サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題)   作:エキバン

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遅くなって本当に申し訳ないです。
これからも頑張ります。


いざ行かん、トキワの森 後編

叩き起こされた俺は起きてすぐに美少女2人を拝むというご褒美をいただいた。

水浴びを簡単に済ませ、食事も終えてそろそろ眠ろうとしたとき、カスミが落ち着かずにキョロキョロしていたことに気づいた。

 

「カスミ、まだ怖いか?」

 

「あはは……虫ポケモンが寝てる間に飛び出してくるんじゃないかと思ったら……ちょっと……」

 

カスミは笑ってはいるが、その笑みは引きつっている。

 

「それなら……ピカチュウ」

 

「ピカ?」

 

「カスミの近くで寝てあげてくれないか? ポケモンが近づいたら追っ払ってほしいんだ」

 

「ピカ……ピカ!」

 

ピカチュウは承諾してカスミの元まで行こうとしていたが、何かを思いついた顔をして俺の元まで戻ってきた。

そして、俺の手を引き始めた。

 

「な、なんだ?」

 

「ピーカー」

 

「え、なに? どういうこと?」

 

ピカチュウに引っ張られてカスミの隣まで来てしまった。

 

「まさか……俺がカスミと寝るのか?」

 

ほとんど冗談で尋ねた。しかし――

 

「ピカ!」

 

ピカチュウは頷いた。

 

「「ええっ!?」」

 

おいおい、なにを考えているんだピカチュウ。

年頃の男女が一緒に寝るなんていけないだろ。

 

「いやさすがにそれは……」

 

「ピーカー」

 

ピカチュウは「寝ろよー」とでも言っているように不満げな顔をしていた。すると

 

「わ、私は、サトシが隣でもいいかなー……」

 

カスミが両手の人差し指をツンツンさせながら呟いた。

 

「へ?」

 

「ピカチュウはサトシと離れるの嫌みたいじゃない? 無理矢理引き離すなんてしたくないし、サトシの隣ならピカチュウの隣ってことと同じだし、2人一緒ならより確実……みたいな?」

 

なるほど、カスミとしては確実に虫ポケモンが来ない状況が望ましいのか。

そのためには俺がいても我慢するということか。

心なしか顔が赤いのはなぜだろう?

可愛いけどさ。

 

「まあ、カスミがいいなら、俺もいいけど」

 

「ピカピカ」

 

ピカチュウは満足そうに頷いていた。

可愛い仕草だが、どこか怪しいものを感じるのは気のせいか?

などと考えていると、肩にチョンチョンと何かが触れるのを感じた。

 

振り返るとリカがいた。触れたのはリカの指だったのか。

 

「リカ?」

 

リカはどこか懇願しているような表情で俺を見ていた。

彼女の顔も赤くなっているように見えた。

そんなリカに思わずドキリとした。

 

「わ、私も……夜暗いの怖いなー……なんて」

 

「そうなのか?」

 

「私も……その、サトシの隣が……いい……」

 

思わぬ発言。

リカが暗闇が苦手なのも初めてだ。まあ、女の子は暗い森で一人で眠るのは確かに怖いだろう。

 

「じゃあ、みんなで並んで寝よっか」

 

「うんそれがいいよ」

 

カスミがそう言うとリカも嬉しそうにうなずいた。

まあ、俺も役得だし、良しとしようか。

 

「ピカピカ〜」

 

ピカチュウよ、その「良い仕事したぜ」な顔はなんなんだ?

 

3人の寝袋を近くに寄せ合ったその時だった。

 

「ん?」

 

そこでふと気配があった。

ピカチュウも気付いたようで俺と同じ方を向いた。

 

そこには野生のピカチュウが3体いた。

 

「どうしたの?」

 

「ほら、あそこに野生のピカチュウがいる」

 

「え? ……あ、ほんとだ」

 

「もしかして、私たち見張られてるの?」

 

「かもな。まあ、こっちがなにかしない限り向こうは何もしてこなさそうだけどな」

 

俺のピカチュウを見ると、寂しげな様子で野生のピカチュウたちを横目で見ていた。

 

俺たちはこちらを見つめるピカチュウたちを少々気にしながらも寝袋に入った。

 

