サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題)   作:エキバン

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前回から間が空いて申し訳ないです。


超電撃バトル クチバジム

隠れ里でフシギダネを新たな仲間にした俺たちは再びクチバシティを目指し旅を続けていた。

そして目的のクチバシティを目前に思わぬ人物と出会った。

 

「こんなとこで再会するなんて思わなかったぜ」

 

「俺もだ。こうして会えて良かった。サトシたちの旅も順調そうで何よりだ」

 

ニビジムのジムリーダーの青年のタケシ、彼はジムを父親に任せて一流のポケモンブリーダーになるための旅をしている。

いつかまた会おうといい、ハナダシティで再会してまたこうして早い再会になるとはさすがに驚く。

 

そんなタケシは昼食の用意をしている。コンロに火を点け鍋をお玉でゆっくりかき混ぜる姿はまんま主婦だ。他にもテーブルの上にはすでにサラダやトーストなどいくつか並んでいる。

タケシのかき混ぜる鍋からはとても良い匂いがしていた。

 

「全部俺だけでできるからサトシは向こうでみんなと話してくればいい」

 

「いやこうして見ているのも楽しいよ、それに……あの空間に入る勇気は俺にはないんだ……」

 

俺の視線の先にはリカとカスミがいる。彼女たちは楽しそうに話をしている。そこにはタケシと一緒に旅をしているショートの赤い髪にシャツとハーフパンツを履いた美女のマナミさん、そして、今日初めて会った女性がいた。

要するにタケシと旅をしているお姉さんが増えてるということだ。

 

その女性はヒナコさんといい、物静かで長い黒髪で片目が隠れてどこかミステリアスな美女だ。

タケシめ、こんな美女を捕まえるとはけしからん!

 

リカとカスミ、マナミさんとヒナコさん、美少女と美女の語らいはずっと見ていたいほど麗しい光景だ。

間に入る勇気も無いが、あれを壊したく無いとも思う。眼福眼福。

 

それはさて置きなぜタケシたちといるかというと、タケシ一行も目的地が同じクチバシティということでこれから一緒に行こうとなったからだ。

 

一休みついでのお昼ご飯。シェフはタケシ、アシスタントは俺、とは言ってもほとんど何もしてないのだが。

 

そうしてタケシの周りをチョロチョロしている間にタケシが「よし」と言い鍋の火を止めた。

 

「さあ、特性シチューの出来上がり!」

 

タケシは出来上がったシチューを器に盛り、机に並べていく。

料理が全て並べられ、俺たち6人はそれぞれの席に着く。6人テーブルで俺を真ん中にリカとカスミが左右に座り、俺の向かいにタケシが座り、左右にマナミさんとヒナコさんが座っている。

 

器に盛られた真っ白なクリームシチュー、その白いクリームは輝きゴロゴロと転がる大きな野菜やお肉は白の海の中で彩りを与えてくれる。

さらに鼻腔をくすぐる香りが食欲をそそる。

 

「「「美味しそう!」」」

 

俺たちはシチューを見て思わず口にした。

タケシが手を合わせると俺たちも手を合わせる。

そしてタケシが口を開く。

 

「それでは皆さん、いただきます」

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

木で出来たスプーンで真っ白なシチューを掬う。俺はクリームに浸かるお肉と人参を口に運んだ。

 

「うわ、ウマッ! なんだこれ!」

 

クリームのまろやかさが舌を優しく包み込み、噛むと肉汁が溢れ、人参のほぐれた食感とともに甘みが広がる。

 

「お、美味しい!」

 

「ホント絶品よこれ!」

 

リカもカスミも目を見開き次々とシチューを口に運んでいく。食すたびに頬は緩み、うっとりした幸せそうな顔になる。

 

「タケシ君ほんとに料理上手よね〜」

 

「……美味しい、タケシ君、お婿さんに欲しい……」

 

間延びした声で言うマナミさんと、静かな声で嬉しそうに言うヒナコさんはタケシに熱のこもった視線を送る。

 

「いや、そんなあははは、自分は皆さんに喜んで頂きたいだけですよ」

 

タケシは鼻の下を伸ばして美女2人の賞賛に喜びデレデレと幸せそうな顔をしていた。

もう何も言うまい。

 

「タケシ君あ〜ん」

 

マナミさんが自分のスプーンでシチューを掬ってタケシの口に運ぶ。

 

「えぇ良いのですか? それではあ〜ん」

 

タケシはニヤニヤとしてマナミさんのシチューをいただいた。「むふふふ」と笑いながら嬉しそうに咀嚼した。

 

「……タケシ君こっちも……あ〜ん」

 

「はい、いただきます!」

 

ヒナコさんもシチューを掬ってタケシに差し上げた。タケシは素早く口を開けて再び口に含み咀嚼。この世の幸せすべてを味わっているとばかりに目元は緩み口角はつり上がっている。

それを見たマナミさんもヒナコさんも笑顔で嬉しそうだ。

 

おいおい人が見てる前で惚気なんてひどいぞタケシくん。

不意に俺の肩が叩かれる。

 

「ん?」

 

「サ、サトシあ〜ん!」

 

振り返ると顔を真っ赤にしたリカが自分のスプーンでシチューを掬って俺の口に近づけた。

 

「は、はいぃぃっ!?」

 

思わぬリカの行動に自分でも変だと思う声が出てしまった。

 

「……だめ?」

 

驚きで動けない俺を見てリカが不安げに目を潤ませていた。泣かすわけにはいかん!

