サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題)   作:エキバン

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半年もお待たせして申し訳ないです。
今後もできる限り書いていきたいと思います。



海だ水着だ アオプルコ 前編

俺たちの目の前に広がるのはまっさらな砂浜と広大で綺麗な海。

砂浜には多くのビーチチェアやパラソルが並び、食堂であるオシャレな海の家が存在している。

ここの名前はアオプルコ、カントー屈指のビーチリゾートである。

 

空にはキャモメやペリッパーが飛び、砂浜にはクラブやヘイガニが歩き、海にはタッツー、サニーゴ、ホエルコ等の水ポケモンたちが泳いでいた。

 

シーズンではないとはいえ、そこは水着を着ている多くの人たちで賑わっていた。

 

「ここがアオプルコ……」

 

「本当にここに来たんだ……」

 

リカとカスミが感動に打ち震えるようにつぶやく。その目をキラキラと輝いていた。

 

アオプルコはカントー地方の本土から離れた場所にある。移動手段は連絡船か水ポケモンの移動のみ。俺たちは前者でここまでやってきた。

一度は訪れたいと思っていたアオプルコ、シーズンになればたくさんの人で溢れてしまい、海を楽しむどころじゃない。

だから人がそこまで多くない時期に来てしまおうと俺たちは考えた。

そして今に至る。

 

 

 

***

 

 

 

「それじゃ私たち着替えてくるから」

 

「おう待ってる」

 

「えへへ、水着楽しみにしててね」

 

「おういってらっしゃーい」

 

カスミとリカが着替えるために女子更衣室に行ってしまった。

その間に俺も着替えるとするか。

 

野郎の着替えは早い。

服を脱ぐ、海パンを履く、以上

ちょっと隠れる場所さえあれば数秒で着替えられる。

おかげでカスミとリカよりも早く砂浜に到着一番乗り!

 

視界には広大で青い海が広がっている。

ザザザッ、ザザザッと静かに波が砂浜に押し寄せては帰っていく。

 

正に絶景のオーシャンビュー。この景色だけで自分の悩みなんて小さなことだと思える。

母なる海は偉大なり。

ふと、向こうが騒がしいことに気付いた。

 

「行くぞおめえら! ビーチバレーこそ俺たちの青春! この海だけじゃない、世界の海を制覇するぜえ!」

 

「「「「「いやっはあああああ!!」」」」」

 

「それじゃあ試合形式で練習だ、みんなシクヨロでーす!」

 

「「「「「シクヨロでーす!!!!」」」」」

 

すごい迫力。あのお兄さんたちめちゃくちゃ熱血でビーチバレーしてるよ。

みんな見事な小麦色の肌で、あちこちに貴金属の装飾して、いかにもチャラ男って感じなのに――おっと、人を見かけで判断するなんて失礼だよな。

ふと見るとボールがこちらに転がってきた。

 

「やあやあごめんごめん少年」

 

チャラお兄さんが手を振りながら走って来た。俺はボールを拾い上げるとチャラお兄さんへと手渡す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう少年、どうだい? 君もビーチバレーやらないかい?」

 

「誘ってもらって嬉しいですけど、友人たち待たせてるので」

 

「そうかい、興味を持ったらいつでも話しかけてくれよ。ビーチバレーは誰でも楽しめるからね、シクヨロでーす!」

 

「あはは、シクヨロでーす……」

 

チャラお兄さんはニカッと笑い白い歯を見せる。そして走り去った。

 

お兄さんたちを見送っていると、後ろから砂を踏む足音がした。

 

「「お待たせ」」

 

振り返ると、その眩しい姿に魅了された。

 

カスミは深い青のビキニ姿、大きく形の良い双丘が強調される。

健康的な曲線が陽の光を浴びて白く輝く。

リカは淡い水色のビキニ姿、真白な肌が惜しげもなくさらされている。

豊かな胸、さらにほっそりしたくびれに膨らんだ臀部、、肉付きのいい太ももが美しい。

 

あまりの美しさに飲まれる感覚はデジャヴ、あれはサントアンヌ号で彼女たちのドレス姿を目の当たりにしたときだ。

 

「ふふーんどうかしら?」

 

「に、似合う、かな?」

 

ほんのり頬を赤らめる2人がとても愛らしい。

俺は胸の内の正直な感想を告げる。

 

「マジ最高っす!!」

 

親指を立てる。

 

「ま、まあ当然よね!」

 