 

 

***

 

 

 

夜も深い時間。俺は未だに目が冴えていた。

 

「……眠れん」

 

それもそのはず、

 

「すぅすぅ……」

 

「くぅくぅ……」

 

俺の両脇では、リカとカスミが可愛らしい寝息を立てていたのだ。

自分の両隣で美少女2人が寝ているなんて状況は前の世界で彼女いない歴=年齢の俺にはご褒美と同時にキツすぎる試練だ。

 

「ピー……」

 

ピカチュウは俺の頭の近くで丸まって眠っていた。

こんにゃろう、こっちの苦労も知らないで気持ちよさそうに寝やがって。

 

しかし、人間とは「慣れ」が早い生き物のようで、俺の意識は次第に静かになっていき。

いつの間にか眠りに落ちてしまっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「……ん」

 

目を覚ましたリカはサトシがいないことに気づいた。

 

(サトシ……川かな?)

 

すると、何かが砕けるような音が断続的に続き、リカは僅かに驚く。

 

「なんの音?」

 

少し怖かったが、リカは音のする方へゆっくり歩み寄った。

すると、そこにはサトシとピカチュウがいた。

 

「おーリカおはよう」

 

「ピカチュ!」

 

「サトシおはよう。何してるの?」

 

「ああ、なんか目が覚めたから、特訓をしてたんだ」

 

「ピカピカ」

 

よく見ると、ピカチュウがところどころ汚れていた。

トレーニングに余念がないサトシを改めて一生懸命でいいなとリカは思った。

 

「へー、がんばってるんだね」

 

「もちろんだ」

 

「カスミが起きたら朝ごはんにしよっか」

 

「そうだな、腹減ったよ」

 

サトシが戻ったらあと、リカはふと彼が特訓していた場所を覗いた。

そこには大きな岩があった。おそらくこの岩をマトにして特訓していたのだろう。

岩のところどころに何かがぶつかった跡があった。

それはギザギザしていて、どこかで見たような形をしていた。

 

(どんな特訓してたんだろう……)

 

そう思いながら、リカはキャンプまで戻った。

 

 

 

***

 

 

 

「どこまで続くのよこの森……」

 

「今日中には町まで着くと思うから、もう少しがんばろうよ」

 

「うー……」

 

相変わらず虫が苦手なカスミは虫だらけのこの森が嫌なようだ。

かく言う俺も、いつまでも森が続くのは軽くノイローゼになりかねないため、早く抜けたい。

 

すると、茂みの方でガサガサと音がした。

 

「ひゃっ!」

 

カスミが俺の後ろに隠れて抱きついてきた。

おいおいビビりすぎだろカスミさん。

役得ありがとう!

 

茂みから現れたのは二本角のポケモンだった。

 

「あれは、カイロスだね」

 

「珍しいな。よし、あいつもゲットだ」

 

「よし、今回は……ニドラン、君に決めた!」

 

「ニド!」

 

ニドラン♂が向き合ったことで、カイロスはハサミを打ち鳴らして戦闘体制になった。

 

「『つのでつく』攻撃!」

 

ニドランが鋭い角を構えて突進する。ニドランの角はカイロスの腹部に突き刺さる。

 

「よしいいぞ!」

 

カイロスはニドランの先制攻撃に後ずさるが、すぐに体制を立て直し、ハサミをニドランに狙いを定めて向かって来た。

 

「『はさむ』攻撃だ、躱せ!」

 

ニドランは素早い動きでカイロスの攻撃を回避する。

 

「そのまま『にどげり』だ!」

 

ニドランが後ろ脚で二連続の蹴りを放つ。

かくとうタイプの技はむしタイプに効果は今一つだが、カイロスの動きを止めるには十分。

 

「『どくづき』!」

 

ニドランの得意技を放つ。

それは見事にカイロスの体を捉えた一撃だ。

 

カイロスは飛ばされて後ろの木に思い切りぶつかった。

すると、そのまま茂みの中に消えていった。

 

「ああ……逃げられた」

 

「惜しかったね」

 

リカの労いの言葉を聞いていたが、俺には違和感があった。

カイロスが逃げたのはニドランを恐れてではなく、もっと別のものが原因のような気がした。

 

