サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題) 作:エキバン
継続力がほしいです。嫌なことがあってもめげない気持ちがほしいです。毎日少しでいいから書ければいいのに。
「ヒトカゲ、『かえんほうしゃ』!」
「かわしてヒトデマン!」
ヒトカゲから放たれた猛烈な火炎が襲い掛かるが、ヒトデマンは体を回転させること難なくかわす。
渾身の一撃を回避されたヒトカゲは困惑してしまう。
「ヒトカゲ落ち着け、もっと相手の動きをよく見るんだ」
サトシの言葉に落ち着きを取り戻したヒトカゲは、目を凝らしてジッとヒトデマンの動きを追い、トレーナーであるサトシと呼吸を合わせていく。
「今だ、『かえんほうしゃ』!」
サトシの指示に素早く反応したヒトカゲは『かえんほうしゃ』を放つ。
それはヒトデマンの動きを先読みし、その直線上を目掛けて撃ったため見事に直撃した。
しかし、水タイプに炎技は効果が今一つのため、ヒトデマンは僅かによろけながらも未だ健在だ。
「次はこっちが行くわ、ヒトデマン『こうそくスピン』!」
「『きりさく』で迎え撃て!」
猛スピードで回転して突撃するヒトデマンにヒトカゲは腕を振りかぶって打ち下ろす。
強力な爪の一撃はヒトデマンにパワーで勝つことに成功し吹き飛ばす。
「よし、『かえんほうしゃ』!」
「『こうそくスピン』でかわして進むのよ!」
追撃に『かえんほうしゃ』を放つがヒトデマンは素早く動いて回避する。
「今よ、『みずのはどう』!」
瞬時にヒトカゲの右に回り込んだヒトデマンは強力な水の一撃を放つ。
「カゲェ!?」
躱しきれないヒトカゲは『みずのはどう』が直撃し、大ダメージに倒れ込んだ。
ヒトカゲ戦闘不能、ヒトデマンの勝ち。
「いいわよヒトデマン」
「ヘア!」
「ヒトカゲ、大丈夫か?」
「……クァ」
カスミが褒めることで誇らしげなヒトデマンに対し、負けたヒトカゲはこの世の終わりとばかりに落ち込んでいた。
そんなヒトカゲの頭をサトシは優しく撫でる。
「みずタイプはほのおタイプのお前と相性が悪いんだ。苦戦しても仕方ないよ。むしろここまで戦えてすごいよ」
「ええ、あなたの『かえんほうしゃ』、ヒトデマンに効果は今一つなのにすごい勢いで押されてたもの。すごい炎だったわ」
「この調子でいけばもっともっと強くなれるよ!」
カスミとリカの賞賛にヒトカゲは心から嬉しそうな笑顔になる。
その様子にサトシはヒトカゲの頭を撫でると気持ち良さそうに鳴いた。
あんなに傷ついて苦しんでいたヒトカゲが元気になってくれて本当に良かったとサトシは心から喜んだ。
***
ヒトカゲの特訓を終えた俺たちは次の町を目指した。一番近い町はジムは無いが食料の調達と休むことはできそうだ。
ようやく一息つける、というときに異変は起こった。
地面が消えた。
「うわあああ!?」
「「きゃあああ!!?」」
呼吸ができない、何かが俺の顔を塞いでいる。
顔で感じるのはそれはなかなか弾力がある。
それに暖かくてなんだか良い匂いもする。
どうにか顔からどかせられないかと手を動かすと、俺の手も何かに触れた。
思い切って掴んでみると、これまた暖かくて弾力のあるものだった。
「ひゃあ、だ、ダメぇ……」
「あ、やん、そんなもぞもぞしないでぇ……」
む? どこからかリカとカスミの声がする。
なにやら喘いでいるようだがどうした?
