艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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イベントで堀りをしてまして、遅くなりました。申し訳ないm(__)m



陸奥の格好は鯉住君にとんでもない特効倍率がかかっていますが、
避けられていると気づいた陸奥が「中にアンダースコート履いてるから平気よ」という、ありがたいお言葉を投げかけてくれたおかげで、彼は普通に陸奥に接することができるようになりました。

もちろん嘘です。アレあんなだけど制服ですし。
普通の服は戦闘中簡単に破けるので、制服には重ね着しないのが普通なのです。
そもそもアンスコの時点で、彼が耐えられるかも微妙なんですけどね。


前回のあらすじ

三鷹少佐の生い立ちと考え方が暴露されたことにより、鯉住君と龍田さんのSAN値が著しく減少。
龍田さんが涙目になってしまった。




第98話

三鷹少佐の強烈なカミングアウトはあったものの、無事に交渉を終えることができた鯉住君と龍田。

 

その後は陸奥を鎮守府案内したり、

鎮守府案内中に三鷹グループ企業の株価が暴騰したと連絡が来たり、

それを確認した三鷹少佐の「あの人たちが仕手だろうねぇ」という独り言からの、物騒な単語が飛び交う誰かへの連絡があったりと、

あんまり心休まることがなかった。

 

ちなみに今日の陸奥の爆発枠は、株価の暴騰だったらしい。

そういうのも効果範囲なんだ……なんて呆気にとられるふたりである。

 

 

 

今回決定したのは各種農産物と海水塩の出荷。

そして自己調達が難しい生体と養殖セットの購入。

 

購入内訳は以下の通り。

 

 

・食用卵調達用の烏骨鶏 雄3羽 雌17羽(自家繁殖目的のため雌雄)

・養殖用イワナ50匹 ヤマメ50匹

・渓流魚養殖用の人工催熟ホルモン薬(LH、FSH)

・低刺激水溶麻酔と薬品注射セット

 

 

そしてついでに

 

 

・野生動物侵入防止のための鉄条網

・世界の淡水熱帯魚 各種最低3ペアづつ

・バイオエタノール抽出装置設計図

 

 

こちらも卸してもらえることになった。

 

 

熱帯魚は当然水族館に導入する予定だが、

バイオエタノールに関しては「せっかくサトウキビ作ってるんだから、やってみたら?」という、三鷹少佐のありがたいお言葉がキッカケで、手を出してみることになった。

 

いつもの妖精さんに聞いてみたら「せっけいずがあれば、やってやるです!」と自信満々マンになっていたので、手配してもらえることになったのだ。

 

さすがは電ちゃんの要望を10倍増しで叶えちゃう三鷹少佐。

かなり無茶苦茶かつ多岐に渡る注文でも、テーブルの上の醤油とってくれる感覚で引き受けてくれた。

 

普通バイオマスエネルギー生産装置なんて、話題にすら上らないようなもののはずだが……

自然エネルギーのパイオニア、三鷹電力(株)を運営してるだけはある。

 

 

 

そんなこんなで三鷹少佐の訪問は、非常に実りあるものとなったのだった。

 

正気を取り戻した龍田が怖い笑顔で

「さっきの私の恥態を言いふらしたら……手首斬り落としますよ~?」

と口止めしてきたのは、ご愛敬といったところだろう。

 

 

 

・・・

 

 

数日後

 

 

・・・

 

 

 

コケーッ!コケーッ!

 

 

「もう来た……」

 

「早かったわねぇ……」

 

「提督の関係者は、皆さん規格外ですよねぇ……」

 

 

頼んでいた荷物がもう届いた。

あまりの荷物の量に呆気にとられる提督、叢雲、古鷹の3人。

 

まだ1週間と掛かっていないというのに、全部揃えて郵送までこなしてくれたようだ。

なんという早業。出来る男は違う。

 

……目の前にどっさり置かれた色々は、随分と存在感を放っている。

 

 

「とにかくここに置いといてもしょうがない。

必要な場所にどんどん運び込んじゃおう。

……というわけで、今日暇してる適任者を呼んでこようか」

 

「適任者っていうと……」

 