そして、さっきから聞こえるこの音。

 

「これは……何の音だ?」

 

「え、音?」

 

「そういえば、なんだろ……?」

 

なんとなく恐怖を覚えるような音はだんだん俺たちまで近づいていた。

 

そして、音の方を見ると、そこにはポケモンたちがいた。

 

出現したたくさんのポケモンは大量のどくばちポケモン、スピアーの大群だった。

 

「うええ!?」

 

「まさか、カイロスはこのスピアーたちに気付いて逃げたのか!?」

 

「まずい、逃げよう!」

 

やばい、このままだと追いつかれる。

こうなったらバトルで追い払うしかない。

 

「来いピカチュウ!」

 

「お願いフシギダネ!」

 

「行くのよヒトデマン!」

 

俺たちは走りながらポケモンを出す。ピカチュウは俺の肩に乗り、フシギダネとヒトデマンはリカとカスミの両腕に抱かれていた。

 

「『10まんボルト』!」

 

「『はっぱカッター』!」

 

「『バブルこうせん』!」

 

激しい電撃、鋭い葉っぱ、大量の泡の水流がスピアーの群れに直撃する。

 

「よし!」

 

これで追い払えたと思えた矢先、スピアーはまだ俺たちに迫ってきた。

よく見ると墜落しているスピアーが何体かいるため、ポケモンたちの攻撃が効かなかったのではなく、攻撃を受けたスピアーはリタイアしているが、後続のスピアーはダメージを受けず俺たちを追いかけてきている。

まだまだ技を打ち続けるしかない。

 

「くっ、まだまだ行くぞ。ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウ、フシギダネ、ヒトデマンはスピアーに攻撃を続ける。

すると、スピアーの何体かは素早い動きで攻撃を避け始めた。

 

「ヘアッ!」

 

ヒトデマンが『こうそくスピン』でスピアーを撃退する。しかし、カスミから離れた瞬間をほかのスピアーは逃さなかった。

 

スピアーの針がカスミを襲う。

 

「キャ!」

 

「カスミ!?」

 

「ダメェ!!」

 

そのスピアーの針は

 

カスミを襲う直前で停止した。

いや、正確にはスピアーの体が停止していた。

スピアーの体に何重にも巻かれているものが存在していた。

それは『糸』の塊、すなわち『いとをはく』により生み出された糸。

その発生源は二ヶ所。

俺のビードルとリカのキャタピーだ。

 

「ビードル……」

 

「キャタピーも……」

 

そう。俺たちはビードルとキャタピーをボールから出していなかった。

2人は自分でボールから飛び出してカスミを助けたのだ。

 

「ビービー!」

 

「キャタキャタ!」

 

ビードルとキャタピーは息を合わせると糸を引っ張りスピアーを投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされたスピアーはほかのスピアーとぶつかる。

 

「ビービー」

 

「キャタキャタ」

 

「……ビードル、キャタピー、ありがとう」

 

カスミがビードルとキャタピーにお礼を言った。

その顔は虫ポケモンを毛嫌いしていたものではなく、自分のポケモンに向けるような優しい笑みだった。

 

と、カスミがビードルとキャタピーを受け入れてくれたことに感動している場合ではなかった。

 

投げられたスピアーはビードルとキャタピーに向かって飛んできた。

自分の種族の進化前でもお構いなしか。まあ、人間にゲットされたポケモンだしな。

ビードルでは勝つのは難しい。

 

「ビードル、キャタピー逃げて! ヒトデマンお願――」

 

その時、カスミが言い終わる前にビードルはスピアーに向かっていった。頭の針を相手に突き刺す『どくばり』攻撃だ。

 

スピアーの針とビードルの針が衝突する。

 

まずい、スピアーにはもう片方の針がある!

予想通り、スピアーは動けないビードルに対しもう片方の針を向ける。

 

「ビードル!」

 

「行ってヒトデマン!」

 

その時、ビードルの体が輝き出した。

 

「え?」

 

「これって……」

 

金色の光沢のある殻に守られた鋭い目の蛹がそこいにた。

 

「……ギロ」

 

ビードルはコクーンに進化した!

