艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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今回のお客さんプロフィール


・戦艦水鬼改(艤装:アンドレ君)

脳筋を極めるとこうなる、というバトルスタイルが得意。
スロット全部に特大口径主砲を突っ込んでいる。
アンドレ君の巨体だからこそ反動を抑えられるので、他の戦艦ではこんなことできない。

なお戦闘はアンドレ君に大体お任せで、本人はガイナ立ちして高笑いするのが役割。
実は本人のスペックも相当高いが、それが発揮される前にアンドレ君が片づけちゃう。彼はとっても優秀なのだ。



・護衛棲水姫(艤装:タッフィー君)

タッフィー君の伸ばした舌ベロを滑走路代わりに、ジェットが羽についた艦載機を射出し、アウトレンジから相手を攻撃する。
下駄履き機みたいな艦載機も射出できるので、ミドルレンジも強い。
とっても器用でマメな性格。

最近はタッフィー君がケホケホ咳をすることが多く、カタパルト(舌ベロ)使用中に咳をしたせいで事故が起こったりした。
その事故のせいで近場で魚雷が爆発し、自慢の白髪がアフロヘアーに。
それを見た戦艦水鬼改に大爆笑されたことは、未だに根に持ってる。




第90話

 

 

 

部下のやらかしの後始末に加え、マンタ君と交わした約束を守るために、お客さんの艤装たちをメンテすることにした鯉住君。

 

目の前で嬉しそうにしているワンちゃんと、礼儀正しくしているマッチョマンがそのメンテ対象。

すっごい期待している。ワクワクしたオーラが出てるもの。

 

 

「ソレデ、はうろんぐ……ドノクライカカルノ?」

 

「うーん……そうですね……

流石にこのおふたりだと、数時間では無理です。

少なくとも明日……程度によっては明後日くらいまではかかりそうですね。」

 

「フーン。ソレジャ、ソノ間ハ適当ニ、ウロウロシテルワ」

 

「えっ」

 

 

……ちょっとそれはマズい。

 

ウロウロしてるってことは、それはつまり鎮守府探検だワーイみたいなことだろう。

そんなことされてしまうと、いくら深海棲艦に慣れている部下たちとはいえ、面喰ってしまうことだろう。

さらに言うと、ウチの転化体のふたりと鉢合わせした暁には、どんな危険な化学反応が起こるか全く予想できない。

 

これはなにかしら対策を講じなければなるまい……

とりあえず、目の前のふたりには話が通じそうだし、直談判してみよう……

 

 

「えーですね……

ちょっとおふたりに確認したいんですが……」

 

「わっつ? 何ヨ?」

 

「別ニイイケド、ナンナノ?」

 

「おふたりに深海棲艦の姿で鎮守府内を散策されるとですね、部下たちが驚いてしまうんです。

ウチのふたりみたいに、一時的にでもいいので艦娘の姿になれないものでしょうか?」

 

「エー」

 

「気乗リシナイナァ」

 

「やっぱりというか、艦娘の姿になれるにはなれるんですね……

……深海棲艦の姿では、人間が近くに居ると気持ち悪いと聞いています。

人間……私がいる空間でその姿だと、落ち着かないんじゃないですか?」

 

「のーぷろぶれむ! 要ラナイ心配ネ!」

 

「別ニ気ニシナイケド」

 

「えええ……???」

 

 

せめて姿だけでもと思って、何とか説得しようと試みたのだが、のっけから出鼻をくじかれてしまった。

 

というかふたりとも、人間に対する嫌悪感をどこに忘れてきてしまったの……?

いや……人類側からしたら、すごくありがたい話なんだけど……

 

 

「えーと……おふたりは人間嫌いではないんですか……?」

 

「ンー、嫌イハ嫌イヨ。間接的ニ、ダケドネ」

 

「か、間接的……?」

 

「わっと あい しゅっど せい(なんて言おうかしらね)……」

 

「人間自体ニハ興味ナイケド、人間ガヤラカスコトハ許セナイノヨ」

 

「! ないすヨ!ソンナ感ジネ!」

 

「やらかすこと……?」

 

「ソ。私達ハダケド、人間以外ノ生物ヲ Holocaust(皆殺し)スルノハ許サナイカナ」

 

「あー……例えば、海洋汚染とかの環境破壊ですか……?」

 

「YES! ソーイウノ駄目ヨ!

