実力派エリートの弟 作:唯一無二の緑刀使い
ある日の休日
玉狛支部の面々は戦闘から家事まで何でもござれのパーフェクトオールラウンダー木崎レイジが作ったトーストを食べて朝を過ごしていた。玉狛支部のお子様こと陽太郎は鼻で風船を膨らませながらトーストを食べるという器用な真似をしたいた。少し無言の間が広がると、食べ終えたのか悠一が席を立った。
「兄さん、どこ行くの?」
「ちょっと防衛任務だよ」
「俺もついて行って良い?」
「う~ん、そう言えば東さんが悠紀のこと呼んでほしいって言ってたような気がするな」
「東さんが?」
「ああ。そっちに行った方が良いって俺のサイドエフェクトが言ってるよ」
「じゃあそっちに行こっかな」
今はB級のチームを率いているが、かつて悠紀がまだ隊として活動していなかった頃にA級一位の部隊を率いていた東はボーダー内で人気者だ。たまに焼肉を奢ってくれたりもする。かく言う悠紀も東さん信者の一人である。その東が呼んでいるとあれば行かない手はない。と言っても暇だったから悠一について行こうとしていただけなので東でなくても行っただろうが。
「でも本部か、ちょっと遠いな~」
そこで悠紀はチラチラとレイジの方を見る。
「レイジさ~ん、本部まで連れていってくれたら嬉しいな~、なんて」
「今日は用事があるから無理だ」
あの後、結局悠紀は林藤に本部まで連れていってもらうことになった。
◆◇◆◇◆◇
「東さん、悠紀で~す」
「おお、わざわざ本部までよく来てくれたな」
「暇だったから全然大丈夫っす」
「そう言ってもらえると助かるよ」
悠紀は東隊の隊室を訪れていた。東は悠紀を出迎えたが、他のメンバーは留守だった。
「それで悠紀を呼んだ理由なんだけど……」
「「「オッス、東さん!」」」
東が理由を言いかけた瞬間、突然東隊隊室の扉が開いた。勢いの良い声と共に入って来たのはA級3バカこと太刀川隊の出水と三輪隊の米屋、草壁隊の緑川だ。
「こいつらが普段個人戦ばっかりやってるから、たまにはチーム戦も良いかなと思ってな。悠紀には俺とチームを組んでほしいんだ」
「へぇ、それってもしかして今から?」
「東さんと悠紀のチームとか面白そうじゃん。早くやろうぜ!」
悠紀と東の会話に割り込む米屋だったが、悠紀や東を含めて早く戦いたいと思っているのか誰も咎めなかった。悠紀としても、ボーダー内で戦術に関しては1、2を争う東とチームを組めるのは嬉しい事だろう。
「よし、じゃあ行くか」
『俺は援護するからバンバン突っ込んでくれていいぞ』
「了解っと」
もはや作戦とは呼べないような作戦会議を内部通話で済ませると悠紀は一人で歩き出した。因みにフィールドはオーソドックスな市街地フィールドだ。
東はスナイパーの為、当然だがバッグワームを起動しているが、悠紀はバッグワームを起動していない。と言うより今はバッグワーム自体をセットしていない。
「ん?」
悠紀の上空からトリオンの弾丸が襲い掛かる。それを最小限のシールドで防ぐ。この程度は何でもないと言わんばかりに悠紀は歩みを止めない。すると、再び上空からトリオンの弾丸が襲来した。やはり悠紀はシールドで防ぐ。だが、今度は弾丸がシールドに当たった瞬間爆発した。
「メテオラか……」
悠紀の周りを煙が覆い、突如背後から悠紀に向かって長細いブレードが伸びた。完全な奇襲、視界を奪われた今の状態ではまともに敵の位置を把握するのも難しいだろう。普通なら飛び退くなどをして煙から脱出する。しかし、悠紀は動かない。
刹那、煙のせいでよく見えないが、ボーダー隊員で唯一悠紀だけが使う緑色のブレードの弧月が抜き放たれた。
「……やっぱこれぐらいじゃ駄目か」
煙が晴れたところには片腕を無くし、自身のトレードマークとも呼べる槍の弧月も失い膝をつく米屋と緑色の弧月の刃先を米屋に向けて立っている悠紀がいた。
「俺に奇襲は通用しないからね」
そう、悠紀には自身の持つサイドエフェクトの恩恵によって奇襲が通用しない。通用しないと言うと語弊があるかもしれないが、悠紀は人や動物、物の気配を感知する事が出来る為、奇襲に対応する事が出来るのだ。そうなればもうこっちのもの。悠紀の実力を持ってすれば、奇襲の一撃に意識を大幅に割いた相手を捌く事など容易い。
