうな~」

 

「zzz……もしゃもしゃ……」

 

「天城さん……

ついに寝ながら食べられるようになったんですね……」

 

「モグモグ……うむ!うまい!

コメというのも、なかなか良いものだな!

……おっ!!あの光!アジの回遊ではッ!?」

 

「あ! ちょ、ちょっとアークロイヤルさん!

勝手にどこか行かないで下さい!」

 

「大丈夫でしょ。放っておきなさい。

ちょっとしたら帰ってくるわよ」

 

「そ、そうでしょうか……?」

 

 

こんな感じでピクニックを楽しんだ後、何事もなくみんなで鎮守府まで帰ったのだった。

今日もいつも通りの平和な一日である。

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

当然普通の鎮守府では、5-5攻略がこんなに簡単に済むはずがない。

 

というわけで、試しに普通の鎮守府を見てみよう。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

例:ラバウル第9基地(お隣さん) 鈴木誠吾 大佐 直轄

 

 

 

「ついに……ついにこの時が来た……!」

 

「はい!長かったですね!司令官!」

 

 

執務室で感慨にふける彼は、鈴木誠吾(35)。階級は大佐。

そしてその隣で嬉しそうにしているのは、初期艦であり秘書艦の吹雪改である。

 

つい1か月前に彼の鎮守府は通常海域をすべて解放。

それを成し遂げた提督である彼は、2週間前に大佐へと昇進した。

 

そしてすでに解放済みだった、1-5、2-5、3-5に加え、ここ2週間で4-5も解放。

その功績を認められ、つい先ほど白蓮大将から、残す特務海域のひとつへの出撃許可が降りたところだ。

つまり、ついに数ある海域の中でも最難関のひとつ、5-5の解放を進める準備が整ったということになる。

 

 

「ここまで来るのに長かったな……!

5-5さえ解放できれば、残りは6-5のみ……!!」

 

「はい!今まで頑張ってきた甲斐がありました!」

 

「ああ!

……とはいえ、5-5は並大抵の難易度ではない。

それはこれまでの特務海域と同じだ」

 

「はい。存じています。

海域突入時からたえまなく、無数の潜水艦から狙われる1ー5、

索敵力がなければボス艦隊に出会えすらしない2-5、

大型艦を編成して上位の姫級と相対するか、リスクは大きいけど機動力で姫級を避けるかの2択を迫られる3-5、

鬼級が襲い掛かる海域を抜けたうえで、性質の違う陸上型であり上位の実力者でもある姫級を討伐しなければならない4-5……

そのどれもが苦戦、撤退、試行錯誤の連続でしたね……!」

 

「ああ……!今となっては懐かしい……!

毎回キミたちと一緒に顔を突き合わせて話し合い、そのたびに何とか解決してきたな。

……しかし、だ。今回はその時以上に困難な作戦となるだろう」

 

「なんたって……あの戦艦レ級がいるんですもんね……」

 

 

戦艦レ級と言えば、多くの提督から忌み嫌われる存在だ。

 

普通に艦隊行動をとっていたかと思えば、捨て身の特攻を仕掛けてきたりもする。行動が読めないのだ。

 

そしてその脅威は性質だけのものではなく……

 

 

「そうだ。吹雪は実際に目にしたことはなかったな?」

 

「はい。ですが、その脅威は重々承知しています。

ウチのエースである、比叡さんと蒼龍さん、そして那智さんが、口をそろえて『別次元だ』って言ってましたから」

 

「自分も実際には見たことはないが、話に聞くところ、訳のわからない性能をしているらしい。

正規空母並みの艦載機での制空争い、雷巡のごとき先制雷撃、姫級に勝るとも劣らない砲火力……

艦娘であれば、そのいずれか1項目もあれば、鎮守府のエースを張れるだろう」

 

「改めて確認すると、とんでもないですよね……

……でも! 私達ならそんな化け物相手でも、勝利できますよ!」

 

「そうだ、よく言った吹雪!その通りだ!

……それでは鉄は熱いうちに打て、だ!

今から海域解放作戦会議を行うこととする!