見カケタラ髪ノ毛一本残サナイワ!

地面ノ「しみ」カ、海ノ藻屑ニシチャウッ!」

 

「ソウネー。

人間自体ハドーデモイイノ。身ノ程ヲワキマエテレバネ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

お客さんからの新情報ラッシュは続く。

 

 

「ぱわふるナ奴ホド、ソンナ感ジヨネ!

人間ハ居テモ居ナクテモイイケド、余計ナ事スルナラ間引イチャウミタイナ!」

 

「実力ガナイ奴ハ Simple(単純)ナ頭シテルカラ、『トリアエズ人間減ラシトケ』ッテナッテルンジャナイ?」

 

「はへー……」

 

 

どうやら深海棲艦の上位層になればなるほど、人類に対する悪感情は薄れていくらしい。

その代わり理性で判断して『コイツ駄目だわ』となったら、マップ兵器的に掃除する模様。

 

 

そう言われてみれば、アークロイヤルも天城もそんな感じだ。

 

アークロイヤルに関しては、『魚類をないがしろにするから』人類を憎んでいたのだし、

天城に関しては、『知覚範囲で色々とうるさくするから』人類を攻撃していた。

 

ちゃんとふたりには『人類を攻撃する理由』があったのだ。

 

 

……初めての情報に、頭悪そうな声を出してしまう鯉住君。

ちなみにこの情報も人類初獲得である。

 

 

「ダカラコノ姿デモ、別ニイイデショ?」

 

「ワザワザ変身スルノモ億劫ナノ」

 

「そ、そうですか……それじゃ無理にとは言えませんね……

えーと、どうしようかな……」

 

 

どうやらふたりが深海棲艦の姿で鎮守府内を練り歩くのは、確定事項の模様。

こうなったら対処療法的に対策を打つしかない。

 

大惨事鎮守府大戦が起こらないために、いま出来ることは……

 

 

「夕張、ちょっといいかい?」

 

「……」

 

「……夕張?」

 

「……ハッ! はひっ!?なんでしょう!?」

 

「ちょっと頼みたいことがあって。

……叢雲と古鷹に、『鎮守府メンバーに対して、深海棲艦が暫く滞在すると周知して欲しい』って伝えてくれない?

あと今日は非番だけど、明石を呼んでほしい」

 

「あ、はい……」

 

「俺から伝えたら状況説明で時間取られそうだし、叢雲の説教が始まりそうだからさ……」

 

「はぁ……」

 

 

夕張は半分魂が抜けたような状態で連絡を取ってくれた。

電話口から洩れてくる声を聴くに、明石も古鷹もまるで状況がわかっていないようだった。そりゃそうだ。

 

あ、叢雲が声を荒げている。

このままだと俺のスマホに連絡がかかってきそう。電源切っとこ。

……後が怖いけど今の方が怖い。

艤装メンテに取り掛かるのが遅れて目の前のふたりを怒らせるのが、一番怖い。ゴメンよみんな。

 

 

……考えた対処法は、ふたつ。

 

シンプルではあるが、とにかく艤装メンテをさっさと終わらせること。

それには多分戦力になるであろう明石の助けがいる。できれば本日中に終わらせたい。

 

そして、無用な混乱を避けるため、ウチのメンバーに来客があることを伝えること。

アークロイヤルとロングヘアーの彼女が出くわして暴走する可能性もあるが、秘書艦のふたりならうまいこと対処してくれるだろう。

ふたりの実力を信頼しているのだ。丸投げともいうが。

 

 

「それではこちらでもいろいろ準備してるので、しばらくはここに居てくださいね。

……それじゃタッフィー君からメンテを始めさせていただきます」

 

「BOOOッ!! ナンデ『あんどれ君』ガ後ナノッ!?」

 

 

ゴツンッッ!!

 

 

「ヘェアッ!?」

 

 

ブーイングするロングヘアーの彼女を黙らせるため、アンドレ君が拳骨を喰らわせた。

それを喰らった彼女は、ガニ股になって頭を抱えている。

アレは痛い。だって床が凹んでるもの。

 

というか、ご主人が艤装に殴られているんだけど……

いいんでしょうか……?