 

驚いて一瞬動きを止めたスピアーは再び針でコクーンを貫こうとする。

 

俺は不意に浮かんだ指示を飛ばす。

 

「コクーン、『かたくなる』!」

 

「……ギロ」

 

金属がぶつかったような音がした。

スピアーの針はコクーンの体を貫くことなく、その体表で動きを止めた。

そして、スピアーはコクーンから距離を取るとコクーンを刺そうとした針を痛そうに庇っていた。

 

そして、別のスピアーがカスミに襲いかかる。

 

ヒトデマンが迎撃態勢を取る。しかし、それよりも先にカスミの足元にいたキャタピーが動く。

 

キャタピーは全速力でスピアーに向かう。

 

そして、その体が輝き出した。

 

「まさか……」

 

緑色の光沢のある殻に守られた眠たげな目の蛹が現れた。

 

「……セル」

 

キャタピーはトランセルに進化した!

 

「リカ!」

 

「うん、トランセル、『かたくなる』!」

 

トランセルと相対するスピアーもまた、その針で硬化したトランセルを貫くことはできなかった。

 

「トランセル、『いとをはく』!」

 

トランセルの口から大量の糸が発射され、スピアーの体を包む。

 

「そのまま『たいあたり』!」

 

動けなくなったスピアーはトランセルの全身の一撃に吹き飛ばされる。

 

 

 

***

 

 

 

「ピカチュウ、残りを片付けるぞ」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウは呼吸を整え、サトシの言葉を思い返していた。

常に最大パワーでは体力がもたなくなる。

だからその場に必要な力だけを引き出して、長く戦えるようにする。

それだけではない。大きすぎる力はコントロールが難しい。特に、目の前のスピアーのように素早い相手には当てられなくなる。

だからこそ、集中し、自分の中の電気をコントロールするんだ。

自分の電気は自分の体の一部。自分の体をコントロールできないポケモンは強くなんてなれない。

 

ピカチュウはスピアーの群れを見る。

素早い動きでこちらに向かってくる。

しかも連携がとれているため、下手な攻撃では簡単に回避される。

 

よく見ろ、感じろ。自分の周りを、自分の内側を……

 

ピカチュウの頬袋が帯電する。

そして、ピカチュウの中で必要なものが噛み合う。

 

「『10まんボルト』!」

 

瞬間、閃光が走る。スピアーが1体墜落する。

出来た。相手を倒すために必要な電気のコントロール。しかも、それはスピアーが反応できないほどのスピードとなって放つことができた。

 

ピカチュウはその呼吸を繰り返し、『10まんボルト』で次々とスピアーを迎撃していく。

 

「よし、いいぞピカチュウ!」

 

サトシの激励の声が嬉しい。

しかし、高揚する気分を抑え、電気のコントロールに集中していく。

そして、残るスピアーは1体。

 

「行けえ! ピカチュウ!」

 

「ピィカ、チュウウウ!!」

 

最後のスピアーが墜落する。

 

 

 

***

 

 

 

「やったやった、すごいよサトシ、ピカチュウ!」

 

「あれが、サトシの言ってたコントロール?」

 

「ああ、さすがピカチュウだ。もう出来るようになったんだな!」

 

「ピカピカー!」

 

目標だった電気のコントロールの感覚を身につけることができてピカチュウも嬉しそうに笑っている。

 

「それから……」

 

「うん……」

 

俺とリカは今回頑張ってくれたそれぞれのポケモンを抱き上げた。

 

「コクーン、進化おめでとう」

 

「トランセル、進化やったね!」

 

「……ギロ」

 

「……セル」

 

さなぎポケモンのコクーンとトランセル、表情に変化は無いように見えるがなんとなく笑っているように思えた。

すると、カスミが近づいてきた

 

「2人とも、助けてくれてありがとうね」

 

ピンチを助けてくれたこともあるのだろう。カスミはコクーンとトランセルを毛嫌いする様子もなくそれぞれの頭を撫でていた。

 

 

 

***

 

 

 

「ピカ?」

 

歩いていると、ピカチュウがいきなり耳と尻尾をピンと立たせて立ち止まった。

そして、不意に茂みの中に走って行った。

 

