サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題) 作:エキバン
新年初投稿です。
サトシがクチバジムに勝利した翌日、サトシたちは再びクチバジムを訪れていた。
リカのジム戦のためだ。
フィールドに立つチャレンジャーリカとジムリーダーマチス。
それぞれのポケモンであるフシギダネとライチュウが激突している。
「フシギダネ『はっぱカッター』!」
「ライチュウ『10まんボルト』!」
「ダネダネ!」
「ラァイチュウウウ!!」
刃となった葉っぱと、激しい電撃がぶつかる。
互角の破壊力で技と技が相殺される。
2体は走り出す。
「『つるのムチ』!」
「『アイアンテール』で迎撃しろ!」
フシギダネが2本の蔓を振るうと、ライチュウは自身の尻尾を鋼にして長さと柔軟性を活かしてこれまたムチのように打ちぶつける。
破裂したような音がぶつかるたびに鳴る。
剣を持った戦士同士が己の業物で打ち合いをしているようだ。
ライチュウが鋼の尾を振り下ろす、フシギダネは2本蔓を交差させて受け止める。次の瞬間、蔓でライチュウの尻尾を巻き付けようとする。しかし一瞬早く察知したライチュウは素早く尻尾を戻す。
間髪入れずにライチュウは尻尾の切っ先を突撃させる。フシギダネもまた蔓の先を突き出すがそれは先っぽをぶつけるためではなく鋼の尾を射線上から逸らすためだ。交差した尾を蔓が擦れる。狙い通り尾はフシギダネから外れ、蔓はライチュウに襲い掛かる。
ライチュウの尻尾が動きを変えた。
軌道が逸れてもライチュウの意思で自在に動く尻尾は後ろからフシギダネを狙う。
「避けて!」
リカの咄嗟の指示。フシギダネは瞬時に対応して見せ、姿勢を低くすることで『アイアンテール』を回避した。
「Good 流石サトシの仲間、ただのCute Girlじゃなかったか」
マチスは鋭い目つきだが楽しそうに笑いながらリカに素直な賞賛を送る。
「ありがとうございます」
ジムリーダーに褒められたリカもまた素直な感謝の言葉を送る。
だが2人の表情は真剣なバトルを行うトレーナーのもののままだ。
両者の間で激闘を続けるフシギダネとライチュウ。
リカが動く。
「『やどりぎのタネ』!」
「ダッネ!」
フシギダネは蔓でライチュウの尻尾を弾きながら、蕾から種を発射する。
しかし、ライチュウはその動きを捉え『アイアンテール』で種を弾き飛ばす。
「簡単には喰らわないぜ! ライチュウ『アイアンテール』!!」
「だったら、フシギダネ、かわしてもう一度『やどりぎのタネ』!」
振り下ろされる『アイアンテール』を躱しながらフシギダネは今一度、蕾から種を発射する。
「何度やっても同じだ。ライチュウ弾き返せ!」
ライチュウは先刻と同様に尻尾を打ち下ろし、種は弾かれる。
――狙い通り
「『つるのムチ』で打ち返して!」
フシギダネは地面に追突する直前の種を『つるのムチ』で素早く掬い上げてライチュウ目掛けて飛ばした。
「What!?」
予想外の動きにマチスもライチュウも驚く。そして種は蘇り猛スピードでライチュウにぶつかると発芽し全身に巻き付く。
もしこれが『10まんボルト』だったならタネは焼け焦げて使い物にならなくなった。しかし、フシギダネとライチュウの距離はとても近く、『10まんボルト』を使えば「溜め」の時間が必要になり「タネ」が当たる。近距離で『やどりぎのタネ』を使用したことはリカの狙い通りだ。
「いいよフシギダネ、『つるのムチ』!」
「面白い、ライチュウ『かわらわり』!」
迫るムチをライチュウはその場に留まったまま両腕の『かわらわり』ですべてを打ち払っていく。だがフシギダネの攻撃はすべてが牽制だ。
「ライッ……」
ライチュウが苦悶の声を上げる、時間が経つごとに『やどりぎのタネ』はライチュウの体力を奪っていく。これが狙っていた決定的な一瞬の隙。ライチュウの動きが鈍るとフシギダネは待っていたとばかりに思いっきり『つるのムチ』を振り下ろした。
ライチュウの体はフィールドを転がる、だがまだ戦闘不能ではない。
「ここで決めるよ、フシギダネ『ソーラービーム』!!」
フシギダネの蕾に光が集まっていく。草タイプ最高クラスの技、チャージの時間が必要だが『やどりぎのタネ』によって体力が削られ動きが鈍っている相手であるなら難なく発射が可能。
リカの組み立てた戦略通りに進んだ。
「ライチュウ!!」
