Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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誓いを胸に

「そんな!それじゃあ、アルカンシェルですずかママを消し飛ばすって事ですか!」

 

ヴィヴィオはユーノに詰め寄っていた。そんな事をしても何も変わらないのは分かっている。しかし、何もせずにはいられなかった。それはそうだ。ヴィヴィオが大好きで、大切な母親の一人、すずかをアルカンシェルで無き者にしようとしているのだから黙っていられる訳がない。

 

「そうならないようにみんな頑張ってるけど、どうなるかは分からない」

 

ユーノは言いにくそうにヴィヴィオを見る。ユーノとてそんな結末にはしたくない。しかし、状況は芳しくはない。寧ろ、最悪に近い。

 

「キミの世界とは時間軸が違うのかも知れない。なのはも脇腹にあんな大怪我を‥‥‥」

 

ユーノの言葉に、ヴィヴィオは反応する。脇腹に大怪我‥‥‥脇腹?

 

(脇腹に?脇腹‥‥‥なのはママのあの傷、まさか)

 

ヴィヴィオが思い当たったもの。それは、ヴィヴィオの時代の、母であるなのはの腹部にある、決して小さくない、うっすらと残る傷痕。いつか、なのはが微かに笑みを浮かべながら言っていた。『これ?う~ん‥‥‥友情の証、かな?ちょっと痛かったけどね』と。あの傷が今できた傷だとしたら。いや、あんな背中まで貫通するような傷跡、他にできる事件など考えられない。

 

「ユーノ司書長!すずかママはきっと助かりますよ!」

 

「どういう事だい、ヴィヴィオ?」

 

突然態度を変えたヴィヴィオに、ユーノは驚く。

 

「あるんです。私の時代のなのはママにも、左脇腹に大きな傷痕が!きっとこの時代は私の時代の時間軸と一緒なんです!だからきっと助ける方法があるんですよ!」

 

「本当かい!?」

 

ユーノの表情が変わる。まだ方法は分からない。しかし、少なくとも目の前のヴィヴィオと同じ時間軸ならば、すずかはどうにかして助けられるという事だ。

 

「伝えなきゃ、フェイトママに!」

 

その表情に生気が戻ったヴィヴィオとユーノは、フェイトの所へ行こうと部屋を出る。

 

「所でさ、ヴィヴィオ」

 

「何ですか、ユーノ司書長?」

 

「キミの父親ってどんな人なんだい?」

 

未来の事が少し気になったユーノは、ふとヴィヴィオに聞いてみた。ヴィヴィオの父親、つまりは、なのはの夫がどんな人物か少し気になったから。本人曰く、決して自分が『パパ』と呼ばれない事に危機感を抱いたとかではない、決して。

 

「パパは‥‥‥いません。私、養子なんです。いろんな事があって、ママ達にも沢山助けてもらって、今の私がいるんです」

 

その瞳に涙を浮かべ話すヴィヴィオを見て、ユーノは自分の発言を後悔した。思っていた以上に深い事情があったようだ。

 

「そっか。変な事聞いてごめん。それから、『司書長』っていうのはちょっと。今の僕はただの司書だから」

 

そんなやり取りを少し後ろで、最初から聞いていたはやては、二人に追い付きユーノをどついた。

 

「なんや。って事は未来ではユーノ君はなのはちゃんに振られたって事やな?」

 

「どっ、どうしてそういう話になるのさ!」

 

明らさまに焦るユーノ。

 

「? なのはママとユーノ司書長、仲良しですよ?休みの日とかに一緒にいる事も多いですし」

 

あんなに仲良しなのに‥‥‥と首を傾げるヴィヴィオ。「なんや、ノロケか。ヴィヴィオちゃん、フェイトちゃんの所行こか」と言ってユーノを放ってさっさと車椅子の車輪を回すはやて。

 

「だから!どうしてそういう話になるのさ!」というユーノを置いて。

 

◆◇◆◇◆

 

部屋のドアを開け放ち、はやてとヴィヴィオはフェイトの部屋へと入る。

 

「入るよ、フェイトちゃん」

 

「フェイトママ!」

 

フェイトの返答はない。相変わらず部屋の隅でうずくまったまま。

 

「‥‥‥」

 

その態度に業を煮やしたはやては、フェイトに向かって怒鳴る。

 

「何塞ぎ込んでんねん。すずかちゃんを助けるんちゃうんか?」

 

「‥‥‥無理だよ、私じゃ」

 

弱々しくそう答えたフェイト。その返事が気に入らないはやては、更に捲し立てる。フェイトのすずかに対する思いは、そんな程度である筈がないと信じて。

 

「何、寝惚けたこと言っとるんや!すずかちゃんはなぁ!こうなるかも知れへんって分かっとったんや!フェイトちゃんにだけは心配かけたくない言うて!どれだけ苦しかったか分からんのか!フェイトちゃんが助けんかったら、誰がすずかちゃん助けるんや!」