「おい、どうしたピカチュウ!」

 

「待って!」

 

「なになに!?」

 

ピカチュウを追いかけると、木々に囲まれた原っぱに出た。そこには多くのポケモンたちが集まっていた。

見慣れたポケモンたちだ。

 

「これって……」

 

「わあ、ピカチュウがいっぱい」

 

「すごい……」

 

たくさんのピカチュウが原っぱに集まり遊んでいたのだ。

 

「こんなにたくさんのピカチュウ見たの始めてだよ」

 

「みんな可愛いわね」

 

リカとカスミが感想を口にしていると俺のピカチュウが茂みから原っぱに出た。

 

すると、遊んでいた野生のピカチュウたちが一斉に俺のピカチュウの方を見た。

 

「「「「「ピカピカチュウウウウウ!!」」」」」

 

数体の野生のピカチュウが俺のピカチュウの前に立った。しかし、その顔は決して好意的ではなく臨戦体制で威嚇していた。

 

「ピカ!?ピカチュウウウウウウウッ!!!」

 

「「「「「ピカ!?」」」」」

 

「ピィピカ、ピカピカチュー!」

 

俺のピカチュウは必死に身振り手振りで野生のピカチュウたちに話しかけていた。

おそらく自分には敵意がないということを伝えているのだろう。

野生のピカチュウたちは困ったように互いに顔を合わせた。

けれど、俺のピカチュウに近寄ろうとするピカチュウはいなかった。

 

「……ピカチュウ、もう行こう」

 

「ピカ……」

 

落ち込んだピカチュウはそのまま俺の足元まで来た。その間に何度もピカチュウの群れを名残惜しそうに振り返った。

ピカチュウをボールに戻そうとした、その時――

 

頭上から大きな何かが現れ、野生のピカチュウたちに落ちていった。

 

「ピカ!?」

 

「ピィ!?」

 

「ピッカ!?」

 

「「「「「ピィカチュ!?」」」」」

 

それは網だった。

大きな網が野生のピカチュウたちを捕らえた。

ピカチュウたちは動くことができずに混乱していた。

 

「なんだあれは!?」

 

すると、2人の男女と1体のポケモンが現れた。

 

「なんだかんだと―――

 

(中略

 

「にゃーんてにゃ!!」

 

なにか省かれた気がするが、気のせいか?

 

「ロケット団!」

 

「またあんたたちなの!?」

 

「そうよ、また私たちよ!」

 

「俺たちのしつこさ舐めんなよ!」

 

「ロケット団は諦めないのにゃ!」

 

まったくなんでこう俺たちの旅を邪魔しに来るのかなこいつらは。

 

「ジャリボーイ、私たちはね、あんたのピカチュウを追いかけてきたのよ」

 

「ピカチュウを?」

 

「ピカ?」

 

「そのピカチュウはそんじょそこらのピカチュウとは違うとわかった。あの電撃は間違いなく最強の電気ポケモンになる」

 

「そうにゃ。そのピカチュウを手に入れればロケット団の戦力となり、ニャーたちも昇進間違いなしなのにゃ!」

 

「そんで追いかけてたら、ここにたっくさんのピカチュウがいるじゃない」

 

「よく調べたらピカチュウは生息地が限られたなかなか珍しいポケモンなんだってな、だからこいつらもいただくのさ」

 

「そのピカチュウみたいに強くなれるやつがいるかもしれないからにゃー」

 

ペラペラと目的を話してくれてどうもありがとう。

けど、そんなの納得できるわけないよな。

 

「ゲットするならモンスターボールでしなさいよ!」

 

「そうだよ。そんな捕まえ方、ピカチュウたちが可哀想だよ!」

 

リカもカスミもロケット団のやり方に憤慨していた。

 

「お子様ね〜、大人はそんな面倒なゲットしないの」

 

「ボール代もかかるしな〜こうして一網打尽にした方が効率がいいのさ」

 

「ロケット団は賢いのにゃ」

 

「そんなの許せるか! 森のピカチュウたちは返してもらうぞ!」

 

全国のトレーナーを敵に回す発言、ポケモンのことを考えない物言いに本当に腹が立った。

 

すると、ニャースがリモコンを取り出しボタンを押した。おい、このパターンは……

 

「見るがいいにゃ、これこそ進化したメカニャース……ウルトラメカニャース改だにゃ!」

 

どこからか巨大なニャースロボットが現れた。前回よりもデカくないかこれ?

