「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
フェイトはただ只管走っていた。
(どうして?どうしてなの?すずか)
突然自分の目の前から居なくなったすずか。かなりの時間寝てしまっていたフェイトは、すずかを探して、ただ只管に走る。心当たりは全て探したが、すずかは何処にも居なかった。このまま別れるなんて、納得出来る訳がない。すずかの居ない日常など、フェイトには考えられない。フェイトにとって、すずかは親友であり、初めての友達であり、人形ではない本当の自分を始める切欠をくれた人であり、そして‥‥‥。
(何処にいるの?すずか‥‥‥嫌だよ、こんなの)
なのはと共に、かなりの範囲を探し回ったが、一向に見つかる気配がない。
涙をこらえ走るフェイトは、日もすっかり暮れてきた頃には、いつの間にか海鳴市を越えて、その隣の市迄来ていた。
(ここ、何処だろう。あれは‥‥‥公園?)
郊外の住宅地の、外れの外れ。その端にある、小さな公園。ブランコの横にあるベンチに座る、紫のロングヘアーの後ろ姿が目に入った。
(‥‥‥いた!)
その後ろ姿を見て、フェイトは確信した。前方から確認せずとも分かる。他でもないすずかの事だ。見間違う筈がない。
フェイトは近付いて、「すずか!」とその名を呼んで、座っているすずかを後ろから抱き締める。
「フェイト、ちゃん」
悲しそうな顔を崩さず、小さく弱々しくフェイトの名を口にしたすずか。何をする訳でもなく、俯いて座ったまま。
「帰ろう、すずか。ね?」と言うフェイトにも、暫く黙っていたすずかは、か細い声でフェイトに言った。
「駄目なの。戻れない。フェイトちゃん、私、あのとき、フェイトちゃんを‥‥‥」
「すずかは、何もしてないよ。私だって何もされなかった。大丈夫。私は、すずかと一緒がいいんだ」
「私には、そんな資格ないよ」と言ってその場を動こうとしないすずか。フェイトは一度瞳を閉じて、深呼吸をした。抱き締めているすずかに聞こえるのでは、と思うくらいにバクバクと鼓動を感じる。
「違うよ、すずか。資格とかじゃなくて」
そこまで言いかけ、フェイトはすずかの両手をベンチに押さえる。
驚いているすずかを見つめたあと、フェイトは唇を、すずかの左胸のアザの部分に当てた。
「やっ、やだっ‥‥‥フェイトちゃん‥‥‥すっ、吸わないで‥‥‥ひゃぁ‥‥‥ん」
刺激に我慢できずに、小刻みに震えるすずかを見ながら、やがて吸い付いていた唇を離し、今度はその唇を塞ぐ。
両足をバタつかせていたすずかは、フェイトの唇が自身の唇にあてられると、一瞬目を見開いた後は大人しくなり、その瞳を閉じた。
「んっ‥‥‥フェイトちゃ‥‥‥んんっ…‥‥んっ‥‥‥っあ‥‥‥」
一瞬唇を離し、「すずか‥‥‥」と小さく呼んだあとフェイトは再び唇を奪う。
「んっ‥‥‥んんっ‥‥‥」
フェイトは、トロンとした表情に変わっていくすずかの両手を離し、キスしたまま抱き締める。
やがてフェイトが唇を離す。呼吸が苦しかったのか、少し息づかいが荒い、瞳を閉じたまま動かないすずかのおでこに軽くキスしたフェイトは、すずかの頭を優しく撫でた。
「ハァ、ハァ、ハァ。フェイト‥‥‥ちゃん」
「すずか。どこにもいかないで‥‥‥離れたくないよ。何処かに行っちゃ、嫌だよ」
「でも、フェイトちゃん、私は‥‥‥」
小さく、すがるような声で、涙を溜めて囁くフェイトに、すずかが静かに答える。フェイトは再びすずかのその唇を唇で塞ぐ。
《フェイトちゃん、私‥‥‥》
《大丈夫だよ。私が傍にいるから。私が、すずかをこれ以上苦しめさせないから》
フェイトが唇を離そうとすると、今度はすずかがフェイトを引き寄せ、その唇を重ねた。
そうして暫くしたあと、フェイトから唇を離したすずかはポロポロと涙を流す。
「フェイト‥‥‥ちゃん。私も、離れたく、ない‥‥‥よ」
すずかはフェイトに縋り付き、声をあげて泣いていた。そのすずかを、フェイトは無言でギュッと抱き締めた。
◆◇◆◇◆
「ただいま、エイミィ」
フェイトとすずかがハラオウン家迄戻ってきた頃には、すっかり夜になっていた。心配していたエイミィが、二人を出迎えた。
「お帰り、二人とも。心配したんだよ?さあ、寒いから中に入って‥‥‥」
とそこまで言って、エイミィは言葉が続かなかった。仲良く手を繋いで帰ってきたまでは、良しとしよう。そのくらいなら、仲の良い友達ならよくある。ウン。だがしかし、すずかの胸元のアザの上に出来ているそれは、もしかしなくてもキ、キスマー‥‥‥ク?