「おさかな関係はアークロイヤルと俺、それと古鷹にも手伝ってもらいたい。

烏骨鶏は……ホントは初春さんと子日さんに任せたいけど、鉄条網設置があって危ないからなぁ。

足柄さんと秋津洲に任せよう」

 

「わかりました」

 

「それじゃ私は、話に上がったメンバーを連れてくるわ。

その足で執務室まで行って仕事片づけとくから、あとは任せたわよ」

 

「あぁ。よろしく頼む」

 

 

・・・

 

 

叢雲の召集に応じて、指定されていたメンバーが集まってきた。

非番もしくはあまり忙しくないメンバー……給糧艦ポジションのふたりと、お魚大好きアークロイヤルである。

 

適役だとは思ってはいたが、案の定である。

足柄と秋津洲はニコニコしながら烏骨鶏と戯れているし、

アークロイヤルは当然の如く、待望の魚群を前にして目をキラキラさせている。

 

 

・・・

 

 

「鳥さんかわいいかも! この子たちウチで飼うの?」

 

「そうだよ。卵調達と食肉用にと思ってね。

20羽じゃちょっと多いかもとは思ったけど……

妖精さんの謎技術のおかげで、とんでもないスピードで作物が取れるからさ。

餌には困らないだろうと思って」

 

 

これからの予定をサラッと伝えた提督だったが、その言葉を受けた秋津洲は目を丸くして驚いている。

 

 

「えっ……食肉用って……

……この子たち、食べちゃうの……?」

 

「うん。その予定。

ちゃんと繁殖が上手くいってからの話だけどね」

 

「鳥さん……ちょっとかわいそうかも……」

 

「俺達さ、毎日なんの苦労もなくお肉食べてるだろ?

それは業者の人たちが、そういうこと代わりにやってくれてるからなんだ。

それを理解してほしくて」

 

「わかっててもちょっと嫌かも……こんなにかわいいのに……」

 

「わがまま言っちゃダメよ。

提督の言ってることは大事なことなんだから」

 

「うー……」

 

 

提督と足柄が言うことは正しいと頭ではわかっていても、どうにも納得できないようだ。

秋津洲はうつむいて、やりきれなさそうにしながら烏骨鶏をなでている。

 

その様子を前にした鯉住君。

どのような言葉をかけてよいやらわからなくなってしまった。

 

 

「……なんて言ったらいいかなぁ……気持ちはよくわかるけど……」

 

「そんなに気にしちゃダメよ。秋津洲ならわかってくれるでしょうから」

 

「足柄さん……

そうでしょうか……秋津洲にはまだ早かったんじゃないかなって……」

 

「そんなことないわよ。彼女なら大丈夫。

料理をするものとして、深海棲艦を沈める艦娘として……

自分たちが命を奪って生きていることを理解しておくことは、何より重要なことだもの。

すぐには難しいかもしれないけど、秋津洲ならアナタの言いたいこと、理解してくれるはずよ」

 

「だといいんですが」

 

「アナタのそういう、私達の心を見てくれるところ……好きよ」

 

「面と向かってそういうこと言われると恥ずかしいんで、そっとしておいてください……」

 

 

完全にふたりの会話は、小学生の娘を持つ夫婦の教育方針会議と化している。

なんだか夫と妻のセリフが逆のような気もするが。

 

 

「Admiralッ!! なにをコソコソと話しているのッ!?

そんなことをしている場合ではないでしょう!!

早くこの美しき宝石(魚)たちを、しかるべき場所へと運び込むのよぉッ!!」

 

「あ、ああ……それもそうだね……

それじゃ足柄さん、秋津洲のこと任せました。

俺は古鷹と一緒に、アークロイヤルに付き合ってきますので」

 

「わかったわ。囲いのセッティングもしておくから。

安心していってらっしゃい」

 

「恩にきます。

……それじゃ行こうか、古鷹」

 

「はい。わかりました。

……アークロイヤルさんのお相手は、お任せしていいですよね?」

 

「ああ」

 

「さっさと行きましょうッ!!