 

「い、いただきます」

 

俺は瞬時にリカのスプーンを口に含んだ。

間接キッスとか気にしてられない。リカの好意を受け取らなければと体が動いた。

タケシのシチューの味もそうだが、こうして女の子に食べさせてもらうのはもっと違う喜びを感じる。

 

また肩を叩かれる。

振り返るとカスミが頬を染めてスプーンを差し出していた。

 

「ほらサトシ、これも食べなさい!」

 

「え、そっちも!?」

 

「……私のは食べられないっていうの?」

 

ジト目で俺を見るカスミさんに思わずたじろぐ。

 

「そ、そんなことありません」

 

俺はそう言ってカスミのスプーンを口に収める。

こんなことカスミがするなんてというギャップもあるのだろうか、胸がいつも以上に高鳴り、俺を見つめるカスミがとても愛おしく思えた。

 

反対側、すなわちリカからまた肩を叩かれる、

 

「サトシもっかいあーん!」

 

「あ、はい」

 

さらに反対側、すなわちまたカスミから肩を叩かれる。

 

「ほらこっちもあーん!」

 

「わ、わかりました!」

 

そうして何度か美少女からの「あーん」が続いた。目の前ではタケシがふにゃりと崩れた顔で美女からの「あーん」を受けていた。

 

見知らぬ男に見られればきっと嫉妬と殺意を一点に集めそうな幸せを味わいながら、長閑な昼食は続いた。

 

 

 

***

 

 

 

タケシの美味しい料理に舌鼓をうった俺たちはその後再び歩き出し、ようやくクチバシティに到着した。

 

「長かったー!」

 

クチバシティはカントー最大の港町だ。

町のあちこちに屈強な船乗りたちがたくさんいる。

また、ここは海軍のいた町であり、多くの軍人がこの町に住んでいた。それから海外の軍人もこの町に来ることが多くなり、多くの外国人がこの町に移住し暮らしている。

さらにこの町には世界一周をする豪華客船が年に一度来るらしい。

港町であること以外にも、この町には大きな発電所がある。カントー最大の電力を供給できるということもこの町の持ち味となっている。

 

ちなみにクチバとは「朽ち葉」という意味で地面に落ちた葉っぱの色のことだ。

 

タケシ一行も加わり6人と大所帯になった俺たちは宿泊とポケモンの回復のためにポケモンセンターに来ていた。

早速ポケモンたちを回復させようと思ったがセンター内は利用者であるトレーナーたちでごった返していた。見れば怪我をしているポケモンたちがたくさんいた。

 

「なんだかクチバシティのポケモンセンターは大盛況だな」

 

「もう怪我したポケモンがいるんだからそういうこと言ったらダメだよ」

 

「ごめんごめん」

 

ようやく受付までたどり着いて回復してもらおうと思った時、後ろから俺たち同年代の女の子がセンターに入ってきた。駆け足からとても焦っていることがわかる。その腕には赤い体に6つの尻尾のきつねポケモンのロコンが抱かれていた。

 

「ジョーイさん、この子をお願いします」

 

そうとう急いでいたのか、俺たちに気づかなかったようだ。言ったあとに俺たちを見てハッとした表情になる。

 

「あ、ごめんなさい。あなたたちが先、ですよね……」

 

責められると思ったのか女の子は萎縮してしまった。

 

「君のポケモンは酷い怪我だろ。だから先にどうぞ。みんなもいいだろ?」

 

リカとカスミ、タケシ一行も問題ないとばかりに広角を上げて頷いた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

少女はロコンをジョーイさんに預ける。

 

「本当にありがとうございます!」

 

少女はペコリと深くお辞儀をしてくれた。

 

「いいよ、ロコン元気になるといいな」

 

「はい!」

 

少女は嬉しそうに笑った。

うんうん、可愛い女の子は笑顔は似合うな。

心なしか顔が赤いが。

 

「……こうやってフラグを建てるのかしら」

 

「……優しいのはいいんだけどね」

 

うぐ、視線が痛い。

 

「うむ、青春はいいものだ」

 

タケシ君感心しないでくれ。

理不尽に責められて落ち込む気持ちを誤魔化すようにセンター内でトレーナーたちの預けているポケモンたちを見ると、彼ら彼女らはみな傷だらけのぼろぼろでぐったりしている。

 

「……みんな、焦げた跡、ある」

 

