Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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The trick each other of raccoon dog and fox

「私が時間を稼ぐから、すずかちゃんはその間に打開策を!」

 

そう言ってなのははアリサと対峙する。封印の隙を伺うものの、思うように近づけない。距離を取れば焔の魔力弾が雨のように襲い、近接に持ち込もうとすれば焔でできた長刀で切りかかられる。かと言ってアリサに砲撃を撃ち込む訳にも……

なのはが攻めあぐねている様子を、すずかは極めて冷静に見ていた。

 

「スノーホワイト。バッハ・『パルティータ第2番ニ短調』、覚えてるよね?」

 

《勿論ですわ、マスターすずか》

 

「じゃあ、行くよ!」

 

どうやら前世界の記憶のあるスノーホワイトと確認をして、すずかはアリサに向かって行く。それを見たなのはがアリサの攻撃圏外迄下がり、封印の準備に入る。なのはの足元に魔法陣が展開し、レイジングハートに魔力が集まる。

 

「『アイスミラー』」

 

すずかも走りながら魔法陣を展開。自身の両脇と後ろに1枚ずつ氷の鏡を出現させると、スノーホワイトの奏でる音楽に合わせ、流れるような動きでアリサへと迫る。近づけまいとアリサから多数の焔が撃ち込まれるが、すずかは時に鏡で反らし、時に軽快なステップでそれをかわし、徐々にアリサに近付いていく。その動きはまるで踊っているかのよう。元々は、レヴィやヴィータのような、遠距離も近距離もできる強力な前衛用に特訓したステップ。その2人の攻撃に比べたら、ジュエルシードの力があるとは言え、アリサのそれは断然ぬるい。

 

「ユーノ君……」

 

「うん、なのは。あの子、凄いよ」

 

2人はそれを見て、感嘆の声を挙げた。幾ばくもしないうちにアリサの元に辿り着き、その焔の刀に対しスノーホワイトで打ち合うすずか。

 

「アリサちゃん!!」

 

アリサの苛烈な打ち込みをスノーホワイトで防ぎながら、すずかはアリサの名を呼ぶ。それに一瞬反応したかのようにピクッとしたアリサ。

 

『アタシは』

 

すずかとなのはには、確かに聞こえた。

 

『何の力にもなれないアタシは、きっと要らない子』

 

2人の心に直接聞こえる悲しそうなその声は、確かにアリサのもの。

 

「違うよ、アリサちゃん!私達は、危険な事に巻き込みたくないだけだよ!」

 

すずかはアリサに向かって叫んだ。

 

「だって、アリサちゃんも大切な!」

 

届いているか分からないが、なのはもアリサに語りかける。

 

「「大切な友達だから!」」

 

それに呼応するかのようにアリサの攻撃が止まった。ユーノはチャンスと見て、2人に向かって叫ぶ 。

 

「今だ!封印を!」

 

すずかの足元に魔法陣が広がり、辺り一帯が冷気に包まれていく。一定のリズムですずかから溢れ出るそれは、まるで音楽を奏でているよう。

 

「届いて!『氷の歌!』」

 

すずかから放たれた冷気が、辺り一帯の焔を凍らせ、氷の塊となってアリサを拘束する。氷のバインドで動けないアリサに、なのははレイジングハートを向けた。

 

「アリサちゃん、今助けるから!『リリカル、マジカル!ジュエルシード、シリアルⅦ、封印!』」

 

眩い光と共に、ジュエルシードがアリサから分離し光を失う。すずかはその場に崩れ落ちるアリサを抱き抱え、ベンチ迄運ぶ。気を失ったままのアリサを膝枕で寝かせ、すずかは「ごめんね」と呟いた。

 

そんな2人を見ていたなのはだったが、後方の空に2つの魔力を感じ取り、振り返って構え直す。来たのはやはり、フェイト。彼女はいつもと変わらず、冷徹に口を開く。

 

「ジュエルシード……それを渡して」

 

「フェイトちゃん!今度こそ、お話聞かせてもらうから!」

 

そう叫ぶなのはの後方、人間に戻ったユーノと人型アルフはお互いを牽制し合う。

アリサを膝枕したままで動けないすずかを他所に、お互いのデバイスで打ち合おうと距離を詰めるフェイトとなのは。その時。

 

《なのはちゃん!誰か来るよ!》

 

急なすずかの念話に、なのははその場で急ブレーキをかけ止まる。それを見たフェイトも、何か策があるものと思い、その場に留まった。2人が止まったその瞬間、その人物は転移魔法陣から現れた。

 

「ストップだ!ここでの戦闘行動は危険過ぎる!時空管理局執務か……アレ?」

 

