アースラの廊下を歩く一行。ディアーチェに抱かれて眠るユーリを見ながら、笑顔のはやてが口を開く。
「しっかし、こんな子があんな力持っとるなんて、信じられへんなぁ」
ディアーチェはユーリの頭を撫でようとしているはやてを妨害しながら答える。
「ユーリは我ら紫天の盟主。あれくらい当然よ」
「ちょっとくらいエエやんか」
「うるさい!子烏の分際でユーリに触るでないッ!」
「いけずやなぁ、お姉ちゃん」
「誰が好き好んでキサマと姉妹なんぞになるかッ!!」と、端からみればまるで姉妹のようなやり取りをしているディアーチェとはやて。
その二人の遥か後方を、すずかをお姫様抱っこして歩くフェイト。
「フェイトちゃん、そろそろちょっと恥ずかしいよ」
「駄目だよ、すずか。回復するまでは大人しくしてないと」
終始笑顔のフェイトに抱かれ、恥ずかしさで顔を真っ紅に染めているすずか。最後尾で誰も見ていないのを良いことに、フェイトは「でっ、でも」と言うすずかの口に軽くキスをして黙らせる。
「フェ、フェイトちゃん!もう!」
「すずかが悪いんだよ?すずかが可愛いから」
赤かった顔を更に耳まで真っ赤に染め、すずかは恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにフェイトに笑みを溢した。
その二人の方を、立ち止まって振り返ったシュテル。
「‥‥‥すずか、フェイト。少し良いでしょうか」
誰にも見られていないと思い、油断していた二人は、恥ずかしさでオロオロしている。そんな二人に、シュテルは言葉を続ける。
「すずか、元の世界に戻りたいと思いますか?私が此方に滞在している今なら、元の世界に帰してあげられます」
冷や水を浴びせられたかのように驚き固まるすずか。そして、その言葉に少し俯くフェイト。すずかはフェイトを見つめながら答える。
「私は‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
◆◇◆◇◆
「未来を知った事で、お二人が、親子にならない可能性も出てきてしまうので」
「「ふぇぇぇぇぇ!?それは嫌です!!」」
なのはとヴィヴィオの声が綺麗に揃う。「ハモった!?」と言葉を洩らすフェイトを他所に、アミタは話を続ける。
「ですから、私達は管理外世界から来た、ということにして、ヴィヴィオさんとアインハルトさんの事はほぼ記憶を封鎖させて頂きます。ですから、此方での私達の記録は消していただけると‥‥‥」
マテリアル達の力を借りる事で時空移動を安定させ、ヴィヴィオ達も元の時代に帰れるそうだ。何でも、ディアーチェ達はエルトリアでフローリアン姉妹を助け、死蝕を止める活動をするという。「破壊しか生まないと思っていた私の力が、役に立てるのなら」と、ユーリが言い出した事らしい。マテリアルの3人も快諾。ディアーチェはどうもユーリには甘いようだ。
「なのはママ、すずかママ、フェイトママ、また未来で!」
「皆さん、お世話になりました!」
と丁寧に挨拶して消えていくヴィヴィオ達を見ながら、フェイトはすずかに問う。
「すずか、元の世界に戻らなくて本当に良かったの?」
「うん。もう決めたから。私は‥‥‥フェイトちゃんとずっと一緒に居たいって。それにきっと、アリサちゃんが行き来する方法見付けてくれるよ」
フェイトは笑顔で答えたすずかをそっと抱き寄せ、キスを交わす。すぐ後ろでそれを見ていたアリサが、呆れたように話す。
「あんた達、私の目の前でイチャつくんじゃない!‥‥‥‥‥‥まぁ、方法なら見付けてみせるわよ、必ずね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは。フェイト・テスタロッサです。すずかが突然留学してからもう半年経ちました。もうすぐクリスマス。ここホビーショップT&Hもイルミネーションが綺麗な冬使用です。
今日は母さんにお客様がいらっしゃってます。スタイルがよくて、綺麗なお姉さん。お仕事が少し長い休暇が取れたので遊びに来たそうです。久し振りに会ったそうで、何だか二人とも楽しそうです。
でも、お姉さんは誰かに似てる気がします。それに、今ではすっかり有名人のヴィヴィオちゃん?も一緒みたいです。親子‥‥‥?にしてはお姉さんはちょっと若いような‥‥‥?