俺は顔を動かしてどうにか視界が開けないか探る。
そして、手のひらに感じる柔らかいものもさらに掴んでグニグニと動かす。
「ああ! も、もうダメだったら!」
「い、いい加減にぃ……!」
瞬間、視界に差し込む光が増えた。
顔に乗っていた何かがいなくなったのだ。
顔を上げてみると、顔を赤くしたカスミが自分の両手をお尻に回していた。
そして、俺の脚に同じく顔を赤くしたリカが乗っていた。
そこでようやく理解した。
俺が手でつかんでいたのはリカの臀部だったのだ。
許可無く女性の肉体をまさぐるという重罪を犯したことに気づいた俺はすぐに手を離し、そしてカスミを見てまた理解した。
俺の顔に乗っていたのはカスミのお尻だったのだと、そうとは知らずに俺は顔を動かしていたのだ。
罪状、婦女2人へのセクシャルハラスメント。
判決、死刑、情状酌量の余地無し。
判決を言い終えた脳内裁判長が「最後に言いたいことはありますか?」と仰った。
寝ていた俺は立ち上がってリカとカスミを見る。
そして、決死の覚悟を持って、地面にというか地中深く跪いて額を擦りつけた。
「すいませんでしたああああああっ!!!」
おそらく人類史上初の地中深くで行う土下座だ。
どうせ死刑になるなら、2人に処されたい。
そう思って俺は土下座のまま動かないでいると、両肩に手を置かれる。
「あんた、そんな大袈裟にしなくていいのよ」
「事故だから仕方ないよ」
「え? 死刑じゃないの?」
「「何言ってるの」」
良かった、俺の旅はここで終わりじゃなかった。
こんなセクハラ野郎を許してくれる慈悲深き美少女2人に感謝します。
「……別にあんたなら」
「……それにちょっと嬉しかったし」
カスミとリカの思わぬ反応に俺もどう答えていいのかわからなくなった。自分でも顔が赤くなるのがわかる。どうにかこの空気を解消して話を逸らすために俺は呟く。
「それにしても落とし穴なんてどうなってんだ?」
「「「「「ゼニゼニ~」」」」」
サングラスをかけた5体のゼニガメが穴から俺たちを見下ろして笑っていた。
「「「ゼニガメ!?」」」
俺たちが穴の外に出ようとするとゼニガメたちは引っ込む。
穴から脱出した俺たちをゼニガメたちは笑って見ていた。
「お前たちの仕業だったのか!」
「危ないじゃない!」
「どうしてこんなことするの!」
「「「「「ゼェニュウウウウウ!!!!!」」」」」
彼らの答えは『みずでっぽう』だ。
俺たちは迫りくる『みずでっぽう』を三手に別れてかわす。
ゼニガメたちは俺たちで遊んで楽しんでいるのか、大声で笑っている。
このままやられっぱなしでたまるか。
みずタイプにはでんきタイプだ。
「ピカチュウ、君に決めた!」
「ピカチュウ!」
「ピカチュウ『10まんボルト』!」
ボールから現れたピカチュウがゼニガメたちを睨むと思いっきり放電した。
すると1体のゼニガメがリーダーのゼニガメの前に出て『10まんボルト』を浴びた。
電撃で痺れたゼニガメはそのまま倒れ伏した。
効果抜群だというのに身を呈して庇うとは、リーダーのゼニガメはそこまで慕われているということか。
ゼニガメたちは倒れたゼニガメを抱き上げるとそのまま全速力で逃走した。
「あ、こら待て!」
と言った時には森の向こうへと消えた。
ゼニガメってあんなに足速かったっけ?
呆然と逃げるゼニガメたちを眺めていると後ろからエンジン音が近づいてくることに気づいた。
「あなたたち大丈夫?」
見覚えのある婦警さんのジュンサーさんだ。
「あ、ジュンサーさん」
***
俺たちはジュンサーさんに案内され、町の交番に訪れていた。
「彼等はゼニガメ団っていうの。とは言っても便宜上この町の人たちが付けたんだけどね」
ゼニガメたちだけで構成されているからゼニガメ団か。
というよりそもそも同じ種族の野生のポケモンが群れを成すのはよくあることだ。
それをわざわざ『団』を付けて組織のように扱うとはどういうことだ?
「彼らは人間に捨てられたポケモンたちなの」
「またか……」
どこでも似たような話はあるみたいだな。
こんな話を聞くとやるせない気持ちになる。リカとカスミも同様の気持ちなのか悲しそうな顔になっていた。
「そのせいか、町の人や旅の人にいつも悪戯ばかりしているの」
俺たちにしたことも悪戯の一環ということか。
まさかポケモンに落とし穴に嵌められる日が来るとは思わなかった。
「ジュンサーさん、またゼニガメ団だ!」
交番に数人の大人が飛び込んできた。
また現れたのかゼニガメ団。
「わかりました。すぐに行きます」
ジュンサーさんが出動の準備を始めた。
「君たちもしかしてゼニガメ団に何かされたのかい?」
俺たちが手持ち無沙汰に町の人の人の様子を見ていると声をかけられた。
「ええまあ」
「あいつらは町の面汚しだ。早く捕まえてとっちめてやらないと」
町の人は苦々しい顔でゼニガメ団に対して悪態をついていた。
やっぱり散々いたずらを繰り返したことで町の人たちにはゼニガメへの敵意が芽生えてしまっているんだな。
ジュンサーさんが準備を終えると、町の人たちと一緒に交番を出発した。
残された俺たちは顔を見合わせる。
「サトシどうするの?」
初めて訪れた町で部外者の俺たちが口出ししていいものかわからない。この町をスルーしてとっとと次の町を目指すのが無難なのかもしれない。
しかし、このままゼニガメ団をほったらかしたままというのはどうにも俺たちの中に後味の悪いものが残りそうな気もする。
だったら、
「どうにかしてあのゼニガメ団たちに悪戯をやめさせよう」
ポケモンには人間を憎んだままでいてほしくない。
ゼニガメ団には人間を信じてもらい、悪戯をやめて人間と仲良くしてもらいたい。
それに町の人たちからもゼニガメへの敵意を取り除きたい。
「でも、どうやって?」
「……とにかく説得する」
「……はぁ、特にこれといったアイデアは無いのね」
「あはは……でも、まずは話さないとだよね」
カスミが呆れ、リカがフォローしてくれる。
申し訳ないが今はこれしか思いつかんのだよ。
ただ、説得する前にゼニガメ団を見つけないと始まらないけどな。
***
「わかってはいたが、簡単には見つからないな」
「それに見つけても、あのゼニガメたちすばしっこいから逃げられちゃうんじゃないかな」
俺たちは町の近くの森や川を捜索している。
そもそもポケモンはこういった自然が多い場所に生息するからだ。
ゼニガメ団は町に出没しているようだが、住処はおそらくこのあたり一帯のどこかだとにらんだ。
とは言ってもこの広い森を探すのは至難の業なのだが。
「こうなったら奥の手よ」
「「?」」
強く言い放つカスミに俺たちは視線を向けた。
「私には鍛えられた水ポケモンセンサーがあるのよ。これがあれば水ポケモンなんてすぐ見つかるわ!!」
いやいや、あるわけないでしょ、そんなの初耳だし、あったらカスミはもっとたくさん水ポケモン見つけているだろ。
リカも隣で苦笑いしてるし。
「むむむ……」
カスミは頭に両手の人指し指を添えて、何やら念じる動作をする。
「むむ、来た、あっちよ!!」
カスミはカッと目を見開くと、茂みの一つを指さした。
そんなことで見つかるわけが――
「ゼニ?」
茂みからひょっこり顔を出したのは尖ったサングラスのリーダーゼニガメだ。
「やっぱり、いたわ!」
「「うそぉ!!?」」
俺たちに気づいたゼニガメは一目散に逃げ出した。
「ゼニゼニー!!」
呆然としている場合じゃない、追いかけないと。
「待てゼニガメエエ!!」
俺たちはゼニガメを追いかけて猛ダッシュした。しかし、ゼニガメもまた二本の足で猛スピードで逃げていた。
だからなんで亀がこんなに足が速いんだよ!
