「大丈夫?」
「‥‥‥う‥‥‥‥‥‥」
ベッドの上。誰かに身体を揺すられて目を覚ます。どうも気を失っていたようだ。
「良かった。気が付いた。大丈夫?」
「はい、何とか」
何故かは分からないが、頭がズキズキとして痛い。何処かにぶつけたのだろうかと一通り触ってみたものの、ぶつけたような形跡はない。ロングヘアーのストレートの髪に、何処か違和感を感じながら、少女は起き上がろうとして、足が動かない事に気が付く。
(ふぇ?動かない?)
驚いて両足を触る。感覚はある。しかしながら自分の両足は、健常者と比較すれば一目瞭然なくらいに細い。
(私、足不自由だったっけ?‥‥‥アレ?私)
目の前の、助けてくれた女性は、高校生くらいだろうか?紫のロングヘアーに大きなリボン、碧の瞳の、綺麗な女性。
「私は時空管理局陸士108部隊所属、ギンガ・ナカジマ。ここは私の家よ。貴女は気を失って倒れていたの」
ギンガと名乗った女性は、どうやら自分を介抱してくれたようだ。取り合えず、礼を言う。
「ありがとうございます。私、どうして倒れてたんでしょう?よく覚えてなくて」
ギンガによれば、管理局からの帰り道、突然前方が明るくなったと思ったら、見たこともない魔法陣が現れ、自分が転移してきたそうだ。
とは言っても、魔法陣とか、管理局とか、魔法とか、ミッドチルダとか。何処かで聞いたような気がするのだが、全く思い出せない。それどころか、自分が誰だったかさえも。
「記憶喪失かしら。身元が分かるようなものが有ればいいのだけれど」
何も分かるようなものは持っていなかった。そもそも、見たこともない魔法陣からの転移、という時点で、管理外世界の人間の可能性が高いそうだ。先ずは記憶を取り戻さない事には話が進まない。
「そうね‥‥‥取り合えず記憶が戻るまで、ウチに居ると良いわ。一応検査はするけど、見たところ外傷もないみたいだし、記憶もすぐに戻ると思うし」
ギンガは笑顔を見せる。
「そんな!私が居たら御迷惑じゃ‥‥‥」
身元も分からない自分の面倒をみるなんて申し訳ないと思いそう言ったのだが、ギンガは首を横に振って再びニコッ、と笑う。
「迷惑なんてとんでもない。それに、貴女は悪い人には見えないし。妹の命の恩人に似てるしね」
気になって「妹さん?」と聞いてみると、ギンガは、2つ下の妹で名前はスバル、と教えてくれた。
何でも自分は、四年前に空港火災に巻き込まれた時に助けてくれた『高町なのは』という人物にソックリなのだという。聞き覚えがあるような気はするが、どうにも思い出せない。
「名前はどうしようかしら。なのはちゃん、じゃちょっと‥‥‥」
考え込んでいるギンガを暫くはボーッと見ていたが、何故かふと浮かんだ名を呟く。
「フィアッセ・クリステラ」
「えっ?フィアッセ?それが貴女の名前?」
「多分、違うと思います。でも、浮かんだのはそれだけだったので」
そうとしか答えられない。パッと浮かんだという事は、自分に関係のある名前なのだろう。名乗っていれば、自身を知っている人に当たるかも、と考えての事。
記憶を取り戻す迄はそう名乗ることにし、暫くナカジマ家にお世話になる事になった。
◆◇◆◇◆
「機動六課、いよいよ来週からだね、部隊長様?」
「もうっ、やめてよ、フェイトちゃん。まだ防災士長だもん」
マンションの一室。あとの荷物は身の回りの小物だけで、六課の隊舎への引越はほぼ完了。紅茶をいれているすずかを、フェイトがからかっていた。
「頑張らないとね。すずか、三佐になるし」
フェイトは何時ものように、すずかの後ろから抱き付いてくる。すずかは紅茶に少し口を付け、「もうっ」と洩らす。二人の顔が近付く。唇をゆっくりと近付けて行き‥‥‥。
《フェイトちゃん、すずかちゃん》
あと少しで触れる、という所で、狙い済ましたかのようにモニターが開く。
「なのは‥‥‥わざとやってるでしょ?」
フェイトの言葉に、少しおどけて見せるなのは。やっぱりわざとだったようだ。
