Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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決戦は涙と共に

 

「‥‥‥ん~」

 

フェイトは両腕を前に出し、大きく伸びをする。

 

浴槽に浸かり、「フゥ」と一息ついて天井を見上げ、すずかの事を思い浮かべる。

 

(すずか。前に髪を洗ってくれた事あったよね?私、一人でもちゃんと洗えるようになったよ?だから、また早く一緒に入りたい‥‥‥会いたい、会いたいよ)

 

フェイトの頬を涙が伝う。「すずかぁ」と小さく呟いた所で、浴室の扉が開いてヴィヴィオ、アインハルトが入ってきた。フェイトは慌てて涙を拭い、誤魔化すように再び伸びをする。

 

「フェイトママ~♪一緒に入ろ~」

 

「フェイトさん、おっ、お邪魔します」

 

そう言って浴槽に浸かり、抱きついてくるヴィヴィオと、身体を洗い始めるアインハルト。

 

「もうすぐ決戦ですね、フェイトさん」

 

それに少し俯いて答えるフェイト。

 

「‥‥‥そうだね」

 

「もうっ!今からそんなでどうするの!フェイトママが頑張らないと、すずかママが」

 

ヴィヴィオの言葉を遮るように、フェイトはか細い声を出す。

 

「‥‥‥くないよ」

 

「えっ?何?」

 

良く聞き取れず、ヴィヴィオは聞き返す。そこには自分の事にはえらく否定的な、フェイトの悪い癖が顔を覗かせていた。

 

「私、そんなに強くないよ。今だって、不安で押し潰されそうで。もしすずかと二度と会えなかったらって思うと涙が止まらなくって」

 

暫しの間。アインハルトが浴びているシャワーの音だけが響く浴室内。完全に下を向いてしまったフェイトに、ヴィヴィオとアインハルトが語りかけた。

 

「フェイトママ」

 

「フェイトさん」

 

湯気で見にくいとはいえ、二人とフェイトの距離は近い。黙り込み、泣いているのがバレていないだろうか、と心配しているフェイトの両腕に、二人は抱き付いて来た。アインハルトとヴィヴィオの温もりが伝わってくる。辛うじて顔をあげたフェイトに、ヴィヴィオは言った。

 

「フェイトママ。もっと力を抜いて。フェイトママは独りじゃないから。お友達がいて、仲間がいて、私達がいる。だから、独りじゃないよ?すずかママ、みんなで助けよう?」

 

笑顔を向けるヴィヴィオとアインハルトを直視出来ず。フェイトは辛うじて「うん‥‥‥」と一言だけ発すると、声をあげて泣き出してしまった。

 

三人が浴室から出たのは、フェイトが落ち着いて暫く経ってから。二人がのぼせ気味のフェイトを支えて歩く事となった。

 

◆◇◆◇◆

 

「未来の『私』の言った通りでしたね。これはかなり不味い」

 

暗黒に染まった空の先を見据えるマテリアルの三人。シュテルの言葉を聞きながら、ディアーチェはU-Dを睨む。

 

「もう9割方仕上がっているではないか!完成する前に何とかせねばなるまい。行くぞ、シュテル、レヴィ」

 

「そうですね」と答えたシュテルは、ディアーチェとレヴィがU-Dに気を取られている間にルベライトで二人を拘束、一人上空へと飛び立つ。

 

「バインド!?シュテル、お主どういうつもりだっ!」

 

「U-Dはこのままには出来ません。王はこの後の事態に備えてください。私はここで文字通り『礎』となります」

 

「そんか勝手が許されると思うか!一人犠牲になるなど許さぬぞっ!!基本構造を破壊されてしまったら、いくらお主でもっ‥‥‥!!」

 

シュテルは一度ディアーチェを見た後、U-Dを再度見据え、答える。

 

「大丈夫です。『運が良ければ』消滅しませんから」

 

「『運』が良ければであろう!!許さぬぞ!行くな、シュテルぅぅ!!」

 