こうなったら――加速!!
「うおおおおおお!!!」
俺は全身の筋肉を爆発させるかの如く力を込めて一気に加速した。
『こうそくいどう』にも匹敵する俺流加速術でゼニガメまで一気に詰め寄った。
「よし、捕え――」
俺が腕を伸ばしたその時、
「ゼニガ!」
ゼニガメが頭と手足を甲羅に引っ込めて地面を滑る。ゼニガメもまた加速したのだ。
俺は勢い余ってバランスを崩して前に倒れそうになる。
そして、前方に現れる複数の影――
――ゼニガメ団だ。
「「「「「ゼェニュウウウウウウ!!!!!」」」」」
ゼニガメ団の『みずでっぽう』が俺に襲い掛かる。
俺の体に向かって直線状に放出された水流、つまり、当たらない場所が存在する。
それは下だ。
俺は前に転ぶ勢いに任せて地面に倒れこむ。
そのまま全身を一回転させる。
これで『みずでっぽう』を回避したぜ!
「え、ひゃあ!!」
「な、きゃあ!!」
「あ」
リカとカスミの悲鳴が聞こえた。
ゼニガメ団の『みずでっぽう』はちょうど追いついて来た彼女たちに直撃してしまったようだ。
ゼニガメ団は高笑いすると逃げてしまった。
「うええびしょびしょだよぉ……」
「もうこないだ雨に濡れたばっかりなのにー!」
落ち込むリカと憤慨するカスミ。
なんかごめんなさい。
「着替えてくるから向こうの茂みに行くね」
「覗いちゃダメよ!」
「おう、わかってる」
ジュンサーさんに怒られたくないからな。
「「むぅ……」」
俺が答えるとなぜか不満げな表情になったカスミとリカが茂みの奥に行った。
***
「急がないとゼニガメたちが遠くに行っちゃう」
「そうね。まったく、いくら可愛い水ポケモンでも悪質ないたずらばかりするならお仕置きなんだから」
リカとカスミは上下の衣服を脱ぐと下着姿になる。
あらかじめバッグから出していた着替えに手を伸ばしたその時。
「あれ、着替えは?」
「リカどうしたの? あれ、私の着替えが!?」
2人の着替えがいつの間にかなくなっていたのだ。
しかし、すぐに見つけることができた。
「「ゼニゼニ~」」
「「あ、ゼニガメ!!」」
2体の丸いサングラスのゼニガメがリカとカスミの着替えを見せつけるように持って笑っていた。
ちなみにこの2体のゼニガメはメスである。
驚く2人に背を向けたゼニガメたちはそのまま走って行った。
「「ああ! 待ちなさい(待ってよー)!!」」
逃げるゼニガメたち追いかけるリカとカスミ。走ったことで揺れる胸元を気にしていない2人は今の自分たちの格好がすっかり頭から抜けているのであった。
***
リカとカスミの声が聞こえた。茂みの奥で何かあったのか?
2人の元に向かおうとしたその時、
「ゼニゼニ」
「あ、ゼニガメ!」
茂みの奥から丸いサングラスの2体のゼニガメが現れた。
リカとカスミがいる方向から来たということは、こいつら2人に何かしたのか?
「ゼニー!」
一瞬思考しているとゼニガメたちが俺に向かって来る。
この距離ではボールは間に合わない、自分で応戦するしかないと思い両腕を構えると2体のゼニガメが大量の布らしき物を投げる。
視界が遮られ、反射的にその布を両手で掴む。
ゼニガメたちはその場から消えていた。
嘆息し、ふと手に取った布を見る。
「なんだこれ?」
どこかで見たような気もするけど――
「「待てー!!」」
リカとカスミの声がした。やはり何かされてたのか、そう思い顔を上げる。
「へ?」
「「あ」」
走ってきたリカとカスミは下着姿だった。
2人とも普段は服で隠れている立派な胸元が可愛いブラに包まれている。
くびれから臀部にかけての曲線もとても綺麗だ。
顔を真っ赤にするカスミとリカ。
俺の手にある2人の服を手渡した。
なんとか冷静になろうと頑張った。あと覚悟も決めた。
「あ、えと、もしかしてこれはお二人のお洋服でございますか? ど、どうぞお返ししま――」
「「み、見ないでぇえええ!!」」
2人は真っ赤な顔で俺にバッグを投擲した。
カスミとリカの『なげつける』、サトシに効果抜群だ!!