その声でライチュウは全身に力をこめた、何かが切れる音が連続して起こる。『やどりぎのタネ』を力で引きちぎったのだ。ライチュウの体力を奪う戒めは完全に解かれた。
「Great ライチュウ反撃だ『ボルテッカー』!!」
ライチュウ最強の電気の大技、本来ならジムバトルでの使用はジムリーダーのマチス自身が禁止していた。しかし、チャレンジャーのリカは『ボルテッカー』をライチュウが使用するジムバトルを望んだ。
先日このジムに挑戦したサトシは『ボルテッカー』を使用が許可されたバトルをして勝利した。
――自分もサトシと同じ条件で挑戦したい
リカのトレーナーとしての覚悟にマチスも応えた。
ジムリーダーとしての本気をチャレンジャーに示す
電気ネズミが膨大な電撃を纏い四足に構える。大地と空気中に電流が迸る。
ライチュウが大地を蹴る。
走るたびに加速していきまだエネルギーチャージの途中のフシギダネの真正面に迫る。
「フシギダネ!?」
回避が遅れたフシギダネは吹き飛ばされる。最大の電気技が直撃し小さな体は吹き飛び大地にたたきつけられる。
だがフシギダネは転がりながらも四本の脚で大地を踏みしめた。彼女はまだ戦える。
「What!?」
フシギダネは未だ大地に立つ。背中の蕾に最大パワーは充分に蓄積されていた。
ここで決めるためにリカが叫ぶ。
「『ソーラービーム』発射ぁ!!」
フシギダネの蕾から莫大なエネルギーが放出される。凝縮された光は直線となりライチュウに直撃する。
炸裂とともに眩い閃光、次第に止んでいく。
フィールドに立つフシギダネは激闘の疲労で息も絶え絶えだ。そして、ライチュウは仰向けに倒れていた。動く気配はない。
「ライチュウ戦闘不能、フシギダネの勝ち。よって勝者マサラタウンのリカ!」
ヒデキの宣言により勝負は終わる。
リカはフィールドへと走りフシギダネを抱きしめる。
「やった、やったよフシギダネ!」
「ダネダネ!」
バトルで疲れたはずのフシギダネもリカの喜ぶ顔を見て笑顔になる。
マチスが歩み寄る。
「リカ、Youとフシギダネも見事なバトルだった。オレンジバッジだ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
リカは受け取ったオレンジバッジを見つめギュッと握ると、
「オレンジバッジ、ゲットだよ!」
「ダネダネ!」
フシギダネと一緒に跳びあがる。
カスミとサトシが駆け寄ってきた。
その後ろではタケシとマナミやヒナコが拍手を送っていた。
「おめでとうリカ」
「流石だぜ、すっごいバトルだった。まさか一回の挑戦で勝つなんてな」
どこか悔しそうだが嬉しそうなサトシ。
「えへへ、サトシとピカチュウのバトルをフシギダネにも見せてたから、私もこの子もすっごく戦いやすかったんだ」
見ることで自分の力にするリカの才能、なによりフシギダネの力を引き出したことが勝利につながった。
彼女は仲間であり強力なライバルなんだとサトシはワクワクするような武者震いを感じた。
***
クチバジムの建物を出た俺たちはマチスさんとヒデキさんに見送られていた。
「このThree Days、素晴らしいバトルだった。Thank You Very Much サトシ、リカ」
「俺たちの方こそありがとうございました。ピカチュウがもっともっと強くなれるって知ることができました」
「ピカッ」
「私たちもすっごいバトルでフシギダネがいっぱい頑張ってくれて強くなれた気がします」
「ダネダネ」
「君たちがポケモンリーグに出場するためにはには残り5つのバッジが必要だ。このままいけば順調に勝つことができるだろうが油断は禁物だ」
「「はい!」」
「Good Luck Yong トレーナー AND ポケモンたち」
マチスさんとヒデキさんから激励を受け、俺たちはクチバジムを後にした。
クチバシティを出ると草原が見える道に出た。
ここから次の町に行こうとすると、タケシ一行は別の町を目指すため道が違うそうだ。
ここで彼らとは一旦お別れだな。
「サトシ、リカ、素晴らしいバトルを見せてくれてありがとう。本当に感動した」
「えへへ」
タケシの賞賛にリカは照れたようにはにかむ。
俺も嬉しいが、それもこれも全部――
「ピカチュウたちが頑張ったからな」
「サトシ、お前はこのままピカチュウを――」
「え?」
「……いや、なんでもない。お前はお前のしたいようにすればいい」
「お、おう」
