Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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死せる王

 

 

光が収まる。力尽き、海へと落下していくアミタを横目に見ながら、U-Dはポツリと呟く。

 

『デバイスが崩壊するほどのオーバーロードを引き起こしての大威力砲撃‥‥‥成る程、少し痛かった』

 

少し遠くで呆気にとられて固まったままのキリエを視界に確認すると、U-Dの魔力が膨れ上がる。

 

『君も、直ぐに後を‥‥‥ッ!』

 

そう言いかけ、U-Dは突然頭を押さえ、苦しみだす。

 

『ッ!‥‥‥コントロール、不能‥‥‥うぁ゛ぁ゛ぁ゛!!』

 

U-Dは頭を押さえたまま、再び何処かへと姿をくらます。どうにか無事だったキリエは、「お姉ちゃん‥‥‥」と一言呟き暫く呆けていたが、近付いてくる魔力に我に返り、何処かへと消えた。

 

《主はやて、U-Dは何処かへと消えたようです。例のピンクの銃使いも居ません。今から落下した魔導師の救助に向かいます》

 

《うん、シグナム、宜しくな?私も今からそっちに向かうよ》

 

将来、自身がミッドで一番有名な指揮官になるとは思いもよらないはやては、自分が現場指揮なんて向いてない、と思いつつもアースラを出てシグナムの待つ現場へと向かった。

 

◆◇◆◇◆

 

「う‥‥‥う‥‥‥‥っ」

 

ベッドの上で苦しそうにして眠っているアミタ。その怪我を治す為にマリエル技官が徹夜で治療に当たっていた。心なしか嬉しそ‥‥‥いや、徹夜であるせいか妙なテンションで、目の下に隈を作りつつ、「凄い、凄いよ、ウフフフフ」と薄ら笑いを浮かべるその光景は、外から見ていると気味が悪いくらいである。

 

 

はやてとその守護騎士達がキリエ捜しに奔走している最中、ベッドの上のアミタは目を覚ました。

 

「ここは‥‥‥?」

 

「気分はどうだ?」

 

質問には答えず、アミタは自らの左手を見る。U-Dに粉砕された筈のそれは、見事に治っていた。

 

「マリエル技官が治してくれたんだ。それで、君達の目的は何だ、アミティエ・フローリアン?」

 

再度クロノは半分尋問ともとれる口調で質問をする。現状では致し方ない。クロノからしたら、アミタはフェイト達を襲ったキリエの仲間、という認識だ。

 

「私は、キリエを止めに未来の別の世界から来ました‥‥‥どうして私の名前を?」

 

不思議そうにクロノを見ているアミタに、クロノは2枚のカードを渡す。スノーホワイトに頼んで借りてきたフローリアン姉妹のカード。

 

「これは、私達、ですか?」

 

「そうだ、君達のカードだ。別世界の、だが。キリエというのはもう1枚のカードの人物で合っているか?」

 

「はい」とアミタは質問に答えつつ、辺りを見回した。病室、だろうか?それらしい機械が周りには置かれていて、何やらアミタの数値を計測している。大分楽になっている身体を、クロノと向き合うように上半身を起こす。

 

「私は、こことは別の世界、エルトリアから来ました。妹であるキリエを止める為に」

 

何故か顔が赤いクロノが、そのアミタから視線を反らし、顔を床に向ける。疑問に思ったアミタが原因を探ろうと、「あの?」と声をかけたのと同時に、扉が開いた。

 

「クロノ、入るわよ?その人起きたの‥‥‥って、アンタまたなの!?この変態!!!」

 

「まっ、待て、これは誤解だ!」

 

部屋に入ってきたアリサは、クロノが言い訳を言い終わる前に、その右の掌でクロノにビンタを食らわせた。

 

そうしてアミタは原因を理解した。簡単な事だった。アミタは、何も着ていなかったのだ。上半身を起こした事によって、その肢体が露になっていた。いくらギアーズとは言え、そこは精巧で見た目も質感も普通の人間と全く変わらない。アミタは現状を理解し、その頬を紅く染める。立ち上がらなくて良かった、と思いつつも自身の不注意のせいで往復ビンタを食らっているクロノに同情の念を抱いていた。

 

◆◇◆◇◆

 

「アハハハハ!」

 

アースラのクロノの部屋。クロノの話を聞いたユーノは堪えきれずに笑っていた。

 

「笑い事じゃない!アリサもあんなに怒る事はないと思うんだが」

 

そのクロノの言葉を聞いて、ユーノは頗る不機嫌になる。この朴念仁め、と心の中で呟きながらクロノを睨む。

 

「アリサもエイミィさんも可哀想にね」

 

「どうしてそうなるんだ?」

 

「クロノ、それ本気で言ってるの?‥‥‥まさか、そのアミタさんもとかは無いよね?」

 

「だから、どうしてそうなるんだ」

 

やれやれ、とユーノは大きく溜め息をついてクロノを再び見た。この執務官は、他の事には鋭いくせに、自身の事にはかなり疎いようだ。その当人、クロノは窓の外を見つめ、ポツリと呟く。

 

「騎士カリムの預言通り、か」

 

「カリム?あの聖王教会の預言騎士?」

 

今度は真剣な顔に変わり、クロノを見るユーノ。有名な預言騎士が再び預言をしたらしい。尤も、管理局でもその評価は二分されているが。

 

「ああ。『時の操手と未来からの変革者』。それと、『深淵の闇の器』」

 

「それってまさか、あのアミタって人と、ヴィヴィオ達と、すずかの事?」

 

「恐らく」とクロノは答える。どうやら此処までである程度のキャスティングは終えているようだ。解釈が済んでいるのなら、今後の行動のヒントになるかも知れない。ユーノは核心部分を聞く。

 

「それで、預言では何て?」

 

「それが‥‥‥『死せる王とその聖母』が運命を握る、と」

 

「死せる王?母親が聖母って呼ばれるくらいの王って言ったら‥‥‥聖王オリヴィエとか?」

 

どうやらクロノはまだキャスティングを終えてはいなかったようだ。ユーノも、『死せる王とその聖母』に当たる人物は現状のメンバーでは思い当たらない。仮に死せる王がオリヴィエだったとして、どうやって探すか。いや、何か忘れている気がする、何か‥‥‥。

 

「まだ分からないな。それらしき人物も現れてないし、すずかが居れば元の世界と比較して何か分かったかも知れないが」

 

「いや、待って」

 

何か思い当たる事があったのか、ユーノは口を開いた。

 

「カイゼル・ファルベだ」

 

「何?」

 

「カイゼル・ファルベ。聖王の虹色の魔力光だよ。ヴィヴィオの瞳‥‥‥紅と碧の虹彩異色だよ」

 

◆◇◆◇◆

 

「大丈夫ですか?マリエルさん」

 

「ウフフフフ。大丈夫だよ、フェイトちゃん」

 

フェイトの目の前で忙しくコンソールを叩くマリエル。もうなんか目が怖い。眠さを通り越して危険な笑みを浮かべている。

 

「バルディッシュとスノーホワイトの調整ももうすぐ終わるから。‥‥‥すずかちゃんとなのはちゃんの、か」

 

「はい」

 

フェイトは力強く答えた。

 




短めの更新。

アミタフラグを建てるクロノの回。
既にアリサ、エイミィフラグを建てておいて、未回収。
なにこの朴念仁‥‥‥。
これでGOD原作通りキリエフラグまで建ったら、まるでどこぞのとある漫画のウニ頭のよう、と作者は作者はクロノを僻んでみたり。

ユーノは預言のキャスティングを終えたようです。
マリエルさんが怖い回でした。



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