サトシは目の前が真っ暗になった。
「ご、ごめんなさいサトシ」
「本当にごめんね、まだ痛む?」
着替えを終えた2人は俺に謝って、心配してくれていた。
「いやいや平気だよ、2人こそ大変だったな」
こちらこそ申し訳ございません。脳内にあの衝撃の光景がバッチリ残ってしまいましたもので。
どうにかして消去するように努めますのでご容赦ください。
なんというかこういうラノベのお約束のような展開もなかなか悪くないよなあ、へへへ……
「サ、サトシ、本当に大丈夫なの?」
「やっぱり打ちどころが悪かったんじゃ……」
「あ、いやあ大丈夫だって。ほら、とにかく今はゼニガメ団だろ。さあ、行こうぜ」
こんなところで足止めするわけにもいかないしこの話は終わり。
納得してくれたのか微妙だがリカとカスミもゼニガメ団探しを再開した。
それにしても2人は10代とは思えない素晴らしいおもちをお持ち――ハッいかんいかん消去、消去だ!
……うーんでもやっぱり。
しばらく悶々とした葛藤が続くのであった。
***
散々いたずらを楽しんだゼニガメ団たちは隠れ家に戻るために森の中を歩いていた。
そこにいるのは4人でリーダーのゼニガメはいない。彼は今、別の場所で食料の調達をしていた。
4人はリーダーに「先に戻って休んでいろ」と言われていた。
今日はこの4人が特にいたずらを頑張っていたため、リーダーとしての労いの気持ちだった。
そうやって仲間を気遣えるポケモンだからこそ他のゼニガメたちは彼をリーダーとして信頼していた。
「ゼニ!」
1人のゼニガメが声を上げると他のゼニガメたちも反応した。
声を上げたゼニガメは一本の木を指さしていた。
みんなつられてその木を見ると、そこには一個の木の実が生っている。
それは『チイラのみ』と呼ばれる木の実だった。
とても美味しいが、一度に僅かしか実にならず希少価値が高いきのみだ。
ゼニガメたちは貴重な木の実の発見に小躍りした。
これを持って帰ればリーダーも喜んでくれると皆同じ気持ちで頷いた。
そして、木からチイラのみを落とそうと、一斉に『みずでっぽう』を発射した。
しかし、4体の『みずでっぽう』はチイラのみに当たらなかった。
ゼニガメたちが『みずでっぽう』を発射した直線上にスピアーの大群が通りかかったのだ。
『みずでっぽう』はスピアーたちに直撃した。
思わぬ出来事に驚くゼニガメ団。
全身を濡らしたスピアーたちは攻撃されたと思い、怒りの表情でゼニガメ団を睨みつけた。
ゼニガメたちは怒れるスピアーの気迫に当てられたのか体が竦み、少し後ずさるだけで精一杯だった。
スピアーの大群は目をぎらつかせると、一斉にゼニガメたちに襲い掛かった。
リーダーのゼニガメは悲鳴を聞いた。
それは聞き覚えのある声、仲間たちの声だ。ただならぬことが起こったと思い、リーダーのゼニガメは急いだ。
***
「今の声は……」
「ゼニガメ団だわ」
「あっちの方から聞こえたよ」
「何かあったのかもしれない、急ごう」
森の奥から聞こえた複数の悲鳴、ただならぬ状況であることがさっせられたため、俺たちはその悲鳴の元まで向かうことにした。
「つっても正確な場所がわからないよな」
行くのはいいがそこがネックだ。
「私に任せて、お願い『バタフリー』!」
「フリィフリィ!」
リカの投げたモンスターボールからバタフリーが現れる。
なるほど飛行能力があるポケモンなら空から探せるな。
「バタフリー、ゼニガメ団を探して、何か困ったことになってるかもしれないから」
「フリッ!」
しばらくするとバタフリーが戻ってきた。
「見つけたの?」
「フリィ!」
「みんな行こう!」
「「ああ(ええ)」」
俺たちはリカを先頭に飛行するバタフリーを追いかける。
バタフリーが連れてきてくれた場所には案の定ゼニガメ団がいた。
しかし、丸いサングラスの子分のゼニガメ4体は苦しそうに倒れ、リーダーの尖ったサングラスのゼニガメはパニックになっているのか、子分たちを揺すりながら必死に声をかけていた。
「おい、どうしたんだ!!」
「大変、みんな毒を浴びてるわ」
「は、早く治さないと」
「あ、どくけしが無い、モモンの実もだ!」
「わ、私も無いよ!」
「もう、こんな時に使い切ってるなんて!」
このあたりにモモンの実の木も無さそうだ。
「仕方ない、ゼニガメたちをポケモンセンターに連れて行こう」
「「ええ(うん)!」」
俺たちがゼニガメたちを抱き上げようとしたとき、リーダーのゼニガメが慌てて彼等を守ろうと俺たちを阻んだ。
必死で仲間を守ろうとしているのがわかる。
「ゼ、ゼニゼニ!!」
そうか、人間に捨てられたゼニガメにすれば、俺たちを信用するなんて無理な話だよな。
だけど、彼らをこのままにしてはおけない。
俺は膝をついてゼニガメとなるべく視線を合わせようとして話しかける。