額の小判にはご丁寧に『改』と書かれていた。

さらに頭のてっぺんにはガラス張りの部屋のような部分があった。

 

ロケット団3人はロボットの後ろに下がると機械音が鳴り、ガラス張りの部屋に入っていた。

あれはコックピットだったのか。

 

「さあ、覚悟するのね!」

 

「どんなにデカくなっても、そんなもんすぐにガラクタにしてやらあ!!」

 

俺は駆け出してジャンプすると、拳を振るった。

 

しかし、メカニャースはビクともしなかった。

 

「なに!?」

 

コックピットのニャースは高笑いを上げた。

 

「このウルトラメカニャース改は特別な合金なのにゃ、いくらおみゃーが規格外でもそんなパンチじゃメカニャースには効かないのにゃ」

 

「あ、少し装甲が凹んだみたいだぞ?」

 

「にゃんと!? しかーし! そんなの問題にならないのにゃ!」

 

「そうよ、壊れてたまるもんですか!! これ造るのにどんだけ貯金つぎ込んだと思ってんのよ!!」

 

俺の攻撃ではダメか、あいつらも学習するんだな、厄介なことにな。

 

「だったらこれだ! ピカチュウ、『10まんボルト』!」

 

「ピカチュウウウウウ!!」

 

あの時このロボットを倒すことができたピカチュウのこの電撃なら上手くいくはず、そう思った。

しかし、ロボットは傷1つついていなかった。

 

「なに!?」

 

「ピカ!?」

 

「「なーはっはっはー! 」」

 

「何度も同じ轍は踏まないわよ!」

 

「対ピカチュウ用に電撃対策はバッチリなんだよ!」

 

「いかに強い電撃でも、ウルトラメカニャース改には通用しないのにゃ!」

 

ここまで対策されているとは。

だったら計画を変更するしかない。

 

「リカ、トランセルを出してくれ。行け、コクーン!」

 

「わかった、来て、トランセル!」

 

「……ギロ」

 

「……セル」

 

「コクーン、『いとをはく』!」

 

「そっか! トランセル、『いとをはく』!」

 

トランセルとコクーンから放出された大量の糸がメカニャースの全身に張り付く。

 

「ぬわあああ! なんだ!?」

 

「うへえ、ネバネバ鬱陶しい!」

 

「ウルトラメカニャース改の美しい体にこんなものを!」

 

ひとまずこの厄介なロボットの動きを封じることにした。

動けないうちにやることがある。

 

「今のうちにピカチュウたちを!」

 

「ええ!」

 

網に囚われているピカチュウたちを助けようとしたとき、ビリビリと何かを破る音がした。

 

「よくもやったなジャリども!」

 

「お返ししてやるわ!」

 

丈夫なコクーンとトランセルのいとでも簡単に破られるのか!? あのロボットは想像以上に進化している!

 

「ウルトラメカニャース改、パンチだにゃ!」

 

大きな拳が俺たちに迫る。

なんとかリカだけでも守らないと、そう思っていたが、拳が俺たちを襲うことはなかった。

 

「コクーン!?」

 

「トランセル!?」

 

コクーンとトランセルが指示を待たずに『かたくなる』で体を硬くして俺たちを守ったのだ。

 

「おのれ虫の分際で!」

 

しかし、押し切られるのは時間の問題のように思えた。その時だ。

コクーンとトランセルの体が光輝いた。

 

「なに?」

 

「嘘、まさか!」

 

それぞれの硬い殻から2体のポケモンが現れた。

 

「スピ!」

 

「フリーフリー!」

 

コクーンから鋭い2本の針を持ったポケモンが、トランセルから薄い羽を羽ばたかせ華麗に飛ぶポケモンが現れた。

 

「スピアー……」

 

「バタフリー……」

 

俺とリカは自然とその名前を口にした。

 