米屋に向かって弧月を振り下ろそうとしたその時、悠紀は突然巨大なトリオンキューブを展開した。そしてそれを細かく分割し、背後に向かって放った。放たれた弾丸の群れはカクカクと曲がって悠紀からは見えない場所へ向かっていき、数秒後悲鳴と共に一条の光が立ち上った。
「あらら」
「緑川の奇襲も失敗した事だしそろそろ落ちてもらうよ」
そう言って悠紀は弧月を振り下ろし、米屋はベイルアウトした。
ほぼ同時に東の狙撃によって出水はベイルアウトした。そして出水のベイルアウトをもって、ただいまの模擬戦は終了した。
「あ~、やっぱこの三人だけでであの二人を相手にするのはキツイな」
「弾バカ、誰が増援呼んでこいよ」
「はぁ?お前が呼んでこいよ槍バカ」
呆気なくやられた弾バカこと出水と槍バカこと米屋は些か反則のような事を言い出した。と言ってもその役割の押し付け合いをしているので実現する可能性は低いが。
「ちょっと止めてよ二人とも。今度来れる人全員集めてやれば良いじゃん
いつもはこの二人と同じバカのポジションだが、珍しく緑川は二人に注意した。
「それもそうだな」
「んじゃ、一発くらい決めてやろうぜ」
二人も本気で誰かを呼んでくるつもりはなかったようで、簡単に緑川の言う事を聞いた。ただし、一発を決めるのは難しそうだ。
東の狙撃を警戒して出水は建物に囲まれて射線が通らない場所にいた。
「とりあえずデカいの一発いくぞ」
『よっしゃ』
『いつでも良いよ』
米屋と緑川の返事を聞くと出水は両手に一つづつトリオンキューブを展開し、それぞれをくっ付けるように近づけた。
「メテオラ+バイパー───トマホーク」
メテオラとバイパーの二つの性質を兼ね備えた弾丸が建物の間から放たれた。
今回は米屋だけでなく、緑川も同時に仕掛ける予定だ。どうせ気付かれるのなら二人で仕掛けた方が勝率は高いはずという考えからなのだが、最初の出水の攻撃で煙幕を張るという部分は変わっていない。
米屋と緑川は出水が放った弾丸が悠紀に向かって飛んで来るのを確認すると、いつでも攻撃を仕掛けられるように自身の武器を握りしめる。そして、一歩踏み出そうとした瞬間、
「……旋空弧月」
悠紀は目にも止まらぬスピードで旋空を発動し、出水の放ったトマホークを全て打ち落とした。
「は?」
「え?」
まさかこんな結果は予想していなかったのだろう。二人は突然の事に固まった。
そんな隙を悠紀が見逃すはずはなく、米屋と緑川は悠紀の旋空によって仲良くベイルアウトした。
「後は出水先輩だけか」
悠紀は先程のトマホークが飛んで来た方向へ走り出した。
「メテオラ」
悠紀は出水の周りの建物に目掛けてメテオラを放ち、建物を吹き飛ばした。そして出水の姿が丸見えになる。が、出水は諦めていないようで両手にトリオンキューブを展開した。
「俺だけで勝ってやるぜ。アステロイド!」
出水は後ろに跳びながら悠紀に向かってアステロイドを放った。弾バカと呼ばれるだけあってその狙いは正確だ。並みのアタッカーなら屠るような攻撃だが生憎悠紀は並みではない。それに開けた場所でそんな事をすれば、当然スナイパーの格好の餌食となる。
案の定東は出水に向かって弾丸を撃ち出し、出水の体は綺麗に貫かれた。
「うっわ、東さんのこと忘れてた」
出水はベイルアウトした。因みに出水のアステロイドは全て防がれた。
途中でアサルトライフルを使ったり、バイパーの雨を降らせたりしながら何回か模擬戦を繰り返した後、悠紀は東にジュースを奢ってもらっていた。相手の三人は反省会でもしているのかまだ来ていない。悠紀と東は自動販売機の横にあるベンチに腰を下ろした。
「今日はありがとう。一つの型に捕らわれない悠紀との戦いはあいつらにも良い刺激になったと思うよ」
「俺も東さんと組むのは新鮮だったし、誘ってくれたらいつでも行きますよ」
「そっか。じゃあ明日も休みだしお礼も兼ねて焼肉でも行くか」
「お~、さっすが東さん」
その後、悠紀と出水、米屋、緑川は東の奢りで焼肉を食べに行った。
今回の3バカ戦のトリガーセット
メイン
・弧月
・旋空
・アステロイド:突撃銃
・ハウンド:突撃銃
サブ
・バイパー
・メテオラ
・シールド
・free
今回はこんな感じでした。