「なあゼニガメ、俺たちはお前の仲間たちを助けたいだけなんだ」
「ゼニガ……」
「お前たちを捨てた人間のことなんか信用したくない気持ちはわかる。だけどこのままだとゼニガメたちの命が危ない。だから、俺たちに任せてくれないか?」
俺なりにゼニガメに気持ちを伝えたつもりだ。
彼が俺を信じてくれるかが問題だが。
「ゼニ!」
リーダーのゼニガメは俺の目を見て強く頷いて臨戦態勢を解いてくれた。
俺はカスミとリカに振り返り目で合図すると彼女たちは頷く。
倒れているゼニガメのうち、2人は俺が抱え、カスミとリカは1人ずつ抱えていくことになった。
森から町まで俺たちは走って行った。後ろからはリーダーのゼニガメが着いてきた。
町に到着した。
すると、町の大人たちが集まっていた。
そのうち1人が俺たちに気づいた。
「む、君たちは?」
「そいつらはゼニガメ団か!?」
「ええ、そうですけど」
俺たちを見て町の人たちは色めき立つ。
「そうか、君たちがこらしめてくれたのか、いやあ助かったよ」
この人たちにはそんな風に見えたか。
「違うんです。この子たち野生のポケモンに襲われて毒を浴びてしまったんです。だから、今からポケモンセンターに――」
俺がそう言うと町の人たちは皆怪訝な顔をした。
「何を言っているんだ。そいつらのせいでこの町がどれだけ迷惑を受けたことか。そんな奴らを助ける義理なんかない!」
俺たちが手に抱くゼニガメたちに冷たい目線を送りながら町の人たちは「そうだそうだ」と言い放つ。
なんだよそれ、ゼニガメたちは苦しんでいるんだぞ!
「そ、そんな、いくら悪戯を繰り返したからって、こんなに苦しんでいるのに助けないなんてあんまりです!!」
リカがゼニガメをギュッと抱きながら訴える。
しかし、町の人の態度は変わらない。
「苦しんでいるのはそいつらの自業自得だ! ともかく、そいつらをポケモンセンターに連れて行くなんぞ認めん!!」
「じゃあこのまま毒で苦しみ続けろっていうの!?」
全員で俺たちを通すまいと立ちふさがる町の人たちにカスミが言い放つ。
「そうだ、それがゼニガメ団への罰だ」
今まで散々な目に遭わされて怒りがある気持ちはわかる。だからと言ってこんなに苦しんでいるポケモンをそのままにするなんて俺は認めたくない。
最悪力づくでこの場を切り開くつもりで俺は覚悟を決めたその時、
「待って!」
俺たちの後ろから聞こえる声に振り返るとそこにいたのはポケモンを癒やす白衣の天使だ。
「「「ジョーイさん?」」」
ジョーイさんは決意を込めた目で町の人たちに向き合っていた。
「そのゼニガメたちはポケモンセンターで預かります」
「な、なにを言うんだねジョーイさん、そいつらは町に迷惑を――」
「たとえそうでも苦しんでいるポケモンがいるなら治療して健康な体にしてあげるのがポケモンセンターの役目です」
ジョーイさんははっきりとした口調でたくさんの大人たちに言い放つ。
その勇ましい姿は白衣の天使から白衣を纏った戦乙女にも見えてとても美しい。
「なな、そ、そんなこと私たちが許さん――」
「では私が許します」
現れたのは町を人をポケモンを守る婦警さんだ。
「「「ジュンサーさん!!」」」
「病気で倒れているポケモンをポケモンセンターに連れていって治療させるのは法で定められた人間の義務です。それを阻むというなら、私が法に則って対応させていただきます」
美しい声と意志のこもった眼で町の人たちを威圧する勇者のごとき姿勢に思わず見惚れる。
ジュンサーさんに断言された町の大人たちはもはや何も言えずに萎縮して大人しく道を開けるしかなかった。
「さあ、ポケモンセンターに行きましょう」
「「「はい!!!」」」
ジョーイさんの優しい言葉に俺たちは暖かい気持ちで頷き彼女の後に続いた。
***
町長はバーで酒をあおりながら苛立っていた。
「くそう! ゼニガメ団め、あんな連中をのさばらすなんぞ許せないというのに!」
町長は汚点であるゼニガメ団を成敗できなかったことに憤慨した。
どうにかしてあの厄介なポケモンたちを追い出さねばならない。
そう思い思案していると、近く人影があった。
「もしもしそこのお方」
「なにやらお困りのようですな」
「ニャーたちが聞いてあげてもいいニャ」
町長は怪訝な顔をしながらも話だけは聞こうと思い彼らを招いた。
***
ポケモンセンターの回復装置の中でジョーイさんの治療を受けている4体のゼニガメたちをリーダーのゼニガメは心配そうに見つめていた。
「安心しろよゼニガメ、ジョーイさんに任せておけばきっとあいつらは元気になるよ」
ゼニガメは俺を見上げると小さく頷く。
ジョーイさんの懸命な治療の結果、4体のゼニガメたちは全快した。
そこまで酷い毒では無かったため治療時間も1時間もかからなかった。
