Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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変革者、動く

はやては、少し前に現れた目の前の少女の言葉を思い出していた。

 

『私は、シュテルと申します。訳あって素性は説明出来ません。ナノハの事は、我々が今全力で探しています。ですから、もう少しお待ちください』

 

シュテルと名乗ったその少女。偶然と言うにはあまりにもなのはに似すぎている。クローンか、はたまた別の何かか。何にしても、素直には信用出来ない。かと言って手掛かりが他にある訳でもない。

 

「なぁ、フェイトちゃん。あの子、どう思う?」

 

「嘘を言ってるようには見えないけど‥‥‥」

 

フェイトも悩んでいるようだった。出来る事なら、信じたい。凶悪な事件に、例えば、人体実験の好きなイカれた凶悪犯罪者に誘拐されたなんて状況よりは、遥かにマシ。

 

「少なくとも巻き込んだ、っていうのは本当みたいだね。あのシュテルって子の魔力が現場に残ってた魔力残滓と同じだったからね」

 

現場で考え込み、一見冷静に分析しているユーノ。だが、その瞳の奥には動揺の色が伺える。なのはが失踪して、一番ショックを受けているのは他でもないユーノ。彼の心がどれだけ沈んでいるのかは、推して知るべしである。

 

「ユーノ君、今はあの子を信じるしかないみたいや」

 

シュテルはと言えば、エルトリアのアミタ達と連絡を取っていた。

 

「‥‥‥成る程。そうですか。ではやはり私が‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

通信を終えると、シュテルはもう一度はやて達の方を向き、フォーミュラプレートを展開する。

 

「ご迷惑をお掛けしています。どうやら私の仲間がナノハを見つけたようです。直ぐに連れて戻って来ますので、皆さんは此処で待機していて下さい」

 

「ちょっ、ちょっと待って!僕も、出来れば連れて行って‥‥‥」

 

ユーノが言いかけたのを「すみません」と遮り、シュテルは再び転移していった。3人は唯、なのはの無事を祈るしか無かった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「おいで、ヴィヴィオ」

 

「すずかママ~」

 

笑顔ですずかに走り寄るヴィヴィオ。無事にたどり着いたヴィヴィオを抱き上げ、すずかは教導の続きを見ている。

 

「なのはママ~!」

 

腕の中のヴィヴィオは、教導中のなのはを見つけ嬉しそうに手を振る。なのはもヴィヴィオに気付いて、笑顔で返す。そのなのはの笑顔に、ヴィヴィオは満面の笑みを溢す。

至って普通の、親子のやり取り。そう、少女がなのはの実の娘ではなく、聖王オリヴィエのクローン、という事以外は。

 

つい先日、聖骸布に残っていた聖王女オリヴィエ・ゼーゲブレヒトのDNAデータと、ヴィヴィオのデータが一致した。これで、ヴィヴィオはもう間違いなく、聖王のクローン。この事は六課の隊長陣と、聖王教会の極一部と、クロノら六課後見人にしか伝えていない。勿論、はやての判断。ヴィヴィオの情報は高度に隠蔽しておく必要がある。

 

そんな訳で、「そこまで」というなのはの声と共に昼休憩に入った一同は食堂へと向かう。勿論、ヴィヴィオもなのはに手を引かれてご機嫌で食堂へと向かう。そこに最大の敵が待っているとも知らずに。

 

‥‥‥数刻後。ヴィヴィオは件の敵と格闘していた。

 

「う゛~」

 

「ヴィヴィオ、ピーマン残ってるよ?」

 

なのはの言葉に顔をしかめるヴィヴィオ。「にがいのキラ~イ」とそれを皿の端に避ける。

 

「ホラ、好き嫌いは駄目だよ、ヴィヴィオ。フェイトママだってピーマン嫌いだったけど、食べれるようになったんだよ?」

 

ヴィヴィオは涙目でスプーンを握ったまま、なのはを見つめる。

 

「ほんとう?」

 

「うん。ホント。だから、ヴィヴィオも好き嫌いしないで食べようね?」

 

「‥‥‥どうして、たべれるようになったの?」

 

ヴィヴィオの問い掛けに、なのはは思わず「へっ!?」と声を洩らす。完全に予想外、という訳でもないのだが、理由まで聞かれるとは。苦笑いのなのはは、当時の事を思い出していた。

 

 

