「友達です!」と発したフェイトと向き合うシグナム。だが、内心は穏やかではない。3連戦目。ここまでで、使ったカートリッジは計9発。ザフィーラの朝の散歩に付き合っただけで、補充を行っていない為、残りは4発。
(白い魔導師と同等かそれ以上としたら、ギリギリか‥‥‥?)
睨み合いながらも、冷静に考えるシグナム。管理局の魔導師であるならば、後続の部隊が来てもおかしくはない。迅速な行動が求められる。それに‥‥‥朝食の時間には戻らなくては。
《シャマル、私は白い魔導師の魔力を奪う迄時間を稼ぐ。奪い次第離脱しろ》
《分かったわ。無理しないでね、シグナム》
《分かっている》
終わると、シグナムはフェイトに改めてレヴァンティンを向ける。
「ヴォルケンリッターが将、シグナムだ。悪いが、主の為、引くわけにはいかん」
「仕方ありません。では、行きます!バルディッシュ!」
フェイトはバルディッシュをサイズフォームで展開する。
「はぁぁぁ!」と声をあげて、フェイトが斬りかかってくる。それをレヴァンティンで受け、打ち合う。5度、6度と打ち合い、お互い1度距離をとる。
「やるな、テスタロッサ」
「貴女こそ、シグナム。行きます!『サンダースマッシャー!』」
シグナムはレヴァンティン を鞘に収めると、カートリッジを炸裂させ、それを鞘から再び抜いた。
「『飛竜一閃!』」
連結刃となったレヴァンティンの刃に乗って、圧縮された魔力が迸る。
二人の中間で互いの魔法がぶつかり、爆発した。
◆◇◆◇◆
「大丈夫?なのは」
「うん。ありがとう、ユーノ君」
場所を移し、立ち膝のユーノは仰向けに寝ているなのはを抱き起こし、治癒魔法をかけている。
なのはと密着できて嬉しいとか、そんなことは決して思っていない‥‥‥ちょっとしか。
シグナムとフェイトが目と鼻の先で打ち合っているのを気にしつつ、治癒を続けていたが、そのフェイトのバルディッシュの柄が、シグナムの一刀で真っ二つに折れる。驚愕の表情を浮かべるフェイトを見て、ユーノは思わず立ち上がり、「不味い、助けに行かなきゃ」とフェイトに気を取られていた。
「うわっ!」
と、慎重に狙いを定め、ユーノの体に巻き付くクラールヴィント。身動き出来なくなったユーノの目の前で、なのはの胸から腕が伸び、リンカーコアを掴む。
「なのはーーー!!!」
フェイトはそのユーノの叫びに一瞬気を取られて、その隙にシグナムに一撃をもらう。「くあっ」と声をあげ、フェイトは大きく飛ばされた。
ユーノがようやくその拘束を振りほどくも、なのはの意識はない。
◆◇◆◇◆
『すずか、起きて、すずか』
沈んでいる意識の底で、すずかに誰かが語りかける。
(誰‥‥‥?嫌‥‥‥入って来ないで‥‥‥でも、何処かで聞いたことある声‥‥‥?)