「ありがとう!」

 

顔を赤くして綺麗な笑顔を見せてくれるカスミとリカ。

その姿が海にとても似合って見ていて胸が熱くなる。

それを誤魔化すように俺は口を開く。

 

「俺はどうだ? 見よ、この逆三角形の肉体を!」

 

俺は左肩を下げ右肩を上げたサイドチェストを見せつけニカッと笑う。

 

「いやいや逆三角形じゃないわよ」

 

「こ、これからだよ。男の子はまだまだ大きくなれるから、ね?」

 

ぐぬぬ、まだ10歳だとそんなに筋肉つかないか。

あれ? じゃあ俺なんでポケモンと殴り合いとかできるんだ?

……まいっか。

 

「よっし、じゃあ早速遊ぼうぜ!」

 

「「おーっ!!」」

 

「みんな出てこい!」

 

俺は言葉と同時に自分の持つボールすべてを空中に投げ、それを合図にリカとカスミも同様に自分の持つボールを投げる。

ボールから現れる俺たちのポケモン。

みんな足元にある砂浜、どこまであるかわからないほど広い大海原に目を輝かせている。

 

「よしみんな思いっきり遊ぶぞ!」

 

『ピカ!』

 

ピカチュウをはじめに、ポケモンたちが返事をする。

おっと大事なことを忘れてた。

 

「ヒトカゲは海に近づかないように気を付けろよ」

 

『カゲ!』

 

炎タイプのヒトカゲには重要なことだからな。尻尾の炎が消えたら大変だ。

 

「ブースターも気を付けてね」

 

『ブスタ!』

 

リカも炎タイプのブースターに注意を促す。

 

ポケモンたちはそれぞれ遊んでいる。

ゼニガメ、シャワーズ、ヒトデマン、スターミー、コダックの水ポケモングループは広い海を元気に泳いでいる。ちなみにコダックは浮き輪の上で気持ちよさそうに寝ている。

バタフリー、スピアーの飛べる組は海を興味深そうに見ていた。森で暮らしていたから珍しいよな。

ニドリーノ、ニドリーナのペアは砂浜を走り回っている。

ピカチュウ、ピッピ、フシギダネ、サンダース、ヒトカゲ、ブースターの陸上組は泳げる人は泳いでいるが、できない人は砂浜で砂遊びをしている。

 

『ピカピカチュウ!』

 

するとピカチュウが走り出し勢いよくジャンプする。そして海に飛び込んだ。

水しぶきは発生しない。なぜならピカチュウをスターミーが受け止めたからだ。

 

『ピカチュウ!」

 

『フゥ!』

 

スターミーに乗ったピカチュウは海を自在に移動する。

その姿はまさに『なみのりピカチュウ』

 

『ピカピー!』

 

俺に手を振るピカチュウ、あはは可愛いなー。

 

「ねえサトシサトシ」

 

「どうした?」

 

声をかけられ振り返ると、もじもじとしたリカ、隣には同じく真っ赤で照れたような顔のカスミ。

 

「サンオイル、塗ってほしいな」

 

リカがオレンジ色のボトルを俺に差し出してきた。サンオイルと書かれたそのボトルを見て俺は少し驚く。

 

「俺が塗らなくても2人で塗り合いっこすれば――」

 

「私今動きたくなーい」

 

「わ、私も!」

 

『でんこうせっか』もびっくりな素早い動きで2人は砂の上にある2枚のシートにうつ伏せに寝転がる。そのシートはちょうど俺を挟むように敷かれていた。

謀られたか。

俺は観念して砂の上に座った。

 

「了解、じゃあリカからな」

 

ボトルの蓋を開けて中身を自分の手のひらへと出していく。ある程度溜めると俺はリカの背中を見下ろす。シミ一つない真白な背中の美しさのドキリとしながら、俺は両手でそこにサンオイルを広げていく。

 

「んんっ……!」

 

甘い声が漏れた。

 

「わ、悪い!」

 

「う、ううん! ちょっとくすぐったいだけだから大丈夫だよ。続けて……」

 

そう言われ俺は再開する。

 

「くっ……んあ……あん……」

 

顔が熱いのは日光だけじゃないよな。背中なのにその肌は柔らかくて、手を動かすたびにリカの甘い声、テラテラ輝く柔肌、触覚と聴覚と視覚を同時に攻められている気がした。

これくらいでいいかな。

 

「よし終わり、じゃあカスミ「待って」え?」

 

「あ、あの、脚もお願い……お尻も……」

 

「いや、それは……」

 

「塗ってあげなさいよ。もちろん私もね」

 

「ええ……」

 

リカの懇願の眼差しとカスミの圧力、逃げられない。

 

水色のビキニパンツはリカの形の良いお尻を包み、そこから細く長い脚が伸びている。

塗るだけ塗るだけ塗るだけ、なにもおかしくない、緊張する必要はない、やるうんだ俺がんばれオレ!

