高町なのは、13歳と数ヵ月。つい数年前迄、砲撃押しの凶悪(!?)魔法少女だった彼女。魔法少女ではなくなって車椅子の生活となってから、見えてきたまた違う世界。
大人の世界。なのはがまだ現役で、リンディ提督やレティ提督の後ろ楯のもと、将来を渇望されていた頃はチヤホヤしていた者達。撃墜が元でなのはが引退すると分かるや否や、彼らは掌を返すようになのはから離れて行った。
勿論、リンディやレティは今でも昔と変わらず接してくれる。当然クロノやエイミィも。けれどなのはには、離れて行った者達の、蔑んだような視線が辛かった。
それから、魔法少女になって管理局で働いていた頃には省みもしなかった、家族の優しさ。親友達の温かさ。それから‥‥‥。
「な~のは!おーい、なのは~?」
「アカン、アリサちゃん。なのはちゃん聞こえてへんわ」
「‥‥‥ふぇ!?はやてちゃん!?」
ボゥっとしていて気が付かなかったが、はやてが仕事から戻ってきて、いつの間にか午後の授業に出ていた。
《ふぇ、やないで、なのはちゃん。先生に指されとるよ、ホラ》
親切にも念話で教えてくれたはやてに感謝しつつ、授業を乗り切るなのは。
放課後に帰宅の準備をしていると、アリサ、すずか、はやての3人が集まってくる。どうやらフェイトはまだ仕事から戻れないようだ。
「なのはちゃん、どうしたん?さっきからボーッとしとって」
「はやて、違うわよ。なのはは朝からずっとこの調子よ」
「はやてちゃんもアリサちゃんも。なのはちゃんだって物思いに耽りたい時だってあるよ、ね?」
はやてもアリサもすずかも、言い方は其々違うが、なのはの事を心配しての発言。未だに昔の後悔を引きずり、みんなに心配をかけている事が申し訳ない。
「えっと、大した事じゃないんだ‥‥‥」
そうなのはが言いかけたタイミングで、校舎の外が少し騒がしくなった。何だろう、と思って窓から外を見た一同は、それを確認すると、勝手に納得してニヤニヤし始めた。
「何よ、なのは。そういう事ね。そりゃ授業も上の空よね」
「なんや。心配して損したわ。あー暑い暑い」
アリサとはやてがなのはに絡む。
すずかに至っては、「なのはちゃん。早く行ってあげて?」と催促している。
「ちっ、違う、違うから!ユーノ君が来るなんて知らなかったし!」
顔を真っ赤にして反論するなのはの視線の先には、金髪ロングヘアーだが見るからに好青年の、ユーノがいた。なのはは本当に来るなんて聞いてない。しかし、鼓動は高鳴る。
現役魔法少女の頃には、何とも思っていなかった(幼馴染みの、師匠であり親友、とは思っていた)なのはだが、最近は少し違う。ユーノに感じているものは、年頃の少女が抱く、恋心。
「やぁ、みんな。今日は早くあげてもらえたから、ちょっと様子を見に来たんだ」
ユーノは4人と合流。なのはの車椅子を押しながら下校路を歩く。ユーノが言うには、ロストロギアが原因かは分からないが、最近海鳴で小規模な次元震があったので気を付けてほしい、という事らしい。そう言えば昨日も地震があったな、などと考えていたなのはは、3人がいつの間にか気を使って居なくなっていて、ユーノと二人きりになっている事に気が付く。
(ふぇぇぇ!?ユーノ君と二人っきり!?どっ、どうしよう!?)
「なのは、ちょっといいかな?」
先に話を切り出したのは、ユーノだった。
「驚かないで聞いてほしい。中学を卒業したら、ミッドチルダに来ないかい?」
「ふぇぇぇ!?ミッドチルダに‥‥‥‥‥‥えっ?」
なのはは驚く。フェイトにも誘われてはいたが、彼女とはどうも少し意味が違うようだ。それは、まさか‥‥‥。
「なのは、ミッドで一緒に暮らさないかい?無限書庫の司書長になったんだ。なのはを幸せにしてみせるから。だから、一緒に暮らそう、なのは」
(ふぇぇぇぇぇ!?これって、もしかしなくても、プロポーズ!?)
