Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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我が子を抱いて

 

上空へと上がったすずかは、ロングアーチからのデータと、自身のサーチャーをスノーホワイトと確認していた。

 

「幾つかの編隊で向かって来るみたい」

 

《結構な数ですわ。数百‥‥‥千近いですわね。まぁ、Sランクで充分対処は出来ますわ》

 

ガジェット編隊の映るモニターの隣には、クロノのモニター。クロノはすずかに最終確認をする。

 

《いいか、すずか。此れからリミッターを解除する。ガジェットを殲滅次第、ザフィーラ達と合流、レリックとルーテシアの確保のフォローを頼む》

 

「はい、クロノ提督」

 

すずかが返事をしたのと同時に、クロノの掌に小さな魔法陣が現れる。

 

《月村すずか、能力限定解除、3.5ランク承認。リリースタイム、120分》

 

クロノはリミッターを解除。すずかの身体から、抑えられていた魔力が溢れる。すずかはスーッと大きく息を吸い込み、それをゆっくりと吐き出して口を開く。

 

「‥‥‥じゃあ、スノーホワイト?」

 

《はい。マスターすずか》

 

すずかは、夜天の書を携えた自身の描かれた1枚のカードを翳し、魔力を開放した。

 

「『リライズ・アーップ!』」

 

L・O・Gに身を包み、剣十字の杖を手に、すずかはベルカ式の大規模魔法陣を展開した。剣十字の先端に、魔力が集まる。

 

「久し振りに行くよ、スノーホワイト?『フレースヴェルグ!!』」

 

轟音と共に放たれた魔力が一番近い編隊に到達、その一団を根刮ぎ消し去る。すずかは直ぐにまた魔法陣を展開、次の編隊を見据える。

 

「さぁ、どんどん行くよ!」

 

◇◆◇◆◇

 

なのはとシャマル、それにレリックが繋がれていた少女を乗せたヘリは、一路六課へと急ぐ。

 

「シャマル先生、この子‥‥‥私、何処かで会ったような気がするんです」

 

「運命の、出会いとか?」

 

なのはの問いにシャマルは冗談半分で返したが、なのはにとっては強ち冗談という訳でも無さそうだ。未だ気を失っているままの少女を大事そうに抱いたままのなのは。その様子は、どうにも我が子を抱く親にしか見えない。

 

「えっと‥‥‥なのはちゃん?その子、まさかなのはちゃんの隠し子とかじゃないわよね?」

 

「いくらなんでも、それは流石に‥‥‥‥‥‥シャマル先生、直ぐにシールドを!!ヴィヴィオを頼みます!」

 

「へっ?なのはちゃん、ヴィヴィオって!?」

 

何かを感じ取ったのか、なのははバリアジャケット姿になると、シャマルに少女を預けてヘリの外へと出る。呆気に取られていたシャマルの目の前でなのはがシールドを展開した次の瞬間、ヘリを一筋の砲撃が襲った。

 

(狙いはまさか、あの子?今の砲撃‥‥‥魔力じゃなかった)

 

シールドが間一髪で砲撃を防いだ。なのははそれが射出された方角を睨み、魔法陣を展開した。

 

「行くよ、レイジングハート。『ディバイーンーーー』」

 

《Buster!》

 

◇◆◇◆◇

 

自身に向かって放たれた桜色の砲撃に何とか反応し、距離を取ってそれを避けたディエチ。リミッターで抑えられているとは言え、なのはのバスターをまともに食らったら只では済まない。ディエチは立ち上がり、額の冷や汗を腕で拭う。

 

(これだけの距離から、今の一瞬で正確に打ち返して来るなんて、幾らなんでも無茶苦茶過ぎる‥‥‥)

 

と、そんな事を考えていたディエチは、背後からふと気配を感じる。振り返った瞬間、桜色の砲撃。「うわっ」と声をあげて、どうにかそれを避けたディエチは、思わずポカンと口を開けたまま固まっていた。

 

(何だコレ)

 

ディエチが見たものは、なのはを2等身にディフォルメ化したような、マスコットのような人物。なのはと同じバリアジャケットに、小さなレイジングハートを構え、ふわふわと浮かびながらディエチを見据えていた。

 

「こりゃあ、何の冗談‥‥‥危なっ!」

 

再び桜色の砲撃を放ってきた小さななのは。1度距離を取って対策を‥‥‥と思っていたディエチは、両手足が動かない事に気が付き焦る。見れば両手足を桜色のバインドが拘束していた。

 

「いつの間に!」

 

「さっきの砲撃は貴女だね。現行犯で逮捕します」

 

もう現場に到着し、「ありがと、なのなの」と言ってそのマスコットの頭を撫でながらディエチを睨むなのはは、モニターを開き、すずかに通信を繋ぐ。

 

「部隊長、犯人の一人を拘束。此れからみんなのフォローに向かい‥‥‥」

 