 

俺は裏腿に手のひらで触れる。背中よりも柔らかい感触、振り払うように俺は膝裏、ふくらはぎへと手を動かす。

 

「んんっ……あっ……」

 

太ももとふくらはぎを何往復もしていると必然お尻が後になる。

まるで先延ばしで逃げているようだ。ここは覚悟を決めるしかない。

 

俺はオイルを手のひらに溜めると、リカの丸い臀部に触れた。

 

「ひゃん!」

 

一際、大きな声、しかし、ここで止まるわけにはいかない。俺は力を抜いてオイルをリカのお尻全体に伸ばしていく。

 

「やぁ……んあ……」

 

ビクビクと震えるリカの身体、絶え間なく漏れ出る甘い声、それらを振り払い、そして――

 

「よし、今度こそ終わり、次カスミ!」

 

俺は座ったまま回れ右をして手のひらにサンオイルを溜める。「あ」というリカの寂しげな声は無視。「あらら」とカスミは言う。彼女の背中はリカと同じくらい白く艶やかだ。俺は同じようにサンオイルを背中に伸ばしていく。

 

「ひぃ……やん……!」

 

カスミから漏れた嬌声。

それは普段の気の強いカスミから想像できないギャップのせいなのか、背筋がゾクゾクとした。そのまま俺は背中全体に塗っていく。

 

「ちょ……ま……は、げし……あぁん!」

 

気にしない気にしない、リカの背中よりも少し弾力があるとか気にしない、真っ赤なカスミが可愛いとか気にしない。早く終わらせるんだ!

塗り終えた俺はカスミの下半身に移行。

 

肉付きのいいしなやかな脚。そしてリカよりも筋肉がついているのか、カスミのお尻はキュッと引き締まった美尻だ。だが意識したらダメだ。塗るんだ!

両手で美尻にサンオイルを塗る。今回はお尻、太もも、ふくらはぎまでを何往復もさせていく。

 

「あんっ……くぅ……」

 

甘い声を聴かないようにしながら、作業を進めていく。

 

「さ、とし……だ、めぇ……」

 

ここまでだ。

 

「よし終わり」

 

真っ赤なカスミが上目遣いで俺を見てた。

俺は咄嗟に顔をそらす。

 

「あとは、それぞれで、たのむ……」

 

「「……うん」」

 

うわああああまずい、なにかが俺の中で渦巻いてる、熱くてバクバクでぐるぐるしてて。

今2人のこと見れない――

 

「ねえサトシ」

 

リカの呼びかけ、それがスイッチとなったのか。

 

「うおおおおおおお!!」

 

俺は走り出した。海に向かって、そこで遊ぶポケモンたちに向かって。

 

「ピカチュウウウウウ!! みんなあああああ俺も遊ぶぞおおおおお!!」

 

ピカチュウたちのギョッとした顔を見ながら俺は海に飛び込んだ。

 

 

 

***

 

 

 

「そーれ!」

 

「きゃ! もうやったわねそりゃ!」

 

互いに水をかけあってイチャイチャ百合百合とじゃれあうリカとカスミ。

いやあ頑福頑福。

 

美しい光景を見ている俺は、泳ぎに泳ぎまくって疲れ果てていた。

俺は砂浜で体操座りになって、遊んでいるリカとカスミとポケモンたちを眺めていた。

いやあ、さっきの俺はどうかしてたな、うん、日光浴びすぎておかしくなったのかな、うん、そうに違いない。

 

ふと視線の向きを変えると、そこにはさっきのチャラお兄さんたちがビーチバレーでまだまだ盛り上がっていた。

するとチャラお兄さんたちに近づく集団。こちらもチャラお兄さんたちだ。

 

「YoYo! あんたらもビーチバレーか。だったら俺たちも混ぜてくれYo!」

 

「「「「「YoYoYo!!!」」」」」

 

「いいぜいいぜ、くるもの拒まず、だけど俺たち負け知らず、お前らの挑戦、断りません、かかってきな、シクヨロでーす!」

 

「「「「「シクヨロでーす!!!」」」」」

 

「YoYo! 話がわかるぜ、嵐が騒ぐぜ、ブラザーたち、焦んなくていい、華麗なプレイで、やってやるう!」

 

増えたよ、増えちゃったよ。チャラお兄さんたち、なんかラップバトルもどき始めちゃったし。

それにしてもビーチバレー流行ってるのか?

