早朝。六課のフォワード陣となのはは教導中。
《スバル、クロスシフトA!エリオはそのまま待機して、キャロはフォローお願い!》
《《《了解!》》》
フォワード陣の今日の相手はなのは。ハンデは、レイジングハートと左手使用禁止。魔力リミッターが付いている状態にも関わらず、それでもフォワードの四人を当然のように相手にしているあたりは流石なのはである。
「『ウィングロード!』うぉぉぉ!!」
馬鹿正直に真っ直ぐなのはに向かうスバル。なのははシールドを展開、スバルの拳を受け止める。
その間に、後ろの廃ビルからなのはを狙うティアナ。なのははシューターを飛ばし、そのティアナにぶつける。被弾の瞬間、フェイクシルエットのティアナが消え、90度ずれた方角からティアナの弾丸が飛んでくる。なのはは分かっていたかのように、地面スレスレに待機させていた残りのシューターでそれを撃ち落とす。
キャロは待機しているエリオに、ブーストを施す。
「『我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を!』エリオ君!」
《今よ、エリオ!!》
ティアナの合図と共に、エリオがなのはに突撃。二人が交錯し爆発が起きた。
「うそ!防がれた!?」
吹き飛ばされるエリオを見て、ティアナが声を上げると、レイジングハートの声が聞こえてきた。
《Mission complete!》
「お見事。ちゃんとバリアジャケット迄通ったよ、ホラ」
降りてきたなのはがバリアジャケットの左脇部分を指し示す。僅だが、ストラーダの攻撃による、黒い跡がある。
喜ぶフォワード陣。それを観測しつつコンソールを叩くフェイトの補佐、シャリオ・フィニーノ(以下シャーリー)と、隣で見学しているフィアッセ。
「うん。みんななかなか良いね。バッチリ調整しちゃうからね~」
「シャーリーさん、凄いですね。みんなに合わせてデバイス作れるなんて」
シャーリーは動かす手は休めずに、モニターとにらめっこしつつ、フィアッセに答える。
「んー、勉強すれば誰でもできると思うよ?私は、あれだけ魔法が使えるみんなのほうが凄いと思うよ?」
「そうなんですか?」
驚くフィアッセに、少し間を置き、シャーリーは更に続ける。
「それに、フィアッセちゃんも魔法使える筈だよ?フィアッセちゃんから観測できる魔力、なのはさん並みだしね」
シャーリーは真実を教えてもらってはいない。フィアッセの素性を知っているのは、六課でははやて、すずか、なのは、フェイト、守護騎士、それに、ギンガ。
「そんな‥‥‥私、魔法なんて使った事ないですし。それに、車椅子ですよ?」
「おっかしいなあ‥‥‥此れだけの資質が有るのに」
首を傾げるシャーリーを見て、フィアッセは苦笑いする。自分がなのはのような、一流の魔法の使い手の訳がない。上手く使えない事は何故か分かる自分に疑問を感じながら、自分と瓜二つのなのはを見つめるフィアッセ。
(私も、なのはさんみたいに飛びたかったな。あの時のように‥‥‥‥‥‥あれ?)
