Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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邂逅

 

 

フェイトはキリエを見据え、すずかを隠すように立ちはだかり、バルディッシュを握り締める。

 

「すずかは下がってて。はやて、すずかを!」

 

はやてはすずかの手を引き、シャマルをチラリと見てアイコンタクトを送ると、答えた。

 

「了解や、フェイトちゃん」

 

バルディッシュの魔力刃を展開し、キリエに向かって高速で飛び出すフェイト。

 

「はぁぁぁ!」

 

「お姫様のナイトって訳ね。けど私の邪魔はさせないんだから!」

 

銃型だったデバイスを大剣型に変え、フェイトを迎え撃つキリエ。ガキンッと乾いた音が響き、打ち合う二人。二人を横目に、はやてはシャマルに念話を送る。

 

《シャマル、頼んだで?》

 

《はい!はやてちゃん!》

 

はやての隠蔽魔法に隠れ、シャマルは魔法陣を展開。すずかをその中心に立たせると、魔法陣に魔力を込める。

 

「すずかちゃん、今から海鳴公園に転移するから。探査妨害展開するくらいなら平気よね?」

 

すずかはそれに答える。流石に魔力が低下している今でも、探査妨害を展開するくらいはできる‥‥‥筈。

 

「はい。何とか」

 

フェイトが負けるとは思わないが、すずかはフェイトを心配そうに見つめる。そんなすずかをたしなめ、やっとその気になった彼女を転移させる。

 

《じゃあ、すずかちゃん。後で翠屋で合流しましょう》

 

《分かりました、シャマルさん》

 

ライトグリーンの光が魔法陣を照らす。すずかがその光に包まれ、その場から消える。

 

「あっ!ちょっと!」というキリエの言葉を残して、すずかが転移する。それを確認したフェイトは、バルディッシュをザンバーフォームで展開。カートリッジを炸裂させる。

 

「もう、時間稼ぎは必要ない。本気で行きます。バルディッシュ!」

 

《Jet Zamber!》

 

魔力刃に金色の魔力がたぎる。それを見たキリエは、独り言にしては大きすぎる声で呟いた。

 

「うっそ‥‥‥時間稼ぎだったの?結構本気だったのに」

 

◆◇◆◇◆

 

海鳴公園に転移したすずか。探査妨害を展開し、辺りを慎重に見回した。誰にも見られてはいないようだ。ホッと胸を撫で下ろし、取り合えずベンチに座る。

 

(取り合えず、翠屋に‥‥‥)

 

すずかは不意に魔力を感じ、アイスミラーを多数展開する。氷の鏡が縦一列に並び、前方から来る『何か』に備える。

 

「『ロングサーペント!』‥‥‥くっ!」

 

その焔の砲撃の威力は、今まで対してきた相手のものに比べたら、大したものではなかった。実際に、その威力は砲撃者が慎重に制御し、かなり抑えたもの。だが、それはすずかの展開した鏡を全て撃ち抜き、すずかはアイスシールドを展開せざるを得なかった。何とかその砲撃を凌いだすずかは、その砲撃が来た方向を睨む。

 

(参ったな‥‥‥こんなに力が落ちてるなんて)

 

ゆっくりと近付くその影は、すずかがよく見知った姿だった。黒いセイクリッドのバリアジャケット。その手に持つなのはと同じ型の杖、ルシフェリオン。

 

「『何とか』防ぎましたか。思ったより弱体化が進んでいますね?月村すずか」

 

シュテル。今の状況ではどう見ても味方とは思えない。すずかは冷や汗を流し、シュテルを見てただ一言、呟いた。

 

「シュテルちゃん」

 

今日再び会った友は、またしても敵なのか。

 

「知っているとは光栄です。シュテル・ザ・デストラクター。初めまして、『砕け得ぬ闇の器』。王の復活まであと少し。それまでに少し貴女を試させてもらいます」

 

