今回はラバウル第10基地の内政状況についてなので、けっこう小難しいです。
ふーん、とか思いながら見てみてください。もしくは飛ばしてください。
ゲームとは収支が違うところもあるので、雰囲気で見ていただけると助かります。
カリカリ……
「……提督、こちらにサインお願いします」
「あぁ。わかった」
カリカリ……
「古鷹、この書類お願いしていいかな?
俺がやってるといつまでも終わりそうにない」
「見せてください。
ええと……『1か月の鎮守府運営動向』……これですか。
毎月恒例の書類ですが、確かに厄介ですね。私に任せてください」
「ありがとう。俺は他の仕事進めるから」
「はい」
鎮守府では普段から仕事が多いわけではないが、月末は別だ。
ひと月のまとめのような書類をいくつか提出する必要があり、それの作成には結構な時間がかかる。
実はこれはデータ整理以上の意味がある仕事であり、この仕事を通して得られる重要なものがある。
その得られるものとは……「ひと月を通しての鎮守府の動きの再確認」。
毎日の仕事をしているだけでは、細かい部分は見えても大きな動きは見えてこない。
それは資材管理にしても、遠征任務による民間貢献の度合いにしても、出撃による海域維持のペースにしても、そうなのである。
つまりこの月末のまとめをすることにより、そういった鎮守府の流れといったものが再確認できるのだ。
木を見るだけでなく、森を見ろ。そういったところなのだろう。
実際この仕事をまとめた月別グラフをみると、各鎮守府の特色がよくわかる。
わかりやすい例を出すと、こんな感じ。
・・・
消費資材……艦娘の行動に伴う資材消費量。
民間護衛任務……民間との繋がりともなる護衛任務回数。
海域出撃……海域解放はもちろん、哨戒、資材獲得も含む出撃回数。
一般的な鎮守府である、ラバウル第9基地(鈴木大佐直轄)
消費資材・並 民間護衛任務・並 海域出撃・並
大規模鎮守府である、呉第1鎮守府(鼎大将直轄)
消費資材・高 民間護衛任務・極高 海域出撃・低
海域解放に重点を置いている、リンガ第6泊地(伊佐木中佐直轄)
消費資材・極高 民間護衛任務・極低 海域出撃・極高
小規模鎮守府である、トラック第4泊地(支倉少佐直轄)
消費資材・低 民間護衛任務・極低 海域出撃・並
EX1 トラック第5泊地(三鷹少佐直轄)
消費資材・極低 民間護衛任務・無 海域出撃・並
(三鷹グループの商船護衛のみのため、民間依頼引き受けは無し)
EX2 佐世保第4鎮守府(加二倉中佐直轄)
消費資材・極高 民間護衛任務・無 海域出撃・無
(消費資材はすべて鎮守府内演習によるもの。そして鮎飛大将の意向により、民間から隔離中。さらに報告上は出撃無し。艦娘の自主的な『散歩』は除いているため)
※横須賀第3鎮守府(一ノ瀬中佐直轄)は、データ上は普通の運営をしています。データ上は。
・・・
……とまぁ、このような感じで、データを見れば鎮守府の運営方針が見えてくるというものだ。
それで鯉住君率いるラバウル第10基地のデータはというと……
消費資材・並 民間護衛任務・高 海域出撃・高
このような感じ。
準水雷戦隊が主戦力のため、燃費は非常に良好。
鯉住君の意向もあるが、人里がある程度近隣にあるため、護衛任務は多め。
海域解放を進めているため、出撃は多い。
鎮守府の動きが、データを見れば見事にわかるようになっている。
データは嘘を吐かないのだ。
ちなみにこの月1報告をまとめたデータは、他所の鎮守府のものでも、大本営に依頼すればFAXで送ってもらえることになっている。
自分の鎮守府と似た状況の鎮守府がどのような運営をしているか。
それを参考にできるようにである。
もちろん重要なデータなので、オンライン上では閲覧不可となっている。
面倒くさい気もするが、防諜上致し方無し。
そんなこんななのだが、データをまとめていると、こんな事実がわかってくる。
ラバウル第10基地では民間からの護衛報酬が多く、消費資材は少ない。
所属艦娘は少なく、運営費用は高くない。
そして資材獲得のための遠征もそこそこにこなしており、製鉄所によるパーツ生産による資材純利益がある。
「……提督。報告書類、完成しました。どうぞ」
「ありがとう古鷹。どれどれ……?」
かなり速いペースで、古鷹は見事な書類をこしらえてくれた。
ちゃんと表計算ソフトに計算式まで入れたデータ管理をしているため、時短が効くのだ。
ちなみにレイアウトも高クオリティ。
円グラフ、棒グラフを駆使し、最低限ではあるがカラフルであり、視覚的にもよくわかるように配慮されている。