俺とリカとカスミ、ジョーイさんとジュンサーさんはポケモンセンターの扉の前にいた。
「ゼニゼニー!」
「「「「ゼニゼニー!!!!」」」」
ゼニガメたちは互いに抱き合って喜びを分かち合ってる。
「良かったなみんな元気になって」
「「「「「ゼニゼニ!!!」」」」」
ゼニガメ団は俺たちに向かってお辞儀をした。
「ゼニガメたち、みんな町の人たちに謝ろう」
そう言うと疑問を浮かべるゼニガメに俺は続ける。
「君たちは人間を恨んでいるだろうけど、それがこの町の人たちを困らせていい理由にはならない。今までのことを謝って、簡単には許してもらえないかもしれない。だけど、自分たちが反省していることをこの町の人たちに示さないといけないんだ」
ゼニガメ団が互いに顔を見合わせて考え込んだ。しかし、すぐに答えは出たようで決意のこもった顔で俺に頷いた。
「しっかりと誠意を込めてごめんなさいするのよ」
「キチンと謝ればみんなわかってくれるはずだよ」
「そうね、この町の人たちは決して悪い人じゃないから」
「ええ、それからあなたたちの謝罪が受け入れられたら、反省のために町の奉仕活動をするのはどうかしら。一生懸命に頑張ればもう誰もあなたたちを邪険にしないはずよ」
「「「「「ゼニゼニガ!」」」」」
カスミ、リカ、ジョーイさんの励ましとジュンサーさんの提案に元気に頷くゼニガメ団。
彼らが頑張ればあとは何とかなりそうだと思った時だ。
大勢の足音がこちらに向かってきているのが聞こえた。
町長を中心とした町の人たち凡そ30人がポケモンセンターに集まってきた。
皆顔を引き締めている様子からゼニガメ団を追い払う準備をしているのがわかる。
ゼニガメ団を見ると真剣な顔で町の人たちを見ている。覚悟は決まっているようだな。
俺はリカとカスミに目で合図を送る。
「あの、町の皆さんにゼニガメたちからお話が――」
「さあ先生方、やってください!!」
俺の言葉を遮った町長が叫ぶ。
人垣が割れてそこから現れたのは『R』の文字の入った制服を着た人間の男女2人と1体のニャース。
「な、なんだ!?」
「なんだかんだと――」
(省略
「「「ロケット団!!!?」」」
「この町で何をやってるんだ!!」
「何って人助けよ」
「人助け? あんたたちが?」
「そうだ、この町の平和を脅かすゼニガメ団とかいう悪いポケモンたちを駆除するという仕事さ」
「ここにいる町長直々に頼まれたのニャ」
その言葉にジョーイさんが困惑する。
「そ、そんな、ゼニガメたちは町の皆さんに今までのことを謝ろうとしてるんですよ!」
「何が謝罪だ、そんな奴らが謝るなんてできるはずがないだろうが! ゼニガメ団にはこの町から消えてもらう!!」
町長は憤怒の感情を隠そうともせずにゼニガメ団を睨みつける。
「待ちなさい、そんな横暴認められないわ!」
「黙れ、役立たずの警察にはもう用はない!!」
ジュンサーさんの反論にも町長以下町人とロケット団は聞く耳を持たない。
「「というわけで、ゼニガメ団覚悟!!」」
雇われたというロケット団は拳銃のような武器を取り出した。
「んな、あんな武器なんてありかよ!!」
ポケモン相手にあんな危険な武器を使う気か!
「ゼニガメたち逃げて!!」
「対ポケモン用特性銃よ」
「ははは、これでゼニガメ団は木端微塵だぜ!!」
ロケット団が拳銃を向けるとゼニガメ団たちは驚愕を浮かべて動かなくなる。
あんなのを撃たれたらゼニガメたちは……そんなこと――
「さあせるかああああああ!!!」
俺は地面を蹴り上げロケット団の2人に突進した。
火事場の馬鹿力というのか一歩で最高速度に達した俺はロケット団の2人、ムサシとコジロウの銃を構える腕を捻りあげる。
「んな、ジャリボーイ!?」
「こんのぉ邪魔しないでよ!」
「「サトシ!!?」」
カスミとリカの声が聞こえた。
俺のことはいい、今は2人に頼みたい。
「ゼニガメたちを連れて逃げろぉ!!」
リカとカスミは頷くとゼニガメたちを連れてこの場から逃げる。
「そらあ、町の威信にかけてゼニガメ団を成敗するぞお!!」
「ま、待ってくださ――」
「こら、やめなさ――」
ジョーイさんとジュンサーさんの制止の声にも誰も耳を傾けずにゼニガメ団を追いかけてしまった。ジョーイさんとジュンサーさんは人波にのまれながらも懸命にみんなを止めようとしている。
「おお、助かるぜ町のみんな!」
「あ、町の者がゼニガメ団を仕留めたらギャラは半分にするから」
「「なぁにぃ!!」」
町長がボソリと言うとロケット団の2人は町長の言葉に血相を変えて予想外の動きと力で俺の拘束から抜け出した。
思わぬ素早い動きに俺も反応が遅れて気がついたらムサシとコジロウは俺の後ろを走っていた。
「あ、待てロケット団!!」
「お前に構ってる暇はないんだよ!!」
