Crescent Moon tears   作:アイリスさん

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不屈の心は未だ潰えず

 

スバルはその場に呆然と座り込んでいた。相棒であるデバイス、マッハキャリバーは破損し、故障。自らの左手は金属フレームが露出、故障して上手く動かない。

 

「ギン‥‥‥姉‥‥‥」

 

ギンガはスバルの視界の中に居た。ナンバーズにやられて、ギンガは立ち上がる事はおろか、動く事すら出来ずに横たわっている。

 

と同時に、チンクとウェンディもスバルの視界の中に居た。チンクはスバルのIS、振動破砕で完膚無きまでに叩きのめされ、最早虫の息。ウェンディはと言えば‥‥‥‥‥‥。

 

「なーんだ、もう終わり?ま、いっか。最後にとっておきの見せてあげるよ」

 

「スッ、ストップっス!ホントにやめ‥‥‥あ、聞いてない‥‥‥」

 

ウェンディの制止を求める声は聞こえていないようで、相手の少女の持つブレイバーに魔力が溢れる。雷を纏い、少女はウェンディに向けてそれを降り下ろす。

 

「いくぞっ!『雷刃封殺爆滅剣ッ!!』」

 

迸る雷撃に呑まれ、ウェンディも完全に沈黙。他の数名を取り逃がしたようだが、無理には追わないらしく、その少女はギンガを抱き上げ、スバルの方へと歩いてくる。

 

「あ、あの‥‥‥」

 

「ん?ボクか?ボクはレヴ‥‥‥じゃ駄目なんだった。えっと、確か‥‥‥‥‥‥」

 

何か言いかけ、少女は考え込んでいる。それにしてもフェイトに似ている。バリアジャケットも、デバイスも、声も、その容姿も。雷変換の魔力資質まで。

 

何か思い出したのか、少女は「あ、そうだった!」と声をあげて、再度スバルに名乗り直した。

 

「ボクはアリシア!そういう事にしておいて」

 

「して‥‥‥おいて?」

 

その言葉にも疑問が残るが、スバルとギンガを助けてくれたのは事実。お礼を言おうとしたスバルだったが、遥か後方を見ながら「あ、マズイ」と言って高速で去っていく少女を、ただボーッと見ている事しか出来なかった。

 

 

アリシアと名乗った少女が去った後。先行していたスバルに漸く追い付いたなのはとティアナ。座り込んで動かないスバルに駆け寄る。

 

「スバル、大丈夫!?って、アンタ、左手」

 

「ティア‥‥‥」

 

金属フレームの露出した左手を見て焦るティアナを、動かずに放心状態で見ているスバル。

ギンガの無事を確認したなのはは、チンクの状態を確認しながら、スバルに向かって険しい表情で口を開いた。

 

「やり過ぎだよ、スバル。この子、危険な状態だよ」

 

ウェンディをバインドで拘束した後、チンクを抱きかかえ上げ医務室へと急ごうとしたなのはに、外からの通信が入った。

 

《なのは!やっと繋がったわ》

 

「アリサちゃん!」

 

クラウディアのアリサからの通信。漸く通信が回復したらしい。なのはが現状を説明するより早く、アリサが話し始めた。

 

《話は後よ、なのは。はやてと合流してクラウディアまで来て》

 

◆◇◆◇◆

 

(やっぱり、リミッター付きじゃ‥‥‥)

 

トーレを取り逃がした、否、まんまと逃げられたフェイトは、そのトーレの消えた方角を見つめていた。

 

《フェイト!》

 

フェイトの所にも、クラウディアからの通信が入る。けれど、それはなのはとは内容が少し違っていた。

 

「お兄ちゃん!良かった、やっと通信繋がったんだね」

 

その『お兄ちゃん』という言葉に少しだけ紅くなったクロノは一度間を置き、落ち着いて真剣な表情に変わってから改めて口を開く。

 

《クラウディア迄来てくれ、フェイト。すずかが》

 

「すずかが?」

 

そのクロノの表情で、すずかに何があったか察したフェイトの顔は、見る見る青ざめていく。

 

◆◇◆◇◆

 

クラウディアの医務室、ベッドで眠るすずか。その傍らの椅子に座り、フェイトはすずかの左手を、両手で包み込むように握り締めていた。

 