『呼んでいる。貴女の闇と、そのカードが、私を』
その声に反応しながらも、すずかは未だ沈んだまま。声の主は悲しそうな声で更にすずかに語りかける。
『起きて、すずか、早く。ワタシハ‥‥‥メザメタクナイ』
◆◇◆◇◆
倒れたままのなのはの横で、すずかが目を開く。
「すずか、良かった。気がついた‥‥‥すずか?」
目を覚ましたものの、様子が少しおかしいすずか。ユーノは咄嗟に身構え、なのはを守るようにシールドを展開し、すずかから距離をとる。
「すずか!その魔力は‥‥‥!」
すずかは少しおかしい、というには余りにも変だった。その魔力は、いつもそうである筈の氷結属性を帯びていない。少し憂いを帯びたその表情。髪は金髪のそれに変わって、瞳が翠色に光る。一番特徴的だったのは、その背中から延びている、全てを焼き尽くすかのような赤黒い焔の魔力の翼。
更に、バリアジャケットが構成されていくと、その異様さが浮き彫りになっていく。赤と黒を基調としているインペリアルローブ。身体には赤い紋様が浮かんでいる。爆発的に膨れ上がる、恐ろしい迄の魔力。
すずかはユーノの方を1度見て、口を開く。
『退いて下さい、結界魔導師。貴方まで壊してしまう』
その声すらも、すずかのそれではなかった。
「すずか‥‥‥だよね?」
すずかはそれには答えず。更に魔力が膨れ上がり、ユーノが唖然として見ている中、空へと舞い上がる。
すずかは真っ直ぐシグナムの方角へと飛んでいく。その背中の翼が大きくなる。シグナムはすずかに気が付き、驚きの声をあげた。
「どうして動ける!?魔力は確かに収集したはず!」
『烈火の将‥‥‥貴女には、運命は止められない』
「何っ!?」
『システム起動。出力‥‥‥15%』
すずかのその赤い翼から魔力の奔流が放たれる。気付いたシグナムは辛うじてそれを避けるが、余波で大きく吹き飛ばされた。魔力の奔流はそのまま空へと放たれ、ベルカの多重結界を造作もなく撃ち抜き、崩壊させた。シャマルはそれを確認し、シグナムに念話を送る。
《シグナム‥‥‥あの子!》
《結界が抜かれた。退くぞ、シャマル。あれは‥‥‥不味いかも知れん》
はやての朝食の時間も迫っている。二人は多重転移でその場を離れ、主はやての待つ家へと撤退していった。
と、同時に赤い魔力は消え、元に戻ったすずかはそのまま地面へと墜落していく。呆気にとられていたフェイトは慌ててすずかを受け止め、地面に降り立つと、すずかをベンチに寝かせた。
「すずか!すずか!」
「‥‥‥う‥‥‥フェイト‥‥‥ちゃん。助けに来て‥‥‥くれたの?」
先程迄の事など全く覚えていないかのようなすずか。それどころか、今のすずかからは魔力が殆ど感じられない。さっきのあの恐ろしい程の魔力とその威圧感は一体何だったのか。フェイトは困惑しながらも、すずかが元に戻った事に安堵した。
「すずか、ごめんね。私がもっと早く来てれば」
「そんなこと、ないよ。私こそ、ごめんね。折角の対面がこんなで」
力無くそう話したすずかの右手を、フェイトは両手で優しく握った。なんだか心なしかフェイトの顔が近いような?そう思ったすずかの右の頬に、フェイトは‥‥‥軽く口付けをした。
「こっ、この世界ではこれも『挨拶』‥‥‥なんだよね?」
そう言って微笑を浮かべながらも、フェイトの顔は真っ赤に染まっている。それを見てすずかもどうやら気が付いたのか、少し紅くなる。
《そこのバカップル。感動のご対面はいいけど、そういうのは他の場所でやってくれないかしら?》
いつの間にか二人の前にはモニターが現れ、呆れたアリサが見ていた。すずかもフェイトも更に真っ赤になる。
「ちっ、違うよアリサ!これは挨拶だから!」「そっ、そうだよアリサちゃん」と明らかに焦って言い訳をしている二人。
《取り合えず、すずかもなのはもこっちに運んで。治療と検査が必要だから》
アリサは仕事をこなしながらも、「やれやれね」と肩をすくめたあと、溜め息をついた。状況は芳しくない。やはり、闇の書関連のようだし、親友達が襲われたし、色々と頭が痛い。アリサは隣に立つリンディに話しかけた。
「どうします?艦長」
「休日は返上かしら。うちの担当になりそうだし」
「‥‥‥ですよね」
Unbreakable Darkが闇の書から切り離されました。此れでGOD編まで書かざるを得なくなった(汗)
そ・し・て。フェイトちゃんが遂に実力行使を開始。すずかが満更でもなさそうなのは気のせいじゃない!?
あ、もしかして次は銭湯回!?フェイトちゃんにどうやって暴走してもらおうかな‥‥‥