クライアス社
「おや、ルールー、出撃かい?」
「ドロテア様。あなたも出撃ですか?」
「妾は出撃せん。行くとするならコスミナが調整のために出撃するくらいかの。にしてもお前が出撃するとは珍しいことがあるものじゃな」
「パップル様が彼氏と出かけるということで代わりに……」
「……機械人形とは言え、嫌なことは嫌といったほうがいいぞ。まぁ上司に逆らえないようにプログラムされているから仕方ないだろうが……まぁ行くならコスミナも連れていき、データを取っておいてくれ」
「了解しました。所でドロテア様。前回負傷したイゾウ様はどうなさっているのですか?」
「奴か。奴ならハイトが作った皇具の調整に入っておる。そのうち面白いことになるであろうな」
「上には報告は?」
「もう報告済みじゃ。では任せたぞ」
「わかりました」
さあやのオーディションの日、はな、ほまれ、ハリー、はぐたん、俺、クロメでさあやを見送りに来ていた。本当はチェルシーも呼んだんだけど、どうにもクロメと顔を合わせるのは嫌だとか……まぁ殺された相手だから仕方ないけど……
「ここからは一人で大丈夫」
「応援しとるで」
「さあや、これ、はぐたんとみんなで作ったの。プリキュア三人でお揃いのやつ」
はなはアクセサリーをさあやに渡し、自分たちのも見せるのであった。本当は俺達のも作ろうかという話だったけど、何というかこういうのは恥ずかしいのでやめた。
「ありがとう」
俺らはさあやを見送ったあと、オーディション会場からざわめきが聞こえてきた。どうやら蘭世がさあやにプレッシャーを与えるために余計なことを言ったみたいだ。
「あの子……わざとみんなに聞こえるように」
ほまれはそれを聞いて怒るが、クロメが止めに入った。
「プレッシャーをかけるというのは悪いことじゃない。戦略の一つだよ」
「そうだけど……」
「ふふふ、それだったらこっちは……」
はなはミライパットを使い、はなとほまれの二人がキャビンアテンダントの姿に変わった。
「な、何をするつもりや?」
「それはもちろん、さあやの緊張を解きに行ってくる」
「なるほどね。行こう。はな」
はなとほまれの二人がオーディション会場に入っていくのであった。何というか友達のためにここまでするなんてすごい奴らだな
「一人じゃないから」
「フレフレさあや」
二人がさあやに声を掛ける中、俺は審査員の中のひとりが笑っているのに気がついた。
「どうかしたの?」
「いや、あそこの審査員……何だか安堵しているような……」
気のせいかな?すると二人から元気をもらったのかさあやが演技を始めた。
「分からない。暗くて何も見えません。わたしはわたし、私の道は私が開く」
さあやはプレッシャーもなくなり、演技を終えるのであった。これも二人のおかげだな。
俺はとりあえず帰ろうとした瞬間、蘭世が倒れ込む姿を目撃した。蘭世の身体からトゲパワワが溢れているのが見えた。
「はな、ほまれ!?」
「これって……」
「クライアス社の……」
会場の外から大きな音が響いていた。もしかしなくてもやってきたっていうのか……
「さあや!!」
「う、うん、みんな……」
「オーディション参加者の皆さんは避難して下さい」
審査員の一人が避難誘導を始めていた。何だかどうにも動きが早すぎる。他の参加者や審査員が避難を終えるとその審査員の姿がチェルシーに変わった。
「ふぅ」
「チェルシー、お前……」
「さあやの事が心配でね。何とかサポートできないかって思って……まぁはなとほまれのおかげでなんとかなったみたいね」
いつの間に……というかお前が化けていた審査員は大丈夫なのか?そこが心配だけど、今はクライアス社をどうにかしないと
「クロメ。行くぞ」
「うん」
「あぁ、クロメ、ちょっといい?」
外に行こうとするとチェルシーがクロメを呼び止めた。チェルシーは笑顔でクロメに向かってあることを頼んだ。
「私は戦闘向きじゃないから一緒に戦えないけど、ミナト達のこと頼んだよ」
「……うん、任せて」
クロメも笑顔で答えるのであった。これはこれで関係はよくなったのか?
