実力派エリートの弟 作:唯一無二の緑刀使い
市街地の上空を旋回する大型のトリオン兵イルガーの片方は一刀流弧月の旋空によって真っ二つにされ、木虎が中途半端にダメージを与えたため自爆モードに入ったもう一体は二刀流弧月の旋空によって4つのパーツに解体された。
トリオンが足りないため武器を生成出来なかった修は自身に出来る事を考え、住民の避難を助けた。その時住民達から家が壊れた、店が壊れたなどの苦情が出たが、木虎が見事に対応した。
そんなこんなでボーダー本部の扉の前。
「ここから先はボーダー隊員しか入れないわ」
「そうか。じゃ、何かあったら連絡しろよオサム」
「分かった」
自身のトリガーホルダーを扉のセンサーにかざして木虎と修は基地の中に入っていく。だが、悠紀は二人に続かずに立ち止まった。
「俺は玉狛に帰るからあとは頼んだ木虎」
「ふん。言われなくても」
木虎と一言を交わし、扉が閉まるのを確認すると悠紀は遊真に向かって口を開いた。
「ここ警戒区域内だから送っていくよ。空閑、いや、遊真って呼んでいい?俺のことも悠紀でいいから」
「いいよ。ユウキ」
それから少し歩き、基地から程よく離れたところで悠紀は少し歩くスピードを緩めた。
「遊真、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん、何?」
「間違ってたら謝るけど……」
そこで悠紀はもったいぶるように少し間を空けた。
「もしかしてお前って
それを聞いた遊真はすぐに悠紀との距離を取り、警戒度を一気に引き上げた。
「あ、いや、別に捕まえようとかそういうのじゃないから安心して。俺はむこうの世界に何回か行った事あるしむこうの世界にも良いやつがいるのも知ってるから」
「……どうして分かったんだ?」
距離を取り警戒したままで遊真は口を開いた。
「そうだなぁ、まず一つ目はこの大事な時期に、しかも三門市に引っ越してきた事」
悠紀達は中学三年生で今はもう冬だ。ボーダー隊員はボーダー推薦で高校に通う事も出来るが、受験を控える受験生にはかなり大事な時期だ。それにこの三門市には常にネイバーが出現するのだ。出ていく事はあっても逆に引っ越してくる人間は滅多にいない。
「二つ目は“空閑”という名字。ボーダーの知り合いから昔に聞いた事があるんだ。空閑有吾っていう人にお世話になったってね。その人はむこうの世界に行ったって言ってたから。ぶっちゃけ空閑っていう名字の人は少ないし」
「ふ~ん、嘘はついてないようだな 」
「だから身構えなくても大丈夫だよ。俺は仲良くしたいと思ってるし」
「これも嘘じゃない、か」
悠紀の言葉を信用したのか遊真は警戒を解き、彼の元へ歩み寄った。遊真には嘘をついているのが分かるというサイドエフェクトがある。それで悠紀が嘘をついていないと分かったのだろう。
「そういう事だから何かあったら言ってくれたら手を貸せるかもしれないし。あっ、どこまで送ったら良い?」
「学校までで良いよ」
遊真がむこうの世界から来たという事からそれなりの話題はあるはずだが、何故か話は続かなかった。
「(オサムは気を付けろって言ってたけど良いやつそうじゃん。嘘ついてなかったし)」
『(うむ。確かに自爆モードのイルガーを斬るというのはオサムが言った通りの腕前だが、我々には協力的のようだ。オサムはああ言っていたが何かあった時は頼りになるだろう)』
遊真は悠紀に聞こえないようにレプリカと話していた。レプリカの触手のようなものは悠紀と反対側の耳に伸びており、悠紀には気付かれないようにしているが、
「その細いやつって何?」
悠紀にとって見えない事は問題にならない。
「えっ?」
『はじめましてユウキ。私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ』
ニュルッと現れた黒い炊飯器ことレプリカはあっさりと悠紀に自己紹介をした。
「あ、どうも。俺は迅悠紀。よろしく。俺の事は悠紀で良いよ」
『何故私の存在が分かったんだ?』
「あー、それは俺のサイドエフェクトのおかげ。俺のサイドエフェクトは人とか物の気配を感知するっていうものだから見えなくても分かったって訳」
『なるほど』
「へぇ、ユウキもサイドエフェクト持ってるんだ」
「も、っていう事は遊真も持ってるの?」
「ああ。俺のは嘘をついているのが分かるっいうやつだ」
「あ~、だからか」
──ふ~ん、嘘はついてないようだな。
悠紀は先程の遊真の発言の意味を理解したようだった。そういうサイドエフェクトを持っているなら納得出来るからだ。
レプリカが出てきてから会話が続き、二人はあっという間に警戒区域外まで来た。
「じゃあ、俺はこっちだから。また学校で会おう」
「分かった」
玉狛支部に帰る悠紀と学校へ向かう遊真はそこで別れた。
「俺以外のやつと話すのは珍しいな」
『ひとまずむこうは協力的だ。変に隠し事をする必要はないと判断した』
◆◇◆◇◆◇
「お、帰ってきたね。早速だけど試してほしいものがあるから訓練室に入ってくれない?」
「いいけど、どうしたの?」
悠紀が玉狛支部に帰ると待ち構えていたかのように宇佐美が駆け付けてきた。何やら新しいものでも開発したようだ。悠紀としても宇佐美の発明は面白いものが多いので嫌な気はしていない。
「それは入ってからのお楽しみだよ~」
それ以上聞くのは野暮だと思った悠紀はトリガーを起動しすぐに訓練室に入った。
「入ったよ?宇佐美先輩」
『よし、じゃあいくよ~』
スピーカー越しの宇佐美の声が響いた後、訓練室内には一体のモールモッドが生成された。ただし、普通のモールモッドではない。全身が透き通るような色で光沢を放っている。
『どう?急いで作ったやつだけど、“やしゃまるダイヤモンド”だよ~』
「昨日言ってたやつもう出来たんだ。流石宇佐美先輩だね。それじゃあ……旋空弧月」
旋空で拡張されたブレードが“やしゃまるダイヤモンド”へと向かう。弱点である目ではなく装甲の硬さを確かめるための一撃は足の部分へと向かった。
が、悠紀の放ったブレードは“やしゃまるダイヤモンド”の足を切断する事はなく、逆に弾かれた。
「うわ、硬っ!?」
悠紀は連続で背中の部分や腹の部分にも旋空で攻撃してみたが、全て弾かれた。
ボーダー内でも最高レベルの威力を持っている悠紀の旋空を弾くとなると今まで見たトリオン兵の中で最も硬いと言えるだろう。面白くなってきた。そう思った悠紀だったが、この“やしゃまるダイヤモンド”には致命的な欠陥があった。
「え……」
悠紀を倒すためにすぐに近付いてくるかと思われたが、実際には近付いてくることはなかった。更に言えばほどんど動いていない。ギギギ、と壊れた機械のように足を少しづつ動かしているのだ。
確かに硬さはかなりのレベルと言えるだろう。しかし、満足に動けないのであれば意味がない。
『いや~、硬さに重点を置いてたらそうなっちゃったよ』
発明に失敗は付き物。失敗は成功の母なのだ。
結局“やしゃまるダイヤモンド”は一旦お蔵入りとなった。
オリジナルで出てきたやしゃまるダイヤモンドの装甲はラービットより硬いという設定ですが、装甲にトリオンを使い過ぎてまともに動きません。
なお、後日鑑賞用として玉狛支部の面々に披露された模様。