ヒナコさんの小さな呟きにポケモンたちをよく見ると、確かに黒い焦げた部分があった。

 

「あの感じは炎というより電気による焦げ跡ね」

 

続いてマナミさんが解説してくれた。

 

「2人ともわかるんですか?」

 

「これでもブリーダー志望だからね」

 

「……得意」

 

得意げに胸を張るマナミさんとヒナコさん、そんな2人を見てデレデレとした顔のタケシとそんな彼に微妙な視線を送るリカとカスミ、全体で見るとなんともシュールな光景だ。

 

「おそらく皆クチバジムに挑戦したのだろう。あそこは電気タイプのジムだからな」

 

一瞬で真面目な顔になったタケシの発言にみな耳を傾ける。

 

「クチバジムのジムリーダーのマチスさんは海外から来た電気タイプのエキスパートの元軍人、ジムリーダーになったあの人はポケモンの鍛え方もバトルの強さも並外れていると聞く」

 

「それは、楽しみだな」

 

元軍人か、きっとリアルファイトしたら絶対に負けるだろうけど、ポケモンバトルは別だ。

今まで鍛えてきたポケモンたちと全力でバトルして勝ちたい。武者震いを感じる。

 

「そういえばタケシたちはクチバシティに何か用があるの?」

 

カスミがタケシに質問する。そういえばジムが目当てでないタケシたちはどんな用があるんだ?

 

「クチバシティで行われるポケモンブリーダーの講習会に参加しに来たんだ」

 

「そっか、俺たちは今からクチバジムに行くからまたあとでな」

 

するとタケシがニヤリと笑う。

 

「実はその講習会は午前が女性の部で午後が男子の部なんだ。だから俺は見に行けるんだ」

 

なんとそうだったのか。ポケモンブリーダーは男女でどう変わるのかわからないが、お陰でタケシに俺たちのバトルを見てもらえるんだな。

 

 

 

***

 

 

 

「それじゃあタケシ君、私たちは行って来るね」

 

「……また後で」

 

「は~い、いってらっしゃいませ~!」

 

講習会に向かうマナミさんとヒナコさんをタケシはふにゃふにゃした顔で見送った。

タケシ君、あなたすっかりキャラが変わりましたね。

 

「さあ、いざクチバジムだサトシ、油断するなよ」

 

「お、おう」

 

変わり身はや! カスミとリカも苦笑いしてるぞ。

それは置いといて俺たちはクチバジムを目指して歩き出した。

 

「クチバジムは電気タイプのジムよね、誰で行くの?」

 

「セオリー通りなら地面タイプなんだろうけど、手持ちに地面タイプはいないからな」

 

「じゃあ、電気に強い草タイプのフシギダネか地面技が使えるニドリーノはどうかな?」

 

「そこを中心にバトルしていくか」

 

カスミとリカとジム戦の作戦会議をしながら俺たちはクチバジムに向かっていると、すぐに目的の建物に到着した。

 

クチバジムは海沿いに建てられていた。

それはとても広大な敷地内にある巨大な建物群だ。そこはクチバシティが誇る発電所でクチバジムはその中に存在している。

人々の生活のための電気の扱いも電気タイプのエキスパートとそのポケモンたちに任せれば安全であるということか。

海の向こうではいくつもの船が見える。

 

するとリカが何かを見つけた。

 

「なにか浮いてる?」

 

「あれはコイルに進化形のレアコイル、それにビリリダマにマルマインもいる」

 

丸い体に磁石と螺子がくっついているコイル、そのコイルを三体連結したようなレアコイルが目を閉じてフヨフヨと空中を浮遊し、大きめのモンスターボールのような見た目のビリリダマとマルマインがコロコロとゴロゴロと転がりながら顔をふにゃりと崩している。

 

「なるほど、ここは大きな発電所だから普通の発電所よりも大量の発電がされる。それで電気タイプもその大きな電気に引き寄せられてきたんだな」

 

「なんだかみんなまったりしてるね」

 

「きっと発電所の近くは彼らにとっては落ち着ける場所なんだろうな」

 

「野生だけじゃなくてジムのポケモンたちにも良い空間になるんだな」

 

ほのぼのと電気タイプのポケモンたちを見ていた時だ。俺のモンスターボールが勝手に開いた。

 

「ピカッ!」

 

「あ、ピカチュウ?」

 

突然ボールから出てきたピカチュウはクチバジムの建物をジッと見つめていた。

そして次の瞬間には走り出した。

 

「おい待てピカチュウ!」

 

ここは野生の電気ポケモンとジムの電気ポケモンだけじゃなくてチャレンジャーの電気ポケモンにも好ましい空間なのか。そんなことを考えながら、嬉しそうな顔で走り出すピカチュウを追いかけた。

 

 

 

***

 

 

 

ピカチュウを追いかけてジムの前まで来ると、扉が開き人影が出てきた。その人は背の高い男性だった。

短く切り揃えられた黒髪、着ている軍服を押し上げる全身の筋肉。もしやこの人がジムリーダー、と思っていたが顔の作りは俺たちと似たものだった。

 

