Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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白雪姫

「それで、他に言いたい事はある?ユーノ君?」

 

「いや、だからあれは無理矢理……ゴメンナサイ」

 

すずかは珍しく怒っていた。アリサのように怒りを全面に押し出す訳ではなく、笑顔で静かに怒っている。余程その様が恐ろしいのか、人間の姿に戻っているユーノが、その目の前で深々と土下座をしている。「えっと、すずかちゃん?」というなのはの言葉も耳には入っていないようだ。すずかの顔は怒りとはまた別の理由で真っ赤。

ユーノは恐る恐る顔をあげ……たのが良くなかった。すずかの間近で土下座していたが為に、ユーノの視界にスカートの奥が写り込む。残念ながら(!?)ロングスカートだったため、太股までしか見えなかったが、これがもし海聖の制服のミニスカートだったら、確実に下着が見えたであろう位置。ユーノの顔が真っ赤になり、それに気付いたすずかの顔が更に真っ赤になる。

 

「ユーノ君?……見たの?」

 

「いや、見てないよ!見えそうだったけど見えなかったから!……ハッ!?」

 

ユーノが見たのは、怒りに震えるすずかと、ジト目のなのは。次の瞬間、ユーノの絶叫が木霊した。

 

事の発端は10分ほど前。ユーノとなのはは、すずかに事のあらましを説明していた。

 

「でね、そのジュエルシードにすずかちゃんの家の子猫が取り込まれちゃっておっきくなってね?それを封印しようとしたら電撃が飛んできて、子猫が倒れて、何だろうって思ったらフェイトちゃんがいて……」

 

すずかの世界の、なのはの親友のフェイトでは考えられない行動。なのはにいきなり攻撃をしてくるとは。しかも、ゲームではないので、最悪死ぬことだって有るかも知れないのに。だがしかし、光明もある。話を聞く限り、この世界のフェイトの戦闘スタイルや使用魔法は、すずかの世界のブレイブデュエルでのフェイトと変わらない。対策も立てられるし、その為の特訓だって出来る。それに、すずかだって『T&Hエレメンツ』の一員。魔法は使えなくても、特訓の方法を考えたり、戦技指導くらいはできる。アッチの世界のなのはの事だって見てきた。此方のなのはの資質もアッチの世界のそれと大差無い様だし、長所を伸ばす事だって出来る。

 

海鳴温泉での戦闘の話でも、なのははまだまだフェイトの足元にも及ばない様子。アルフも此方の世界に居るようだし、恐らくはプレシアもアリシアもいるのだろう。

ブレイブデュエルでならプレシア、リンディのタッグとエレメンツの5人で何度か戦った事があるし、個人的に特訓してもらった事だってある。しかしながら、あの2人は強すぎる。何とか食らいついた時だって、5人全員がお互いをカバーし合ってどうにか、というレベルだった。

4対1。しかも、なのはは魔法初心者。短期間でフェイトと同レベルまで鍛えても、プレシアには到底勝てない。策略家のアリシアまで居るのなら、敗走どころか最悪デッドエンドだってあり得る。

 

考え込んで姉譲りの知略を巡らす、すずか。せめて、リンディやクロノが居れば。自分が魔法を使えれば。そこまで考え、ふと気付いた。ユーノだ。

なのはが変身した時だって魔法を使っていたし、アッチの世界のユーノは強固な防御を誇っていた。アタッカーは無理でも、自分と同じ、フロントガードならいけるのでは?