《何の事かなぁ?そんな事より、引越は順調?》
「うん、なのは。もうすぐ終わるよ」
「どうしたの?」
なのはに限って、態々通信を繋いでおいて、からかって終わり、という事はないだろう。なのはは話を続ける。
《うん。今後のスケジュールを擦り合わせしておこうと思って。スターズとライトニングの教導の》
「そうだね。なのは、エリオとキャロの事、宜しくね?」
フェイトとすずかが後見人となっている、エリオとキャロ。ライトニング分隊としてフェイトの直属の部下となる。二人には管理局とは関係のない、平和な道を選んで欲しかったが、フェイトとすずかの意思とは裏腹に、同じ道を選んだ二人。せめて目の届く所で、という親心が多分に作用した人事となっている。
《うん。みんな、育てるよ。ストライカーになれるように。二人とも、何時なら空いてる?》
スケジュールを確認する。《明日以外なら、空いていますわよ?明日はデートですものね》と、余計な事までバラしている愛機を睨みつつ、すずかは返事を返す。
「明後日なら、平気だよ?」
《じゃあ、明後日でいいかな。時間は後で連絡するね?》
打合せの日を話し合う3人を他所に、スノーホワイトは周りに聞こえない程度の音量でポツリと呟いた。
《ヴィヴィオ‥‥‥確か出会うのは今年でしたわね》
◆◇◆◇◆
386部隊の隊舎で、荷物整理の途中の二人。ギンガからのメールを確認したスバルは、引越の手を動かしながら、ティアナと話す。
「ティア、その子ウチで暫く預かるんだって」
「なのはさんとソックリか。そんな偶然もあるのね」
「もしアタシ達が何か分かったら、報告してってさ」
「スバル‥‥‥アンタ六課は24時間勤務って忘れてるでしょ?調べてる時間なんてあるかどうか」
「そっか!エヘヘ、忘れてた」
「アンタねぇ‥‥‥はぁ」
ティアナは大きく溜め息をつく。そうは言っても、誰かにソックリなんてそうそうある訳でもない。大方、少し似ている程度だろうと、ティアナはその場は軽く流した。
◆◇◆◇◆
とある研究所の最深部。回転式の椅子に座り、珈琲片手にモニターを眺める、白衣の男。
「フム」
その背中から現れた、眼帯をした少女が話しかける。
「ドクター、これは?確か高町‥‥‥。しかし、何故昔の映像など?」
フェイト、すずか、エリオ、スバル、ギンガの映るモニターの一番左。13歳~14歳といった所のなのはが映っている。
ドクターと呼ばれた男、ジェイル・スカリエッティは、笑みを浮かべながら答える。
「今の映像だよ、チンク。この世界の彼女とは別の、今の彼女の」
「は?」
確かに、車椅子だったり、サイドではなく普通のポニーテールだったりはするが、車椅子なら11歳当時もそうだったし‥‥‥と考えて、チンクは止まる。この歳で車椅子はおかしい‥‥‥?
「フム、今に分かるさ。彼女達がどう動くか見せてもらうとしようか」
スカリエッティはそう言って、不敵に笑う。「彼女達は余程数奇な運命を背負っていると見えるね」と呟いて。
なのは改めフィアッセさん。運命のイタズラか、ナカジマ家にやっかいになります。
すずかは六課出向と共に一尉から三等陸佐に昇格です。
ジェイルさんとチンクたん初登場回。
セイン「セインと」
ウェンディ「ウェンディの」
セイン・ウェンディ「「設定解説!」」
セイン「なぁ、ウェンディ。このノリどっかで経験した気がするんだけど‥‥‥気のせいかな?」
ウェンディ「そりゃあ出張っスからね!」
セイン「?」
ウェンディ「それはそうと、お仕事っス!」
セイン「今日はフィアッセさんだね。『とらハ』知ってる人はともかく、知らない人に。この『リリカルなのは』の世界では、なのはさんが小2の時に、高町家に居候してた、現世界的歌手だね。護衛にあたっていた高町士郎さんが大怪我する原因になっちゃって、当時の幼いなのはさんが追い出しちゃったって設定」
ウェンディ「凄いっスね!スクープっス!」
セイン「スクープじゃないよ、当時からある話だし」