「お久しぶりです、プレシアさん」
「あら、こっちはそれほどじゃないわよ?せいぜい半年くらいかしら?貴女が変わりすぎなのよ」
「これでも『あっちのアリサちゃん』が頑張ってくれたんですよ。お陰で少しだけ往き来出来るようになりました。管理局には公表してませんけどね。あ、これ、『14年前』に預かってたカードです」
え?アリサ?カンリキョクってなんの事でしょう?
「アラ、これもういいの?」
「はい。これに頼らなくても、何とか出来るようになったつもりです」
お姉さんが母さんに渡していたのは、母さんの少女姿が描かれたリライズ用激レアカード。アレ?でも、今、14年前って‥‥‥そんな前って、ブレイブデュエルって無かった筈なんですが?
「そうなの?『あれから』どれだけ強くなったか見てみたいわ。デュエル、やってみる?」
「『あのとき』より、随分強くなったつもりです。『あのとき』は手も足も出ませんでしたけど、今なら渡り合ってみせますよ?」
二人とも楽しそうに話してるんですが。何だか話が少しおかしいんです。だって、14年前にそんな事どうやって‥‥‥?
「それで、そっちの子は?」
「ほら、ヴィヴィオ、ご挨拶は?」
「こんにちは!高町ヴィヴィオです!えーっと、プレシア『お婆ちゃん』?」
「おばっ‥‥‥」
「ごっ、ごめんなさいプレシアさん!もうっ!ヴィヴィオ!」
「だって、‥‥‥」
お婆ちゃんと呼ばれた母さんはかなりショックを受けています。ヴィヴィオだって、私と同じくらいなのに、どうして母さんをお婆ちゃんなんて呼んだんでしょう?‥‥‥それに、やっぱりヴィヴィオは『高町』なんですね。それから、あのお姉さん、ヴィヴィオに名前呼ばれたみたいだけど、良く聞こえなかった‥‥‥。
「良いわよ、ちょっとショックだっただけだから。所で、貴女達、どういう関係なの?」
「話すと長くなるんですけど、なのはちゃんがこの子の母親で、私とフェイトちゃんは後見人なんです。だから、私もフェイトちゃんも、『ママ』って」
「そうなのね。だから『高町』って訳ね」
「ハイ!そうなんです!3人とも自慢のママです!」
「成る程ね。ヴィヴィオちゃんがこっちに来たのは貴女の仕業だったって訳ね」
え?なのは?同姓同名??って事は、高町なのはで、高町ヴィヴィオだから‥‥‥高町フェイト?えへへ‥‥‥高町フェイト‥‥‥
ゴッ、ゴホン。
「そうです。まさかあの頃は私も、私が連れて来てるなんて思いもよりませんでした‥‥‥あっ、フェイトちゃん!『久しぶり』だね!こっちこっち!」
え?私?でも今久しぶりって‥‥‥私、お姉さんと会った事ないんですが‥‥‥?
「ホラ、フェイト。おいで?」
母さんに呼ばれて私はお姉さんに挨拶します。
「あ、あの‥‥‥フェイト・テスタロッサです。はじめまして」
「フェイトちゃん~!ん~、フェイトちゃん分補給~」
お姉さんはそう言って、私はぎゅーっと抱き締められました。え?え?え?
「ちょっと、ママ?周りに人が居るときはイチャイチャ禁止って言ってるのに!」
「ヴィヴィオちゃん、それってどういう意味?‥‥‥貴女‥‥‥もしかして向こうの『あの子』とはそういう関係なの!?確かに『お願い』とは言ったかも知れないけど」
「はい。‥‥‥‥‥‥すいません。最近会えて無かったので
」
「‥‥‥フェイトママに会ったのって、2日前、だよね?」
「そうだよ、ヴィヴィオ!2日も会って無いんだよ?フェイトちゃんに2日も会えないなんて!」
そう言ったお姉さんは私を抱き締めたまま、赤くなっています。そういうって、どういう関係なんでしょう?
「ん~、今のフェイトちゃんにはまだ早いかな?」
心を読まれました。エスパー!?