主要メンバーへの伝達を頼んだぞ!」

 

「はいっ!」

 

 

・・・

 

 

会議室にて

 

 

・・・

 

 

「良く集まってくれた。これより5-5海域攻略会議を始める。

皆、いつも通り遠慮のない意見を出すように」

 

 

現在会議室に集まっているのは、鈴木提督と秘書艦の吹雪に加え、ラバウル第9基地・第1艦隊のメンバー。

 

 

ラバウル第9基地・第1艦隊

 

戦艦  『比叡改』 練度68

正規空母『蒼龍改』 練度72

重巡洋艦『那智改』 練度65

軽空母 『祥鳳改』 練度58

重巡洋艦『衣笠改』 練度52

軽巡洋艦『五十鈴改二』練度56

 

 

大規模作戦でも前線で活躍できる、実力あるメンバーである。

 

 

「フフフ……!

ついに我が艦隊も、残すところあと2海域か!

貴様の昇進祝いも兼ねて、見事攻略してやろう!」

 

「頼りにしているぞ、那智。

そのためにも隙のない作戦を立てなければならん」

 

「レベル5海域特務エリア……

話に聞く限りですが、レ級eliteがボス艦隊に含まれているとか……」

 

「うむ。その通りだ、祥鳳。

海域突破ですら困難なのに、ボス艦隊は精強を極める強さ。

生半可な戦力では太刀打ちできまい」

 

「ですが、ここまで来れた私達ならどうにか出来るはずですよ!

気合い、入れて!行きますっ!!」

 

「いいぞっ!その意気だ、比叡!

そう!我々には今まで培ってきた経験がある!

キミたちの練度も、大規模作戦で通用するほどになっている!

必ずこの難関海域、突破しようっ!」

 

 

「「「 オーッ!! 」」」

 

 

気炎を上げる艦隊メンバーたち。

つい先日提督が大佐に昇進したこともあり、士気は非常に高いと言える。

 

 

「……それではこれから、海域解放作戦を立てていこうと思う。

まずは情報共有からだ。手元の資料を開いてくれ」

 

 

パラッ……

 

 

「そこに書かれていることではあるが、今から口頭で説明していく。

メモを取りながら聞いてくれ」

 

 

提督の言葉を受け、各自ペンを取り出す。

この鎮守府では会議はいつもこのようなスタイルで行われるため、筆記用具は誰に言われずとも全員持参しているのだ。

 

 

「……まずは海域の情報からだ。

この海域は潜水艦の支配地域があることに加え、多くの敵艦隊に空母が編成されているようだ。

つまりそこの対処を怠れば、ボス艦隊に辿り着くことすらできないだろう」

 

「あら。つまり対潜と対空を厳としろってことね?」

 

「そういうことだ。頼めるか?五十鈴」

 

「あったりまえじゃない!五十鈴に任せて!」

 

 

どんと胸を叩く五十鈴は誇らしげだ。

この艦隊で長らく対潜対空に特化して活躍してきた自負がある。

 

 

「ふふ。頼もしいな」

 

「それじゃ私達空母組は、艦戦多めにしておけばいいかな?」

 

「いや、それはそうだが……

ボス艦隊のこともあるので、艦載機の配分については少し待ってほしい」

 

「そっか。了解」

 

「すまんな、蒼龍。

……では話を戻す。

道中に出くわす可能性のある敵艦隊については、そのようなところだ。

気を抜ける編成はないということだな。

接敵時は燃費を踏まえたうえで、十分に実力を発揮するように」

 

「うむ。当然だな」

 

「次は航路についてだ。

ボス艦隊の根城にたどり着くまでには、2種類の航路がある。

北から向かう航路と、南から向かう航路だ」

 

 

資料に印刷された海域マップを見ながら、話を進めていく。

 

 

「特徴としては、北航路は潜水艦の巣と空母機動部隊の強力な攻撃にさらされる。

そしてなにより、ボス艦隊手前に戦艦レ級の所属する艦隊が陣取っているようだ。

この航路を進むとなれば、大破による道中撤退も頻繁に起こるだろう」

 

「ボス艦隊前に、レ級と一戦交えるのか……

少しそれは避けたいところだな。提督、南航路は?」

 

「うむ。手元の海域マップを見てもらえればわかると思うが、南航路は島沿いに進む航路となる。

この航路の恐ろしいところは、とんでもない数の空母が確認されているため、昼に進軍することは不可能に近いということだ。

よって夜間進軍……接敵時は夜戦となるのだが、夜間は戦艦タ級flagship率いる新鋭戦艦戦隊が巡回している。

こちらもかなり厳しい航路と言えるだろう」

 

「うっわー……

衣笠さんってば夜戦は得意な方だけど、新鋭戦艦戦隊が相手とか……

ちょっと考えたくないかな」

 

「自分も考えたくない。が、どちらかの航路を行くしかないのだ。

皆は今の話を聞いて、どちらが良いと思う?」

 

 

艦隊メンバーをぐるっと見渡す鈴木提督。

この鎮守府では、遠慮せず自分の意見を発言できる空気が出来上がっているのだ。

艦娘からもその方針は好評であり、非常に良い運営ができていると言ってよい。

 

 

「そうですね……私は北航路がいいと思います!