(な、何してきたの!?この子達は‥‥‥)
その胸元にエイミィの視線を感じたすずかが顔を真っ紅に染めて、恥ずかしそうに俯くのを見て、エイミィは確信した。
(えっと‥‥‥ホントに!?どうしたらいいの?コレ)
一瞬の思考停止の後、エイミィは、「ほら、寒いし早く上がって!フェイトちゃんは検査とかもう一回やっとこうか?」と思考を切り替えた。流石はクロノの執務官補佐。まぁ、少し声が上擦ってはいたが。
そうしてエイミィに促され、二人はリビングへと入る。中では落ち着かずにウロウロしているアリサと、スカートの裾をギュッと握りしめて下を向いているなのは、それと、すずかを睨むようにして見ているクロノが待っていた。
「君は何度言ったら分かるんだ!あれほど独断での行動は慎むように言っただろう!」
「ごめん‥‥‥なさい」
クロノの言葉にしゅんとして謝るすずか。クロノの言葉がキツい言い方だった為か、なのはがフォローを入れた。
「クロノ君、すずかちゃんも反省してるしその辺で」
「そうだよ、クロノ。すずかだって辛かったんだから」
心なしか何時もより強い言い回しのフェイト。クロノは、このままだと自分だけが悪者になりかねない場の雰囲気を感じ、真意を話す。
「別に怒りたくて言ってる訳じゃないさ。もう少し管理局を信頼してくれ、と言っているだけだ。すずかのあの力については今調査中だ。制御の方法だって見つけてみせるから、もう少し大人しくしていてくれ」
「クロノ、ありがとう」「クロノ君、ありがとう」と綺麗にハモったフェイトとすずかの息のピッタリさ加減に、少し呆れ気味のアリサは、「全くアンタ達は」と言って溜め息をつく。
「所ですずか、フェイト。外寒かったでしょ?お風呂沸いてるから入っちゃいなさいよ」
何気無く言ったアリサの一言に、フェイトとすずかは真っ赤になった。「ん?」と何かを察したアリサがすずかの胸元に気付いたのは、浴室の脱衣所で新しいバスタオルを渡した時だった。
◆◇◆◇◆
夕飯後の八神家。2階で腕を組み、シグナムは考え込んでいた。勿論、昼間の、すずかについて。
「あの子の意識とは無関係に動いているのか?あのとき確かにテスタロッサに殺気を向けていた‥‥‥」
隣に座るヴィータは、それを思い返していた。確かに感じた、あの巨大な魔力。
「昼間のアレか?あんな大きい魔力初めてだよな。でも、収集出来れば闇の書のページも一気に埋まりそうだよな」
「収集出来れば、な。アレにはまるで勝てる気がせん」
かつて対峙した事のない巨大な魔力に、対応を思慮するシグナム。
(少なくとも味方ではないな。かと言って敵、とも断定しかねる、か)
フェイ×すずタグの本領を発揮させてしまいました。
なの×フェイ派、及びアリ×すず派の皆様、ごめんなさい。
R-15の意味はググッたから多分、大丈夫。
長い行間の、フェイ×すずに何があったかはヒミツなんだゾ☆
この回、実は重要な回だったりします。
以上、コロナちゃんが狂喜乱舞しそうな回でした。