どうしてそう思ったかは分からない。だが、昔は自由に飛べた、という事なのか‥‥‥?記憶が戻らない事にはどうにもならないが、気になって仕方がないフィアッセは、後でギンガに魔法の使い方を教わろう、と思っていた。
◆◇◆◇◆
司令室で報告書の山と向き合っている、リインとすずか。はやてはと言えば、『今日は教会でカリムと対談があるから、ちょう行ってくるわ。報告書少しあるから、目通しといて?』と言って朝から不在。よって今の最高責任者はすずかな訳で、そのはやての置き土産と格闘しているのだが。
「はやてちゃんってば。こんなにあるなんて」
「聞いてないです!」
愚痴を溢しながらも、やらない事には片付かない。渋々やって、ようやく1/4減った、という位。
すずかは「ん~」と声を漏らし、腰を擦りながら伸びをする。
「すずかさん、どうしたんですか?」
「ちょっと腰が痛くって」と、リインの質問に答えるすずか。すると、何故か頬を赤くして恥ずかしがるリインは、遠慮がちにすずかに聞いた。
「はやてちゃんの言った通りですぅ。業務に支障がありましたね。すずかさん‥‥‥昨日の夜、フェイトさんと‥‥‥」
「リインちゃん‥‥‥はやてちゃんに何教わったの?」
驚き、慌てるすずかに、リインは止めを刺さんとばかりに、更に真っ赤になって答えた。
「何って‥‥‥そんなこと、恥ずかしくて言えないです!」
「もうっ!はやてちゃんってば!」
昨晩の事が事実なだけに、強く否定できないすずか。「後でフェイトさんにも遠慮するように言っておきます!」と頬に両手をあてながら話すリインを見つつ、恐らく耳まで真っ赤になっているであろう自分の顔を手で隠して俯き、書類の山に突っ伏したすずか。顔は赤いまま、気まずいと思いながらも報告書と再び向き合った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
《はやて、そっちは?》
《アカン、フェイトちゃん、手掛かりすら見つからんわ。ユーノ君は?》
《こっちは‥‥‥手掛かりなら》
もうすっかり日も暮れている。あちこち走り回った3人は、一度念話で確認を取る。どうやら、ユーノが何か見つけたようだ。
「やっぱり、ユーノ君のプロポーズが衝撃的だったんちゃうやろか?」
「でも、なのは、あんなにユーノの事好きだったんだし、素直に受けるんじゃ‥‥‥」
「せやけど、現にこうして居なくなっとる訳やし」
合流したはやてとフェイトは、ユーノのいる場所へと向かう。
ユーノが居たのは、高町家から数メートルの場所。灯台もと暗しとはよく言ったものだ。
「僕がちゃんと家に入るまで見送ってれば‥‥‥」
ユーノは拳を握り締める。現場からは、なのはの魔力と、僅だが炎熱を帯びた魔力が観測できた。
「これってまさか、なのはちゃんが誘拐されたゆー事か?」
はやては冷や汗を流す。現場には、故障してオートリペア中のレイジングハートも落ちていた。だが、交戦したような形跡はない。今のなのはでは、抵抗すら出来なかったと言うことか‥‥‥?隣で今にも飛び出しそうなフェイトは、クロノに通信を繋ぎながら、口を開く。
「でもどうしてなのはなの?今はもう一般人だし。まさか‥‥‥私達のせい?」
「若しくは、撃墜事件の時からなのはちゃんを狙っとった、かやな」
青ざめるフェイト。はやては腕を組んで考え込む。
(まさか、フェイトちゃんが追ってるスカリエッティの仕業やないやろな)
焦るそんな二人に、ユーノが口を開く。冷静を装ってはいるものの、ユーノも気が気ではない。
「まだそう決まった訳じゃない。とにかく、情報が足りない。せめて、レイジングハートがすぐに回復してくれれば」
そうと決まった訳じゃない。誘拐や襲撃とは考えたくない。こんな理不尽な別れ方はしたくないユーノ。そんな3人の元に、見たこともない魔法陣が現れる。
「見たことないで?なんやこれ!?」
「何か来る!」
一応ワイドエリアプロテクションを展開し、構えるユーノ。その魔法陣から現れた人物に、はやてとフェイトは声をあげて驚いた。
「へっ!?なんや!?小さいなのはちゃん!?」
「髪ショートだし、バリアジャケットも違う!?」
ユーノは努めて冷静に、現れた人物に話しかけた。
「君は、誰だ!」
「初めまして、お三方。先ずは、謝らなくてはなりません。なのはを巻き込んだのは、我々です。申し訳ありません」
現れていきなり謝られ、呆気にとられている3人に、更に続ける。
「私は、シュテルと申します。訳あって素性は説明出来ません。なのはの事は、我々が今全力で探しています。ですから、もう少しお待ちください」
気が気ではない3人の前に、シュテル登場。どうやら何処で巻き込んだかだけは特定したようです。
フィアッセの記憶はまだまだ戻らない様子。レイジングハートも携帯していない事が判明。