「1日で2回進化するなんて……」

 

カスミは驚きの声を上げた。

 

「へん! それがなんだってんだ!」

 

「いい気にならないでよジャリども! 進化しても虫は虫よ!」

 

「喰らうがいいにゃ!」

 

ロケット団も驚いたようだがすぐに切り替えて襲いかかってきた。

 

先に動いたのはリカだ。

 

「バタフリー、『ねんりき』!」

 

「フリィ!」

 

バタフリーの眼が光ると、メカニャースの拳は動きを止めた。

 

「な、なにぃ!?」

 

「ちょっと! 動かないわよ!?」

 

俺も負けてられない。

 

「行くぞスピアー、『みだれづき』!」

 

「スピィ!!」

 

目にも留まらぬ両腕の針の突きがメカニャースの右手に炸裂する。

右手は跡形もなく破壊された。

 

しかし、俺は失敗したことに気づく。

 

破壊されたメカニャースの右手の破片が落ちる先には捕まっているピカチュウたちがいる。このままではピカチュウたちが怪我をしてしまう。

だが、その心配は無かったとすぐにわかった。

 

「ヒトデマン、『バブルこうせん』!」

 

「ヘアア!!」

 

いつの間にか出てきたカスミのヒトデマンが大量のバブルを発射し、機械の破片を次々と吹き飛ばして破壊する。しかも、その破片がメカニャースに次々と激突する。

 

「助かったぜカスミ!」

 

「ええっ!」

 

カスミのファインプレーに俺はつい興奮してしまった。

 

「や、やめろぉ!」

 

「ちょっとニャース、なんとかしなさいよ!」

 

「お、おのれ猪口才にゃ……」

 

「あれ? スピアーは?」

 

奴らはスピアーを見失ったようだ。

それはそうだ、なぜなら俺のスピアーは―――

 

「後ろがガラ空きだ……」

 

もうお前たちの後ろで構えているんだからな!

 

「いっけえ!! 『ダブルニードル』!!」

 

「ス……ピィ!!!」

 

スピアーは鋭い2本の針を構え、メカニャースに突進する。

そして、容易くメカニャースの体に大きな穴が空いた。

そして、爆発。

 

「「「やな感じー!!!」」」

 

前回と同様にロケット団は何処かへと飛んで行ってしまった。

 

 

 

***

 

 

 

「「「「「ピカチュウ!」」」」」

 

ピカチュウたちを網から解放すると、彼ら彼女らは俺たちに好意的な視線を送り、鳴き声を上げた。

どうやらお礼を言われているようだ。

 

「みんな無事で良かったな」

 

「うん、誰も怪我しなくて良かった」

 

「あたしもあいつらには腹が立ってたからぶっ飛ばしてやりたかったけどね」

 

わーお、カスミさんはまだ腹に据えかねているようだな。

 

「ピカ!」

 

「ピ?」

 

野生のピカチュウたちは俺たちについてくるように促した。

 

歩いていくと森の奥にまで行き、そこには周りのどの木よりも大きな木があった。

そして、その幹は大きな空間が存在していた。

 

「こんな奥にこんな場所があったなんて」

 

「もしかして、ここがピカチュウたちの住処?」

 

中に入ると、眠るための草の布団や盛られたきのみなど、生き物が生活している跡がある。

 

「写真撮っちゃダメかな?」

 

「ピカチュウたちに聞いてみたらどうだ?」

 

「うん……えと、悪いことには使わないから、写真いいかな?」

 

「「「ピカピカチュウ!」」」

 

ピカチュウたちは頷いた。

許してくれたみたいだ。

というかそもそも写真を知ってるのか?