言葉に詰まる。本当は、嬉しくて堪らない。ハイ、とこの場で返事をして、直ぐにでもついていきたい。けれど。
「少し‥‥‥考えさせて。ちゃんとお返事はします」
(そんな資格、無いよ、私には)
心の内に想いは隠し、努めて平静に、何時もの自然な笑顔で。なのははその場はユーノを見送って、帰路に就いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「アクティブガード。ホールディングネットもかな」
なのはは魔法陣を展開。加速してゴールに突っ込んでくるスバルとティアナを止める為に、使い慣れた捕獲用魔法を展開した。
ゴール後、それに引っ掛かり、どうにか止まるスバルとティアナ。なのははスバルの目の前まで来ると、その頭を撫でる。
「久しぶりだね、スバル。4年振りかな。背、伸びたね」
「!!なのはさん‥‥‥!!」
「うん。また会えて、嬉しいよ」
スバル・ナカジマ。4年前にすずかとなのはが空港火災から救いだした少女である。すずかの事は兎も角、当時はなのはの事も特救チームの一員と勘違いしていたスバルは、二人に憧れて管理局に入局。現在は南方地上部隊の陸士386部隊所属。ティアナと共に災害担当。
その様子をヘリの上から見ているはやて、フェイト、すずかの3人。
「すずか、あの子は?なのはの知り合い?」
「フェイトちゃん、ほら、4年前の、空港火災の」
「すずかちゃんが助けた子やね」
スバルとティアナの試験中の危険行為に怒っている、試験官のリインはさておき。朧気ながらに思い出すフェイト。
「そっか。そうだったね。私、確かあの子のお姉さんを助けたんだっけ」
スバルの姉、ギンガをギリギリ間一髪の所で助けた事を思い出す。はやてによれば、二人とも、はやての当時の研修先、陸士108部隊の部隊長、ゲンヤ・ナカジマ三佐の娘だそうだ。
「今は二人とも局員。ギンガは108部隊所属で、お父さんのナカジマ三佐の部下なんよ。因みに名前が日本人っぽいのは、ナカジマ三佐の先祖が地球出身だからって言うとったん‥‥‥」
長々と説明していたはやてに「待って、はやてちゃん」と言って話を遮るすずか。その真意に気付かず、「ん?なんや?」と聞いてきたはやてに、すずかは笑顔で聞き返す。因みに、フェイトには(あ、何か企んでる時の顔だ)とすずかの事がすぐに分かった。
「はやてちゃん、どうしてナカジマ三佐の事そんな詳しいの?‥‥‥もしかして仲、良かったりする?」
少し固まった後に、「な、何言うとんのや!研修しとったんやから、世間話ぐらいするやろ!」と、はやてにしては珍しく少し焦って答えている。どうやら、すずかの勘はビンゴだったようだ。
「引退したグレアム元提督のせいなのかな?はやてちゃんって‥‥‥ファザコン‥‥‥?」
「フェイトちゃんと付き合うてるすずかちゃんには言われとうないわっ!なんやねん!!オジサマと付き合うたら悪いんかっ!!いくらナカジマ三佐と付き合うた事あるからっ‥‥‥‥‥‥ぐあぁぁぁぁぁ!?!?」
まんまと誘導尋問に引っ掛かって白黒しているはやてを、悪ーい笑みで見ているすずか。フェイトは苦笑いを浮かべて、改めて密かに思っていた。
(すずかの事は、なるべく怒らせないようにしよう、うん)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
惑星エルトリア。フェイトを助け、すずかを救って帰って来たシュテルは、帰り用のフォーミュラプレートを起動してくれたレヴィと共に、キッチンへと向かう。しかしそこには、夕飯を作っている筈のディアーチェの姿はない。
「おや?レヴィ、ディアーチェは何処ですか」
「王様なら、ユーリと死蝕の観測に出掛けたよ。アミタとキリエも一緒」
「そうですか」と納得し、紅茶を二人ぶんいれるシュテル。無事帰って来たので、報告を、と思っていたが、肩透かしを食らってしまった。
紅茶を飲んでレヴィとゆっくりしている所へ、四人が帰ってくる。勝手に動いたシュテルが帰って来たのを見つけ、ディアーチェが口を開いた。
「シュテル」
「はい、王。勝手に動いて申し訳ありませんでした」
「‥‥‥で、解決してきたのであろう?」
「はい。ヒヤヒヤしましたが、無事に」
それを聞いて安心したディアーチェは、「大義であったな。次からは気をつけるのだぞ?」と言っただけで、怒ることはしなかった。
‥‥‥‥‥‥シュテルには。
「大変よ、王様!!」
「どうしたのだ、キリエ、騒がしい」
「シュテルが帰ってくる時に、人を巻き込んだみたい!何時の時代か、どの次元の人かは、今全力で探してるけど、その人が落ちた先が分からないの!」
「アレ?それってもしかしなくてもボクのせい?」
そうスッ惚けているレヴィを見ているディアーチェの表情が険しくなる。キリエの「その巻き込んだ人なんだけど、魔力の痕跡から言って、多分なのはちゃん‥‥‥」という言葉を聞き、ディアーチェのその口が開かれた。
「レヴィィィィィィ!!!!!」
第一部プロローグ以来の、スバルとの再開。50話振りです。
はやての過去が暴かれちゃった回。‥‥‥逆を言えば、ゲンヤさんは‥‥‥
なのはさんの日常パート2。すずかの世界線と違ってユーノは一線を越えてきました。すずかの世界線のユーノは相変わらずです。
因みに、ユーノの言ってる次元震は、並行世界にまたがって起きていて、すずかを引っ張りこんだ次元震、という裏設定があります。原因は‥‥‥。