タケシは何を言おうとしたのかわからない。多分大事なことだけど俺が自分で気づかなくてはいけないから敢えて言わなかったのかもしれない。聞き返すのはやめよう。
「カスミ、同じジムリーダーとして君の成長を願っている」
「ありがとう、けど心配しないで、私は必ず最高の水ポケモンのエキスパートになってみせるわ」
ブリーダーであると同時にジムリーダーであるタケシにはカスミの今後も気になるところだろう。
まあ、俺たちもタケシがこれから先どんなブリーダーになるのか楽しみだけどな。
「マナミさんヒナコさん、俺が言うのもおかしいけどタケシをよろしくお願いします」
「ええ、もちろん」
「……任せて」
彼女たちはタケシを支えてくれる素敵な女性だ。言うまでもないけど、タケシには彼女たちと良い旅をしてほしい。
「さ行きましょうタケシ君」
「は~い、道は自分が地図で確認しますのでお任せを~」
顔を赤くしデレデレと鼻の下を伸ばして歩き出す2人のお姉さんにスキップしながらついて行った。
「……最後の最後で台無し」
「幸せそうだからいい……のかな」
「まあ、今まで苦労してたしな」
微妙な空気が流れたがまあ気にしない気にしない。
***
辺りは真っ暗になってしまった。
俺たちは海辺を歩いている。波のザザーという音が断続的に聞こえてなんだか落ち着く。
心が沈んだところでもう休もうか。
「時間も時間だし、今日はここで野宿だな」
「うぅ、昨日までフカフカベッドだったのに」
相変わらずカスミは野宿に対して消極的だ。
「そうだけど海の近くで野宿も乙かもしれないよ」
「月明かりに照らされた海、水面を泳ぐポケモンたちが自然と一体になって幻想的な光景になる。うんいいかも!」
「今日曇りだけどな」
「うぅ……」
余計なこと言ってしまったな。花開くような顔だったのが一瞬でしょんぼりとしてしまった。
ここでテントを張ろうとカバンを下ろすとふと光が見えた。
「あれは……」
光はここから先にある崖の上の建物から見えていた。
「灯台だね」
「あ、よく見たら近くに家もあるわ」
カスミの言う通り灯台の近くに小さな一軒家があった。
「あ――」
そこで俺は思い出した。
回想開始。
数日前、オーキド博士と電話をしている時のことだ。
「マサキさん、ですか?」
「うむ、若いがポケモン研究者として注目されとる青年でな。クチバシティに行くというなら近くにマサキ君の研究所もある。灯台の近くに住んどるから時間があれば寄ってみるといい、ポケモンについていろいろ聞けるかもしれんからな」
「わかりました」
回想終わり。
「あれってポケモン研究者のマサキさんの灯台だ」
「マサキさんってこないだオーキド博士が言ってた人?」
「本当に灯台に住んでたのね」
海の近くの灯台で研究しているということは水タイプのポケモンを中心に研究しているのかもしれない。それならカスミも喜ぶな。
「ねえあそこまで行ってみましょ、もしかしたら泊めてくれるかもしれないわ」
「そうだな、ポケモンのことも色々聞きたいしな」
しばらく歩いて崖の上にある灯台に到着した。
よく考えたら泊めてもらえるとは限らないんだよな。どんな性格の人か知らないし、気難しかったり偏屈だったらどうしよう。
だがここまで来て引き下がるわけにはいかない。これも俺たちのトレーナーとしての冒険だ。
思い切ってチャイムを鳴らす。
「どちらさんですか?」
若い男の関西弁がスピーカーから聞こえた。
「夜分遅くにすいません、俺たちは3人で旅をしているポケモントレーナーです。このあたりは宿泊施設もなくてこのままでは野宿になりそうなんです。ご迷惑でなければここで一晩泊めて頂きたいんですが」
「ポケモントレーナーくんたちなんか。もう夜やし子供が野宿なんて可哀想や。どうぞ入ってください」
カチリとした音がすると、大きな扉がひとりでに左右に開いた。俺はカスミとリカと顔を合わせると「入ろう」という意味で頷き合った。
建物内は暗く周りが良く見えない。
「「「お邪魔しまーす」」」
「いらっしゃーい」
声は俺たちの前方から聞こえた。すると建物内の明かりが点いた。
そこにいたのは大きなポケモンだ。
茶色の背中、黒いお腹には左右3つの脚、しかも一番後ろの脚で二足歩行してる?
「あれってカブト?」
「カブトは絶滅したポケモンのはずよ、それに図鑑に載っているよりも明らかに大きいわ」
「やあお客さんこんにちは」
「「「カブトがしゃべった!?」」」
あのロケット団のニャースみたいなポケモンが他にも?
