《10時方向から8発、8時方向から5発、4時方向から7発ですわ!》
「うん!」
もう10分程になるだろうか。すずかは雨のように降り注ぐフォトンランサーをひたすら避けていた。
《すずか!真後ろから来ますわ!》
「駄目!避けきれない!」
死角から走るフォトンランサーにギリギリで反応し、振り向き様にスノートライデントを振り上げ雷の軌道を逸らす。それが天井に当たって炸裂、瓦礫が舞い落ちる。その瓦礫が起こした土埃を目隠しに接近、プレシアに全力をぶつける。
「『インフィニティ・ゼロ!!』」
強力な魔力を纏ったダイヤモンドダストが、プレシアを襲う。しかしながら、その悉くはシールドに阻まれる。
「ちょこまかと‥‥‥しつこいわね」
「キャアァ!」
撃った直後の僅かな硬直を狙われ、吹き飛ばされるすずか。
「ゲホッ、ゲホッ‥‥‥ハァ、ハァ、ハァ。‥‥‥ちょっと不味いかも。あとどれくらい?」
《もう少し。あと5分何とか粘ってくださいまし》
肋骨2、3本は折れているであろう右の脇腹を押さえながら、すずかは歯を食い縛った。先程から、同じパターンの繰返し。攻撃をひたすら避けて、一瞬の隙で攻撃に行くも、プレシアには通らない。まだ力は残ってはいるものの、このままでは魔力も体力も底をつくのは時間の問題。何とか現状を打破しないと。
「あと5分‥‥‥ちょっと自信ないよ」
あれだけの攻撃を仕掛けておきながら、魔力を消耗した様子のないプレシア。此方の魔力消費を最小に抑えてプレシアに攻撃をさせ続け、魔力を消耗させれば、と思っていたが、無尽蔵にも思える程に衰えを見せない。
「そろそろ飽きたわ。時間も余りないし、もう倒れなさい」
プレシアはすずかを睨むと、すずかを囲むように魔法陣を配置した。一斉に雷鳴が轟き、すずかに向かって走る。
《全方位から来ますわ!》
「‥‥‥見えてる。逃げ場なし、だね」
すずかはアイスシールドを全方位に張るが、半数を防ぐのが精一杯だった。
「ガハッ、ガハッ‥‥‥ハァ、ハァ」
半数近くをその身に受け、すずかはその場で片膝をつき、血を吐く。上着は吹き飛び、バリアジャケットもボロボロ。あられもない姿になっているが、気にしている余裕などない。何とか意識を保ってはいるものの、芳しくない状況。気力でどうにか立ち上がり、すずかはプレシアを睨む。
「しぶといガキね」
プレシアは杖の先端に魔力を圧縮させる。前方へと放たれたそれは、すずかの足元に着弾すると、《すずか!》とマスターの名を呼ぶデバイスの声をも掻き消し、辺りを巻き込み大爆発を起こした。
◆◇◆◇◆
「う‥‥ぅん‥‥‥」
フェイトが目を覚ますと、ベッドの上だった。どうやら先程のプレシアの一撃を受け、気を失っていたらしい。隣にはアルフが寄り添って寝ている。起こさないようにと静かに身体を起こそうとするが、それはまるで鉛のように重く、上手く起きられない。
「んっ‥‥くぅ‥‥うぅ」と思わず声を洩らしながら、やっとの事で身体を起こしたフェイト。頭はまだボーッとするが、どうにかベッドから降りる。何か重大な事があった気がするのだが‥‥‥。
と、いつも履いている靴の紐が切れ、体勢を崩すフェイト。靴紐が切れるなんて、何か悪い予感がする。とここまで来て、フェイトの頭はようやく覚醒し、思い出した。
「すずか!」
そのフェイトの叫び声に、隣にいたアルフが目を覚ます。
「フアァ~、おはようフェイト。どうした?」
「アルフ!すずかを助けないと‥‥‥それに、ここはどこなの?」
「管理局の戦艦の中だよ。すずかなら連中が救助の準備をしてる」
そんな流暢な事態ではない。少しでも早く助けに行かないと、すずかが‥‥‥。痛む身体に鞭を打ち、フェイトは部屋の外へと出ようとするが、アルフに止められる。
「まだ無理だよ。回復するまで寝てなきゃ駄目だ」
焦るフェイトは、アルフに向かって叫んだ。
「違うんだ、アルフ!それじゃ遅いんだ!」
◆◇◆◇◆
