Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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奥底に仕舞ったもの

 

聖王教会のある一室。中にははやて、カリム二人だけ。シスター・シャッハは部屋の外で待機している。

 

「‥‥‥‥‥‥という訳やから。当面はレリックの回収を優先するけど、同時進行や」

 

「でも、はやて。他の部隊員に漏れる可能性は?」

 

はやては笑顔を見せてカリムに返事を返す。

 

「それは心配ないよ。捜索はザフィーラに任せてあるし。肝心な所は話してないしな」

 

カリムは紅茶に口を付け、「ふぅ」と息をはいた。だが安心は出来ない。六課には、なのは、フェイト、すずかもいる。気が付かれない保証は何処にもない。

 

「本当に大丈夫なの?なのはさん達は?」

 

少し間を置き、はやては答える。

 

「それは充分気をつけるよ。今の所は大丈夫や」

 

カリムは少し怪訝そうな顔で、はやてと一緒に来たデバイスを見ながら改めて聞いた。

 

「じゃあ、はやて。どうしてすずかさんのデバイスが一緒なの?まさか、すずかさんに知られたの?」

 

《すずかには話しておりませんわ。私は、偶々覚えていただけですし。私も、未来を変えてしまうのは本意ではありませんので》

 

「そういう事や。すずかちゃんには知られてないよ。スノーホワイトは優秀なデバイスやし」

 

はやてはスノーホワイトに視線を落とし、ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる。

すずかには、調整と言ってスノーホワイトを連れてきた。

すずかにはまだ知られる訳にはいかない。仮にすずかに知られれば、フェイトに知られ、そのあとなのはと芋づる式に知られる可能性が高い。

はやてとスノーホワイトの言葉に胸を撫で下ろすカリム。

 

「じゃあ、はやて。引き続き『聖王オリヴィエ』の捜索、お願い」

 

スノーホワイトは敢えてその言葉に突っ掛かる。

 

《オリヴィエではありません。『ヴィヴィオ』、ですわ、騎士カリム》

 

「そうだったわね」と答え、少し笑みを溢す。そうして二人と一機が一息ついた時、「失礼します」とシャッハが入室してきた。

 

「騎士カリム、騎士はやて。レリック反応です」

 

「なんやて!どこでや!」

 

「それが、リニアレールで今も移動中です。ガジェット接近反応もあります」

 

聞いたはやてはスノーホワイトと共に、指揮を執るために六課へと舞い戻るのだった。

 

◇◆◇◆◇

 

「お仕事ですか?」

 

「‥‥‥うん。ロストロギア回収の、ね」

 

すずかはフィアッセの質問に、少し戸惑い、一度間を置いて答えた。

ガジェットドローンの事は伏せた。またパニックになり、過呼吸を起こすかも知れない。レリックの事だけを伝え、余計な情報は話さない。

 

「でも、スノーホワイトははやてちゃんが持ってるし、現場は隊長の二人に任せて、私は今日はこっちで指揮かな」

 

すずか個人にも能力リミッターが付いている。今のすずかは、A-で4ランクダウンの状態。リミッターを解除できるのは、はやて、カリム、クロノが其々一度ずつ。余程逼迫した状況でない限りは解除出来ないし、かといってスノーホワイトが居ない現状では力不足。ここはロングアーチの面々と六課から指揮を執るしかない。

 

「でも、何て言うか。どうしてかは上手く言えないんですけど、すずかさんが魔法使うのは違和感あるっていう感じがします」

 

「違和感?」

 

フィアッセの言葉を疑問に感じる。すずかがこの世界に来た9歳の時から、ずっと魔法と付き合ってきた。もう有って当たり前。それに疑問など感じた事は‥‥‥いや、本来、自分が来る迄のすずかには、その資質は無かった筈。つまり本来のすずかは魔法は使えない、ということで、フィアッセの違和感は間違いではないという事。