 

昔の事。やはり今のヴィヴィオと同じく、ピーマンだけを避けているフェイトと、それに気付くすずか。

 

『フェイトちゃん、ピーマン残ってるよ?駄目だよ、残しちゃ』

 

『でっ、でも、すずか‥‥‥ちょっと苦くて苦手なんだ』

 

『うーん‥‥‥それなら‥‥‥』

 

少し悩み、すずかは何かを思い付く。少し頬を染めながら、フェイトに耳打ちをする。

 

『‥‥‥!!』

 

『だから、食べれるよね?』

 

『食べれるよ。ご褒美がすずかなら、いくらでも食べれ‥‥‥』

 

『フェイトちゃん!』

 

つい言葉にしてしまったフェイトの口を塞ぎ、顔を真っ赤にしているすずかと、それを見ながら苦笑いするしかないなのは‥‥‥‥‥‥。

 

 

 

 

(流石に言えないしなぁ)

 

なのははどうしたものか悩んだ挙げ句、結局「頑張って克服したんだよ」と纏めてしまった。(ヴィヴィオがすずかちゃんとフェイトちゃんに影響されないように気を付けよう)と密かに決意した瞬間だった。

 

◆◇◆◇◆

 

昼休憩も終わり、教導も再開した頃。マリエル技官が漸く六課に到着。フォワード陣や隊長陣のデバイスの今後のメンテナンス諸々の為と、試作ストレージデバイスの調整の為である。

 

試作デバイスを持ち、シャーリーと歩くマリエル。向かう先は、六課の訓練場。

 

「結局最終調整はスノーホワイトとすずかちゃんがいないと出来なくって」

 

「そうですか。あ、ホラ、すずかさんあそこに居ますよ」

 

そう言ってシャーリーが指差した先には、すずかとフェイト。マリエルが(二人はいつも通りだ)と眺めていると、「すずかママ~、フェイトママ~」と言って二人に駆け寄るヴィヴィオの姿‥‥‥。

 

「ママ‥‥‥?ああ、あの子もエリオやキャロみたいに二人が‥‥‥」

 

「いえ、あの子はそうじゃなくって」

 

シャーリーの微妙な言い回しに、マリエルの表情が驚愕に変わっていく。

 

「そうじゃないって、まさか‥‥‥二人の本当の子!?あの二人ならあり得るけど、いや、でも」

 

あれこれと悩み頭を抱えるマリエルを見て、苦笑いのシャーリー。そんな二人に気付いたすずかが、ヴィヴィオの手を引いて近付いてくる。

 

「こんにちは、マリーさん。お久し振りです」

 

「こんにちは、すずかちゃん。あのっ、その子ってまさかすずかちゃんの‥‥‥」

 

少し戸惑いながら聞いてくるマリエルに、すずかは笑みを浮かべて、ヴィヴィオに自己紹介を促す。

 

「ほら、ヴィヴィオ。マリーさんにご挨拶は?」

 

「こんにちは!たかまちヴィヴィオです!」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい!?」

 

マリエルは目が点になり、フリーズ。暫くしてそれが解けると、今度は「まっ、まさかなのはちゃんの隠し子!?相手は!?もしかしなくてもユーノ司書長!?」と、何処かで聞いたような台詞を口にしながら混乱し始めた。

その姿を不思議そうに見るヴィヴィオの頭を、すずかは撫でながら口を開く。

 

「ヴィヴィオのせいじゃないから。気にしなくて良いからね?」

 

◆◇◆◇◆

 

何とか誤解も解けて、デバイスの最終調整を行うマリエルとすずか。後は、使用者を誰にするか。

 

「後は誰に使ってもらうかだけど、すずかちゃんじゃ参考にならないし‥‥‥」

 

「マリーさん、その事なんですけど」

 

マリエルがデバイスを持ってきた時から、すずかは誰に使わせるか決めていたようで、あっさりとその名を口にした。それは、マリエルの知らない、言わば部外者とも言える存在。

 

「‥‥‥フィアッセって、あのなのはさんとソックリの子?」

 

「はい。あの子なら、きっと使いこなせます」

 

 




フェイ×すずの影響を憂慮するなのはの回。

なのはの隠し子=ユーノの子。周りの認識はブレません。ユーノはどうか分かりませんが、フィアッセの影響か、なのはは意識し始めた!?
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