昼過ぎ。月村家別荘の庭先。六課一同はバーベキューをしていた。はやては鉄板に張り付いてなにやらあれこれ作ってみんなに振る舞っている。現地の協力者であるなのはの姉、美由希とクロノの妻エイミィはフィアッセの車椅子を押しながら何やら話し込んでいる。
その様子を眺めながら、すずかとフェイトは寄り添って話をしていた‥‥‥部屋の中で。
「すずか、今回のロストロギア、レリックじゃなくて良かったよね」
「うん。危険性も低いみたいだし。でも、早く見つけないと。ロストロギアだし」
今回のロストロギアはレリックではなく、攻撃性も低いらしい。それを買った人間が運んでいる最中に誤って地球に落としたらしく、危険性は低い。一応は安心出来た。だが、そうは言ってもロストロギア。油断は出来ない。
「うん。早く見つけて落ち着きたいね。この前みたく温泉にも行きたいし」
「そうだね、フェイトちゃん」
六課設立前に二人で行った海鳴温泉を思い出しながら、笑顔で話す。
今なら、部屋で二人きり。部隊のみんなの目を気にする必要もない。すずかとフェイトは見つめ合い、顔が少しずつ近付いていく。フェイトはすずかの肩をそっと引き寄せる。すずかはそっと瞳を閉じて、二人の唇が触れあう。‥‥‥‥‥‥と、不意に声が聞こえた。閉じた瞳を再び開けて、すずかは声の方を見た。
「すずかさん、フェイトさん、今日のお風呂なんですけど‥‥‥‥‥‥!!」
いつの間にか扉が開いていて、ギンガが二人を見て目を丸くして固まっている。
唇が重なったままのすずかとフェイトが視線だけをギンガに向けて、これまた固まっている。
「ごっ、ごめんなさいぃぃぃ!」と叫び走り去っていくギンガを呆然と眺めていた二人は、ギンガが見えなくなった頃にようやく我に返った。
「見られた‥‥‥よね」
「うん、すずか。見られた」
遠くを見ながら話すフェイトの隣で、すずかは天井の方に視線を泳がせ、口を開いた。
「ねぇ、フェイトちゃん。明日は、荷物持ちかな?私達」
「‥‥‥軽いキスだけだし、見逃してくれるよ‥‥‥きっと」
◆◇◆◇◆
人数が多いからと、スーパー銭湯に来ている六課一行。脱衣場で脱ぎながら、なのは、はやて、シグナムが話している。
「みんなで来るのって久し振り。小学生以来かな?」
「なんや。なのはちゃん達もみんなで来たことあるんか。私らも、みんなで何回か来たことあるんよ。な?シグナム」
「ですが、主はやて。あの頃よりも随分と変わったようです」
スパラクーア。丁度闇の書事件の頃にオープンしたスーパー銭湯である。あの頃よりも湯船の数も増えていて、まるでどこぞのリゾート施設のようだ。
ちゃんと車椅子用のスロープも付いていて安心の設備。ギンガに抱きかかえられてフィアッセも入浴中。
10歳までなら男子も女湯で入浴可の為、女湯に引っ張ろうとしたキャロからエリオが全力で逃走する、という一コマがあったりした。
「フェイトさんもすずかさんも胸大きい‥‥‥私、魅力足りないのかな‥‥‥」
電気風呂でキャロがボヤいているのを聞き流し、フェイトの背中を流すすずか。
「あの頃も、こうやって洗いっこしたよね?フェイトちゃん、髪一人で洗うの苦手だったんだよね」
「そんな昔の事‥‥‥もうっ!」
少し頬を膨らませているフェイトの背中からお湯をかけて泡を流し、仲良く歩いて湯船に向かう二人。気持ち距離が近い気がする‥‥‥。
その二人を少し遠くから、疑惑の目で見ているティアナ。それと、スバルとギンガとフィアッセ。
「ねぇ、スバル、あの二人ってさ、ちょっと仲良すぎよね?」
「そうかな?良いじゃない、仲良くて。私とティアみたいで」
「何でアタシがアンタと仲良くしなきゃならないのよっ!」
見事にスバルにチョークスリーパーを決めているティアナ。フィアッセは仲のよい二人を眺めてニコニコと笑みを浮かべている。
「ティアナさんとスバルさん、仲良いですね。ギンガさん‥‥‥‥‥‥ギンガさん?」
ギンガはフィアッセの横でボーッと何かを考えている。お風呂に入っているせいか、別のせいなのか、頬が微妙に紅い。
「ギンガさんってば!」
「へっ‥‥‥?え、ええ。そうね。前から仲良いわよ。あの二人」
フィアッセやスバル、ティアナには言えない。部隊長と隊長であるすずかとフェイトが、部屋で抱き合ってキスをしていた、なんて。
◆◇◆◇◆
銭湯からの帰り道。バスに乗り込む六課一行。さながら観光に来たかのよう。
座席に座ったばかりのキャロが、不意に叫んだ。
「サーチャーに反応があったみたいです!」
ロングアーチのシャマルから、同タイミングで通信が入る。
《ロストロギアが現れたわ。詳細な位置を送りますから、状況に備えてください》
バスはそのまま河川敷のロストロギア出現地点へと向かう。
現地に着いた一行。河川敷一杯に拡がっているスライムのようなロストロギアを目の当たりにしながら、すずかがフォワードの四人に話す。
「今回は私達は待機してるから。フォワードのみんなだけで頑張ってみようか?」
「「「「ハイ!」」」」
セットアップを終えたフォワードの四人は、ロストロギアへと向かっていく。
◆◇◆◇◆
《‥‥‥という訳や。ロストロギアも確保したし。今日中にはそっちに戻るよ》
《はやて、久し振りの故郷なんでしょう?もう少しゆっくりして、帰りは明日でもいいのよ?》
《遊びに来た訳やないし。今の私のホームはそっちやから》
カリムに報告を入れるはやて。フィアッセの記憶が戻らなかったのは残念だが、それ以外は概ね予定通り。
《はやて、それより、あれはいいの?》
モニターのカリムの視線の先には、別荘から荷物を運び出すすずかとフェイトの姿。魔法は使わず、敢えて素手で重そうに運び出している。
《ああ、あの二人やな?あれはええんよ。まぁちょっとした罰ゲームやな。少し反省したらええんや》
悪い笑みを浮かべて、はやては二人を満足げに眺めていた。
◆◇◆◇◆
フィアッセは部屋で一人考えていた。海鳴はきっと初めてではない。景色の1つ1つが、どれも見覚えのある風景。
(私、きっとここに居たんだ)
しかし、どうもシックリ来ない。微妙に何かが違う気がする。
(何だろう、この違和感)
フィアッセの脳裏に、再びイメージが浮かぶ。
『嫌や!止めて、せんでええ!リインフォース!』
雪の降る夜。小さい頃のはやてが、地面に倒れている。泣いている彼女の見つめる先には、リインフォースと呼ばれた女性が、魔法陣の上に立っている。回りには、シグナムらヴォルケンリッターと、小さいフェイトもいる。
『大丈夫や!ちゃんと私が抑える!そんなん、せんでええ!リインフォース!!』
(えっ?これって‥‥‥?)
いつの間にか涙を流していたフィアッセ。彼女は無意識に言葉を溢していた。
「ごめんなさい、リインフォースさん‥‥‥」
少しずつ甦る記憶の欠片。すべて戻った時、フィアッセは現状をどう思うんでしょう。
フェイ×すず、ギンガにバレるの回でした。