 

 

「何スルノヨ『あんどれ君』ッ!?」

 

 

ブンブンッ

 

 

アンドレ君はふたつある首を横に振っている。

筋肉モリモリ過ぎて首が隠れているため、正確には頭を振っている、だが。

……どうやらこっちに気を遣って、メンテの順番を遠慮してくれるつもりらしい。

ホントいい子だなキミ。

 

 

「……さて、アンドレ君も納得してくれてるようだし、タッフィー君から見てくからねー。

キミが思ってるより人間は脆いから、噛みつかないでね?

いやホントに」

 

 

バウッバウッ!!

 

 

嬉しそうにブンブンと首を縦に振っている。

尻尾があったらブルンブルン振っているんだろうなぁ。

 

 

「『たっふぃー君』ノコト、任セタヨ」

 

「はい。のんびりしててくださいね」

 

 

メンテを開始する鯉住君。

 

ロングヘアーの彼女はまだ呻いているが、ツインテールの彼女の方はこちらを真剣に見ている。

転化前のアークロイヤル同様の反応だ。彼女も好奇心旺盛な模様。

未知の技術には興味があるのだろう。

 

 

 

・・・

 

 

数分後……

 

 

・・・

 

 

 

「   」

 

「あの……」

 

 

工廠に入ってきた明石は、こちらの様子を見て固まってしまった。

夕張も彼女の気持ちが十分に理解できるので、なんて声をかけたらいいのかわからないようだ。

 

そうなるのも無理はない。

目の前で超強そうな深海棲艦2体に囲まれて、提督が彼女たちの艤装をメンテしているのである。

とはいえ今は、目の細かい紙やすりで犬っぽい艤装の歯磨きをしているので、メンテしているかと言われれば疑問符がつくのだが。

 

 

「……えっと……電話では聞いてましたけど……」

 

「明石さん、お客さんって、あの人たちです……」

 

「実際に見てみると、意味が分からないですね……」

 

「最初っから見てても、意味が分からないですからね……」

 

 

何をしていいのかわからないふたりに対して、明石が到着したことに気づいた提督が声をかける。

 

 

「……お、待ってたぞ、明石。

お前も協力してくれ。ひとりじゃ時間が足りない」

 

「あ、うん……

……って言っても私、あちらさんの艤装なんてメンテしたことないんだけど」

 

「そんなに艦娘の艤装と変わんないから大丈夫だって。

良いからやってみろよ。最初は俺が指示出すから。

……夕張はそうだな……これからこういう機会があるかもしれないし、俺と一緒にメンテしてみようか」

 

「「 はぁ…… 」」

 

 

どこをどう見たら、艦娘の艤装と深海棲艦の艤装が同じに見えるのだろうか?

そしてこれからもこういった機会があるのだろうか?

提督の頭おかしい発言に、ふたりも生返事をするしかなかった。

 

あぁ……興味津々なお客さんの視線が怖い……

 

 

 

・・・

 

 

1時間後……

 

 

・・・

 

 

 

「意外となんとかなるもんですね」

 

「でしょ?夕張くらい実力があれば、上手くやれると思ってたよ」

 

「鯉住くーん、ちょっとバール取って。

この子の外殻を一回剥がしちゃうから」

 

「おう。ほれ」

 

「ありがとっ」

 

 

何故かそこには、提督に従ってイキイキとメンテを続けるふたりが。

 

日本海軍でも5本の指に入るであろう実力者だけあり、どうやらふたりとも深海棲艦の艤装メンテに適応してしまった模様。

 

提督が提督なら、部下も部下である。

 

 

人手が3倍になったおかげで、とんでもないスピードでメンテを進めることができるようになった。

この調子なら、アンドレ君の様子にもよるが、夜にはメンテを終えることができるだろう。

なんとか「突撃!隣の鎮守府訪問」は、日帰りで済みそうだ。

 

 

そんなことを考えていると、当事者である突撃してきたロングヘアーの彼女が、なにか話しだした。

 

 

「フワァ……なっしん とぅ どぅー(やることないわねぇ)……

チョット きる たいむ(暇つぶし)シテクルワ」

 

「……あ、ちょっと待ってください」

 

「わっつ(何よ)? 時間カカリスギヨ。モウ待チキレナイワ!」

 

「ちょっとだけ待って!