シュテルは振り向かず、真っ直ぐにU-Dへと向かう。少し飛んだ所で、レヴィがシュテルに追い付く。

 

「私のルベライトを破ったのですか!」

 

「ボクは力のマテリアルだ。このくらい!それに、一人よりも二人のほうが、確率が高い。それくらいボクにだってわかる」

 

レヴィを横目で見て「フフっ」と笑うシュテル。「そうですね、行きましょう」とだけ答え、飛行速度を上げる。

 

(勝算は0ではありません。未来の『私』がいるのですから)

 

「私達が止めて見せます。行きますよ、U-D!!」

 

◆◇◆◇◆

 

U-Dの魄翼がレヴィを捕らえる。押し潰されそうなくらいの圧力と激痛に苦しみながらも、その瞳は死んでいない。

 

「今だ、シュテルん!」

 

レヴィに気を取られているU-Dのその背中から現れたシュテルが、ルシフェリオンを振り上げ、渾身の一撃を見舞う。

 

「機能阻害プログラム。これで‥‥‥!!」

 

『ぐぁぁぁぁぁぁ!!』という悲鳴を上げ、苦しむU-D。しかし、その刹那、魄翼を大きく拡げ、爪状にいくつにも伸びた先端が、シュテルとレヴィの身体を貫いた。

 

 

 

 

漸くルベライトを脱したディアーチェ。二人に追い付いた時には既に遅し。二人は空中に横たわっていた。

 

「シュテル!レヴィ!しっかりせい!今我が魔力を分けてやる。もう少しの辛抱‥‥‥」

 

「駄目です、王。寧ろ逆です。紫天の書は王にしか扱えません。貴女は万全の状態で」

 

「王様、ボク達の力、受け取って」

 

シュテルとレヴィから、ディアーチェへと残った魔力が流れ込む。それと同時に、少しずつ消えていく二人の姿。

 

「お主ら、何をしておる!やめい、止めんか!!臣下無くして、何が王か!止めんか!!」

 

「大丈夫です。消えはしません。我々の力、王に預けます。どうか、御武運を」

 

「シュテルぅぅ!レヴィぃぃぃ!」

 

ディアーチェの叫びは虚しく響き、シュテルとレヴィの魔力は完全にディアーチェに融合。流れる涙と引き換えに、ディアーチェに溢れる魔力。その翼が青と朱に輝く。

 

「『シュテル』、キサマこうなると分かっておったなぁぁぁ!!!」

 

涙に震えるディアーチェの視界の先。来るべき決戦に合流すべく現れた、『未来』のシュテル。

 

「すみません、王。来るべき戦いには、必要な事でした。その状態のディアーチェでないと、ユーリを制御出来ませんでしたので」

 

表情なく、あくまでも事務的に話すシュテル。その心中には重いものがのし掛かっていたが、動揺しているディアーチェには気づけなかった。

 

「だからといって、お主!!」

 

シュテルに掴みかかろうか、というディアーチェの元へと漸く到着した管理局の面々。フェイトは先程モニターで見ていた、消えた筈のシュテルがいる事に驚く。

 

「王様、今のは!?シュテル?!王様と融合した筈じゃ!?」

 

フェイトの方を一度見やり、シュテルは全員に問いかける。

 

「詳しい事は後です。ディアーチェ、皆さん。先程U-Dに撃ち込んだ阻害プログラムが効いている今しかありません。準備はいいですか?」

 

「当然よ!二人の行動を無駄にはせんっ!!遅れをとるでないぞ、塵芥共!!!」

 

ディアーチェに答えるように口を開いたクロノは、握り締めるS2Uに力を込めた。

 

「みんな、行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 




安  定  の  お  風  呂  回  !

各幕ごとに一回はないと。短め回には肌色成分で目を瞑っていただけると。

気付けばラストバトル。フェイトちゃんとシュテルんが鍵を握ります。
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