「ああ、僕はこの灯台の主のマサキや、理由あってこのカブトの格好しとるんや。悪いんやけど、ここのスイッチ押してくれへん? このカブトの手じゃ届かんくて脱ぐのが難しいんや」
「ええと、ここをポチッと」
カブトの体が割れ、中から整った顔立ちの青年が現れた。
「いやー助かったわ、おおきに。改めて、僕がポケモン研究をしとるマサキや」
「どうしてカブトの格好を?」
「僕はポケモンの気持ちが知りたいんや」
「ポケモンの気持ち?」
「せや、ポケモンが何を考えて生きているのか知りたいんや」
ポケモンの気持ち、そう言われてつい考えてしまう。
今となっては当たり前のように一緒にいるが、俺は自分のポケモンの気持ちを本当に理解しているのか。ゲットしたが本当に彼らの気持ちに向き合えているのか。
「君たちはポケモンをどれくらい知っとる?」
咄嗟に答えが出てこない。本や図鑑でポケモンの種類は知っている。だが名前や姿だけを知っているのは本当にそのポケモンを知っているということになるのだろうか。今の自分の手持ちとなったポケモンのことも本当に知り尽くしているとは言えないのに。
リカとカスミも同じ気持ちなのか困惑した顔で答えに窮していた。
そんな俺たちの気持ちを知ってか知らずか、マサキさんは話を続ける。
「研究者と言われてる僕やオーキド博士かてポケモンのすべてを知っとるわけやないんや。ポケモンはどういう生き物なのか、根本がどこにあるのかもまだまだわからないことだらけや。どこから来たのか、どうして人間の指示に従って動いてくれるのか、謎は尽きんのや」
ポケモンの謎、俺たちの知らないポケモン。
「それに今見つかっているポケモンかて、全部や無いんや。まだまだ見つかってへんポケモンが世界のあちこちにいるんや。そして、森に海に空に生きる彼らすべてをポケモンと呼ぶのは何故か、それぞれ違う生き物やのにいつからそうカテゴリされるようになったのか。どうしてモンスターボールでゲットされただけでその人間に従うんか、ついさっきまで野生で生きていたんはずやのに」
マサキさんは言葉を切る。まだまだ新人トレーナーの俺たちはそんなポケモンの深い謎なんか気にかけたことはなかった。今言われて少し考えた。ポケモンたちは俺にゲットされて喜んでいるのか、本当は自然を生きたいのではないのか。
「知っとるか? もう文献にしか残っとらんのやけど、この世界にはポケモンやない生き物がたくさんいたんや」
「その生き物たちは『犬』や『猫』とか呼ばれとった生き物や、かつて人間が生きていた中、あちこちにそういう生き物がいたんや。せやけどある日その生き物たちは姿を消した。それからポケモンがいつの間にか人間の周りにいたんや。まるで最初からそこにいたかのように」
『犬』や『猫』俺が前いた世界では当たり前にいた生き物たちだ。そして、この世界の人間以外の生き物はポケモンだけ、それが当たり前だと思っていたのに、そうじゃない生き物がいたのは本当に驚いた。
「文献に載っとるこの生き物たちはどこに行ったんか、そしてポケモンが現れたこととなにか関係があるんか。何を意味しているのか……」
まるでその生き物たちとポケモンたちが入れ替わっているかのようだ。ポケモンが現れるとどうしていなくなるんだ。ポケモンたちはどうしてこの世界の人間の前に姿を現したんだ。
「ま、言うたようになにもかもがわからんことだらけやからな、それを僕は研究しとる。そして、その答えを出す鍵になっとるのは――――ズバリ、幻のポケモンや」
「幻のポケモンは総じて大きな力と高い知性を持ってると言われている。せやから彼らのことを知ることができればもっと深くポケモンのことを、この星のすべての生き物のことを知ることができると思うんや。そしてそれはこの星に生きる僕たち人間を含めた生き物たちが生きてる意味を知ることにつながるかもしれん」
この星で生きる意味……当たり前のように人間とポケモンはこの星で生きてる。けどそれはなんのためなのか、考えたこともなかった。俺が前いた世界ではポケモンはいない。もう前の世界のことを知ることは無いけど、あの世界でもそれぞれの生き物にも何か生きる意味があったかもしれない。
果たして俺たちがこうして大きな意味があるのかなんてわからない。だけど、もし大きな役割があってそれがこの世界のすべてにとって大事なことなら、それがなんなのか知ることができれば何かが変わるかもしれない。
「幻のポケモン……それは確かに会ってみたいです。でもどうやって会うつもりなんですか?」
と言ったところでそういう研究方法はトップシークレットなのではないかと、己の失言に気づく。しかし、マサキさんは楽しそうに笑った。