「む、君たちは?」

 

「すいません、俺たちはクチバジムに挑戦しに来た者です」

 

「そうか、ようこそ電気タイプのクチバジムへ、私はこの発電所の職員とバトルの審判を兼任しているヒデキだ」

 

ヒデキさんは口角を上げて白い歯を見せる。

 

「「「「よろしくお願いします」」」」

 

「さっそく案内しよう、付いてきたまえ」

 

背を向けて建物内を歩くヒデキさんに俺たちは付いていく。

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「私もマチスと同じ元軍人なんだ。現役時代にマチスと知り合って、今こうしてクチバシティで働いているんだ」

 

「戦友ってことですか?」

 

「ははは、そうだね。ジムリーダーと審判、立場は違うがあいつとはいつまでも親友さ」

 

建物内の通路で俺たちは雑談をしていた。マチスさんの使うポケモンや戦略を聞ければと思ったが、ヒデキさんも狙いがわかっているのかそうそう口を滑らせないな。さすが元軍人。

 

「マチス、チャレンジャーだ!」

 

ヒデキさんが大きな声で呼ぶと足音が聞こえてきた。それはゆっくりとこちらに近づいてくる。

そこにいたのは軍服に身を包んだ、尖った金髪の男性だった。鋭い眼光に鍛え上げられた肉体は正に軍人だった。そしてその彫りの深い顔たちは異国の人間のものだった。

 

「Welcome to クチバジム!」

 

「初めまして、俺はマサラタウンのサトシです。クチバジムに挑戦しに来ました」

 

「ほう、ChallengerはBoyか、だが手加減はしないぜ」

 

この威圧感、歴戦の軍人でポケモンの専門家であるジムリーダーのものに間違いない。

マチスさんと対峙しながら俺は震える手をギュッと握りしめた。

 

「む、そのピカチュウはBoyのポケモンか?」

 

マチスさんの視線は俺の足元でジム内を不思議そうに見上げているピカチュウに注がれる。

 

「はい、そうです」

 

「HAHAHA! だとしたらそのピカチュウを使うのはやめておくんだな。電気タイプのエキスパートであるMeに電気タイプで、しかも進化もしていないポケモンで挑むのは自殺行為だぜBoy」

 

「そんなことありません、俺とピカチュウは色んなバトルをしてきました。俺もバッジは2つ持ってて経験は十分ですし、実力もあります!」

 

「ピカピカチュウ!」

 

マチスさんは笑ったがそれは嘲るものではなく、ジムリーダーとして新人トレーナーに対するアドバイスとして言ったものだと俺にもわかった。だが、即座に否定されたため言い返さずにはいられなかった。

 

「なるほど、バッジを2つもGetしたのか。しかし、本当に強くしたいのならピカチュウのままというのはBad decision だぜ。本当に強くしたいのなら」

 

マチスさんが腰からモンスターボールを取り出す。

 

「Go モンスターボール!!」

 

「ラァイチュウ!!」

 

ボールから現れたのは、ピカチュウよりも大きな体のポケモンだ。丸みのある体にオレンジ色の体毛、手足の先は茶色、細長い黒の尻尾は先端に稲妻のような黄色い部分がある。可愛らしい顔に黄色の頬袋を持つ。そのポケモンはピカチュウの進化形であるライチュウだ。

 

「ピカ……!」

 

「ラァイ……!」

 

ピカチュウは自分よりも大きな体のライチュウを見上げて息を飲んでいる。

ライチュウはそんなピカチュウを見て全身に力をこめてバチバチと帯電し自身の力をアピールしていた。

 

「Youも本気で最強を目指すならそのピカチュウをライチュウに進化させろ。それからだBoy」

 

まさかピカチュウの進化形が相手とは思わなかった。確かに能力は進化しているライチュウの方が圧倒的に上かもしれない。大人しくタイプ相性の有利なポケモンを使うべきなのだろう。

だが、ライチュウを見つめるピカチュウはこのまま引き下がりたくないと言っているように見えた。

 

「俺のピカチュウは進化しなくたって戦えます」

 

偽らざる気持ちでマチスさんに訴える。

マチスさんは俺の気持ちが伝わったのか呆れたのか、肩をすくめて頷いた。

 

「Alright、Youがそこまで言うのならBattleを受けよう。Fieldはこっちだ。Come here」

 

マチスさんはフィールドの所定の場所まで力強い足取りで向いライチュウも自身に満ちた足取りでついて行った。

俺も歩き出そうとして、ふとピカチュウを見た。するとその顔には緊張がありながらも鋭い目でフィールドとライチュウを見ていた。

このバトルはバッジのことだけでなくピカチュウのためにも負けられない、そう心に誓いながら歩き始めた。

 

 

 

***

 

 

 

クチバジムの中を窓からのぞき見ている影が3つあった。

 