ユーノが遊撃と牽制をしながら相手の動きを止め、後ろからなのはが強力な砲撃。此れなら何とかなるかも知れない。

 

「ユーノ君って、人間形態になれたりはしないの?」

 

暫く考え事をしていたすずかからのいきなりの質問。ユーノは一瞬驚いた後、すぐ冷静になり答える。

 

「なれるよ。元々人間だからね」

 

そう言うと、ユーノは光に包まれフェレットから人間に戻った。

 

「この姿をなのはに見せるのは、久しぶりになるのかな。……って、なのは、どうしたの?」

 

ユーノとすずかの目には、混乱してフリーズしているなのはの姿が写っていた。

 

「だって、ユーノ君ってフェレットで、でも人間で……ふぇぇぇ!?」

 

絶賛混乱中のなのはをよそに、2人は会話を続ける。

 

「ユーノ君は防御とか得意なの?試したい事があるの」

 

「攻撃は苦手だけど、防御なら、何とか。試したい事って?」

 

「レイジングハートも、ちょっと来てもらえる?」

 

《マスターの為になるのなら》

 

こうして2人と1機は、当面の敵であるフェイト、アルフ対策を立て始めた。ユーノもレイジングハートも初めは、魔法素人の筈のすずかの戦術談義に驚いていたが、次第に真剣になっていく。

 

そんな中、フリーズからようやく復帰したなのはは、自分だけ蚊帳の外になっている状況に焦り、急いで駆け寄る。

 

「すずかちゃん、レイジングハート、ユーノ君、私も~!」

 

と言って、ユーノの肩に手をかけたなのは。そこで彼女は思い出してしまった。

 

「ユ、ユーノ君って男の子なのに、温泉で一緒にお風呂入っちゃった……」

 

なのはの顔が真っ赤になる。涙目になり、今にも泣き出しそうななのはを見て、すずかが笑顔(目は笑っていない)でユーノを問い詰める。

 

「どういう事なの?」

 

「え、えっと……みんなが温泉に入る時に、女湯に連れていかれまして……その時はフェレットの姿で……」

 

「それって、私も居たの?」

 

すずかの目が怖い。ユーノは恐る恐る答える。

 

「ハ、ハイ……」

 

そして冒頭の土下座と成った訳である。

 

 

ユーノへの制裁も済ませ、本格的にフェイト対策に戻ったすずかとなのはと、レイジングハート。先ずはなのはのレベルアップが必要不可欠、という結論となった。

 

「そんな訳だから、スパルタで行くからね?なのはちゃん」

 

《マスターは良いご友人をお持ちです》

 

「ふぇぇぇ!?レイジングハートまで!?」

 

◆◇◆◇◆

 

こうしてなのはの特訓の日々が始まった。放課後に海鳴公園で行われる、戦術と砲撃、バインドの訓練。家に帰れば、筋力アップのための筋トレと、魔力運用の鍛練。なのはは耐えた。勿論辛かったが、耐えていた。フェイトと対等に渡り合えないのでは、話し合う以前の問題。それに、ユーノも、レイジングハートも、すずかも、このメニューで必ず強くなれると言った。

 

そうして更に数日後。なのはとユーノ、それにすずかは、日も沈んで来た街中を歩いていた。勿論、ジュエルシードを探す為。

ふと、ユーノは魔力の流れを感じとる。辺りが闇に包まれ、所々で雷が鳴る。ジュエルシードの魔力が辺りに広がる。

 

「こんな街中で強制発動!?広域結界、間に合え!」

 

ユーノは魔法陣を展開し、結界を張る。なのはとユーノの視界に入る、発動したジュエルシードとフェイトとアルフ。なのははレイジングハートを構えた。

 

「リリカル、マジカル!」

 

フェイトもシーリングモードのバルディッシュをジュエルシードに向ける。

 

「ジュエルシード、シリアルⅩⅨ!」

 

「「封印!!」」

 

二人の封印砲が同時に放たれ、ジュエルシードにぶつかり、光が収まる。

 

なのはの目の前に、フェイトが現れる。

 

「私、なのは。高町なのは!私立聖祥大附属小学校3年生!」

 