シュテルは魔法陣を展開する。ルシフェリオンの先端に魔力が集まり、すずかを狙い、砲撃が走る。「キャッ」と発し、それを避けるすずかに向かい、シュテルは更に焔をたぎらせる。

 

「『パイロシューター!』」

 

多数のシューターがすずかを狙い、放たれる。

 

(何とかここから離れなきゃ)

 

まるで力を測っているかのようなそれは、今のすずかにも撃ち落とせる程度に抑えてある。すずかが全て迎撃したのを確認したシュテルは、ルシフェリオンをすずかに向け、砲撃魔法を放った。

 

「『ブラストファイアー、シュート!』」

 

すずかはシールドを展開するも、その焔の砲撃に、「バリンッ」と音をたてて破砕される。

 

「キャアァァ!」

 

焔の魔力をまともに食らい吹き飛び、地面を転がるすずか。

無意識に砲撃を防ぐように突きだした左手の掌が、熱い。身体も痛い。

 

「あの程度も防げないくらい低下しているとは。王の復活を待たずとも、ここで拘束させていただきます」

 

地面に両膝を付き、震える手でベンチを支えに何とか身体を起こすすずか。ジャケットの上着は既に無く、上半身はインナー姿。魔力が落ちている為にその構成も弱くなっており、その防御力もかなり下がっていた。すずかが思っていたよりも、ずっと大幅に。「かはっ」と息を吐いたすずかがシュテルを弱々しく見ると、ルシフェリオンに魔力が集まっていた。

 

「『ディザスターヒート』」

 

(こんな、こんなのって‥‥‥助けて、フェイトちゃん)

 

すずかはフェイトに祈った。このまま、シュテルにやられて捕まって‥‥‥そのあとは‥‥‥

 

「『シュート!』」

 

瞳を閉じて、自分を襲うであろう衝撃に備える。否、備えるなどと大それたものではない。狼に睨まれた兎のように、何も出来ずその場から動けないだけ。そして、そのまままともに砲撃を受けてやられてしまう筈だった。すずかとシュテルの間に、イレギュラーさえ現れなければ。

 

(逃げられましたか。まあ、いいでしょう。当初の目的である戦力の確認は出来ました。あれでは、時間の問題ですね)

 

◆◇◆◇◆

 

(あれ?)

 

一向に襲ってこない衝撃に、恐る恐るその瞳を開けると、目に飛び込んで来たのは、自身を守るように展開している、虹色の魔力で構成されたシールド。すずかを抱き抱えるその女性は、17~18歳と言った所か。金色の綺麗な髪を、どこかで見たことのあるリボンでサイドポニーに纏めている。その瞳は、紅と碧の虹彩異色。

 

「あのっ!助けていただいて、ありがとうございました」

 

すずかを抱いたまま飛行するその女性は、すずかが魔導師である事に興味を持ったようだった。

 

「あ、お構い無く。魔導師さんですよね?ここは管理外世界ですけど、どこからいらしたんですか?」

 

「あ、その、現地の魔導師です」

 

人目に付かないよう、慎重に地面に降りたその人は、少し興奮した様子で話す。

 

「そうなんですか!海鳴から魔導師が出るのって、ママ達以来ですね!あ、もしかしてさっきの人に追われてるとかですか?この近くの家に、ミッド直通のゲートがあるんですよ。ミッドチルダまで来れば安心ですよ!私のママ達、凄いですから!」

 

そんなゲートなんてあっただろうか?と疑問を持ちながらも、すずかは返事を返す。助けてくれたし、悪い人では無さそうだ。翠屋で合流、というシャマルの言葉を思いだす。

 

「あ、ミッドチルダの方でしたか。ありがとうございます。でも、友達にも心配かけちゃうし‥‥‥そうだ!良かったらお茶でもご一緒しませんか?美味しい喫茶店知ってますよ?」

 

「それなら、私も知ってます!」

 

