プロローグ
新暦71年4月29日。ミッドチルダの臨海空港で火災が発生した。それは瞬く間に空港全体を飲み込んだ大規模災害となってしまった。本隊が到着するまでの間、偶々居合わせた管理局局員と現場の陸士108部隊、レスキューの特救チームでどうにか被害の拡大を最小限に留めている状態だった。全く手の足りない状況の中、初動に当たった局員の中には、当時、指揮官研修で地元部隊にいた八神はやて、偶々休みではやての元に来ていた高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの姿もあった。それからもう1人……
空港の地下ターミナル。周りを火災で塞がれ、身動きの取れなくなったスバル・ナカジマ(11歳)。彼女に出来たことと言えば、暑さと恐怖に耐えてガクガクと震える事だけ。
「痛いよ……暑いよ……怖いよ……誰か助けて……」
必死に声を絞り出すものの、辺りには誰もいない。やがて、目の前の石像が崩れ、それがスバルに向かって倒れてきた。もう駄目だと思い、スバルは恐怖で思わず目を瞑る。
「‥‥‥‥‥ジ‥‥‥‥グ‥‥‥‥ルド!」
と、その瞬間、遠くで何か聞こえた気がした。いくら時間が経っても、痛みは襲ってこない。一面の炎で暑かった筈だった周りも、何故か少し肌寒い。
恐る恐る目を開けたスバルが見たものは、辺り一面の銀世界。崩れかけた石像も含め、見渡す限りのものが全て凍っていた。その中心にいる、スバルの傍、肩で息をしている女性。
「ハァ、ハァ、ハァ。良かった、間に合った。助けに来たよ!」
青にピンクが特徴的なプロフェッサータイプのバリアジャケット。紫のロングヘアーに白いカチューシャがよく映えている。腕にはグローブ型デバイス。それに、育ちの良さを感じさせる整った顔立ち。スバルは思わず見とれる。
《司令、こちらソードフィッシュ01。要救助者の少女を確保》
《良し。今そっちに教導隊01が向かってる。合流したらその子を任せて、奥を頼む》
《ソードフィッシュ01、了解》
通信が終わると、丁度なのはが現場に現れた。
「よく頑張ったね。偉いよ。安全な地上まで、一直線だから!」
「じゃあ、なのはちゃん。この子お願いね?私は奥の要救助者の所へ」
「分かった。気をつけてね」
彼女は紫のロングヘアーをなびかせ、更に奥に進んでいく。なのはは桜色の魔法陣を展開し、レイジングハートを構える。
「ディバイーーン…………バスター!!」
桜色の閃光が天井を貫き、スバルを抱えたなのはは夜空を飛ぶ。
《流石は航空武装隊のエースオブエースですね!》
《救助したのはそちらのシルバーエースですよ。私はこの子を外に連れ出しただけです。そちらに引き渡したら私も現場に戻ります》
既にエースオブエースと呼ばれていたなのはだが、そこには傲りなどない。日々救助活動で命を助け、レスキューチームのシルバーエースと呼ばれる自分の親友のほうがよっぽど凄い。そう思っていた。
「君、お名前は?」
「スバルです。スバル・ナカジマ。あなたは?」
「私は、なのは。高町なのは。さっき氷の魔法で助けてくれたお姉さんは、月村すずかって言うんだよ。私の親友」
一方、ナカジマ三佐は、消化活動に向かったはやてと別れ、リインと供に部隊指揮をとっていた。
「しっかしよ、今の97管理外世界はどうなってるんだ?将来を熱望されてる執務官に、武装隊のエースオブエースに、レスキューの特救チームのシルバーエース。極めつけはキャリア街道まっしぐらのSSランク魔導師と来てる」
「みなさん親友の仲良しさんです!」
「だから言ってんだがな。特にあのシルバーエース、何て言ったっけ……あいつのお陰でかなりの人間が救われてるからな」
「月村すずか、さんです!」
港湾警備隊・ 防災課特別救助隊サードチーム防災士長、月村すずか二等陸尉。これはそんな彼女の、ちょっとイレギュラーな物語。