話を聞く限り、予想外な事態が起こりにくいのはこちらの航路でしょう!

夜戦続きでは索敵も十全とはいきませんし、不慮の事故が多発するはずです!」

 

「五十鈴も比叡さんに賛成。

夜戦の不安定さは精神的にも来るものがあるわ。

一晩を通して進軍すれば精神の消耗は激しいもの。

なにより、その航路だと対潜対空特化の五十鈴の出番がないわ」

 

「うーん。出番がないって言うなら、私達も一緒よね。祥鳳?」

 

「はい。6名のうち3名が戦力にならない状態で夜戦というのは、非現実的かと。

確かにボス艦隊と接敵するまで航空戦力の温存は出来ますが、そもそも道中を超えられないリスクの方が大きいでしょう」

 

「衣笠さんも同じかな。

北航路の方が現実的だと思う。夜戦の経験が多いとは言えないしね」

 

「その通りだ。さらに言えば南航路を夜間に進軍した場合、マップから見るに、おそらくボス艦隊と接敵する時は朝方になっているだろう。

夜間警戒を厳としていた状態で、精強極まるボス艦隊と一戦交えるでは、集中力に不安が残る」

 

「うむ。皆の意見は尤も。吹雪はどうだ?」

 

「私からは異論はありません。

実戦経験豊富な皆さんの言うことですから」

 

「わかった。それでは満場一致で北航路を往くこととする」

 

 

ひとまず道中の作戦は決まった。

北航路で接敵する潜水艦隊と空母機動部隊に対処しながら進むというもの。

王道を征く攻略作戦となった。

 

 

「オッケーだよ、提督。

それでさ、艦載機はどうかな?」

 

「艦載機について話す前に、ボス艦隊の確認だ。

先ほど話した通り、目下の最大の障害は、戦艦レ級eliteである。

しかしそれだけではない。

ボス艦隊には空母ヲ級改flagshipが確認されることもあり、制空権争いは熾烈極まるものとなるだろう」

 

「うっげ……空母ヲ級改flagshipぅ……?

それってかなりヤバいじゃん……相当艦戦積んでかないと……」

 

「ですね。戦艦レ級自身も制空権争いに噛んでくるようですし……

道中での艦載機消耗も加味すると、かなり厳しいでしょう……」

 

 

(本当は戦艦レ級elite以上に精強な、南方棲戦姫という化け物が出現するらしいが……

そもそもその姫級が待ち構えている場合であれば、接敵を避けるために羅針盤の針が逸れることだろう。

いくらウチの艦隊の実力が高いと言えど、そのレベルを相手できるほどではない……)

 

 

難しい表情をしている空母ふたりを見ながら、そんなことを考える鈴木提督。

 

とはいえ、遭遇しない相手の話をしても仕方ない。

気を取り直して自身の考えをふたりに伝えることにする。

 

 

「……その通りだ。

だからふたりには、1スロット残して艦戦を積んでいってもらいたい。

残りの1スロットには艦攻を積んでいき、開幕雷撃で護衛の駆逐艦を露払いしてもらえばと思うのだが」

 

「うーん……私もそれでいいと思う。

……ていうかそれで艦戦足りるかなぁ……?