フェイトはそれには反応せず、バルディッシュを構えなのはに斬りかかった。それをフラッシュムーヴで避けて、フェイトの後ろに回り込むなのは。フェイトは直ぐ様振り向き、フォトンランサーを撃つ。なのはも撃墜するためディバインシューターで応戦。相殺すると、フェイトの懐に入らないよう、距離をとる。フェイトはなのはに向かって行くも、シューターを牽制に使い、不規則な軌道で飛行するなのはに上手く近づけない。そうして一定の距離を取りながら、ショートバスターを牽制兼攻撃に使うなのは。

 

フェイトは焦る。この数日での、なのはの驚く程の進歩。焦ったが為になのはの誘いだとは気付かずに、ソニックムーヴでなのはの懐に飛び込み、バルディッシュでシールドに斬りかかった。

 

「掛かった!」

 

なのはの声とともに、シールドから伸びる、桜色の鎖。フェイトはバルディッシュごと腕まで拘束される。

 

「バインド!?」

 

なのはのバインディングシールドが決まり、完全に身動き出来くなったフェイトを見て、砲身に魔力を込めるなのは。

 

「フェイト!!」

 

アルフがフェイトの危機に気付くも、ユーノが巧みに動き、その距離を詰めさせない。

 

「ディバイーーン、バスターー!!」

 

桜色の砲撃がフェイトを襲い、そのまま墜落していくフェイト。

 

「フェイトちゃん!」

 

それを見て、慌てて助けに行くなのは。フェイトが地面に叩きつけられる寸前、なのははフェイトを受け止めた。その時。

 

「キャアァァ!!」

 

なのはは後ろから大きな衝撃を受け、フェイトを抱えたまま吹き飛ばされた。ユーノが振り返ると、ジュエルシードが再び起動して、波動を放ち、地震が起きる。小規模とはいえ、次元震。

 

「不味い!なのは!」

 

なのはは気絶したまま動かない。ジュエルシードは光を強める。フェイトはその間に目を覚まし、どうにか動く身体を引きずりジュエルシードに向かう。ボロボロのバルディッシュを待機状態に戻し、その身一つで封印を試みるフェイト。額に汗が滲み、ジュエルシードを握る手はガクガクと震える。なのはの全力バスターに撃ち抜かれた身体は、上手く言うことを聞いてくれない。

 

「お願い!止まって!」

 

フェイトの祈りも虚しく、段々と強くなっていく光と震動。握る手が赤く滲んでいく。

 

「誰か……」

 

フェイトが弱々しく声を発したその時だった。

 

「フェイトちゃん!なのはちゃん!」

 

そんな馬鹿な。確認するため声のほうを振り返ったユーノの視線の先に佇む、すずかの姿。

結界は確かに張った。魔導師以外は入れない結界を。しかし、そこにすずかがいる。導き出される答えは、一つしかない。

 

すずかの胸の前で輝く、1枚のカードがあった。そこに描かれていたのは、すずか自身。その絵柄が光とともに変化し、爪の3つ付いたグローブの絵柄に替わる。

 

《お久しぶりです、マスターすずか。私が分かりますか?》

 

「うん、分かるよ。私の『スノーホワイト』」

 

カードは再び綺麗な紫色を放つ。光に包まれたすずかは、青とピンクの目立つプロフェッサータイプのバリアジャケットに身を包み、両手に氷の爪の付いたグローブをはめている。

 

「ユーノ君!なのはちゃんを!」

 

呆気に取られていたユーノだったが、すずかの言葉で我に帰ると、なのはの元に駆け寄り、治療を施す。

 

「フェイトちゃん、お待たせ」

 

何が起きたのかよく分からないフェイト。その手の上に、すずかは両手を重ねる。冷気の籠った魔力がジュエルシードの魔力を抑え込み、暴走は止まった。

 

「フェイト!行くよ!!」

 

キョトンとしたまま固まるフェイトをアルフが無理矢理連れて行く。フェイトの手のなかには、封印されたジュエルシードが収まったままだ。

 

「次はちゃんとお話しようね」

 

というすずかの言葉を聞きながら、フェイトはこの場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 




ラッキースケベ、ユーノ。それは最早お約束。
早々にすずかさん覚醒。
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