「せやな、見せたるからちょっと外に出よか」
***
マサキさんに案内されたのは灯台の高台。そこからは海が見え、霧に覆われている向こうの景色が見えた。
「ある日僕は聞いたことのないポケモンの声を聞いたんや。それは幻のポケモンに違いない、そう思てその声に似た声を作って、この灯台から海の向こうに流しとる。この声を聞かせれば幻のポケモンも仲間や思てここまで来てくれるかもしれん」
「録音した声を聞かせて本当に幻のポケモンはここに来るんですか?」
「そのポケモンは自分の仲間を探してるんや、彼か彼女かその声を聞いた時、僕にはひどく寂しげに思えたんや『会いたい、1人は嫌だ』僕にはそう聞こえたんや」
『1人は嫌だ』幻のポケモンは個体数が極端に少ないのは知ってる。それは仲間が少ないといことだ。そのポケモンは今まで1人で生きてきたのかもしれない。けれど1人は寂しいから世界のどこかにいる仲間に会いたくて彷徨っているのかもしれない。
「ある日そのポケモンの姿を見た。その時は警戒していたんか近づいて来んくて遠目で薄っすらと見ただけやけど、あれはどの図鑑にも載ってないまったく新種のポケモンに違いない。そのポケモンがどんな生き物なんか、どんな生き方をしてるんか僕は知りたいんや、そして――」
「そのポケモンと仲良うなれたらどんだけ嬉しいことか。せやから僕はこの灯台で幻のポケモンを待つんや」
声がした。発生源は灯台ではない。
気づいたその場にいる全員が一斉に海の向こうを見た。
近づいてくる影を確認したマサキさんは機械を操作した。
霧の向こうから聞こえる声と似た声が灯台から流れ出す。
声はマサキさんが言ったようにどこか寂しさと不安が入り混じっているように聞こえた。
そして、とても神秘的な声だった。マサキさんの言うように寂しげだが、耳から入ると脳が心臓が引いては自分の体を流れる血液が静かな安らぎを覚えるような。そんな気持ちにさせてくれる声だ。
横目で見るとリカとカスミは聞き惚れているように目を閉じていた。
2人の髪が潮風に揺れ、胸の前で組んだ手は祈りを捧げているようにも見えた。
「なんだか歌ってるみたい」
「うん、それになんだか嬉しそう」
カスミとリカの言うように海の向こうから聞こえる声は、灯台の声と共鳴しているように聞こえる。そのポケモンは仲間の声だと思っているのか、最初の寂しさは明るさに変わっているように思えた。
「「「わわわ!!!」」」
後ろで何かが転ぶ音がしたしかも悲鳴は複数だ。
皆が一斉に振り返るとそこにいたのは―――
「ロケット団!?」
いつもの3人がどこからか現れて仲良く倒れていた。
「あんたたちこんなところで何してんのよ!」
カスミが現れたロケット団に向かって叫ぶ。
「べ、別にポケモン研究所で珍しいポケモンを探してたわけじゃないんだからね!」
「そしたら幻のポケモンの話が出たから俺たちも拝ませてもらおうと思ったわけじゃないからな!」
「声をもっと聴きたくて近づいたら転んだわけじゃないんだからニャ!」
うっわー可愛くないツンデレ、しかし、こいつらを放っておいていいものか。
「ええやん、君らも一緒に幻のポケモンに会おう。来る者拒まずや」
マサキさんは笑みを浮かべるとロケット団も参加させることにした。
ロケット団の3人は皆ガッツポーズをしていた。
まあ、心底悪い連中じゃないみたいだしな。それに変な動きしたら俺が対処すればいい。
ロケット団も加わって仕切りなおすことにした。
「良い声ねー」
「なんだか癒されるー」
「不思議だニャー」
今のところはロケット団も大人しくしている。
声は未だ聞こえてくる。
霧の向こうに影が現れた。
その影はゆっくりと確実にこの灯台目指して近づいてくる。
自分の鼓動が高まっているのを自覚した。そして、呼吸が荒くなり全神経が近づく存在に対し集中していた。
そして、それは俺たちの目の前まで現れた。
「すごい……」
「こ、これが」
「……幻のポケモン」
俺だけじゃなくリカとカスミそしてロケット団が、目の前の幻のポケモンに息を飲んだ。
幻のポケモンはジッと俺たちを見ている。すると、その幻のポケモンの体が微かに光った。
次の瞬間、爆発が起きた。
な、これは攻撃してきたのか!?
再び幻のポケモンの体が光る。
「逃げろお!!」
反射的に叫んだ。
光が灯台を破壊した。砕けた破片が辺り一面に落ちてくる。
「ま、待ってくれ幻のポケモン! 僕たちはお前に危害を加えるつもりは――」
マサキさんは訴えるが幻のポケモンは動きを止めない。
ここから逃げないと命の危険だ。
「「「ひえええええええ!!!」」」
ロケット団が悲鳴を上げながら一目散に灯台を降りる。
逃げ足速いなおい!