叢雲も古鷹も研修で高い事務能力を身につけたため、この程度なら朝飯前。
本人たちがマメな性格なのも、いい方向に働いているようだ。
……そしてそれに目を通す鯉住君。
余談だが、彼は事務仕事は苦手だが、情報の読み取りについてはかなり能力が高かったりする。
読書家なのが関係しているのだろう。
「あー……凄いねコレ」
「はい。嬉しいことですが、ここまで来ると逆に不安になりますよね……」
「そうだねぇ……何か使い道って思いつく?」
「いえ……正直言って今の生活で満足ですし……
お給金もこれ以上欲しいとは思いませんし……」
「うん。俺もそうなの」
そう。今のラバウル第10基地は、とんでもない黒字なのである。
元々鯉住君と秘書艦ズは全員貧乏性なので、各種出撃にかかる資材は、資材獲得遠征で賄える分までしか使っていなかった。
そして開発も建造も……というか、それらまとめて建造炉稼働についても、ほとんど行っていない。
鎮守府立ち上げ初期に貰った、ラバウル第1基地からのおさがりで十分やっていけているからだ。
バグった実力のメンテ班により、艤装性能がガン上げされるのが、初期装備級の艤装だけでもやっていけてる理由である。
その結果どうなっているかというと……
なんとなんと、今この鎮守府の資材量は、燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト……そのすべてが100,000を超えているのである。
燃費が悪い天城やアークロイヤルを含めて出撃をしたとしても、一度の出撃で減る資材量は、多くても各種1000ほど。
そして資材獲得遠征で1度に獲得できる資材量は、各種平均して1200ほど。
哨戒任務も含めると黒字とはいかないが、圧倒的にローコスト。
海域解放出撃を行わない日もあるため、黒字になる日も少なくない。
ついでに言えば、妖精さん印の製鉄所による他の鎮守府からの資材利益もあるため……全体を見れば圧倒的黒字なのだ。
そのため、大本営からの資材支援はとうの昔に打ち切られている。
これだけ資材がうなりを上げているなら、それも当然だが。
「資材についてもだけど、運営資金もスゴイよねぇ……」
「はい……正直実感がわかないといいますか……」
資材とは別の項目に、運営資金がある。
鎮守府の備品購入や設備増設、そして艦娘のお給金がここから出るのだ。
運営資金はお金なので、資材から出すというワケにはいかない。
そのため、所属艦娘人数や提督の階級によって、大本営から毎月お金が振り込まれてくるのだ。
しかし振込は最低限であり、提督のお給金については保証されているものの、艦娘のお給金については成果報酬制となっている。
艦娘のお給金を具体的にすると……
基本給(月3万円)+成果報酬(提督裁量による)
こんな感じである。
お給金が月3万というのはブラック過ぎる気もするが……
全寮制、食費なしなので、全額自由に使えることを考えると、そういうワケでもない。
それに鎮守府運営が上手ければ、民間からの護衛任務報酬(半分は大本営利益となるが)を貯めることで、成果報酬を期待することもできる。
ちなみに任務数と艦娘数のバランスの関係で、所属艦娘数が多い鎮守府ほど大本営からの振り込みが多いのだが、そこはあまり深掘りしないこととする。
そんな仕組みなので、ラバウル第10基地にも毎月お金が振り込まれてくる。
前述の通り、その中には設備運営費も含まれているのだが、ここでは妖精さんが自発的に設備修繕をしてくれるため、それが丸々うく。
実は普通の鎮守府では妖精さんは割かしビジネスライクなので、協力的な動きは特定の鎮守府でしかしていない。当然鯉住君は気づいていないが。
だから彼は「なんでこんなに設備修繕費用が多いんだろ?」とか思ってたりする。
ここラバウル第10基地では、提督の方針で護衛任務を多く受けていること、所属艦娘数が多くないことから、運営資金についてもかなりの黒字である。
だからこの鎮守府では、所属艦娘のお給金は月6万ほどとなっている。
全額好きな買い物に使えることを考えると、かなり多い方だと言えるだろう。
古鷹が「お給金に満足してる」と言ってたのは、それが理由である。
鯉住君の運営は艦娘に非常に好評なため、お金を使わずとも満足できているということもある。おかげで買い物せずともストレスがたまらない。
そもそも欲しいものを提督に申請すれば大体買ってくれることもあり、お金を使うことがないのだ。
……こんな状態なので、溜め過ぎた資材と資金を持て余している。
多くの人が羨ましがる状況になっているとも言える。