フェイトを保護し、アースラに戻ったクロノは、プレシアに受けたアースラの被害状況を確認し、時の庭園への突入メンバーを会議室に集めた。
「君達に集まってもらったのは言うまでもない。時の庭園への突入作戦に参加してもらいたい。目的は二つ。一つは月村すずかの保護。もうひとつはプレシア・テスタロッサの逮捕だ。民間協力者である君達に頼むのは僕達としても辛いが、現状を鑑みるに、君達が今の最高戦力なんだ。協力を頼む」
テーブルに着いているメンバーは、リンディ、エイミィ、クロノ、なのは、ユーノ、アルフ、(ついでに)アリサ。フェイトはダメージが大きく、医務室で治療を受けている。
「何でこのメンバーなのよ?アースラの武装隊のメンバーは来れないの?」
この短期間である程度知識を備えたアリサが質問。
「アースラの転送ポートがプレシアにやられて修理中なんだ。大人数での転移は出来ない。少数精鋭で先行、二手に別れる。一方はすずかの保護、もう一方は時の庭園の魔導炉の封印に向かう。転送ポートが直り次第武装隊の本隊が援護に向かう予定だ」
「それにしたって最高戦力って‥‥‥いつものメンバーじゃないの、これ」
アリサの疑問も分からなくはない。本当にいつものメンバー。いつもと違うのは、すずかが不在で代わりにアルフがいるくらい。
「民間協力者ではあるが、君達はお世辞無しに優秀なんだ」
「そうだね~。今すぐ管理局に入っても、エースになれる実力だよね、みんな。騎士ゼストとまではいかないけどね」
クロノに続き、エイミィが話す。
「あの、ゼストって?」
なのはの質問に、クロノはエイミィを見て溜め息をついたあと、「ちょっとクロノ君!?何で今溜め息ついたの!?」というエイミィを無視して答えた。
「ちょっとした管理局の有名人だ。君達の気にする事じゃない。話が逸れて済まない。話を戻そう」
「ちょっといいかい?」
腕を組んで聞いていたアルフが口を開く。
「アタシ案内ならいくらでもするけど、突入の予定時間はいつにするんだい?あんまり猶予取れないんじゃないか?‥‥‥さっきフェイトが言ってたんだ。プレシアにすずかを殺せって言われたって!」
「何だって!?どうしてもっと早く言わないんだ!」
クロノが声を荒げて言う。それに対し、アルフも荒げて返す。
「アタシだってさっき聞いたんだ!兎に角、すずかへの危険は差し迫ってるんだよ!すずかは『話せば分かってくれる』なんて言ってたけど、プレシアは話して分かるような奴じゃない」
不測の事態、という訳ではないが、最悪のケースになった現状に、クロノは苛立ちを隠せない。すずかは民間人、ましてや保護対象である次元漂流者。管理局側の不手際で犠牲になど出来ない。クロノは即決する。
「各自の準備が出来次第出る!」
◆◇◆◇◆
プレシアは爆心に目をやる。その中心部にまだ魔力を感じ、それを一睨みし「しぶといわね」と呟いた。だか、すぐに違和感を感じる。中心部には魔力を二つ感じるのだ。プレシアは眉をひそめ煙が晴れるのを待つ。やがてそれが晴れ、すずかの方を確認すると口を開いた。
「炎?驚いたわ。まさか炎熱変換まで使えるなんて。いや、違う‥‥‥?」
すずかを守るように周囲を囲む、焔の壁。片膝をついたままではあるが、その瞳に光を取り戻したすずかと、その胸の前にある、焔の魔力を纏った一枚のカード。
《ロードcompleteですわ!お待たせしました、マスターすずか!》
「流石に駄目かと思ったよ。何とか間に合ったね」
焔と氷の魔力が混ざり合い、竜巻となってすずかの周りで吹き荒れる。すずかは胸の前に浮く焔のカードを手に取った。描かれているのは、勿論。
「プレシアさん、貴女をきっと止めて見せます!‥‥‥力を貸して、アリサちゃん!!『ユニゾン・イン!!!』」
すずかは予定通り第二形態へと移行しました。あられもない姿も(残念ながら!?)修復されます。
それでもプレシア優位は変わりません。ランクは相変わらずプレシアが上。魔導炉からの魔力供給もありますし。
アルフさんはシレっと突入作戦に参加してますね。