Let's partyyyyyy!!(ステキなパーティーするわよっ!!)」

 

「わかったから、も少し落ち着こうね」

 

 

 

・・・

 

 

 

その後は無事に渓流魚を生け簀に放ち、熱帯魚も水族館の方に迎え入れることができた。

水合わせ(水温と水質に慣れさせること)もつつがなく終わり、落ちた(死んでしまった)生体も出てこず、一安心。

 

ちなみにアークロイヤルはそのまま不眠不休で、生け簀と水族館の環境管理に入るということ。

「そこまでしなくても……」と止めようとしたのだが、好きでやってるから構わないと突っぱねられてしまった。

事実彼女の魚を見る目は非常にギラギラしており、口からはよだれが垂れていた。脳内麻薬がドバドバ状態なのだろう。

あまりにもハイになっていたので、よだれを拭く用のハンカチだけ渡して、古鷹とふたりで農場まで戻ってきた。

 

 

「あら、そっちはもういいの?」

 

「ええ。アークロイヤルが随分ハッスルしちゃいまして……

というか、こちらももう終わったんですね。流石の手並みだ」

 

「やったことなんて、鉄条網で柵を作っただけだもの。

たいしたことないわ」

 

「いやいや……」

 

 

足柄はたいしたことないと言っているが……

ちゃんと1mほどの木の杭が何本も打ち込まれ、そこに鉄条網を張り巡らせてある。

非常にしっかりとした造りの飼育スペースと言えるだろう。

入り口として木でできた扉がついているし、雨除け小屋まで建てられている。

 

 

「柵だけでよかったのにここまで……足柄さんは大工技術を持ってたんですか?それに材料はどこから調達したんですか?」

 

「ああ。私と秋津洲がやったのは、鉄条網を張ることだけよ。

その他の大体はあの子たちがやってくれたわ」

 

 

そう言うと足柄は柵の中を指さす。

そこには烏骨鶏たちと仲良くたわむれる、秋津洲と妖精さんの姿が。

 

……どうやら小屋や扉は妖精さんたちが造ってくれたらしい。

ついに提督が直接指示を出さなくても、空気を読んで働いてくれるまでになった模様。

 

 

「あぁ。農場を担当してくれてる子たちか」

 

「私にはあの子たちが何言ってるかわからないけど、とってもやる気を出して頑張ってくれたわ。

あとでご褒美でもあげといてちょうだい」

 

「そうでしたか。わかりました」

 

 

あとでマシュマロでもあげておこう。

日頃から農場の手入れをやってくれているお礼も兼ねてだ。

 

 

「それじゃ、私と秋津洲は晩御飯の仕込みに入るから。

あと他にやることは無いわよね?」

 

「ええ。大丈夫です。

お忙しいところ、ありがとうございました」

 

「いいのよ。いつでも呼んで頂戴。

……それじゃ今日の晩は、体を動かした分の栄養を補給できるような献立にしておくから。

楽しみにしていて」

 

「それはいいですね。今から楽しみだ」

 

「うふふ。期待にお応えしちゃうから。

……秋津洲、そろそろ行くわよー」

 

「はーい!」

 

 

 

そんなこんなで、無事に鎮守府改革に一区切りつけることができた。

 

これで今まで以上に、鎮守府内での自給自足体制を強固なものにできたことだろう。

そんなことする必要ある?という疑問に関してはノーコメント。

ぶっちゃけ提督の趣味だし。

 

 

 

「思った以上に早く終わっちゃいましたね。

これからどうしましょうか?

叢雲さんの事務仕事でも手伝ってきましょうか?」

 

「そうだねぇ。俺もだけど、古鷹も今日はこれ以上やることないもんな。

それじゃキミの言う通り、叢雲の手伝いを……」

 

 

もっと生体導入に時間がかかると思っていたため、手持ち無沙汰になってしまった鯉住君と古鷹。

 

これからどうしようか相談していたところ、提督のポケットの中から音が聞こえてきた。

 

 

 

ブーン ブーン

 

 

 

「この音……スマホの振動? 提督にメールですか?」

 

「あぁ。そうみたいだね。

しかしチャットならまだしも、メールなんて珍しいな……

いったい誰からだろう……?」

 

 

大体のスマホへの連絡は、チャットアプリか電話で入ってくる。

だから個別連絡であるメールが届くなど、中々ないことなのだ。

 

一昔前ならメールが主流だったというのに、時間の流れと技術の進歩はスゴイよなぁ。

そんなことを考えつつ、メールを開いてみると……

 

 

「……」

 

「何が書いてあったんですか?提督?」

 

「……」

 

「て、提督……?」

 

「あ……あぁぁ……!!」

 

 

スマホの画面を見つめながら、絶望の表情でガタガタと震えだす提督。

 

 

「ど、どうしたっていうんですか!?」

 

「……」

 

 

震える手でスマホの画面を古鷹に見せてくる提督。

もう嫌な予感しかしないが、見ないわけにもいかず、画面をのぞき込む古鷹。

 

そこに書いてあった文面とは……?