「このまま溜め続けてもなぁ……どうにかして放出しよう。
とはいえ、有意義なことに使わないと意味がないし、一考の余地ありってとこかな」
「そうですね。なかなか思いつかない気がしますが……」
「一通り執務が終わったら軽く考えてみようか。
ホントは叢雲もいるといいんだろうけど、今日は彼女には海域解放に向かってもらってるし」
「わかりました。それじゃ早く終わらせてしまいましょう」
「よし。頑張るか……」
・・・
3時間後……
・・・
「……あー、疲れたー……」
「提督、お疲れ様でした」
「いつまで経っても慣れないもんだねぇ。
いい加減こういう書類仕事にも慣れそうなものなんだけど」
「提督は割り切るのが得意じゃないですもんね。
もっと即断即決を意識すれば、早く仕事できるようになりますよ?」
「そうなんだけど、自分の決定をみんながどう感じるか考えてるとね……
なかなか進まなくてさ……」
「ふふ。提督はそれでいいと思いますよ。
私や叢雲さんではそこまで考えが及びませんし」
「そう言ってくれると気が楽だよ……ふう……
……さて、愚痴っててもしょうがない。
余剰資材と余剰資金の使い道、考えようか」
「そうですね。それではまず状況をまとめましょう」
・・・
ラバウル第10基地・財政状況
・備蓄資材
燃料 約10万
弾薬 約11万
鋼材 約12万
ボーキ 約11万
・資材バランスシート(/月)
遠征獲得資材 + 32000
艤装部品売却収入 + 25000
大本営支給資材 ± 0
出撃必要資材 - 14000
入渠・艤装修理資材 - 2000
艤装部品製造出費 - 20000
―――――――――――――――――
平均資材収支 + 21000
・備蓄資金
約1000万円
・資金バランスシート(/月)
大本営資金分配 + 300万円
平均護衛任務報酬 + 200万円
提督基本給 - 100万円
階級手当(中佐) - 30万円
艦娘給金(14体) - 42万円
艦娘給金(提督裁量分) - 42万円
施設運営費(生活費含む)- 85万円
施設修繕費 ± 0万円
―――――――――――――――――――――
平均資金収支 + 約200万円
・・・
「黒字も黒字なんだよねぇ……」
「約半年でこれですからね……」
黒字経営なのは歓迎なのだが、これはちょっと行き過ぎている。
そもそもそこまで黒字にならないための、資材支給打ち切りと、護衛報酬50%上納なのだ。
本来は鎮守府運営に必要最低限な資材、資金しか残らないようになるように、仕組みが組まれているはずである。
「それじゃ資材とお金の使い道、考えてみようか」
「わかりました」
・・・
5分後
・・・
「どうしよう……何も思い浮かばない……」
「私もです……お金ってどうやったら減るんですか……?」
貧乏性なふたりだけあり、有効的に資金を使う方には頭が回らない模様。
無理のない節約術ならいくらでも思い浮かぶというのに。
「うーん……どうも俺たちだけじゃだめだね。
これはもうみんなに意見調査してみるしかないか」
「そうですね。それがよさそうです。
それでは掲示板にアンケートを張り出しましょう!」
・・・
数日後・余剰備蓄使用方法アンケート集計
・・・
あれから数日たって、アンケートの結果も出そろった。
それを踏まえて、ラバウル第10基地首脳陣で備蓄の放出方法を考える運びとなったのだ。
「まったく……
私がいないってのに、慣れないことするからこんなことになるのよ」
「「 申し訳ないです…… 」」
「古鷹はいいのよ。アンタはもっと組織のトップらしくなさい」
「面目ねぇ……」
いつも通り叢雲の尻に敷かれつつ、アンケート結果を確認する3名。
結果としてはこんな感じ。
・・・
叢雲……艤装パーツ受注時の余剰資材受け取り廃止
古鷹……艤装パーツ受注時の余剰資材受け取り廃止
夕張……色んな艤装増やしたい
秋津洲……みんなで旅行行きたい
北上……みんなで旅行行きたい
大井……特になし。備蓄は多い方が良い
天龍……もっと出撃したい
龍田……みんなで旅行行きたい
足柄……高級将棋盤・最新調理器具数点
初春……ふたりの一軒家
子日……もっと鯉住さんと遊びたい
明石……色んな艤装いじりたい
アークロイヤル……世界一周ハネムーン旅行
天城……もっと寝ていたい
・・・
「公費としての運用方法を聞いたんだけどなぁ……
趣旨を分かってない人がちらほらいますねぇ……」
「今さらじゃないの。使えそうな意見を選別しましょ」
「そうですね……私と叢雲さんの案が一致してますし、製鉄所の利益は無くしてもいいんじゃないですか?