今から案内役をお呼びしますので、もうちょっと座っててください!」

 

「エー?早クシテヨネー。はりーはりー!」

 

「急かさないで下さい……」

 

 

深海勢の実力者って、みんなこんな自由な感じなのだろうか?

 

 

「私トコイツヲ一緒ニシナイデ」

 

 

え?俺今何もしゃべってないよね?

何?このツインテールの子、エスパーなの?

 

 

「顔ヲ見レバワカルヨ、ソノクライ。

コイツハ堪エ性ガナイカラ、サッサト呼ンダ方ガイイヨ」

 

「あっはい……アドバイスありがとうございます……」

 

 

やっぱりエスパーじみてるじゃないか……

初対面なのに顔見たらわかるとか……

 

ま、まぁいいや。

秘書艦ふたりじゃ精神がもたないだろうから、消去法で足柄さんにお願いしよう……

 

 

「えーと、足柄さんの番号は……」

 

 

プルルルル……

 

 

 

・・・

 

 

数分後……

 

 

・・・

 

 

 

「   」

 

「なんかスイマセン……」

 

 

急いで駆けつけてくれた足柄だが、やっぱりこの光景を見て固まってしまった。

そりゃそうだろう。

 

 

「え……この、なんていうか……お客さん?を案内すればいいの……?」

 

「おっしゃる通りです」

 

「……大丈夫なの?これ?

このふたり、全っ然、底が見えないんだけど……」

 

「アークロイヤル、天城コンビと2対2の勝負して、ほぼ互角だったようです……」

 

「NO!言ッテルデショ!?

アレハ ばっど らっく(不運)ダッタダケヨ!

みー達ノ方ガ強イノ!!」

 

「ああ、すいません……」

 

「もちろんそれって、ふたりが深海棲艦だったころの話よね……?

なんでこんなことになってるの……?」

 

「マンタ君のお友達紹介です……」

 

「ちょっとアナタが何言ってるかわからないわ……」

 

 

そんなことを言いつつも、なんだかんだ足柄さんは、ロングヘアーの彼女を鎮守府案内へ連れて行ってくれた。ありがたいことだ。

 

もちろんアークロイヤルと鉢合わせた時の対処法も伝えておいた。

内容は、争いするなら後で俺に通してからにしておいてくれ、ということを伝えて欲しいというもの。

ふたりともその場でおっぱじめるような分別無しではないだろうし……

そうなる以前に、そもそも足柄さんなら、うまくいなしてくれるだろう。

そんな戦闘、起こらないに越したことはない。

 

ちなみにツインテールの彼女は、まだここで見ているということ。

こちらの様子が興味深いみたいで、1時間以上経っているのだが、飽きが来ないらしい。

まぁあれだろう。物珍しいうえに、タッフィー君が気になるのだろう。

 

 

 

・・・

 

 

しばらく経った頃……

 

 

・・・

 

 

 

「あ」

 

「どしたの?鯉住くん」

 

「タッフィー君の喉の奥に、なんか見える」

 

「どれどれ……あ、ホントね」

 

 

メンテを続ける3人だが、ついにタッフィー君の腹痛の原因と思われるものが見つかった。

外側はピカピカになって、歯もきれいにホワイトニングできたので、この異物を取り除いてケアすればメンテ完了だ。

 

 

「しかしこれは……

なかなか手を突っ込むには、勇気がいりますね」

 

「おとなしくしてくれてるとはいえ、ふとした拍子に口を閉じられると……」

 

「私達艦娘でも大破しちゃいそうですね」

 

「うん。俺だったら真っ二つだろうね。

……というわけで、明石の出番だな」

 

「えー」

 

「お前じゃないとできないんだよ。わかってるだろ?

ロボットアーム使ってさ」

 

「そうだけど……気乗りしないなぁ」

 

「そう言わず頑張ってくれ。

タッフィー君もいい子にしてくれてたけど、そろそろ集中力が限界だろうし」

 

「うーん……ま、仕方ないかぁ……えいっ」

 

 

艦艇修理施設(ロボットアーム)を出現させ、明石はタッフィー君の口の奥にアームを伸ばす。

 

そして……

 

 

……スポンッ!