名乗り口上もそこそこに、クロノは間抜けな声をあげた。てっきり2人の魔導師はぶつかるものだとばかり思っていたので、その間に割って入る予定だったのだが、実際転移してみたら2人にはかなりの距離があり、しかも2人共停止しているではないか。白と黒の対照的なバリアジャケットの2人が自分を見て呆気に取られているのに気付き、ハッと我に返ったクロノは改めて言い直そうとしたのだが、聞こえてきた「ク、クロノ君!?」という言葉にそれを止めて声の方を見た。

 

「君は何故僕の名を知っている?」

 

クロノにS2Uを向けられ、明らかな威嚇を受けているすずかは、思わず声を出してしまった事を後悔した。相手はどうやらユーノの言っていた時空管理局。通常ならば魔法のない筈の世界の人間が、そこに所属する人物の名前を知っている筈がない。敵意を向けられ、交渉がしにくくなってしまった事に落胆するすずか。

 

何か言わないと、と思い口を開こうとしたすずかに向けられていたS2Uが、不意に向きを変え、魔力弾が放たれる。その方向を見ると、ジュエルシードに手を伸ばしていたフェイトが被弾し、地面に叩きつけられるのが目に入った。思わず「フェイトちゃん!」と叫んだすずかよりも早く、なのはがクロノとフェイトの間に割って入る。

 

「やめて!撃たないで!」

 

アルフに拾われ、何とか撤退しようとしていたフェイトの前に立ち、両手を広げクロノの追撃を阻止するなのは。その隙にフェイトは逃げおおせる。

 

3人の魔導師の関係をイマイチ掴めないクロノが、「君達は一体……」と言いかけたところで空にモニターが現れ、リンディが画面に現れた。

 

《ご苦労様、クロノ執務官》

 

「すみません、艦長。一方の勢力には逃げられてしまいました」

 

《まあいいわ。詳しい話は聞けそうだしね。悪いけど、そっちの子達をアースラ迄案内してもらえるかしら?そこの『寝たフリ』してる子も、ね?》

 

なのはもすずかも、リンディが一瞬何を言っているのか分からなかったが、次に喋った人物を見て、驚愕した。

 

「……お姉さん、性格悪いとか言われません?」

 

《さあどうかしら。最初から起きてた貴女もなかなかだと思うわよ?》

 

片目を開き、すずかに膝枕されたまま、リンディと嫌味を言い合うアリサ。その状況適応力には驚きだが、すずかとなのはにとって問題はそこではなかった。

 

なのはは処理能力の限界を越えたのか、口をパクパクさせたまま固まっている。すずかは膝枕をしている状況が恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながらアリサに訊ねた。

 

「アリサちゃん……いっ、いつから起きてたの?」

 

「んー、『友達だから!』辺りから意識はあったわよ?『リリカル、マジカル』だったっけ?」

 

「そっ、そうじゃなくて!」

 

「あぁ。何かさ、2人共凄い事に巻き込まれてるみたいだし、打ち明けてくれるまで知らない振りしてようと思ったんだけど。あの『艦長』とかいう人にバレちゃったしさ。」

 

実にあっけらかんと話すアリサ。驚くどころか「魔法少女って凄いわよね!私でもなれるモンなの?」と興味津々。「リンカーコアがないから無理」とユーノに言われてショックを受けている様を見ていると、秘密にしていたのが馬鹿らしくなってくる。

アリサはショックのその矛先を今度は、「『リリカル、マジカル』はちょっと……」「ふぇぇぇ、ひどいよアリサちゃん!」と、なのはに向けている。

そのやり取りをポカンと見ていたすずかだったが、クロノの「そろそろいいか?」という言葉で我に返る。

 

「さっきも聞いたが、君は何故僕を知っている?」

 

「そ、それは……」

 

並行世界から来たから、などと言って、本当に信じてもらえるのだろうか。一抹の不安から、言い淀むすずか。

 

 

 

そんな彼女達の様子をモニターしながら、リンディとエイミィが話す。

 

「凄いですよ、艦長。白い子とさっきの黒い子はAAAクラスの魔導師。この紫の髪の子はAAクラスで氷結変換の激レアスキル持ちですよ!」

 

「そうね、エイミィ。『おかしい』わね。」

 

「そんなにおかしいですかね?グレアム提督の例もありますし、こんな魔導師達が居ても不思議じゃ……」

 

「そうじゃないわ、エイミィ。この子達、現地の協力者よね?魔法に触れて間もないのに、こんなに魔法戦に慣れてるなんて。まだ荒削りな白い子は兎も角、この紫の子の動きは、素人じゃない。明らかに魔法で戦い慣れてるわ」

 

 

 




アリサは覚醒させませんでした。その代わり真相を知ってもらいました。

潜在能力はすずかよりもなのはの方が断然上です。戦い慣れて居ないだけ。

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