他に出来そうなことは……慰安旅行と建造炉稼働あたりでしょうか?」
「そうね。それじゃ高雄さんにその旨連絡入れないと。
喜ばれるんじゃないかしら?アンタの報告にしては珍しく」
「ひとこと余計ですよ、叢雲さんや……
ま、喜ばれるのは事実だろうし、他の鎮守府からのウチへの心象もよくなる。
大規模作戦のための資材備蓄も問題ないレベルまで来たし、言うことなし文句なしに採用だね」
「採用していただいて、ありがとうございます」
「頼んだわよ」
まずは一番真っ当な案である、
『艤装パーツ発注時の余剰資材受け取り廃止』を採用することにした。
この鎮守府では、妖精さん印の製鉄所での艤装パーツ生産、そしてそれの販売を結構なペースで行っている。
他の鎮守府からの注文を受けた際に、生産に必要な資材に1割上乗せしてお支払いいただくという決まりを作っているのだ。
それを廃止しようということである。
もともとこれは、大規模作戦中に他の鎮守府がジリ貧にならないための仕組みである。
こちらでため込んだ資材を、前線でカラダを張ってくれている艦隊に放出することで、もしもの時の保険とするつもりだった。
……しかしその資材備蓄も十分と呼べるほどになったため、この制度はお役御免である。
元々私財を肥やすつもりなど毛頭ないため、誤解を招くことがないように、さっさと撤廃するべきだったのだ。いい機会である。
「よし。慰安旅行と建造炉稼働も採用にしよう。
……それじゃまずは慰安旅行についてだ。どこか行きたいとこある?」
「……アンタそれ、本気で言ってんの?」
「……え?」
「提督、覚えてらっしゃらないんですか……?」
ジト目を向けるふたりに狼狽する鯉住君。
わけがわからないが、もしかして地雷を踏んじゃったのだろうか……?
「研修に行く前に、ご自身で何を言ったか……
覚えていらっしゃらないんですか?」
「……あ」
「忘れてたとか言うならぶっ飛ばすわよ」
「い、いや、まさかそんな……
みんなで呉まで旅行に行こうって話でしょ……?」
「それだけですか?」
「うっ……えーですね……」
「もうっ!なんで忘れてるんですかっ!?
私達に研修頑張ったご褒美、選んでくれるって言ったじゃないですかっ!!」
「す、すいませんでしたぁっ!!」
確かにそのような約束はしていたが、彼女たちが帰ってきてからのイベントラッシュで、頭の中からスッポリと抜け落ちてしまっていた。
しかし彼女たちはずっと楽しみにしていたのだ。彼の方から言い出してくれるのを。
……彼が怒られるのもやむ無しだろう。
「……ハァ。どれだけ私達が言葉に出さずに待ってたと……」
「む、叢雲さん……? 何かおっしゃって……」
「何でもないわよ……ハァ……
……それじゃ旅行までのプランでも立てましょ。
メンバーが大半居なくなるんだから、海域解放や護衛任務の予定を詰めないといけないわ」
「そうだね……
すまなかったな、楽しみにしてくれてたのに」
「いいんですよ。過ぎたことです!
それよりも皆さん好き放題おねだりすると思いますから、覚悟していてくださいね!」
「わかったよ。ありがとな」
「はいはい。それじゃ建造炉稼働のタイミングも合わせて、計画立ててくわよ」
なんだかんだ待望の呉旅行が決まり、ウキウキするふたり。
ずいぶん待たせてくれた延滞料として、散々色んなところに付き合ってもらおうと、心に決めるのであった。
E-1で神通さん使っちゃったあああああっっ!!(E-2甲挑戦中)