 

その言葉に、僅かに顔を上げたフェイトを見て、ヴィヴィオも口を開いた。

 

「フェイトママ、私ね、本当に未来から来たの。だから、フェイトママがすずかママの事どれだけ大好きか知ってる。私の時代では、フェイトママも、すずかママも、勿論なのはママも元気だよ。だから、助ける方法がある筈なの!だから!」

 

「‥‥‥本当、なの?」

 

今度は涙に濡れたその瞳を此方に向け、反応するフェイト。ヴィヴィオは更に続ける。

 

「それに、すずかママから聞いた事があるの。『あのときフェイトちゃんが約束守ってくれたから、今の私がいる』って。あのときって、きっと今なんでしょ?約束、したんだよね?」

 

 

 

 

フェイトは思い出した。いつか交わした、その約束を。

 

『ねえ、フェイトちゃん。もしも私が、闇の力に負けそうになったり、闇に囚われたりしたら、助けてくれる?

『助けるよ。いつでも、どんな時でも、必ず。すずかを助けてみせる』

 

 

 

 

(約束‥‥‥‥‥‥そうだ、約束したんだ)

 

瞳から溢れていた涙を拭い、フラリと立ち上がったフェイト。定まっていなかった焦点も定まり、一点を見据えている。

 

「ありがとう、ヴィヴィオ、はやて。すずかと約束、したよ。どんな時でも、必ず助けるって!」

 

ようやく立ち直ったフェイトを確認し、はやての上着のポケットからスノーホワイトがフワフワと出てくる。

 

《ようやく私の出番ですわね。全く、すずかの伴侶を任せるには、立ち直る迄に時間が掛かりすぎですわよ?》

 

◆◇◆◇◆

 

『ディアーチェ、シュテル‥‥‥本当は、再会を分かち合いたかった』

 

「何だとっ!?どういう意味だ!」

 

U-Dに追い付いたディアーチェとシュテル。U-Dの発言に、ディアーチェは疑問を浮かべる。何故名前を知っていたのか?再会?前に会った事があるのか?疑問が尽きないディアーチェに向かって、シュテルが叫ぶ。

 

「ディアーチェ!」

 

気付いた時は既に遅く、ディアーチェとシュテルの身体を、U-Dの魄翼の爪が貫いていた。「「ぐあぁぁ!」」という叫びの後、グッタリとして動かない二人を他所に、U-Dが呟く。

 

『今の私は、破壊しか生み出さない。ごめんなさい。さようなら』

 

 

 

 

 

「王様は頼りにならない‥‥‥でも、私は大丈夫。最悪、エグザミアさえあれば何とかなる!私達の未来で、博士に希望をあげられるッ!」

 

二人がやられたのを確認し、U-Dを睨み現れたキリエ。今にも追い付かんと迫るアミタに捕まる訳にはいかない。早くエグザミアを確保して戻らないと‥‥‥。

 

『君は、時の操手足り得ない‥‥‥この魄翼の前に、鉄屑となって消える‥‥‥それが定め』

 

キリエが反応するよりも早く、U-Dの魄翼が迫る。ただ驚く事しか出来なかったキリエは、それに反応出来ずに魄翼の爪がその身体を貫かんとするのを見ている事しか出来ない。

 

「『アクセラレイター!!』」

 

ガキン、という金属の破砕音が響く。その身を呈してU-Dとキリエの間に割って入ったアミタの、左手の肘から先が吹き飛ぶ。その破砕部分からは砕けた機械のパーツが露呈し、パチパチと電流がスパークしている。

 

「お姉‥‥‥」と言いかけたキリエに、アミタは苦しそうにしながらも、確かな声で言った。

 

「キリエ‥‥‥逃げなさいッ!」

 

『姉妹もろとも、逃がさない』

 

両方の魄翼を増大させ、二人をこの場で『破壊』せんとするU-Dを見据えたアミタは、そのデバイスをU-Dに向けて叫ぶ。

 

「家族の命と心を守って生きる!一家の長女の勤めですっ!!」

 

そのデバイスの先端に、膨大なエネルギーが集まり増大していく。

 

「『ヴァリアントザッパー!オーバーブラストォォッッ!!』」

 

デバイスが崩壊しながらも放たれた、かつてすずか達4人がナハトヴァールに放ったクアドラプルブレイカーを上回る威力のその砲撃は、辺り一帯を光の渦に巻き込み、暫くの間輝き続けた。

 

 

 

 

 




フェイトちゃん立ち直るの回。これからが正念場。U-Dが相手だけに、なのはが居ないのは苦しい所です。

アミタさんがオーバーブラストかましました。勿論結果は‥‥‥

クアドラプルブレイカー‥‥‥言いにくい(汗)
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