 

 

 

・・・

 

 

 

From:武蔵(佐世保第4)

 

To:鯉住龍太

 

 

 

タイトル:無題

 

 

 

本文:

 

 

 

いつまで待たせる気だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

もう待たん

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

「こ、これって……!」

 

「む、武蔵さんがメールだなんて……!!

普段あの人、連絡は全部人任せなのに……!!」

 

「つ、つまり……?」

 

「激おこってこと……」

 

 

真っ青な顔になってる提督を見て、これアカン奴だと察する古鷹。

 

 

「ど、どうしましょう……?

これって、ずっと前に大本営で川内さんが言ってた件ですよね……?」

 

「そうだと思う……

色々あり過ぎて直ぐには行けなくなったとは伝えてあったんだけど……

すでにあの時点で武蔵さん、随分と鬱憤がたまってたっぽいからさ……」

 

「本当の本当に、我慢できなくなったということですか……?」

 

「そうだと見ていいはず……

そしてこうなった時の佐世保第4鎮守府の皆さんは、即断即決即行動なんだよ……!!」

 

「つ、つまり……?」

 

「古鷹……佐世保行きの準備を……!!」

 

 

 

 

 

 

 

「そゆこと。あと1時間待ったげるから」

 

 

 

 

 

「「 !!!??? 」」

 

 

 

「武蔵さんは秘密兵器で外に出られないから、代わりに迎えに来たよ!」

 

「せ、川内さんンンッッ!?」

 

「どこから現れたんですかぁっ!?」

 

「どこって、海からに決まってるじゃんか。

それより早く準備して!

大発動艇に妹たち待たせてるから」

 

「い、妹たちって……!!

もしかしなくても、あのおふたりですか!?」

 

「なにわかりきったこと聞いてるのさ。当たり前じゃん」

 

「いやそれよりも、そんな急に……」

 

「だーいじょうぶだって。

龍ちゃんの鎮守府の内情は全部把握してるからねー。

優秀な奥さんたちに任せとけば、2,3週間提督がいなくても、万事大丈夫っしょ」

 

「お、奥さんって……!!

俺はそんなつもりありません!!だよな古鷹!?」

 

「あ……え……!?

それは、その、そういうわけでもあると言いますか、無くはないといいますか……」

 

「古鷹ァ!?」

 

「アハハ!ほらねー!

ま、そういうことだからさ、龍ちゃんの代わりに運営よろしくね!古鷹さん!」

 

「は、はひ……」

 

「あ、それとさ、天龍と龍田も連れてこいって、神通から言われてるから。

ふたりとも今は哨戒任務中でしょ?

それもあと30分もあれば終わるだろうし、必要な物だけもたせて連れてきて」

 

「内情に詳しすぎる!」

 

「それじゃ、またあとで!

ここから西に行ったところの波止場に大発動艇泊めてあるから、準備できたら来てね!

遅刻厳禁だよ~」

 

「アッハイ……」

 

 

 

シュバッ!!

 

 

 

「「 消えた…… 」」

 

 

 

足柄さんと秋津洲に、晩御飯食べられなくてゴメンって伝えないとなぁ……

 

あまりの衝撃的な展開に、そんなことしか考えられなくなってしまった提督なのだった。

 

 

 

 




照月きたああああアアアアアッッ!!(現在時刻 1/22 2:50)

本編で登場させたおかげですねこれは!
やられ役だったからゴキゲン斜めになって出てくれないかと思ってましたが、なんとかなりました!

やっぱり照月ちゃんは優しいなぁ!
これはもう本編でもっと姉妹のみんなを出していくしかないですね!

ありがとうございます!ありがとうございます!





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