アイツの艦載機搭載数、めっちゃくちゃだからなぁ……」

 

「蒼龍さんの言う通りかとは思いますが……

敵艦に攻撃できないでは、出来ることが絞られ過ぎてしまいます」

 

「自分も祥鳳の意見と同様だ。

キミたちが制空争い以外参加できないとなると、残りの4人で敵艦を沈めなければならなくなる。

護衛の駆逐艦だけでも相手してくれれば、戦況は随分こちらに傾くはずだ」

 

「はーもー……責任重大だなぁ」

 

「無責任かもしれないが……

蒼龍と祥鳳のこれまでを見れば十分に実現可能と踏んでいる。

よろしく頼む」

 

「……そんなこと言われちゃ、頑張るしかないよね。任せてください!」

 

「提督の期待に、見事応えてみせます」

 

 

提督にそこまで信頼を置かれているというのは、艦娘にとってこの上ない喜びなのだ。

やる気みなぎる空母のふたりである。

 

 

「うむ、期待してもらうべきは空母のふたりだけではない。

この那智と衣笠、重巡洋艦の本領を見せてくれよう!」

 

「そうですよ、提督!衣笠さんにお任せ!」

 

「ああ、その意気だ。自分が信じていない部下などいないとも。

……それでは大まかな方針は決定したので、細かい装備について議題を移す。

忌憚のない意見を期待しているぞ」

 

「了解です!」

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

……一般的な鎮守府では、こんな感じで下準備をしていく。

そして何度もトライ&エラーを繰り返し、ようやく海域解放へと繋げるのだ。

 

ちなみにオマケとして、最も逸般的な鎮守府の5-5攻略の様子も紹介しよう。

 

 

 

・・・

 

 

 

例:佐世保第4鎮守府 加二倉剛史 少佐(当時) 直轄

 

 

 

「龍驤さん、ちょっと散歩してきます」

 

「ん?どこ行くん、神通?」

 

「この体に早く慣れるために、5-5まで」

 

「……ちょい待ち。

流石にその体になって3日で単艦出撃はキツイやろ。

一旦司令官に確認してき」

 

「大丈夫です」

 

「司令官にも色々プランとかあんねん。

とにかく話してきぃや」

 

「……わかりました」

 

 

・・・

 

 

「……というわけで、5-5で暴れてきたいです」

 

「うむ。いいだろう。

ただし龍驤の言うことも尤もである。

随伴艦として武蔵とあきつ丸を連れて行け。

最近出撃がなくて鬱憤がたまっているようだから、ガス抜きついでだ」

 

「かしこまりました」

 

 

・・・

 

 

「んっん~♪

ひっさしぶりの出撃でありますなぁ!!

自分の名槍『クロトンボ』がホコリをかぶっていたところであります!」

 

「貴様の槍は、走馬燈から出る影を実体化させたものだろう?

ホコリなど被らないだろうに」

 

「細かいことは言いっこなしでありますよ!武蔵殿!

武蔵殿だって久々の出撃が嬉しいのでありましょう?

口元が緩んでいるでありますよ!」

 

「フフフ……やはり演習だけでは物足りなくてなぁ……!!」

 

「……おふたりとも、今回は私の体の調整が目的です。

あまり暴れすぎないで下さいね?」

 

「わかってるわかってる」

 

「わかってるでありますよ、うふふ!」

 

「……だからひとりで行きたかったんです……」

 

 

・・・

 

 

「お、お疲れちゃん。

どうやった?体はうまく馴染んだかいな」

 

「……武蔵さんとあきつ丸さんが暴れすぎたせいで、消化不良です……」

 

「あはは!そりゃしゃーないな!」

 

「半分以上おふたりに取られてしまいました……ハァ……」

 

「ま、気にしんとき。

いつか存分に暴れまわれる時が来るやろ」

 

「そうだといいんですが」

 

「一応提督には報告しときや。

5-5は一応未解放海域やったはずやし」

 

「そうなんですか?

あんな雑魚しかいない海域をまだ解放してなかったなんて……理由はあるんですか?」

 

「なんやようわからんけど、上からの指示らしいで。

ま、今回あっさり許可が下りたってことは、ホントの話どーでも良かったからかもしらへんな」

 

「……確かにまぁ、どうでもいいことですね。報告に行ってきます」

 

「いってら~」

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

このように、鎮守府ごとに全く毛色が違う。

提督の運営方針が色濃く反映される鎮守府運営は、とても興味深いものとなっているのだ。

 

……今回の話は、そんな違いがみられる一幕の紹介でした。

 

 

 

 




鈴木提督率いるラバウル第9基地のメンバーは、この後無事に5-5解放を達成しました。
何度も道中撤退を繰り返しましたが、最後は那智が2連主砲で戦艦レ級を撃ち抜き、見事勝利できたようです。
祝賀会も盛大に行われ、みんな笑顔で楽しんでいたとか。良かったね。
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