幻のポケモンを呆然と見るマサキさんを連れて俺たちは急いで灯台から崖まで降りた。
「早く町まで避難しましょう!」
カスミが叫ぶが、俺たちよりも速く動くものがいた。
逃げた俺たちの目の前に幻のポケモンが現れた。
俺たちは追い詰められてしまった。ロケット団は互いを抱き合って震えている。
「ちょっとニャース、あのポケモン説得してよ」
「無理ニャ、あいつさっきから何も言ってないニャ、交渉の余地なんてないニャ!」
幻のポケモンの表情は伺えない。だが俺たちに対する怒りがあるからこその行動だ。
なんとか皆を逃がせないか、そう思った時、
俺とカスミとリカの腰から飛び出すものがあった。
ピカチュウ、フシギダネ、スターミーが俺たちを守るように幻のポケモンに立ち塞がった。
「ピィカチュウウウウウウ!!」
「ダネフシャ!」
「フゥ!!」
『10まんボルト』、『エナジーボール』、『みずのはどう』が幻のポケモンの攻撃を迎撃せんと放たれる。3つの技は強大な一撃を相殺することに成功した。
俺たちが指示する前に技を撃ったのか。
「ピカ、ピカピカピカ!!」
「ダネダネダネ!!」
「フゥッ!!」
それはまるで何かを語りかけているような訴えかけているような、そう見えた。
幻のポケモンはジッとして動かない。黙ってピカチュウたちの言葉を聞いているようだった。
幻のポケモンから再び光が放たれる。ピカチュウたちの言葉は届かなかったのか。
「みんな逃げてぇ!!」
リカの悲鳴と同時に光は大地を激しく蹂躙した。衝撃が体を叩きつける。周りのみんなも同様に薙ぎ払われる。凄まじい破壊力はその余波だけで俺たちの体を吹き飛ばした。
全身に鈍い痛みがある。なんとか顔を上げて周りを見るとみんな俺と同様になんとか立ち上がったという格好だ。
「ピカチュウ大丈夫か!」
「……ピカ」
俺と一緒に吹き飛ばされたピカチュウもあちこち傷だらけにしながらもなんとか立ち上がる。
「あのピカチュウが負けた……」
「もうダメだあー!」
悲鳴を上げるロケット団。
次の瞬間、俺は背筋が凍った。
リカが倒れている付近に幻のポケモンはいる。
このままだとリカが危ない。駆け寄ろうと立ち上がった瞬間、幻のポケモンは攻撃を受けた。
傷だらけのフシギダネはエナジーボールを連射し幻のポケモンを攻撃した。
すべての攻撃は幻のポケモンに直撃した。しかし、ダメージがそこまでないのか微動だにしない。
それでもフシギダネは攻撃し続ける。苦悶の表情で痛みを堪えながらリカを守ろうとしている。
リカはフシギダネを見て悔しそうに地面に転がっている。リカには何も責められる理由はないのに……何もできない自分が情けない。みんなを助けたい。この体が動いてくれれば……
「フシギダネ!?」
リカの驚きの声で振り向くとフシギダネの体が光りだしていた。
やがてフシギダネは光に包まれながら形を変えて行った。
「ソウソウ!!」
「フシギソウ!」
フシギダネがフシギソウに進化した、この土壇場で進化するなんて。リカを守りたいって気持ちが奇跡をおこしたのか?
するとフシギソウに感化されるようにピカチュウとスターミーが幻のポケモンの前に再び飛び出した。
全員は幻のポケモンを見据える、そして――
『10まんボルト』、『エナジーボール』、『みずのはどう』、みんなの最大の攻撃が立ち塞がる幻のポケモンに直撃する。
しかし、幻のポケモンは健在だ。そしてピカチュウたちも体力の限界だ。
俺はこのまま黙って寝転がってるなんてできなかった。
激痛を感じながらも俺は立ち上がり歩き出した。もうこれ以上誰も傷つけたくない、みんなを守りたい。俺にできることをしたい。
幻のポケモンに向かって歩き出した。そしてその姿から決して目を逸らさない。
「……来いよ、相手になってやる」
無謀な啖呵を切った。
俺じゃあこの幻のポケモンには勝てないのは理解している。だけど、せめてみんなが逃げる時間くらいは稼ぎたい。
死ぬかもしれないけど、みんなを見捨てることなんてできない。
後ろから駆け寄る音がした。
「ピカチュ!」
「ソウフシャ!」
「フウゥ!!
ピカチュウ、フシギソウ、スターミーが俺を守るように前に出た。
「何を――」と声を出そうとしたとき、俺の腰から複数の影が飛び出した。
ヒトカゲがゼニガメがフシギダネがニドリーノがスピアーがボールから出てきたのだ。
「カゲ!」
「ゼニ!」
「ダネ!」
「リノ!」
「スピ!」
「みんな――」
俺のポケモンだけじゃない。
次々に俺の後ろから走って現れる。
リカのバタフリーがニドリーナがピッピが出てきた。
「フリィ!」
「リナ!」
「ピッピ!」
カスミのヒトデマンがトサキントが出てきた。
「ヘアアッ!」
「トサキ~ン!」
そして、ドガースとアーボ。こいつらはロケット団のポケモンだ。
「ドガ~ス!」
「シャーボ!」
全員が裂帛の気合のように声を上げる。
「みんな!」
「どうして!」
「あんたたち!?」
「危ないぞ!」
驚愕の声を上げるリカとカスミ、そしてロケット団。皆が意図して出したのではなく皆自分から出てきたんだ。
「―――守る」
「え?」
後ろから聞こえた。
「守るって言ってるのニャ」
ロケット団のニャースだ。