「ギャラ半分なんて冗談じゃないわ! なんとしてもゼニガメ団は私たちロケット団が仕留めるのよ!!」
走り去っていくロケット団、そして町の人たち。
このままゼニガメ団を傷つけさせるわけにはいかない、なんとしても彼らを守る。
俺はみんなを追って行った。
***
リカとカスミはゼニガメ団と一緒に走って町を出ていた。
「逃げるったってどうするの!?」
「とにかく今は落ち着いて隠れられる場所に行かないと!」
「そうね、ひとまず森まで逃げましょう!」
「なにか飛んでる!?」
空を見上げたカスミとリカが目撃したのは大きなニャースの首、その正体はロケット団の気球だった。
「「なーははははは!!!」」
ロケット団の笑い声がすると、何かが気球から落ちてきた。
それは複数の黒色の球体だ。しかも、一部分が赤い、否、火がともっている。
その正体に気づいたリカとカスミは背筋が凍る。
「みんな避けてえええええっ!!!」
轟音と爆発。発生した爆風と熱と煙がカスミとリカとゼニガメ団を襲う。
反応が速かったお蔭か、リカたちに怪我は無い。
「爆弾なんてあいつら正気!?」
「危ないよ、下手したら死んじゃうじゃない!!」
「ははは、安心しろ。爆発はするが殺傷能力は低めだ。せいぜい強い衝撃と熱があるくらいさ!」
「さっそくギャラ、もといゼニガメ団を発見よ」
「そらそら、どんどん投下だニャ」
ロケット団はゼニガメ団を狙って次々と爆弾を落としていく。外れた爆弾が森の木々に当たり爆発していく。
「よぉし、このお手製爆弾を使えば、ゼニガメ団も今度こそ木端微塵だ」
「ほほほ、私たちの美しい手際こそ芸術、芸術は爆発よお!!」
ムサシ、コジロウ、ニャースは爆弾を大量に取り出し、落下させる準備を整える。
「ほほほ、さあとどめ……はっはっハックション!!!」
狙いを定めたところでムサシはくしゃみをしてしまった。その勢いで彼女の手に持った爆弾が滑り落ちた。
「「「あ」」」
つまり爆弾は気球内で落ちることを意味し、爆発した。
「いいところだったのにー!」
「また俺たちは決まらないのかー!」
「ここまで来ると慣れてきたニャー」
「「「やな感じー!!!」」」
ロケット団は自滅して飛んでいってしまった。
「助かった……のかな?」
「そうね、あとは町の人たちを説得すれば――え?」
最初に異常事態に気づいたのはカスミだった。
まず感じたのは気温の上昇、走ったとはいえ異常なほどの熱を感じていた。
森を見渡すと、あちこちが燃えていた。
ロケット団が無差別に落とした爆弾は僅かな火でありながら大量に落としたことにより燃え広がってしまった。
森は瞬く間に赤い炎に包まれる。
「な、森が!」
リカもゼニガメ団も森が焼けようとしていることに気づき驚愕する。
「な、なんだこれは!?」
次いでゼニガメ団を追って来た町長を中心とした町の人間たちもこの異常事態を把握してしまった。
町の一部である森が燃える、そこに住むポケモンたちにも被害が及ぶ。
「水だ、水を持って来るんだ!」
「急げ、速く火を消すんだ!」
町長の言葉を号令に町の人間たちが動く。実はこの町の人間は水タイプのポケモンを所持していなかった。タイミングの悪いことだが今は嘆いていても仕方がない。町に戻り水を汲んできて火を消さなければ、森が取り返しのつかないことになる。そう思いみんなが活動する。
「リカー、カスミー、ゼニガメだーん!」
そんな時、町の人間たちとロケット団を追って来たサトシがリカとカスミに合流する。
「「サトシ!!」」
「どうやらロケット団どころじゃないみたいだな、火を消すぞ!」
「ええっ!」
「うん!」
「ニドリーノ『みずのはどう』だ!」
「ニドラン『みずのはどう』!」
「ヒトデマン『バブルこうせん』、スターミー、トサキント『みずのはどう』!!」
「ニドォ!」
「ニン!」
「ヘア!」
「ハッ!」
「トサキ~ン!」
サトシたちが自分のポケモンたちを出して消火活動に当たる。
5体の水タイプの技により、火は消えていく。しかし、火はそれ以上に強かった。
消してもまた火は範囲を拡大させていく。
町の人間が水を汲んできたが大した援護にはならない。
「くそ、火の勢いが強すぎる!」
「このままじゃどんどん焼けちゃうよ!」
「どうしたら……」
自分のポケモンたちだけではここまでが限界であると知り悔しがる3人。
「そうだ、ゼニガメたち、力を貸してくれ!!」
「「「「「ゼニ?」」」」」
水タイプのポケモンはまだいた。
ゼニガメ団の力があれば、どうにかできるかもしれない。
「みんなの水技で森の火を消してくれ、君たちだけが頼りなんだ!!」
サトシの言葉にゼニガメ団は強く頷く。
「「「「「ゼニゼニ!」」」」」
ゼニガメ団たち5体は水技を放つサトシたちのポケモンに並び、思いっきり息を吸い込む。