《待って、なのはちゃん。すずにゃからの報告だと、あと3人は潜んでる筈なの。捜し出して拘束、頼めるかな?私も此方が片付き次第そっちに向かうから》

 

「了解、部隊長」

 

ディエチはなのはとモニターを睨みながらも、再び冷や汗を流す。今日投入された戦力が既にバレてしまっている。機動六課の分析力を侮ったという事か。

 

(いや、それ以前に‥‥‥あんなのがいるなんて聞いてない‥‥‥)

 

スカリエッティが本当に知らなかったのか、敢えて黙っていたのかは分からない。ただ、言えることは1つ。ディエチ達は作戦通り動いたつもりだったが、相手は予想を上回る動きをしてきた事。『なのなの』と呼ばれたマスコットを眺め、(ドクターの奴‥‥‥)と不信感を抱きつつも、ディエチは他のメンバーの奮戦を待つしかなかった。

 

◆◇◆◇◆

 

ザフィーラと合流したフォワードの四人は、地上に居た。ヴィータとリィンの加勢によって、アギトとルーテシアはあっさり拘束。「チックショー!離せ、コノヤロウ!」と喚いているアギトとは対照的に表情を変えずに遠くを見つめているルーテシア。

 

壁際に寄り掛かるようにして座っていたルーテシアの、後ろ手に拘束している手錠に地面から手が伸びる。IS『ディープダイバー』を操るセインである。今から彼女の果たさねば成らない役目は多い。取り合えず拘束を解いたルーテシアは兎も角、先程捕まったディエチ、すずにゃとへいとにアッサリやられたクアットロ、更にはなのは、フェイト、ガジェット群の掃除を終えたすずかの3人に追われているトーレを助けに行かなければならない。

 

(予定と違い過ぎる‥‥‥何だか高性能なちっこいのが3匹も居るし、月村はリミッター解除されてるし。なんでアタシがこんな苦労を‥‥‥)

 

心の中で盛大にグチを溢し、両脇にルーテシア、アギトを抱えつつ、取り合えずディエチの所へ向かうセイン。

 

(これで八神まで出てきたらみんな捕まっちゃうんじゃないの?これ)

 

漸くディエチを開放し、地中を移動してクアットロ回収に向かうセインは、大きく溜め息をついた。

 

◆◇◆◇◆

 

「ドクター、これはどういう事ですか?」

 

「フム。簡単には行かないようだね」

 

セインが他のメンバーを救出に向かう様子を、モニターで眺めているチンクとスカリエッティ。微かに苛立つチンクとは違い、表情1つ変えず、考え事をしながら眺めているスカリエッティは、モニターに映るすずかを見ながらポツリと呟く。

 

「どうやら戦力を分散させる必要があるね。それに、やはり彼女は厄介だ。リミッターを解除される前に手を打つべきだね」

 

◆◇◆◇◆

 

一味に逃げられ、再びヘリに戻ったなのは。寝かされていた少女をその手に再び抱きかかえる。

 

「なのはちゃん、その子、ヴィヴィオって名前なの?」

 

「へっ?ヴィヴィオって言うんですか?」

 

なのはがヴィヴィオと呼んでおきながら、全く知らない、という反応が返ってきた事に固まるシャマル。「だって、さっき『ヴィヴィオ』って呼んでたわよ?」という言葉にも、『全く覚えがない』と返すなのは。

 

「‥‥‥やっぱりなのはちゃんの隠し子なんじゃないの?ユーノ司書長との子、とか」

 

「ですから、隠し子なんて居るわけ‥‥‥って、シャマル先生、どうしてそこでユーノ君なんですか!?」

 

顔を真っ赤にして反論するなのはを見て、シャマルがクスクスと笑う。犯人を逃したのは悔しいが、兎も角レリックもこの少女も守り切った。

 

なのはは大声を出してしまった事にハッとして、ヴィヴィオが起きてしまわなかったか確認する。

 

「良かった。起こしちゃったかと思った」

 

自身が抱いている少女に優しい笑顔を向けるなのは。3人を乗せたヘリは無事に六課へと戻っていった。




記憶が封印されていても、無意識にその名を呼ぶなのはさん。ナンバーズ苦戦回。


セイン「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「設定解説!」」
セイン「第2回目は、『なのなの』達についてだね」
ウェンディ「ずるいっス‥‥‥ディエチにまでスポットが‥‥‥」
セイン「‥‥‥ウェンディはほっといて行きます。『なのなの』『へいと』『すずにゃ』はチヴィットって言って、Innocentの世界では所謂『NPC』。ブレイブデュエルでプレイヤーの数が足りない時に手助けしてくれる存在だね。T&Hエレメンツにはあと2匹(?)居るけど、登場するのかな?」
ウェンディ「作者さん、アタシも活躍させてくれないっスかね?アッチでも出番が‥‥‥」
セイン「いや、ウェンディ。アッチって?」
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