「みんなここにいる全員を守るって言ってるニャ」
みんなってポケモンたちのことか。
あのニャース、他のポケモンの言葉もわかるんだな。さらに驚いた。
思考を払い、目の前に立つポケモンたちを見る。
今まで出会ったきた仲間たちと敵であるはずロケット団のポケモンまでもが幻のポケモンを前に戦おうとしている。
俺たちを守るために――
勇ましい彼ら彼女らの背中を見ると胸に熱いものがこみ上げてくる。
幻のポケモンは動かず黙って俺たちを見ていた。そして動いた。
踵を返して、海の方向に歩いて行った。
歩く姿を見ていると次第に霧の向こうに消えていった。
見逃してもらえたってことか。
緊張が解けたせいか足の力が抜けてドサリと座り込んでしまった。
「……みんな無事か?」
振り返らずに声をかける。
「うん、なんとか」
「生きてるわー」
「怪我はしてるが大丈夫や」
その時、俺のポケモンたちが周りを囲んできた。見ると俺だけじゃなく、カスミもリカもそれぞれのポケモンたちに囲まれている。
みんな心配してくれてるんだな、俺の方こそみんなが無事で良かったよ。
「フシギソウ、進化おめでとう」
「ソウソウ」
あんな危機的状況でいやだからこそかフシギソウに進化したんだな。
見やるとリカはフシギソウに進化したことを喜び抱きしめている。周りのリカのポケモンたちも祝福するように笑っている。
カスミもその様子を見てポケモンたちを撫でながら優しく微笑んでいる。
俺も倣ってみんなの小さな頭を順番に撫でていく。
みんな本当にありがとう。
「あれ、ロケット団は?」
いつも間にかロケット団がいなくなった。命の危機だったし、逃げるのは仕方ないか。
まあなんにしても全員無事で良かった。
***
俺たちは昨夜からマサキさんの家に泊まらせてもらった。
皆大した怪我ではなくマサキさんの家の救急箱で簡単に治療して一晩眠ったらみんな全快した。今まで旅してきたお蔭で体力がついたのかもな。
リカもカスミも残るような傷はなくその白い肌は綺麗なままだ。良かった良かった。
外に出るとマサキさんは海の向こうを見つめていた。その横顔は悲しそうで悔しそうなものだ。
「どうしてこんなことに――」
「全部僕のせいや」
マサキさんは俺の言葉を遮り思わぬことを言った。
「あの、どうしてマサキさんのせいなんですか?」
リカの質問にマサキさんは目を閉じて思い詰めるように答えた。
「あの幻のポケモンは僕が聞かせた音を仲間や思てここまで来た。せやけどそれが僕の仕業や気づいて、裏切られたと思たんや。せやから怒ったんや」
そんな、マサキさんには騙すつもりなんてなかったのに、あのポケモンは怒ってしまうなんて。
気持ちのすれ違いがこんな悲劇を生んだのか。
「いやもしかしたらあの幻のポケモンは人間そのものを憎んでいたんかもしれん」
目を閉じて顔を伏せるマサキさん、表情は伺えないが声から酷く後悔していることがわかった。
「知っとるやろ。人間はポケモンの住処である自然を破壊し続けとる。ポケモンと人間は共存しとると言うてもそれは人間にゲットされたポケモンだけや。多くのポケモンは自然の中で生きとる」
俺もリカもカスミも何も言えずにマサキさんの背中を見て黙って聞いているだけだ。
「大きな力を持つ幻のポケモンはその自然の代表とも言える。その自然を私欲のために破壊する人間を目の前にして怒りが抑えられなかったんや」
「僕は間違うてたんや。人間が必要以上にポケモンとかかわるべきやなかったんや」
風が強くなり頬に当たる。目に見えず当たり前のように現れるがそれも自然が起こす力なんだ。
人間は自分たちも自然の恩恵を受けていることを忘れている。
このまま発展のため、徒にポケモンが生きる場所を奪い続けていいはずがない。
いつか怒りに触れる。いや俺たちは怒りの一部に触れてしまったのかもしれない。
幻のポケモンが攻撃を止めて退散してくれたのはピカチュウたちのお蔭だろう。同じポケモンは傷つけないという気持ちがあったのかもしれない。ポケモン同士は種族は違えど仲間で、幻のポケモンにとっても守るべき存在なのかもしれない。
幻のポケモンにはピカチュウたちが守ってくれた俺たちはどう映っただろう。
守られるだけの愚か者、自分の仲間が守る価値は無い、今すぐポケモンを手放せと怒っていたかもしれない。
今俺たちと一緒にいるポケモンたちは自然の中で他のポケモンたちと生きる方が幸せなのかもしれない。
「ピカピ」
ズボンが軽く引っ張られ、声をかけられる。
ピカチュウがくりくりとした眼でジッと俺を見上げる。
――大丈夫だよ
そう言ってる気がした。
「人間が必要以上にポケモンとかかわっちゃいけないなら、俺たちポケモントレーナーはなんで存在するんですか」
思わず叫ぶような声が出てしまった。
マサキさんもリカもカスミも僅かに驚きながら俺を見た。
あんな大変なことがあったが言わないといけない。俺は続ける。
「ポケモントレーナーだけじゃない。ポケモンと一緒に暮らしている人間たちはポケモンを手放さないといけないんですか? そんなはずはない。人間と絆を育んで友達として家族として暮らしている人はたくさんいる」
