実力派エリートの弟   作:唯一無二の緑刀使い

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迅悠一②

 

 

 

「こりゃ、やべえな。あいつの目マジだぞ。下手に突っ込んだら二人がかりでもやられるな」

 

「分かっている」

 

何度もランク戦や模擬戦で負けた事がある米屋とたまにしか悠紀の戦う姿を見ない三輪。そこに意識の差が生まれたのか、三輪は前に出ようとした。

そこで三輪、米屋の頭上を光の筋が通り過ぎた。

 

「三輪、一旦下がれ!」

 

それは出水が放った放った弾丸だった。

その弾丸の数発が地面や塀に着弾すると爆発し、煙を上げた。かなりの数の弾丸は悠紀の方に向かったが、悠紀にダメージを与える可能性は低い。ダメージを与えられないと分かった上での目眩まし、時間稼ぎのためのものだろう。

彼もまた悠紀の恐ろしさを何度も味わった人間である。今の行動はその恐ろしさを知った上での判断だった。いや、その恐ろしさを知ったつもりに()()()()()上での判断だった。

 

ただ一つ読み間違えた点があるとすれば。

 

そもそも悠紀は誰でも見られるような模擬戦・ランク戦で自身の強さの底を見せていない。出水や米屋との模擬戦・ランク戦はもちろん、忍田との公開模擬戦とて例外ではない。もっとも、それは忍田も同様だが。

つまり何が言いたいのか、悠紀は普段弾丸が飛んで来た場合必ずと言って良いほどシールドでガードしている。そしてその時、動きが止まるのだ。これはアサルトライフルを使っていた先ほども同じ。三輪達が下がる時間を稼ぐために出水はそれを狙ったのだ。だが、

 

 

「遅い……」

 

「っ……!?」

 

出水の目線の先数十メートルの位置にいたはずの、聞こえるはずのない悠紀の声が背後から聞こえた。それはまるで死の宣告。静かな声でいて、はっきりと聞こえてくる声だった。

出水は咄嗟に声の発せられた元を確認しようとしたがそれは叶わなかった。

 

「速過ぎ……だろ……!?」

 

出水の目に最後に飛び込んできたのは天地が逆転し、三輪と米屋の首から上を失った姿だった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

上空に三つの光の筋が走った少し後。

歌川の姿はもはやなく、悠一の目の前には満身創痍で満足に動く事も出来ない太刀川と風間の姿があった。それに対して悠一は五体満足でゆらゆらと風刃の光の帯を揺らめかせている。

 

「あっちも片付いたみたいだし、こっちももう終わりだな」

 

「なるほどな。いずれ来る実戦に備えて手の内を隠していたという訳か」

 

地面に伏す風間はなんとか顔を上げて悠一を睨む。

 

「あいつにああ言った手前、俺も本気でいかないとあいつに会わせる顔がないんでね」

 

ああ言ったというのは数日前の玉狛支部の屋上での出来事である。

ボーダーの中に仲間は数多くいれど、真の意味で心の内を語り合えるのは残された唯一の家族であり、唯一の兄弟である悠紀だけである。

 

「あんた達は強い。黒トリガーに勝ってもおかしくないけど風刃と俺のサイドエフェクトの相性が良すぎるんだ」

 

「だが、風刃の性能は把握した。正式入隊日までの間に必ずお前らを倒して黒トリガーを回収する」

 

太刀川もなんとか目線だけを悠一に向ける。

 

「残念だけど、そりゃ無理だ」

 

再び迸った斬撃が太刀川と風間を斬り刻んだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

本部の精鋭部隊を撃破した後、悠一は悠紀に言った通り風刃を本部に差し出した。そこで城戸とひと悶着あったが、その結果遊真のボーダー入隊を認めさせる事に成功した。

 

そして玉狛支部。

 

「あ、迅さん、悠紀君お帰り~」

 

戻ってきた悠一と悠紀を真っ先に出迎えたのは宇佐美だった。

 

「お疲れ様です」

 

「最近いなかったけど、どうしてたの?」

 

宇佐美に修、遊真が続いた。

 

「実力派エリートはあっちこっちで大人気なんだよ」

 

「右に同じ」

 

「遊真はボーダーのトリガーに慣れてきたか?」

 

「しおりちゃんに色々教えてもらったからな。こなみ先輩に勝ち越す日も近い」

 

遊真は悠一に拳の親指を立ててドヤ顔を向けながら答えた。

 