「ジャリボーイたちはもうクチバシティまで来てたのね」

 

「来てさっそくジム戦とは精が出るな」

 

「今回の相手はピカチュウの進化形のライチュウなのニャ」

 

ロケット団のムサシとコジロウとニャースだ。

 

「いくら進化形でもあのピカチュウが負けるはずないわよね」

 

「そりゃそうさ、あのピカチュウは特別なピカチュウなんだからな」

 

「でも相手はジムリーダーのポケモンニャ。もしかしたら、もしかするかもしれないニャー」

 

「……そ、そんなわけないでしょ心配しすぎよ」

 

「そ、そうだぞーあのピカチュウが特別で無いなんてことないだろ、もしどこにでもいるピカチュウなら俺たちは無駄な仕事してたってことになるぞー」

 

「そうニャったらボスに何を言われるかわからないニャ」

 

しばらく沈黙が流れた。その間に3人は自分たちの将来に暗雲が立ち込める可能性を理解してしまった。

 

「「「がんばれピカチュウ、ジャリボーイ」」」

 

 

 

***

 

 

 

広い長方形のフィールドの両サイドに立つのはジムリーダーのマチスとチャレンジャーのサトシ、それぞれの足元には大きなネズミポケモンと小さなネズミポケモンが相手を見据えながら立っている。

 

フィールド外の審判の位置にはヒデキが紅白の旗を持って立っている。

 

「使用ポケモンは互いに1体ずつ、それではバトル開始!」

 

ヒデキが合図するとサトシとマチスが動く。

 

「ピカチュウ、君に決めた!」

 

「Go ライチュウ!」

 

「ピカチュウ!!」

 

「ライチュウ!!」

 

それぞれの足元にいたピカチュウとライチュウがフィールドの中央に立ち戦闘態勢となる。

 

「ピカチュウ『でんこうせっか』!」

 

「ピッカァ!」

 

四足となったピカチュウが疾走する。大地を蹴るたびに加速して一直線に進み行き、あっという間に自分より大きなねずみポケモンの懐に入り一撃を与えた。

腹部に高速の突進を受けたライチュウは、僅かに後退しただけでピカチュウをそれ以上進ませなかった。

 

「ライ!」

 

「なに!?」

 

「Wow、なかなかのSpeedだ、だが……その程度のPowerじゃまだまだだぜ! ライチュウ『かわらわり』だ!」

 

「ラァイ!!」

 

「ピガ!?」

 

鋭い眼光なったライチュウが右腕を振り上げ勢いよく垂直に振り下ろした。回避が間に合わないピカチュウの脳天にクリーンヒットし、地面に全身を叩きつけてしまった。

 

「Hey Boy! 本物のPowerってのはこういうことだぜ!」

 

「大丈夫かピカチュウ!?」

 

ピカチュウは立ち上がると頭と体を小刻みに振って再びライチュウに向き直した。

 

「ピカ!」

 

「よしピカチュウ『アイアンテール』!」

 

大地を走るピカチュウは自身のギザギザの尾を鋼鉄に変え、思い切り水平にライチュウに振るった。

 

「Gutsはあるようだな。ライチュウ『アイアンテール』!」

 

ライチュウの黒く細長い尾の先端、稲妻の形をした部分が鋼鉄となる。細長い部分がしなりピカチュウに向かって振り下ろされる。

尾の刃同士が激突し甲高い音が鳴り響く。

 

打ち合い、ライチュウは稲妻の尻尾を胸の前で構えて先端をピカチュウに突き刺さんと直進した。

 

ピカチュウは瞬時に横向きに体を入れ替えることで刺突を回避、するとライチュウの尻尾が横薙ぎに振るわれる。ピカチュウは回避が間に合わずに直撃を受ける。

更なるライチュウの追撃、ピカチュウは姿勢を低くすることで躱すとライチュウから離れる。

しかし、ライチュウの猛攻は終わらない。

ピカチュウを切り裂かんと細長い尻尾を変幻自在に振り回す。ライチュウの尻尾の鋭く尖った先端は『アイアンテール』の力で稲妻の短剣と化していた。先程の一撃でかなりのダメージを受けた。また攻撃を受ければ大ダメージになりかねないとピカチュウは素早く回避を続ける。

さらにピカチュウは躱すばかりで攻めあぐねていた。

 

「尻尾が長い分ライチュウの方が有利だ!」

 

タケシの分析通りライチュウの尻尾はピカチュウのそれよりも長い、しかも自在に動かすことができピカチュウを翻弄している。その鋭さとリーチの長さは槍のようだ。

 

「このままだと一方的にやられるよ」

 

「何か方法はないの?」

 

リカとカスミはサトシとピカチュウの不利の様子を危惧しながらフィールドを見つめる。

 

ライチュウが動く。前進しながらピカチュウに尻尾の猛攻を仕掛ける。鋭い斬撃とも言える尻尾の連続攻撃をピカチュウは時には躱し続け、時には鋼の尻尾で迎撃した。

 