「人間がポケモンたちの生きる自然を破壊しているのは間違いない。だけど、人間とポケモンは力を合わせて生きて行くことができるはずです。本当に分かり合えばいつか自然を壊さずに済む時が来るはずです。その時こそ、人間と自然の代表者たちが互いに分かり合える時です」
リカとカスミが俺の目を見てくる。そして薄く笑って頷いた。
マサキさんは俺の話を聞いてどう思っているのだろう。考え込むように目を伏せて、軽く笑った。
「……夢、みたいな話やな」
そうだ、子どもが作文に書くような理想だ。根拠も具体的な解決策も何もない
それでも――
「俺たちは自分のポケモンたちと共に生きたい。生きていけると信じてます」
嘘偽りはない。それが俺の本音だ。
「ポケモンたちと絆を育む……か、きっとそれができるんは、君たちみたいな若いトレーナーだけなんやろな。君たちが未来を創ることができるんやな」
自嘲気味にそう言ってマサキさんは海を見る。諦めたような物言いだがそんな風に思ってほしくない。
「マサキさんもポケモンと絆を育めばいいんですよ」
声はリカのものだった。
マサキさんは振り返って優しく笑うリカを見る、そんなに驚くことじゃない。
「ポケモンと仲良くなるのに年齢とか関係ないと思います。ポケモンが大好きで一緒にいたいって気持ちがあってそれを全身で伝えられれば、きっと誰でもポケモンと友達になれると思います」
横のカスミを見て「そうだよね」と言い、俺の方も見るリカ。
ああ、その通りだ。
次の口を開いたのはカスミだ。
「マサキさんも灯台に引きこもってないで外に出てポケモンたちと触れ合ったらいいんですよ」
「……せやな、ずっとここに籠ってたら新しい発見なんかでけへんな。ははは、研究者が探求を諦めるなんて馬鹿げてるわ」
マサキさんは海を見る。だがその横顔は先ほどのような諦観も悲嘆もない。何かこれからの出来事を楽しみにしているような、そんな顔だ。
「君たちのお蔭で僕も吹っ切れたわ。これからは1人の人間としてポケモンに触れあっていきたいわ。研究者としても進まなアカンしな」
「いつかあの幻のポケモンとも友達になれるといいですね」
俺もいつか、まだ見たことないポケモンたちと――
「ああ、いつか絶対なってみせる。今度は僕が幻のポケモンに会いに行くんや」
また風が強く吹いた。心なしか風は優しく触れているようだった。
***
海を進む小さな小船があった。
それに乗るのは2人の人間と小さなニャースだ。
彼らはロケット団。昨夜の惨事から逃げて休息を取ったあとこうして海を渡っている。
人間のムサシとコジロウはオールで小舟を精一杯漕ぎ、ニャースは船頭で腕を組んで立っている。
「昨日は散々だったわ。けど私たちはこんなことでへこたれない」
「そうだ。まだ見ぬ幻のポケモン、世界のどこにいたって俺たちが手に入れてやるぜ」
「どんな大波小波が来ようともニャーたちは乗り越えてやるニャ」
「そうよ、私たちは広い海だって銀河だって渡ってみせる」
「夢と希望の光輝く白い明日のために」
「成果を上げてニャーたちは幹部昇進支部長就任、ニャーんてニャ!」
3人はこれから先の未来を想像して笑う。
「「「なんだかとってもいい感じー!!!」」」
***
晴天の下、俺たちは次の町に向かって歩き出した。
辺りを見ればポケモンたちが走り泳ぎ飛び、眠り食べ遊んでいる。
そんなポケモンたちを見て思い出されるのは昨日のことマサキさんと話したこと。
「マサキさんが言ったように人間のことが嫌いなポケモンはいるし、これから嫌と言うくらい会うと思う」
悲しい思いや悔しい思いもたくさんするだろう。
「だけど俺はそのポケモンが人間を憎んでいても、そのポケモンとの絆を諦めたくない」
「私も手伝うわ。あんたってほったらかしたら絶対めちゃくちゃして無茶するでしょ」
「私も、サトシとカスミと一緒に色んなポケモンと仲良くなって、みんなと友達になりたいよ」
そう言うリカとカスミは優しく自信のある表情だ。
みんな気持ちは同じなんだ。だったら怖いものなんてない。
前を向いてこの先待ち受ける冒険目指して小さな一歩だが進み続けよう。
大事な仲間とポケモンと一緒に。
リカのクチバジム戦がさっさと終わらせてしまってサトシの苦労はなんだったんだってなってるような気がしますが、こう書く方がいいかなと思いました。
今回登場した「幻のポケモン」は誰とは決めていません。ゲーム内で幻のポケモンとされているポケモンかもしれませんし、アニメで出た大きなカイリューのようなポケモンかもしれませんし、まだ判明していないポケモンかもしれません。
人間がまだ見つけていない謎や不思議の象徴のようにしました。
アニポケの脚本家である首藤剛志の世界観、メッセージ性の高い物語は大好きです。
首藤さんは「人間とポケモンの共存は可能か」というテーマを考えていたそうです。人間とポケモンは違う生き物だから本当に考えていることは伝わっていないかもしれない。その中でサトシたちは葛藤していく。
儚くて寂しげだけど美しい、そんな世界が大好きです。
もちろん今のアニポケの人間とポケモンが手を取り合って幸せに暮らしている物語も大好きです。
そんな大好きなポケモンの世界を自分の理想を混ぜながらこれからも書いていきたいです。