「すずか、ごめんね。どんな時でも必ず助ける、って約束したのに‥‥‥私‥‥‥」

 

未だに眠ったままのすずかの手を握ったままでその頬を涙で濡らし、俯いたままのフェイト。

 

『はやて』が保護したのが早かった事もあり、すずかの怪我はそこまで酷いものでは無かった。但し‥‥‥。

 

 

 

フェイトは先程の、アリサとの会話を思い返していた。

 

『複雑‥‥‥骨折?』

 

『そうよ、フェイト。複雑骨折。他は何とか大丈夫だったみたいだけど、左足は無理だったみたい』

 

『でもアリサ。どうしてすずかは左足だけ‥‥‥左足って』

 

何かを思い出し、ハッとするフェイト。

 

『古傷だし。それに‥‥‥人工骨の強度も、ね。まぁ、魔法でその辺も騙し騙しやってたみたいだけど、バリアジャケット無しで砲撃まともに受ければ流石にね。それからさ』

 

フェイトは黙って俯いたまま。

 

『あの子‥‥‥ヴィヴィオだけじゃ無くて、すずかもターゲットだったみたいよ』

 

 

涙が一筋流れ、フェイトは少しだけ顔をあげて、すずかの顔を見ながら語り掛ける。

 

「私の、せいだ。ごめんね、すずか」

 

暫くの沈黙の後、ベッドから微かな声が聞こえた。

 

「フェイトちゃんのせいじゃ、ないから。泣かないで」

 

漸く目を覚まし、弱々しくもフェイトに笑顔を向けるすずか。空いている右手で、フェイトの頭を震えながら撫でる。

 

「すずか‥‥‥良かった‥‥‥」

 

「うん、ごめんね。心配かけちゃって」

 

フェイトはすずかの頬を両手で触って、ゆっくりと顔を近付けていく。

すずかはその意図を理解し、瞳を閉じる。二人の唇は近付いて、重なる。

 

「んっ‥‥‥」

 

二人の舌が互いを確かめ合うように濃厚に絡まる。やがて静かに、名残惜しそうに唇を離す。暫く見つめ合った後、もう一度キスをしようとして、二人は人の気配に気付いた。

 

「あの、えっと‥‥‥」

 

その声に振り向いたフェイトとすずか。思わずフェイトの声が上擦る。

 

「ティアナ!?いっ、いつから居たの!?」

 

「えっと、割と最初の方から‥‥‥」

 

明後日の方を見ながら答えるティアナ。彼女はフェイトを呼びに来ただけだったのだが、苦笑いで、心なしか少し顔を引き攣らせていた。

 

◆◇◆◇◆

 

クラウディアのとある一室。『関係者以外立入禁止』という札の下がった部屋の中。ベッドに眠るフィアッセと、テーブルを囲んで座るクロノ、ディアーチェ、シュテル、キリエ、それにはやて。

 

「久し振り、でええんかな?」

 

「お久しぶりです、ハヤテ」

 

「この次元のお主とは初めてだ、子鴉。にしても、自力で記憶封鎖を解いたとは、呆れるわ」

 

挨拶もそこそこに、キリエが本題を切り出す。

 

「それで。出来たらこのままなのはちゃんを連れて戻ろうかと思うんだけど」

 

「そうやね。ギンガに会わせてあげたかったけど」と納得しかけたはやての言葉を遮り、目覚めていたフィアッセは静かに口を挟む。

 

「‥‥‥‥‥‥少し待って、くれないかな」

 

 

 

 

 

 

 




遂にティアナにもバレましたよ、な短め回。


チンクたんが重体です(泣)。セインのせいです。

被害報告。
ジェイルさんサイド
逮捕者:チンク、セイン、ウェンディ、ディード、オットー、ルーテシア。

ゼスト:ヴィータ&リィンと交戦中。

管理局サイド
地上本部:全システムダウン、空戦魔導師負傷者多数。
六課:隊舎半壊、ロングアーチ負傷者多数。
すずか、シャマル、フィアッセ、スバル重傷。ザッフィー、ギンガ重体。

ヴィータ&リィン:ゼストと交戦中。

(シグナム:別行動)
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