ライチュウの大振りの『アイアンテール』。ピカチュウは自身の『アイアンテール』で受け流して後方に跳んだ。

 

「大丈夫かピカチュウ?」

 

「ピカ!」

 

「そうか……そろそろか?」

 

「ピカ!」

 

サトシはピカチュウの返事に口角を上げる。

 

「よし『でんこうせっか』!」

 

「ピカピカ!」

 

「Well,well、考えなしに突っ込むなんて感心しないぜBoy。ライチュウ『アイアンテール』!」

 

「ライライ!!」

 

マチスは嘆息しながらライチュウに指示を飛ばす。

ライチュウの鋼の尻尾が鋭利な槍となりピカチュウに襲いかかる。ピカチュウは先ほどと違い突進をしかけ回避する様子がない。それでは良いマトだ。

ライチュウの鋼鉄の短剣がピカチュウに迫り

空振りとなる。

 

「ライ!?」

 

「What!?」

 

ピカチュウは一瞬にして『アイアンテール』の着弾点から回避していたのだ。

走りながらサイドステップを踏むことで飛来する稲妻のような『アイアンテール』を回避しライチュウまで疾走して行った。

 

「まさかさっきの攻防でライチュウの『アイアンテール』を見切ったのか!?」

 

マチスは驚きそれに呼応するようにライチュウも驚愕の表情を浮かべて焦りを見せながらピカチュウに鋭い尾を振るうが当たることはなかった。

ピカチュウはライチュウの懐に潜り込む。

 

「行けぇ!!」

 

「ピカ!」

 

渾身の『でんこうせっか』が急加速とともに放たれる。想定外の動きにライチュウの回避が間に合わない。しかし、マチスは先の攻防でライチュウがピカチュウの『でんこうせっか』を耐えていたことからこの攻撃を受けても問題ないと思っていた。しかし

 

「ライ!?」

 

ピカチュウの一撃が直撃したライチュウが吹き飛ばされる。

 

「What!!」

 

「いいぞピカチュウ」

 

ダメージを受けたライチュウは苦しげな表情を一瞬見せるがすぐに立ち上がりピカチュウを見据える。

 

「Speedがさっきよりも上がっている、それによって『でんこうせっか』の威力が上がったのか。なるほど、Youのピカチュウはバトルの中でGearを上げてきたのか」

 

「ええ、お陰でピカチュウはかなり暖まってきました」

 

マチスのサトシへの視線の色が変わる、初心者を推し量ろうというものではなく、倒すべき敵を見るものだ。そしてマチスの口角が上がる。ここから先のバトルを楽しみにしているようだった。

 

 

 

「ふぅ、まったくサトシは心配させるわね」

 

カスミはサトシにきつい評価をするがその表情はとても優しいもので、暖かな眼でサトシとピカチュウを見ていた。

 

「ねえ、どうしてさっきからサトシは電気技を使わないのかな?」

 

「そういえばそうね。マチスさんもライチュウに電気技を指示してないわ」

 

2人の疑問に答えたのはタケシだった。

 

「お互いに警戒しているんだろう」

 

「「え?」」

 

「電気タイプのポケモンは『ひらいしん』に『ちくでん』と電気技を吸収するポケモンが多い。そして、ピカチュウとライチュウは『ひらいしん』を持つこともある。迂闊に電気技を使えば相手を有利にしてしまう。だからサトシもマチスさんも電気技を使えないんだ」

 

「そういうことね」

 

「でも決め技の電気技が使えないのはサトシもマチスさんも攻めにくいんじゃないかな」

 

電気タイプのジムでジムリーダーのマチスもチャレンジャーであるサトシも電気タイプの技を使わないという珍事、ここからバトルがどう動くのか。このままでは終わらないという予感が3人にはあった。

 

 

 

「ライチュウ『アイアンテール』!」

 

「ピカチュウ『でんこうせっか』!」

 

ライチュウは鋼鉄の尻尾を空を裂くような勢いで振り下ろし、ピカチュウは疾走し加速を続けることで『アイアンテール』を回避しながら直進する。

さらなるスピードアップにマチスは瞠目する。

 

(まだSpeedが上がっているのか!?)

