「にんじん兄さん、ねぎ姉さん、野菜は私の家族なの~♪」
学校帰り、偶々帰り道一緒になったため、俺とチェルシーの二人ではなたちと帰る中、はなはある歌を口ずさんでいた。
その歌は昔、さあやが出ていたCMの歌みたいだ。
「さあやが出ていたCM。よく覚えてるよ。まさかあの野菜少女がこんな身近にいたなんて……」
「さあやったら、恥ずかしがってみんなに内緒にしてほしいって言ってたからね~」
「チェルシーたちは知ってたんだ」
ほまれの言う通り、チェルシーとこの場にいないサヨの二人はさあやの隠し事は知っていたみたいだ。
すると俺とチェルシーの二人は草むらの方からなにかの気配を感じとり、足を止めた。
「どうしたの?」
「誰かがいる……」
「ちょろっと、お姉さんたちに任せてもらっていいかな?」
「そこにいるのは分かってる。出てこい!」
俺がそう告げた瞬間、草むらから一人の女の子が出てきた。
「オーッホッホッホ!薬師寺さあや!ここで会ったが百年目!一条蘭世でございますわ」
どうやらさあやの知り合いみたいだ。それはそうだよな。敵だったら殺気とか感じるし。
話を聞くとどうやらさあやが出ていたCMに昔共演した女の子みたいだ。
「あなたは野菜少女としてお茶の間に親しまれた。なのに私はネギ。ただのネギ。悔しかった。惨めだった。あの時誓ったの。いつか貴方をギャフンと言わせてやると」
いるんだな。どの世界でもギャフンと言わせてやるとかいう人は……というかめんどくさそうな人だから関わらずに帰ってもいいかもしれないな。
「貴方にはわからないでしょうね。大女優の母の後ろ盾持つ貴方には」
「まぁまぁ……ってうん?大女優?」
「この子の母親はあの大女優薬師寺れいらですわ」
「知ってる。知ってる。あのCMのきれいな人だよね」
大女優の母親……それにその娘って、さあやは本当にすごい家の子なんだな。でもさあやは母親がすごいからって自慢したりしてないし……
「一方私は何のバックも持たず、どんなに小さな役でもコツコツやってきましたわ。あなた、今度やるヒロインのオーディションを受けるでしょう。私も同じオーディションを受けることにしましたわ。必ずやあなたをけをおとして、役をゲットしてみせますわ。オーッホッホッホ」
蘭世は高笑いを残して去っていった。何というかやっと帰ったか……
「オーッホッホッホなんて言う人いるんだ……」
「あら、ほまれ。私がいた世界では普通にいたわよ」
「あぁ、いたな。貴族とか……」
「そりゃあんたらの世界ではそうだけど……」
「さあや。なんだか大変なことになったみたいだけど、オーディション、頑張ってね」
「う、うん」
「それじゃ帰るとしますか」
さあやとチェルシーの二人はそのまま帰っていった。俺らはとりあえずハリーのお店に行くのであった。
ハリー達にさっき会ったことを話すのであった。
「さあやがオーディションを受けるとは驚きやな」
「まぁさあや自身、隠してたみたいだけどな」
何で隠していたのだろうか?もしかして恥ずかしいとかか?
ふっとはぐたんが何かをやってみるのを見た。なんだかアクセサリーを作ってるみたいだ。
「はぐたん。上手上手」
「これええやろ。可愛いハートのアクセが作れるんや」
「それだったらたくさん作って、はぐたんが作りましたって書いて売ったほうがいいんじゃないの?」
クロメがそういった瞬間、はなとほまれの二人がサムズ・アップしながら
「「それいい!!絶対に買う!!」」
「クロメも商売について勉強してるんだな」
「ここで働く以上、勉強をしといたほうがいいってウェイブが言うから……」
「まぁ俺も商売とかわからないから、ハリーに教わってるけどな」
「タツミやウェイブ、クロメはそういう所疎いからな。ミナトと同じ戦うことしか考えてない脳筋で教えることが多いんや」
「「「脳筋言うな!!」」」
俺、タツミ、ウェイブがハリーにツッコミを入れる中、はながある事をクロメに聞いてきた。
「そういえばクロメさんの帝具ってどんなものなの?」
「私の?私のはコレだよ」
クロメが腰に付けた刀を抜いてはなに見せた。というかはぐたんがいるんだから抜いて見せるなよ
「帝具八房。切り捨てたものを躯人形として操ることが出来る。だけどここに来る前にウェイブに壊されたせいなのか、ストックしてある躯人形がいなくなったの」
「躯人形って……」
「いわゆるゾンビを操るっていう感じなんだ……」
「まぁここで骸人形をストックすることは……」
いや、あいつらの操る危険種を倒していけば何とか出来るか?
「あっ、はぐたん。できたんだね」
どうやらアクセサリーが完成したみたいだな。はなは早速さあやに届けに行くと言い出し、探しに向かうのであった。
さあやがいそうな所を探すと森の中の泉にさあやの姿を発見した。はなが声をかけようとした瞬間、俺達の目にあるものが写った。
さあやの背中に天使のような羽が生えているように見えた。
「天使様?」
「はな!?ほまれ!?それにミナトくん、クロメさんも……」
「天使がいると思ったら、さあやだったの。天使がさあやで、さあやが天使で」
「ありがとう。今度のオーディション、地上に降りた天使の役なの」
「もう一回やって」
「えっ?」
「ワンモア、ワンモア」
はなが見たいと急かし、さあやはもう一度やってみせた。
「暗クテ何モ見エマセン」
何故か片言になっていた。もしかしてさあやは……
「さあや、見られてると恥ずかしくなったとか?」
「ミナトくん……そうなの。人に見られているとこうなっちゃうの。特にオーディションは駄目」
さあやは語った。昔は何も考えずに役を演じることができたけど、周りの大人達からのプレッシャーに負けてしまい、役を演じることが分からなくなったみたいだった。
悲しそうな顔をしているさあやにはなは思いっきり水をかけた。
「わぁ!冷たい!何?」
「さあやがこんなかおしてたから」
はなに続いて、ほまれも水をかけ始めた。
「もう、ほまれまで……」
「ねぇ、さあやはどうしてオーディションを受け続けてるの?」
「それは……きっと自分の気持ちがわかりたいからだと思う。答えが分からないままあきらめたくない」
「別に悩めばいいじゃん。私達がそばにいるし」
「はな、ほまれ……」
「さあやは母親の七光りで野菜少女の役を手にしたって言うわけじゃないだろ」
「ミナトくん……うん」
「だったらそれはさあやの実力だよ。自分に自信を持て」
「自身……ありがとう。ミナトくん」
さあやが笑顔でお礼を言う中、クロメはある事を言い出した。
「七光……アレとは違うんだね」
「あれは七光を思いっきり利用して自由にやっていただろ。さあやにはあんなふうになってほしくない」
「うん」