 

リカが図鑑を構えてあちこち写真を撮った。

野生のピカチュウたちはリカに写真を見せてもらい画面に自分たちが写っていることに驚いて喜び、「ピカピカチャー!」とはしゃいでいた。

 

そして、この空間の中央にある「それ」に俺たちは驚愕した。

 

何体かのピカチュウが「それ」を大事そうに見守っていた。そのピカチュウたちはいずれも尻尾に窪みがあるメスだった。

 

「あれって、もしかして……タマゴ?」

 

「ピカチュウたちのタマゴなの?」

 

ピカチュウたちが見守っている楕円形の丸い「それ」はまさにタマゴだった。

 

その時、タマゴが揺れた。

3つとも揺れたのだ。

 

「ええ!?」

 

「う、生まれる!?」

 

それぞれのタマゴに罅が入り、それが少しずつ広がっていく。

そして、殻が弾かれたように飛んだ。

 

「「「ピチュー!!!」」」

 

タマゴから生まれたのは、ピカチュウの進化前、ピチューだった。

 

「「わあ!」」

 

「すげぇ……」

 

生まれたてのピチューたちはキョロキョロと周りを見渡すと、メスのピカチュウたちを見つけた。

そして、それぞれが甘えるように抱き着いた。ピカチュウたちも優しくピチューたちを抱擁した。

 

「タマゴからポケモンが生まれるところなんて初めて見たよ」

 

「私もよ。こんなに胸が熱くなるなんて……」

 

「ピカ」

 

ピカチュウは野生のピカチュウに誘われ、ピチューたちの傍に寄った。

 

「ピカ……」

 

「ピチュ?」

 

「ピチュー!」

 

ピチューは俺のピカチュウに笑顔で返してくれた。

 

「もしかして、サトシのピカチュウに願掛けしてもらってるのかも」

 

「願掛け?」

 

「うん、サトシのピカチュウってこの森のピカチュウたちより強いでしょ? だから、あのピチューたちが強くたくましく成長してくれますようにって」

 

リカの言葉に合点がいった。そういうことか、だから俺のピカチュウは誘われたのか。

つまりそれはこの森のピカチュウにとって俺のピカチュウは仲間と同じくらい信頼できるポケモンになれたという証明だ。

 

昨日のように敵意を抱かれずにみんなと仲良くし、ピチューたちからも好かれているピカチュウに俺は嬉しくなった。

 

そのまま俺たちは彼らの交流を見守っていた。

 

 

 

***

 

 

 

「ああ!」

 

カスミがいきなり声を上げた。

 

「ど、どうしたのカスミ?」

 

「ここって結構深い森の中よね? 出るには結構時間がかかるんじゃ……」

 

そういえばここまで来るのに結構歩いたよな。

 

「あーそうなりそうだな」

 

「そんなー……また野宿なのー……」

 

すると、1体の野生のピカチュウが俺のピカチュウを連れて近寄って来た。

 

野生のピカチュウに促されるまま俺たちは歩いていた。

 

「どこに行くの?」

 

「さあ、わからないけど、危険な場所じゃないと思うぜ」

 

「だといいけど……」

 

意図が掴めないまま野生のピカチュウについていく俺たち。

すると、比喩ではなく本当に光が見えた。

 

「え? ここって……」

 

「出口!?」

 

案内された先には深い木々は無く、開いた道があった。その先をよく見ると、町が見えた。

 

「そっか、ピカチュウたちは抜け道を知っていたんだ」

 

「すごーい! 案内してくれてありがとう」

 

野宿を嫌がったカスミは一層喜び、ピカチュウたちにお礼を言った。

 

後ろを振り返ると森のピカチュウたちがたくさんいた。

着いてきてたのか。

 

俺のピカチュウと1体の野生のピカチュウは2人とも背中を向けたそしてお互いの尻尾をタッチさせた。

ピカチュウ流の挨拶か。

 

「ピカピカー!」

 

「ピカ!」

 

「チュウ!」

 

「ピッピカー!」

 

「「「「「ピカピカ!」」」」」

 

「なんだかすごい体験した気がする」

 

「うん、トキワの森にあんなにピカチュウがいるなんて知らなかった」

 

「世界は俺たちの知らないことだらけなんだよ。それを見つけるから冒険は楽しいんだ」

 

ピカチュウたちが森へ帰るのを見届けると、俺たちは町まで続く道を見つめた。

 

「よっしゃニビシティまで直行だ!」

 

「「おーっ!!」」




なぜモチベーションとは続かないのか、悔しいです。

今回はピカチュウの森のような展開も描きました。

最近、ニドリーナとニドクインがタマゴ未発見だと知りました。
少々困りました。

次回もよろしくお願いします。
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