 

 

「……っと!とれたよ!」

 

「ご苦労さん。どれどれ、なにが挟まって……あっ」

 

 

ピー……

 

 

「あー、天城の鳥型艤装……」

 

 

そういえばさっきツインテールの彼女が、戦闘中に天城の艤装を飲み込んだって言ってたな。

しかし戦闘が起こったのって結構前のはず。

まだ生きて(?)たとは驚きだ。

 

 

「お前も災難だったなぁ。

後で手入れしてやるから、そこでおとなしくしててくれ」

 

 

ピー……

 

ずっとお腹のなかに収まっていたせいで、元気がない。

さすがに放置するのはかわいそうなので、あとからメンテしてあげることとする。

ちょっと待っててな。

 

 

「……よし。

それじゃタッフィー君、これで楽になったかな?」

 

 

バウバウッ!!

 

 

元気よく吠えるタッフィー君。随分と調子が良くなったようだ。

 

 

「よさそうだね……それじゃ夕張、ちょっといいかい?」

 

「は、はい」

 

「そこに置いてあるポリビーカーに、燃料を入れてきてくれないか?

ただしそのままじゃなくて、高速修復材を10%希釈にしてくれ」

 

「それは大丈夫ですが……一体どういうつもりで……」

 

「今までお腹の中に異物が入っていたから、体内が荒れていると思ってね。

艤装に対しても、高速修復材、ちょっとは効くだろうし」

 

「のみぐすりってこと?」

 

「まぁそんな感じだな。

というわけで、夕張、頼んだよ」

 

「はいっ」

 

 

夕張は先ほど持ってきた高速修復材の残りをもって、資材集積所まで駆けて行った。

 

そして少しした後、高速修復材入り燃料である『のみぐすり』を持って帰ってきた。

 

 

「はい!どうぞ!

タッフィーちゃん、これを飲んでみて!」

 

 

ゴクゴク……

 

……バウバウッ!!

 

 

「大丈夫そうだね。

効果があるかどうかはわかんないけど、多分大丈夫でしょ」

 

「なんでそう思うの?

こんなことするの初めてなんでしょ?」

 

「なんて言うか……勘だね」

 

「相変わらずキミってば、私達艦娘よりオカルトじみてるよね」

 

「明石お前……言い方……」

 

 

なんだか締まらない感じになってしまったが、無事タッフィー君のメンテを終えることができた。

残りはアンドレ君だが、3人いればなんとかなるだろう。

 

それでは彼のメンテに移る前に、最後の仕上げを。

 

 

「すいません。ちょっといいですか?」

 

「ウーン、オ見事ダッタワネ。

たっふぃー君ガコンナニきらきらシテルノ、初メテ見タヨ」

 

「それならよかったんですが。

えー、ともかくですね、これでメンテは終了になります。

……あとこれをどうぞ」

 

「? ナニコレ?」

 

 

鯉住君は懐からビニールの袋を取り出し、ツインテールの彼女に手渡した。

 

袋には『大玉!飴玉アソートお徳用』と書かれている。

いつも妖精さんに事あるごとに駄菓子をせびられるので、それ用にいつも懐に忍ばせているのだ。

 

 

「今日はタッフィー君、何時間も頑張ってくれましたからね。

我慢できたご褒美に、お菓子でもと思いまして」

 

「鯉住くん……

のみぐすりだして駄菓子あげて、なんか小児科の先生みたいだね」

 

「うるさいな。必要だからやってるだけなの」

 

「ぺろぺろ……ウマッ……!!

ナニコレ美味シスギル。ヤバイ。

人間トハ思エナイ……コンナニ私達ノ事ガ、ヨクワカッテイルナンテ……」

 

 

明石にツッコミを入れた瞬間に、ツインテールの彼女はアメちゃんの袋を開けて舐め始めていた。

その動きには全く躊躇がなかったので、自然過ぎて誰もツッコめなかった模様。

 

 

「ええ……?なんで自分で舐めてるんですか……?

それはタッフィー君のために……」

 

「細カイ事ハ言イッコナシヨ。コンナニアルンダシ、イイジャンカ。

……ソウダ。私達ヲ満足サセテクレタ礼トシテ、ヒトツ願イヲ叶エテアゲマショウ」

 

「……え?いいんですか?」

 

「変ナ事ジャナケレバ」

 

 

アメちゃんをあげたら、なんかご褒美がもらえることになった。

急な展開だったので、あまりうまいお願いが思いつかない。

 

 

「あ、鯉住くんってば、やらしいこと考えてるでしょ。このむっつり」

 

「そ、そうなんですか、師匠!?