 

「行けぇっ!!」

 

「怯むなライチュウ、『かわらわり』で迎え打て!」

 

ぶつかり合うピカチュウとライチュウ、そのパワーは拮抗し、2体は相手を打ち倒さんとさらに全身に力を込める。目一杯力を込めた2体の電気ネズミは頬が帯電するほど全力でぶつかる。

 

反動でピカチュウとライチュウは同時に後ろに跳んだ。

 

「進化形のライチュウの方がパワーは上だ。だけど、サトシのピカチュウはスピードでは負けていない」

 

タケシが2体の動きからそう推察する。

一瞬にらみ合うピカチュウとライチュウ、そして、サトシとマチス。一瞬の膠着、動き出したのは同時だ。

 

「ピカチュウ『10まんボルト』!」

 

「ライチュウ『10まんボルト」!」

 

「ピィカ、チュウウウウウウ!!!」

 

「ラァイ、チュウウウウウウ!!!」

 

2体のネズミポケモンから膨大な電撃が放出される。眩く激しく大気を震わすほどの圧力をもって『10まんボルト』同士が激突する。

 

轟音と共に衝撃波がフィールド全体に襲いかかり砂埃が舞い上がる。

ピカチュウとライチュウは全身に力を込めて電撃を出し続ける。

2体の中心で拮抗していた電撃が爆発を起こす。

強烈な爆風が起こり2体を襲い小さな体を吹き飛ばすがすぐに着地した。

 

マチスは目を細めてサトシをジッと見つめて口を開く。

 

「Youがライチュウの特性を警戒して電気技を使わなかったことには気づいていた。今までノーマルや鋼技で攻めていたYouが急に電気技を使おうとしたのは何故だ?」

 

「あなたのライチュウが『ひらいしん』じゃないと気づいたからですよ」

 

サトシは鋭いマチスの視線を強い眼差しで見つめ返す。

 

「ほう、なぜだ?」

 

「さっきピカチュウとライチュウがぶつかった時、2体とも踏ん張りすぎて帯電していました。あの距離で『ひらいしん』ならその僅かな帯電も引っ張られるはず。だけどそうならなかった。つまりライチュウの特性は『ひらいしん』ではないということになります」

 

「Wonderful!! 見事な洞察だ」

 

マチスが両手を叩きパチパチと乾いた音が鳴る。

サトシの洞察力を素直に賞賛したのだ。

 

「マチスさんもそれがわかったから電気技を使おうとしたんでしょ?」

 

「Exactly 俺もYouのピカチュウの電気の動きを見ていた。そして、Youのピカチュウも『ひらいしん』ではないと確信した」

 

マチスはニヤリと笑う。心からサトシという実力を持ったチャレンジャーを相手に心が躍っている。

 

「もうYouはBoyと呼ぶのはやめよう。マサラタウンのサトシ、ここからが本当のBattleだ!」

 

「はい、俺ももっと全力で行きます!」

 

「ピカチュウ『10まんボルト』!!」

 

サトシは合図を出しながら指示を飛ばす。

 

ピカチュウの体が光った瞬間、一条の閃光が飛来する。反応が遅れたライチュウに直撃し体が後退する。マチスもライチュウも一瞬のできごとに驚愕の表情を浮かべる。

 

「What!?」

 

「な、なんなんだ今のは!?」

 

タケシもまたピカチュウの放った技に信じられないとばかりに驚いていた。

 

「サトシのピカチュウのとっておきよ!」

 

「がんばって訓練したんだよ」

 

「そうか、ここまで鍛えていたとはな」

 

タケシが感心したようにサトシとピカチュウを見る。ニビジムでのバトルの時より遥かに強くなっていることにかつて対戦したジムリーダーとして感慨深いものがある。

 

フィールド内で笑い声が響く。マチスが可笑しそうに楽しそうに声を上げていた。

 

「HAHAHA! Amazingだサトシ、Youたちの全力をもっと見せてくれ!」

 

ジムリーダーの賞賛にサトシは心の奥から高揚感が湧き上がり、こちらを見るピカチュウとアイコンタクトで「がんばろう」と頷きあった。

 

「はい、行きます! ピカチュウ『でんこうせっか』!」

 

「迎え打てライチュウ『かわらわり』!」

 

風を置き去りにするほどのピカチュウの高速の突撃に対し、ライチュウはその場に留まり迎撃態勢となった。

 

ピカチュウの突進とライチュウの渾身の手刀が激突する。凄まじい衝撃が放たれ、互角の威力で2体は一瞬停止する。

そこでマチスが動く。

 

「『アイアンテール』!!」

 

ピカチュウとぶつかり合ってるライチュウだが、尻尾は自由に動かすことができる。

しかしピカチュウは全身をぶつける『でんこうせっか』を打ち、それだけに力を注いでいる。

鋼となったライチュウの尻尾がピカチュウの無防備な背中に振り下ろされる。

 

だがサトシは対応する。

 

「回転して『かわらわり』を受け流せ!」

 

ライチュウの右腕とぶつかっている自身の頭を中心にピカチュウは反時計回りに高速回転をし、ライチュウの『かわらわり』はピカチュウの左に逸れた。しかし、『アイアンテール』はまだ生きている。

 

「回転したまま『アイアンテール』!」

 

ピカチュウは止まらず周り続けて尻尾を鋼へと変える。そして、振り下ろされるライチュウの短剣目掛けてぶち当てる。

甲高い音が鳴り、ライチュウの鋼の稲妻は弾かれる。そしてピカチュウはまだ動いている。

 

