実力派エリートの弟   作:唯一無二の緑刀使い

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次回から原作に入っていく予定です。




迅悠紀③

玉狛支部にある仮想訓練室に悠紀は一人で立っていた。服は悠一と同じく青いジャケットに白いシャツ、そして腰には黒い鞘の弧月が提げられている。他に誰がいる訳でもないが、弧月の柄の部分に手を置いている。暫く無言で立っていると仮想訓練室の中に機械を通した宇佐美の声が響いた。

 

『準備は良い?』

 

「いつでも良いよ」

 

悠紀は待っていたかのように返す。

 

『じゃあ、よーい……スタート』

 

宇佐美がそう言うと、仮想訓練室の中にたくさんの赤色で拳程の大きさのバルーンが浮かび上がった。高さは丁度悠の肩の辺りで近い物は10メートルから遠い物は40メートルの位置にランダムに配置された。

悠紀は目を瞑り、弧月を引き抜く。引き抜くと同時に発動された旋空がすぐ近くのバルーンを斬った。そして更に連続で旋空を発動したことで、仮想訓練室には斬撃が吹き荒れる。悠紀が弧月を鞘に戻したときには全てのバルーンが斬られていた。

 

『お~、お見事!記録4秒15だよ』

 

「んー、まあまあかな」

 

そう言いながら悠紀は訓練室を出た。これは悠紀が毎朝行っている日課だ。訓練室の扉を跨ぐと同時に悠紀は換装を解いたが、生身でも悠一と同じ服装の為違いは弧月があるか無いかしかない。とは言え、トリオン体でも弧月を提げていない事がたまにあるので端から見れば生身かどうかは分からない。

 

「そう言えば小南先輩、悠紀が小南先輩のこと可愛いって言ってましたよ」

 

リビングに戻ろうと扉に手を掛けると烏丸の声が聞こえてきた。悠紀には心当たりが無いことなのでまたお得意の嘘を言っているのだろう。

 

「えっ?そうなの?あいつも遂にあたしの魅力に気付いたのかしら」

 

「まさかまさか。小南より宇佐美先輩の方がよっぽど魅力的だよ」

 

小南が程よく勘違いをしはじめたところで悠紀はリビングに入った。ついでに可愛いというのを否定しながら。

 

「ゆ・う・き?先輩を付けなさい先輩を!」

 

「え~、俺と小南の仲じゃん。今更先輩面しなくても」

 

「チビのくせに~~!」

 

騙された事よりも先輩呼びしてもらえない事に噛みつく小南。これはいつもの光景なので誰も突っ込まない。例え自分の存在を忘れられていたとしても。そう、大人の烏丸は子供同士の言い合いに突っ込んだりしないのだ。

 

「ところで二人はいつになったら付き合うの?」

 

「はっ!?」

 

小南はいきなりの事に声を上げた。どうやら烏丸は忘れられていなかったらしい。しかし、悠紀はかなりの爆弾を落としていった。

 

「な、何言ってるのよ!とりまる、あんたも何か言ってやりなさいよ」

 

「え?よく聞こえなかったな」

 

「ふ~~ん」

 

顔を赤くした小南とわざとらしく嘘をつく烏丸を見て悠紀はニヤニヤしながら二人を見つめる。暫くの間無言の間が広がり、気まずい雰囲気がこの場を支配する。ただし、悠紀はニヤニヤしたままだ。

 

「おーい、悠紀、何やってんだ?」

 

リビングに悠一も入って来た。それで一転、和やかな雰囲気が広がった。

 

「買い出しに行くんだろ?」

 

「そうだった。じゃ、そういう事で!」

 

悠一と共に悠紀は颯爽と去っていった。ボーダーで一位という肩書きを背負っているがたまに見せる子供っぽいところを見て微笑ましく思うが、二人だけで残された小南と烏丸の間には再び気まずい空気が流れたとか流れなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の夕食当番の悠紀は丁度非番だった悠一に買い出しについてきてもらっていた。そしてスーパーマーケットの中、何も入っていないかごを持っている悠紀とその横を歩く悠一。

 

「何買うか決めてるのか?」

 

「ん~、適当にカレーで良いかなって思ってるんだけど兄さんは何か希望ある?」

 

「俺はお前が作る物なら何でも良いよ」

 

「こういう時は何でも良いが一番困るんだけど」

 

「いやー、悠紀に任せた方が良いって俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

ボーダーの運命を左右するような場面で使われる名言をこんなところで使う悠一に悠紀はジト目を向ける。

 

「ハハハ、カレー、カレーにしよう!うん、それが良い」

 

悠紀から向けられるジト目に耐えられなくなったのか悠一はカレーコーナーへ早足で向かった。流石の実力派エリートも愛する弟には勝てないという事なのだろう。

 