「「「「「ゼェニュウウウウウウ!!!!!」」」」」
大量の『みずでっぽう』が発射された。
それは膨大な水流となって、燃えている木々を次々と鎮火していく。
サトシのポケモンたちも負けじと力を振り絞って鎮火に努める。
火はどんどん消えて行った。
そして数分後、どこにも火は見当たらなくなった。
「「やったあ!!」」
「火が消えたぜ!!」
カスミとリカが互いの両手を握って跳びあがり、サトシはガッツポーズをした。
「みんなよくやった!」
サトシたちのポケモン、そしてゼニガメ団が嬉しそうに鳴いて喜びを表す。
すると、後ろにいた町の人間たちの大歓声が森を包み込んだ。
そこには敵意も悪意も存在せず、功労者を称える気持ちだけが満ちていた。
***
ゼニガメたちが整列して町の人たちに頭を下げた。
今までの悪戯の謝罪をこめた彼らの誠意だ。
ゼニガメ団は頭を下げたまま動かない。
すると、町長がゼニガメ団の前に立った。
「ゼニガメ団、頭をあげてほしい。その、こちらこそ済まなかった。人間に捨てられた君たちの気持ちをわかろうとしなかった。思い返せば、始めてこの町に訪れた君たちを私たちは気にせず放っておいたのだ。あの時君たちに手を差し伸べられなかった私たちが悪かったのだ。許してくれ」
町長は悲痛さと申し訳なさを顔に浮かべてゼニガメ団に頭を下げた。
ゼニガメ団は下げていた頭を上げる。
「ゼニ……」
「そして、ありがとう。君たちのおかげで森が焼けずに済んだ。本当に感謝する」
町長がゼニガメ団に目線を合わせると、リーダーのゼニガメに歩み寄り手を差し出した。
その手をゼニガメは掴んだ。
町の人たちから歓声と拍手が起こる。
ジョーイさんもジュンサーさんも俺たちも自然と笑顔になり拍手していた。
すると、ジュンサーさんが町長とゼニガメ団に歩み寄った。
「提案なんですが、彼等に消防団になってもらっては?」
「消防団?」
「ここら一帯は水ポケモンが少ないですし、彼等の力があれば安心だと思います」
確かに、さっきの事態になったとき町の人たちは水ポケモンがいないために鎮火に手間取っていた。もしゼニガメ団が消防団になってくれればそれも解決するだろう。
「どうだろうゼニガメたち?」
町長が恐る恐るゼニガメ団に尋ねるとゼニガメ団はニヤリと笑う。
「「「「「ゼニゼニィ!!!!!」」」」」
みんな「任せろ!」とばかりに強く頷いた。
またも湧き上がる大歓声。人とポケモンが手を取り合って生きようとする姿に俺は胸に歓喜が沸き上がった。それはきっとリカとカスミも同じなのだろう。瞳を潤ませていた。
***
町の人たちから感謝された俺たちは彼らに見送られて町を出た。
一番近いクチバシティを目指さなければと自然と歩行が速くなる。
ちなみに俺の足元ではピカチュウが歩いている。心なしか落ち込んでいるようにも見える。耳も垂れているし。
「どうしたのピカチュウ?」
リカが尋ねると、ピカチュウは弱弱しく「ピカ……」と答えた。なんとなくだが「今日、僕ほとんど活躍しなかった」と言っているように聞こえた。なんとなくだけど。
「待ってー!」
その時、後ろから声をかけられた。
「ゼニィ!」
「ジュンサーさん、とゼニガメ?」
2人は全速力で走ってきたのか、息を切らしていた。
激しく動くミニスカから伸びる脚も美しいですし、走って体温が上がった影響で頬が赤くなるのも色っぽいですし、「はぁはぁ」と荒くなる呼吸も艶っぽいです、じゃなくて、なんで追ってきたんですか?
「それが、この子がね……」
「ゼニ!」
尖ったサングラスのリーダーのゼニガメが俺の足元に来て、俺を見上げて手をあげた。
これはデジャヴ、オツキミ山でリカがピッピをゲットしたときのような――
「もしかしてサトシのポケモンになりたいの?」
「ゼニガ!」
リカの言葉にゼニガメは頷く。
「ゼニガメ団はどうするの?」
「あの子たちも了承しているわ。あとはあなたさえよければなんだけど」
カスミの疑問にジュンサーさんは答え、俺に確認した。
「ゼニィ……」
ゼニガメはサングラスを取ると、つぶらな瞳で俺を見つめていた。
うん、可愛い。
「わかった、一緒に行こうぜゼニガメ!」
俺はモンスターボールを取り出してゼニガメ向ける。
「ゼニー!」
ゼニガメは満面の笑みでボールに飛び込んできた。ボールが開きゼニガメを吸い込む。揺れはすぐに収まる。
「ゼニガメ、ゲットだぜ!」
「ピ、ピカチュウ!」
ピカチュウも喜んでくれた。
こうして仲間が増えていくの本当に嬉しい。次はどんなポケモンが仲間になるのか本当に楽しみだぜ!
今回はお色気描写が多めかもですね。
ロケット団って普通に銃刀法違反で、町の人たちは公務執行妨害ですよね。
活動報告でご意見を募集しています。
よろしければご一読ください。