「フェイトちゃんの考えてる事なら何となく分かるよ?」
顔が赤いまま、お姉さんは話します。母さんの顔が少しひきつっているのは気のせいではないでしょう。
「あっ、プレシアさん。久しぶりにデュエルスペース見に行ってもいいですか?」
「良いわよ?今、なのはちゃんとシュテルちゃんがデュエルしてるから、見に行ったら?」
「はい!二人に会うのも『久しぶり』!ヴィヴィオ、行こう?」
アレ?なのはとシュテルとも会った事あるの?いつ会ったんでしょう?
‥‥‥と、アリシア姉さんがこっちに来ます。
「ねえ、フェイト。あの人は?」
「あのお姉さん?母さんの知り合いみたいだよ?」
「何かさ、あのお姉さんって、すずかに似てるよね」
‥‥‥‥‥‥え?
私は、デュエルスペースに行ったお姉さんを追いかけていました。そんな事あり得ないと思いながらも。
「あっ、『フェイトママ』!」
「アレ?フェイトちゃん?‥‥‥そうだ!私もデュエルしてもいいかな?」
そう言ってお姉さんは1枚の変わったカードを取り出して何か呟くと、何処からか、まるで手品みたいにカートリッジと自分のカードを取り出しました。
「ありがとう、『スノーホワイト』」
《いいえ。『こちらの私』にも宜しく言っておいてくださいまし》
え?今の声って何処から?さっきスノーホワイトって‥‥‥。
それから、お姉さんのカートリッジとカードを見て、私は泣きそうになりました。だって、そのカートリッジは、忘れもしない親友と同じ飾りがついていて、そのカードに描かれていたのは‥‥‥
「ごめんね、フェイトちゃん。戻って来るのに14年もかかっちゃった。おかしいよね?いきなりこんなこと言って」
「もしかして‥‥‥すずか?すずか、なの?」
「うん、そうだよ‥‥‥って言っても信じられないよね?」
「信じる‥‥‥信じるよ!だって!」
私はお姉さん‥‥‥すずかに抱き付いて声をあげて泣いていました。こんなことって‥‥‥!!
◆◇◆◇◆
『Caution!Here come new Duelist!』
乱入者。なのはとシュテルは顔を見合わせた。
「どういう事でしょう。乱入出来ないようにしておいた筈ですが」
「なんでだろうね?アリシアちゃんかな?」
一対一で、お互い全力で。乱入者が無いよう設定していた筈が、誰かが入って来た。はじめは怪訝な顔をしていたシュテルとなのはだったが、そのシルエットを見て表情を崩した。
「成る程。良いでしょう。全力にてお相手致します。行きますよ?なのは」
「うん!!シュテルちゃん!全力全開で!」
二人の目の前に現れたのは、『少女時代の姿』のすずかと、セイクリッドスタイルのヴィヴィオ。
「二人とも久しぶり!全力全開で行くよ!ね?ヴィヴィオ?」
「うん!すずかママ!」
Fin........?
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《お疲れ様でした、ヴィータ二等空士、高町一等空士》
ブリッジからの通信に答える、飛行中の二人。
《お疲れ様です。私はロストロギア回収班の皆さんと合流してから戻ります》
《お疲れ様です。アタシはこのままソッチに戻ります》
あれから。入局してから二年。
異世界任務で、ロストロギアを回収し、戻る途中の、笑みを溢す二人。
「しっかし、凄い雪だよな」
「そうだね、ヴィータちゃん。海鳴もクリスマスには雪だといいね!」
「そうだな。‥‥‥もうすぐクリスマスかぁ」
ヴィータの目が、遠くを見るような目になる。
「そうだね。リインフォースさんが旅立ってから、もう2年だね」
「ああ」とだけ答えたヴィータを見て、なのはは話題を変えることにした。辛い思い出を呼び起こしてしまったようだったから。
「所でヴィータちゃん。あのロストロギア何なんだろうね?綺麗で水晶みたいだよね?」
「さあな。赤い結晶型なんて初めて見たよな。っと、アタシはこっちだから。一応気をつけろよ?」
「ニャハハ。分かってるよ、ヴィータちゃん。じゃあ、また後でね」
それは虫の知らせだったのだろう。飛び去っていくなのはの後ろ姿に、ヴィータはいつもとは違う、妙な違和感を感じていた。
‥‥‥‥‥‥そして数刻後。その事件は起こった。
And continues to Striker's.
すずかさん、フェイトちゃん、第一部お疲れ様でした。
ここで終わろうと思っていたのですが、方針転換。次回からSTS編へと突入します。
第二部はなのはさんにもスポットが当たります。