軽いステップを踏んだピカチュウは鋼鉄の尾を横薙ぎに一閃、ライチュウの腹部に直撃した。

大型ネズミが自身よりも一回り小さなネズミの一撃で吹き飛ばされる。

サトシは好機とばかりに追撃をする。

 

「ピカチュウ『10まんボルト』!」

 

ピカチュウの渾身の高圧の電撃がライチュウにクリーンヒットする。全身に膨大な電撃を受けたライチュウはさらにダメージを受け吹き飛ばされる。

 

「Wonderful!! サトシ、まさか新人のYouがここまで戦えるとは思えなかった。素晴らしいピカチュウだ。こんなExcitingなBattleは久しぶりだ。ここからはMeもライチュウもFull Powerで行く。YouたちももっとFull Powerでかかってこい、痺れるようなElectric Battleをしよう!」

 

勝負の天秤が僅かにサトシに傾いている、しかし、マチスはサトシとピカチュウを褒め称えバトルを心から楽しんでいる。

そんなマチスに応えるようにサトシも叫ぶ。

 

「はいもちろんです。こっからも全力で行きます!」

 

「Good! それでこそだ。Hey ライチュウYouもGearをMaxに――」

 

異変は突然だ。

 

「ラ、イ……」

 

ライチュウは全身をブルブルと震わせる。

 

「ライチュウ?」

 

マチスが声をかけた瞬間

 

「ラァアアアアアアイチュウウウウウウ!!!」

 

ライチュウが雄叫びを上げると全身から暴れるような電撃が周囲に放たれる。

 

「な、なに!?」

 

「こ、これは!?」

 

「ライィッ!!」

 

周りのすべてを破壊しかねないほどの電撃の嵐を生み出すライチュウ。その目は正気を失っていることを誰もが理解してしまった。

 

「い、いかんマチス、ライチュウを止めるんだ!」

 

サトシとタケシが驚愕の声を上げ、審判であるヒデキが焦った表情になる。

 

「よせライチュウ、待て、Calm Down!」

 

急ぐマチスはフィールドに入りライチュウに駆け寄る。そのままライチュウを抑えようとするが、放出される膨大な電撃で近づくことができない。

 

「戻れライチュウ!」

 

マチスはモンスターボールをライチュウに向け戻そうとするが、ボールから放たれる光はライチュウの電撃に阻まれる。

 

「くっ、サトシ、ピカチュウ逃げるんだ Hurry Up!!」

 

暴れる電撃がマチスに直撃し、鍛え上げられた肉体を吹き飛ばし、マチスはフィールドに叩きつけられる。

それでもマチスは立ち上がろうとするが、彼が鍛え上げたポケモンの技は歴戦の戦士に大きなダメージを与えるものだった。マチスは動きが鈍くなる。

 

放出され続けた電流がライチュウに集まる。それはライチュウの全身を包み込んでまるで波打ち、激しく迸る。

そして、ライチュウは両腕を地面に下ろすと四足歩行の姿勢になる。雷電が一際強く輝く。

 

「よ、せ……ライチュウ、その技は――」

 

マチスがライチュウを止めようとする、が間に合わない。

 

疾走。

極大の雷を纏いながら大地を踏み砕かんばかりの勢いのまま四足で駆けるライチュウのその姿はもはやネズミではなく獲物を狙う猛獣だ。ライチュウ自身の理性とは関係なく体に刻み込まれた戦闘の経験と生物の本能のみが目の前の敵を打ち砕かんと一条の閃光となり強襲する。

ピカチュウはその圧倒的な轟雷の本流と圧力に呆然と見つめるだけで一歩も動けない。

サトシが危険と判断しピカチュウに駆け寄ろうとする、しかし、ここはボールに戻した方が早いのではと思いボールを手に取る。

 

一瞬の迷いは無慈悲な結果をもたらす。

 

炸裂。

ライチュウがピカチュウに衝突した瞬間、眩い閃光が建物内部を埋め尽くしその場にいた人間全員が反射的に目を腕で覆う。

 

すさまじい光の中を凝視するサトシの視界には空中に投げ出される小さな影があった。

丸っこい体、尖った耳に、ギザギザの尻尾。自分のよく知る彼。

 

ドサリと音がした。次第に閃光が止んだ。

静寂の中、パリッという音が断続的になる。フィールドで立つライチュウは頬を帯電させてその場で動かない。

 

打ち捨てられたようにボロボロで動かなくなったピカチュウがいた。

もはやどういう結果か誰の目にも明らかだ。

だがサトシには結果なんかどうでもいい、倒れる相棒に駆け寄り叫ぶ。

 

「ピカチュウ!!」

 

ピカチュウ戦闘不能。




今回のクチバジムのバトルはサトシの負けです。サトシとピカチュウを更なる一歩になればと思います。
もしサトシに負けてほしくないという方がいらっしゃるなら本当に申し訳ないです。

タケシと旅をしているお姉さんは、彼にも幸せになってほしいという思ったので、美人のお姉さんに囲まれてもらいました。
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