外に行くとオシマイダーとその足元にはこの間戦ったコスミナの姿があった。はなたちはプリキュアに変身し、俺は斧を装着すると空から円盤が現れた。
「現れましたね。プリキュア、帝具使い」
「誰だ?というかそれは何だ?あれも車とかそういうのか?」
「いや、違うから。UFOだよ」
「よく分からないんだけど……」
「ミナトくん、今は戦いに集中しよ」
キュアエールに注意されてしまった。だってこっちは本当に知らないことが多いんだから仕方ないだろ。
キュアエールはオシマイダーに向かっていくがあっさり攻撃が避けられ、思いっきり反撃を食らっていた。
「エール!?だったら……はぁ!!」
キュアエトワールが攻撃を繰り出すが、予想打にしなかった動きをされ、オシマイダーの反撃を食らっていた。
「プリキュアのデータは把握済み。キュアエールは直線的で読みやすい。キュアエトワールは身体能力は高いけど、思いがけない出来事に対しては非常にもろい。そしてキュアアンジュ」
オシマイダーが攻撃をキュアアンジュに繰り出そうとするが、キュアアンジュはハートフェザーで防ごうとする。
だがハートフェザーの障壁をオシマイダーが簡単に打ち砕いていた。
「戦闘能力は最も低く、得意のバリアーも私のオシマイダーで破壊可能。そして帝具使い、ミナト、クロメの二人の行動は……」
俺とクロメはオシマイダーを操っているUFOにのった少女に向かって攻撃を繰り出そうとするが、寸前の所でコスミナが目の前に現れ、鋭い攻撃で吹き飛ばされた。
「私たちを直ぐ様攻撃する行為が見られますが、防ぐだけで十分です。あなた達だけではオシマイダーを倒すことはできません」
「あははは、ドロテアに調整してもらって、一部分だけこんな風に変化できるようになったんだよ」
コスミナの両手は虫が持つ大きな鎌に変わっていた。あれはタツミに聞いてたコスミナの危険種姿の一部っていうのか?こんな事ができるようになるとはな……
「クロメ、どうする?」
「両腕を斬り裂くことができれば、何とか……隙作れる?」
「一瞬だけで十分か?」
「十分」
「それだったらレガオン!!両腕装着!!」
俺の呼びかけに応えるようにレガオンが両腕に装着し、真っ赤な篭手に変わり、コスミナに向かって連打を繰り出した。
「おっととと、殴るだけじゃ逆に切り裂いちゃうよ~」
「クロメ!!」
「はぁ!!」
コスミナが俺の方に気を取られ、横から迫ってきたクロメに気が付かなかった。クロメは思いっきり八房を振り落とし、コスミナの両腕を切り裂いた。
「ぎゃあああああああ!?」
「コスミナ様……」
「そこの女!?データとか何とか言ってるけど、人間の凄さっていうのを知ったほうがいいぞ」
俺がそう告げた瞬間、キュアアンジュから青白い光が眩く照らしていた。
「私は諦めない!何故ならミナトくん達……はなとはまれを守りたい気持ちは誰にも負けないから!!フレフレ・ハートフェザー!!」
ハートフェザーの障壁がオシマイダーに向かっていき、オシマイダーを吹き飛ばした。俺は吹き飛んできたオシマイダーを思いっきり殴り、地面に叩きつけた。
「今だ!!キュアエール!!」
「フレフレ・ハート・フォー・ユー!」
キュアエールの攻撃で、オシマイダーが浄化され、両腕を切り裂かれたコスミナは気絶し、UFOの中に吸い込まれるのであった。
「プリキュア、帝具使い………もう少しデータ改善する必要がありますね」
無事、戦いも終わり、オーディションの結果はさあやは落ちてしまったけど、満足そうにしていた。
「オーディションを受けてよかった。女優になりたいかはまだ分からないけど、自分の心をきちんと見つめて頑張ろうって思えたから」
さあやは前に勧めたのだな。それにこの二人も
「ふふふ、クロメちゃんってお姉ちゃんに似て、綺麗な髪だね~」
「そ、そう?」
「もしアカメがこっちに来た時のために、うんとおしゃれして驚かせちゃおう」
「う、うん」
クロメとチェルシーも前に進めたんだな。まぁウェイブはクロメを取られてちょっと悔しそうにしてるけど……
「ほまれ……」
ふっと気がつくと見知らぬイケメンが現れ、ほまれに近づき……
「やっと会えた」
抱きついていた。