「ルーは兄さんが取りに行ったから、後は適当に具材かな」

 

悠紀は野菜コーナーに足を運んだ。幸い今の時間は人が少ないので誰にも邪魔される事なく品物を選ぶ事が出来そうだ。

悠紀は一つの品物の前に立つと、主婦のように目の前のニンジンとにらめっこを始めた。

 

「大きい二本と少し小さい三本、どちらにすべきか……」

 

悠紀だけでなく玉狛支部の面々はボーダーで結構な額を稼いでいるのでそこまで節約を気にする必要はないのだが、 悠紀は目の前の二択にウンウン唸る。とその時、スーパーマーケットの入り口の辺りで叫び声が響いた。

 

「きゃぁぁ!!」

 

「ネ、ネイバーだ!!!」

 

直後、叫び声の元の近くにトリオン兵らしき気配を感知した。悠紀は持っていたかごを投げ出して、駆け出した。そして走りながらポケットからトリガーホルダーを取り出してトリオン体に換装し、客達の上に“グラスホッパー”を出現させ、それを踏み台にして一気に加速した。

 

「なんでこんな所に……」

 

そう言いながら悠紀は自身の一種のトレードマークでもある黒い弧月をいつでも抜けるように手を置いている。

ネイバーから逃げるため、人々との間にに自然に空いた空間に出ると悠紀は空中で弧月を引き抜いた。

 

「旋空弧月」

 

図上から振り下ろされた旋空に左右に鎌のようなブレードを持った蜘蛛のような形のトリオン兵であるモールモッドはなすすべなく、弱点の目ごと綺麗に真っ二つになった。

それを見た者達は歓声を上げる。が、敵はそれだけではなかった。

 

「あ、あれは!?」

 

「まさか、まだ!?」

 

再び不穏な空気がこの場を支配した。空中に黒い穴が現れたのだ。敵がトリオン兵を送り込むときに使う門だ。門からはたった今悠紀に倒されたものとは別のモールモッドが足を覗かせていた。

 

「まったく……」

 

悠紀はダルそうに弧月を振る。ただそれだけの事で今まさにこの地に降り立とうとしていたモールモッドは真っ二つにされた。

 

「あー、こちら悠紀。警戒区域外の市街地で門が発生。現れたモールモッド二体を討伐したんだけど、これってどうすれば良い?」

 

悠紀は耳に手を当てて本部に向けてトリオン体常備の無線で呼び掛けた。

 

『たった今こちらも警戒区域外に発生した門を捕捉した。すまないが回収班が到着するまで待機していてくれ』

 

返答したのは悠紀と結構親しい本部長である忍田だ。ただし、仕事モードなのかいつもの砕けた口調ではなく改まった口調でだ。

 

「了解」

 

通信を切ると悠紀はキョロキョロと辺りを見渡す。すると、目に飛び込んできたのはスーパーマーケットの入り口のすぐ横に体重を壁に預けて腕を組んでいる悠一の姿。

 

「兄さん、これ()()()()の?」

 

「一応視えてたよ。お前がトリオン体になってるところはね。まあ、何かあってもお前なら大丈夫だと思ってたし。なんたって俺の弟なんだからな」

 

「まあいいや。それよりなんでこんなところに門が開いたんだろう」

 

「原因は分からないけど、こんな事がまた起きたら不味いな。今回は俺達がいたからよかったけど」

 

ちゃっかり戦っていない自分の分までカウントしている悠一だったが、悠紀は気にしなかった。そんな事よりもたった今警戒区域外に開いた門の方がよっぽど重要だったからだ。

 

「まあ、何にしてもとりあえず本部に行かないとなぁ。買い物の途中だけど」

 

「仕方ないから今日の当番は代わってもらうようにレイジさんに言っとくよ。兄さんは“これ”見張っといてね」

 

「ほーい」

 

気の良い返事を聞いた悠紀は換装を解き、携帯を取り出した。そして数ある連絡先の中からレイジの名を探す。

 

(にしても、近くにボーダー隊員がいなかったら大惨事だった……早急に対策を考えないといけないな)

 

この先の事を考えて頭が痛くなる悠一だったが、慌ただしく電話を掛ける悠紀を見てひとまず頭の隅に置いた。

 

 

だが、そう楽観出来る状況ではない。こうしているうちにも()()()()()()を脅かす魔の手は確実に忍び寄ってきていた。

 

 

 

 




今回の仮想訓練&スーパーマーケット訪問時のトリガーセット

メイン
・弧月
・旋空
・free
・free

サブ
・バイパー
・スコーピオン
・シールド
・グラスホッパー

今回はこんな感じでした。
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