やっぱり何故か楽しそうなその人と、せーので声を合わせて言う。この人は、何故か初めて会った気がしない。

 

「「喫茶・翠屋!」」

 

綺麗にハモった二人は、お互いを見て笑みを溢して、「一緒でしたね」「有名ですからね」と言ってクスクスと笑った。

 

◆◇◆◇◆

 

「そうなんですか。いきなり襲いかかるなんて。でも、大丈夫!うちのママ達、航空武装隊のエースオブエースに、執務官、それに、湾岸警備隊の司令なんですよ!」

 

翠屋へと向かい歩く二人。話しながら、エッヘンと胸を張るこの人の仕草はそういえば、どこかなのはに似ているような?

 

「えっと、それって凄そうなんですが、本局の事はあんまり‥‥‥」

 

「ごめんなさい!現地の方ですもんね。あ、自己紹介まだでしたね。私は、高町ヴィヴィオって言います!」

 

変身魔法を解くと、その女性はすずかと同じくらいの見た目となる。自己紹介の名のとおり、彼女はすずかも知る、元の世界で数回見たことのあるヴィヴィオの姿となった。

 

「ヴィヴィオ、ちゃん?ですか?」

 

今日だけで3人目。元の世界の知り合いに良く会う日だ。

 

「私のママの実家が翠屋なんです!」

 

再びエッヘンと胸を張るヴィヴィオ。しかし、その言葉はどこかおかしい。桃子か士郎の隠し子?しかしそれでは『ママの実家』というのはおかしい。では、恭也か美由希?いや、そうだとしたらヴィヴィオがすずかと同じくらいの訳がない。なのはは問題外だし‥‥‥と考えているすずかは、ふと自分は自己紹介していない事に気づき、慌てて口を開いた。

 

「私は、月村すずかって言います」

 

「はい!?今なんて?」

 

「ですから、月村すずかって」

 

それを聞いて固まるヴィヴィオ。目を丸くして、驚き停止している。その彼女をフリーズから開放したのは、彼女の兎型のデバイス。

 

「どうしたの?クリス‥‥‥‥‥‥うそっ!?」

 

パタパタと動くだけのクリスを見て、口を開けて驚いているヴィヴィオ。あれだけでクリスの言っている事を理解しているのにすずかが驚いていると、ヴィヴィオの目の前にモニターが開く。相手はどうやら、これまた元の世界で数回見たことのある、アインハルトだった。

 

《ヴィヴィオさん!大変です!》

 

《アインハルトさん?どうしたんですか?》

 

《今、ユーノ司書長と会っているんですが、どうやらここは10数年前の海鳴市みたいです!ですから、未来になるべく影響が出ないように、現地の関係者とは会わないほうがいいと‥‥‥》

 

《もう、会ってお話しちゃいました。『すずかママ』と。自己紹介も!‥‥‥どうしましょう》

 

よく聞きとれなかったが、何やらとんでもない発言があった気がするすずかは、再びフリーズしているヴィヴィオを再起動すべく、名前を呼んだ。

 

「ヴィヴィオちゃん?」

 

「なに?すずかママ‥‥‥あっ」

 

「マ‥‥‥マ?」

 

今、ヴィヴィオは自分の事を『ママ』と呼んだのか。突然の事ですずかも固まってしまう。それを見て焦った様子のヴィヴィオ。すずかが現状を理解する前に、運悪く(?)フェイトが鉢合わせた。フェイトは驚愕と嫉妬と悲しみの入り交じった何とも言えない顔をしている。

 

「すずか、今の、『ママ』って、どういう事!?」

 

そのフェイトを見つけたヴィヴィオは、再びその口を滑らせた。

 

「フェイトマ‥‥‥マ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シュテルん再登場&ヴィヴィオ初登場。

闇の書が完全消滅しているので、原作GOD編から大幅に変更。

3幕はすずかは守られ系ヒロインに変わります。王子様フェイトちゃんの出番が増えます。
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