つまり、今フィアッセがすずかに抱いているイメージが、この魔法の存在する世界での本来のすずかのイメージ。フィアッセが思い出す切欠となるかも知れない。

 

「フィアッセちゃん。無理に思い出すとかじゃなくていいから、私のイメージってどんなか、分かるかな?」

 

「うーん、何て言うか。おしとやかで、柔らかい物腰のお嬢様、みたいな感じでしょうか?」

 

固まっているすずかに、「おかしいですかね?」心配そうにフィアッセは聞いてくる。何処までをおしとやかと言うかは分からないが、お嬢様、まで言い当てているのを見る限り、フィアッセが自分の記憶から引っ張ってきたと見て良さそうだ。

 

「フィアッセちゃん、そのイメージ、忘れちゃ駄目だよ?」

 

すずかはフィアッセの頭を撫で、 司令室へと走った。

 

◇◆◇◆◇

 

はやてとスノーホワイトは、六課へ向かうヘリの後ろで、何やら話している。

 

「4年後じゃフィアッセちゃんは今の私らくらいになってしまうし。それまでに何とかせな。王様達と連絡とかできへんの?」

 

《時間と時空を越えて、何て出来ませんわ。第1、エルトリアが何処にあるかも分かりませんのに》

 

「ほなやっぱり、巻き込んだのは王様達で、今フィアッセちゃんを探しとる、と信じるしかない、か。運頼みやなぁ」

 

丁度はやてはが愚痴とため息を漏らした頃に、ヘリは六課に到着。「さってと、ほな、行くよ、スノーホワイト」と一度気合いを入れ直し、はやてはすずかのいる司令室へと向かった。

 

◇◆◇◆◇

 

《ライトニングは右側から。スターズは左側から侵入、ガジェットを各個撃破しつつ、レリックを確保だよ。練習通りやれば、みんな大丈夫!》

 

《《《《了解》》》》

 

なのはの指示と共に、ヴァイスの駆るヘリから降下する4人。空は既にフェイトが押さえている。フォワードの四人は、其々が降り立った地点から真ん中の位置に有るであろうレリックの確保の為、走る。

 

◇◆◇◆◇

 

一人六課の入口に取り残されたフィアッセは、とりあえず部屋へと戻ろうと、車椅子の車輪に手を掛ける。すると、後ろから声をかけられた。その声に胸に温かいものを感じたフィアッセは振り向き、その人の前まで移動する。

 

「えっと、どちら様ですか?」

 

「本当に瓜二つだね。僕はユーノ・スクライア。無限書庫の司書長をしています。今日ははやてに呼ばれて来たんだけど、君がフィアッセだね?」

 

「ユーノ君?‥‥‥あれ?ごめんなさい!ユーノさん」

 

何故だろうか。ユーノを見ていると、鼓動が早くなる。温かい気持ちになる。気が付くと、フィアッセはユーノに抱き付いていた。「フィ、フィアッセ!?」と慌てふためくユーノの姿も、何というか、見慣れている気がする。それに、一緒にいると、安心する。

 

「私達、何処かでお会いしませんでしたか?大切な事があった気がするんです。とても大切な」

 

ユーノはまだ抱き付いているフィアッセを一度離し、一呼吸置いて、笑顔でフィアッセに言った。

 

「僕は、君のカウンセリングに来たんだよ。と言っても、毎日は来られないんだけどね」

 

フィアッセは頬を少し紅に染めて、微笑を浮かべ、答える。

 

「カウンセリング、ですか。どうしてでしょう。貴方の笑顔を見ていると、なんだか安心します」

 

 

 

 




はやてはフィアッセが時間移動だと気付き、砕け得ぬ闇事件の記憶を一人取り戻しました。

記憶が飛んでるせいで、フィアッセが自分に素直過ぎます。

余談ですが、この小説のフェイ×すずのエピソードを纏めたSSも始めましたので、良かったら。(但し、18禁です)
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