そんなに胸が大きいのがいいんですか!?体脂肪率が高くなるだけじゃないですか!」

 

「ナンダカヨクワカンナイケド、コノ緑ノ艦娘、スゴク失礼ナ事言ッテナイ?」

 

「い、いえいえ、なんでもないです!!

そんなことより、お願い決まりました!」

 

「ナンカ隠シテルネ。マァイイケドサ。

……ソレデ何ニスルノ?」

 

 

なんか部下たちがフリーダムな感じになり始めたので、パッと思いついたことをお願いすることにした。

 

この調子のまま彼女の機嫌を損ねたら、キラキラしてるタッフィー君と一緒に暴れだして、工廠が爆発オチに使われかねない。

 

その思いついたお願いとは……

 

 

「これから人間や艦娘と戦いになりそうになったら、一度威嚇というか、警告してやってくれないでしょうか?」

 

 

こんなお願いである。

 

 

「エー……面倒臭イナァ……」

 

「そんなこと言わず……」

 

「ウーン……マ、イイカ。ソンナニ戦ウ機会モナイシ」

 

「ありがとうございます」

 

 

なぜこんなお願いを思いついたのか?

それは、ふと非常にマズいことに気づいてしまったからだ。

 

自然と艤装メンテしてしまったのだが……

敵の艤装をメンテするとか、人類への反逆そのものではないか。

人類全体にケンカを売るとかいうロックなことはしたくないし、する勇気もない。

なのにやってることは、それそのもの。これはとってもよろしくない。

 

……というわけで、お茶を濁すためにも被害軽減となる提案をさせてもらった。

これで不慮の事故はかなり減るはずだ。

元々彼女たちが、人類とどういう関係だったのかはわからないが。

 

 

「ソレジャ、コレカラハ一回警告イレルヨウニスルヨ。

ソレデイイヨネ?」

 

「バッチリです。

……それじゃお手数ですが、ロングヘアーの彼女にも伝えておいてください」

 

「イイヨー」

 

 

こうして無事に、片方ではあるがお客さんの要望を満たすことができた鯉住君なのであった。

 

さぁ、次は隣で正座して待っているマッチョマンの番だ。

お待たせしました。

 

 

 






今回のお客さんプロフィール(米海軍データ参照版)


・戦艦水鬼改

コードネーム:メテオレイン(CN:MeteorRain)

通常の戦艦の倍以上の数の主砲を持つとされる。
放たれる主砲連撃により、隙間なく間断なく際限なく降り注ぐ無数の巨大砲弾は、まるで隕石の雨。

仰角砲撃と水平砲撃を同時に行ってくるうえ、空中で砲弾同士が衝突して炸裂するため、恐ろしい範囲で空間制圧が起こる。近接は不可能。
射程範囲(3km)に入るだけで、轟沈の危険が非常に高まる。

第■次太平洋解放作戦において、米海軍はこの個体に初邂逅。
5基地合同作戦であり、総勢60隻による連合艦隊が組まれた一大作戦だったのだが、たった一体に敗北したことで、その脅威が明らかになった。


危険度:SSS アンタッチャブル(untouchable)





・護衛棲水姫

コードネーム:サンダーバード(CN:ThunderBird)

特殊な艦載機を搭載しており、第2次世界大戦中の噴式戦闘機に似た性質を持つ。
高度な爆撃性能と旋回性を持っているうえ、特質すべき点として、その速度は音速を超える。
マッハで空中から噴式魚雷を放ってくるため、現代兵器のミサイルのような挙動となる。

当然その他の艦載機についても高性能であり、噴式戦闘機の攻撃を切り抜けたとしても、それだけで勝利は困難と言える。

深海棲艦出現初期に、米国のステルス戦闘機であるF-22(マッハ1.8)が太平洋飛行中に撃墜される事件が多発した。
これはこの個体が原因とされている。


危険度:SSS アンタッチャブル(untouchable)



危険度比較

駆逐イ級     E 
軽空母ヌ級    C 
戦艦タ級flagship A
戦艦レ級elite   S
空母棲姫(通常) S

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