「ほぉ、これは期待出来るな。メガネ君は訓練進んでる?」

 

「えーと、そのぼちぼちです」

 

「とりまる君はバイトで忙しいからねー」

 

「でも特訓メニューは組んでもらってるんで……」

 

「京介は教えるの上手いから大丈夫だな。でももし何かあったら聞くよ。悠紀が」

 

格好よく相談を受け付けると言うのかと思えば悠一の指は悠紀に向かっていた。

 

「兄さんじゃないんだ……まあ、アタッカー関連の相談なら聞けると思うけどそれ以外は参考程度で良いなら相談に乗るよ」

 

悠紀は昔から技術を磨いていた弧月を含めてスコーピオン、レイガストなどのアタッカー用トリガーの事ならちゃんと他人に教える事が出来る。だが、ガンナーはともかくシュータートリオンに頼っている部分があるので完全に他人に教えられる訳ではない。弾丸のコントロールなどは教えられるが、相手を殲滅する方法などは教えられないのだ。

 

「でも今日は疲れたからまた今度ね」

 

そう言って悠紀は一番近かった宇佐美が座っているソファーに腰を下ろした。そしてテーブルに広げられていたお菓子をつまんだ。

 

「じゃ、俺は寝るから。おやすみ~」

 

悠一はお菓子を一つつまんだ後、悠紀のようにソファーに腰を下ろす事なく自室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠一はぼんち揚の箱が積み上げられた自分の部屋の明かりをつける事なくベッドへ直行した。そして全身の力を抜いてボスッとベッドに倒れこんだ。

 

「ふ~~」

 

 

──お前は意味不明だな。

 

 

──風刃はお前の師匠の形見だろう。

 

 

会議室で城戸と“交渉”をした後に待ち構えていた太刀川と風間の言葉が脳内で再生される。

確かに誰かが同じような事をしていたら自分もそう考えるだろうと思う。貴重な黒トリガーを、それも自身の師匠の形見を自ら手放すなど普通はあり得ないのだ。だが、

 

「大丈夫だ……未来はもう動き出してる」

 

未来は確実に良い方向に向かっている。

瞼を下ろそうとした時、部屋の扉が開いた。

 

「兄さん、もう寝た?」

 

「どうした?下でみんなと喋ってたんじゃなかったのか?」

 

「お菓子を2、3個つまんだだけだよ。それよりさ……」

 

そこまで言って悠紀は悠一のベッドに潜り込んだ。

 

「今日、一緒に寝ない?」

 

「お前がそんな事言ってくるなんて珍しいな。甘えん坊さんか?」

 

「落ち込んでる兄さんを励ましてあげようと思っただけだよ」

 

「そうかそうか。優しい弟を持つ俺は幸福者だな」

 

今はおちゃらけたように言っているが事実、自分には勿体ないほど良くできた弟だと思う。普段仲良くしていた者を敵に回してまで兄の手伝いをするなどそう簡単に出来る事ではない。

 

「それに俺は兄さんがみんなのために身を粉にして動いてるのも知ってる。俺はあの時何も出来なかった」

 

あの時、というのは約五年前、所謂旧ボーダーの同盟国で戦争が起こった時だ。その時、悠紀は年齢的な理由や誰かは残っていた方が良いという理由から旧ボーダー本部、現在の玉狛支部で留守番になっていた。

 

「でも今はあの時の何倍も強くなった。だから二度とあんな事を繰り返さないように頑張る兄さんの力になれる。俺もあの時誓ったんだから。一人で抱え込んでる兄さんの力になるって」

 

「そっか…………ありがとな」

 

「え?何か言った?」

 

「何もないよ。それより寝よ寝よ。おやすみ~」

 

「うん、おやすみ」

 

暫くして規則的な呼吸音が聞こえてくると、悠一はじっと悠紀の寝顔を見つめる。

 

(分かってないんだろうなぁ。自分がどれだけ俺の心の支えになってるか)

 

悠一は自分の手を悠紀の顔に近付けていき、頬に軽く触れた。時々寝言が漏れてくるが、気にせずに触れ続ける。

たまに見せる可愛い一面に悠一はつい笑みを漏らした。

 

 




今更ながら少し変えただけでいちいちトリガーセットを書いても仕方がないと思ったので、かなり特殊なトリガーセットの場合以外は書かない事にしました。
ただし、要望があれば公開します。
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