そう思っていると、何かが左側から転がってきた。ビーチバレー用のボールだ。

 

「すいませーん」

 

ボールが転がってきた方向から声、持ち主なのだろうと思い俺はボールを持って立ち上がる。

振り返って女性に渡そうとして驚いた。

 

「エリカ?」

 

「サトシさん?」

 

女性はタマムシシティジムリーダーのエリカ。それも緑色のビキニの水着姿。腰には同色のパレオを巻いて優雅さが醸し出されている。ジム戦以来の再会だ。

さらに胸元を見ると大きな果実が瑞々しく実っていた。着物の時は全然目立ってなかったのに、どこにあんな暴力的に大きな胸を隠してたんだ?

驚きは、以前は見えなかったエリカの艶のある肌にドキリと胸が高鳴った。

 

「サトシさん! お会いしたかったですわ!」

 

エリカが嬉しそうな声で俺まで駆け寄り俺の両手を彼女の手で包み込み、太陽に負けないくらいの笑顔で見つめてきた。

 

『サトシさん!!』

 

後ろから複数の女性の声、視線を向けると見覚えのある人たち。彼女たちはタマムシジムのトレーナーたちだ。全員が水着姿でこちらに向かっていた。

 

「ど、どうもみなさん」

 

「サトシさん、お久しぶりです!」

「あれからバッジは集まりましたか?」

「前お会いした時より、とってもかっこよくなってますね!」

「またサトシさんのバトルが見てみたいです!」

「私、サトシさんのことを想うと、身体が熱くなって……」

 

迫りくる美女たちに気圧されながらも挨拶をする。

 

「あ、エリカ」

 

「エリカたちも来てたんだ」

 

後ろからカスミとリカの声がした。いつの間にか近くに来ていたのか。

 

「カスミさんリカさんお久しぶりですわ!」

 

「うん久しぶり、ジムトレーナーのみなさんも」

 

「みんな久しぶりね、ジムはお休み?」

 

「はい、ジムをお休みにしてみんなで来ましたの。まさかサトシさんたちにお会いできるなんて、はぁ……幸せですわ」

 

そんな大げさな。

けどそう言ってもらえると嬉しい。なんだか照れくさくて、俺は話題を無理やり変える。

 

「女の子だけだと、声かけられたんじゃないか?」

 

「ええ、何度も殿方に声をかけられましたわ」

 

「そっか、大丈夫だったのか?」

 

「ええ、丁重にお断りにしましたわ」

 

「そっか、さすがエリカ」

 

たくさんのトレーナーのまとめ役は伊達じゃないよな。

 

「それにどうしてもしつこい方にはこのお香を嗅いでいただきましたわ」

 

エリカから手のひらサイズの小さいドーム状の物体を手渡される。これお香なのか?

 

「え、なにこれ? なんのお香?」

 

(わたくし)が調合した、一種の催眠状態にするお香ですわ」

 

「さ、催眠?」

 

「これを嗅いだ方々にこう言いましたの『あなた方はビーチバレーがしたくな~るしたくな~る』と。そしたらあちらの砂浜でビーチバレーに興じてしまいましたわ」

 

「あれはあんたの仕業か!」

 

にこやかに恐ろしいことをなさるこのお嬢様は。知らないうちにお香を嗅がされたりしないよな、エリカはそんなことしない人だよね……しないといいな。

 

「サトシさんたちもこちらへいらっしゃいません? 一緒に遊びましょう」

 

再開した友人からの魅力的なお誘い、リカとカスミに視線を向けると、2人はニコリと頷いた。

答えはもちろん、

 

「よっしゃ遊ぼうぜ!」

 

エリカとトレーナーの女の子たちが花開いたようにわらってくれた。

 

「ピカチュウたち呼んで荷物取ってくるから、リカとカスミはエリカたちについて行ってくれ」

 

「そんな悪いわよ、私たちも」

 

「いいっていいってこういうのは男の仕事だからさ、みんなで先に遊んでてくれよ」

 

「わかった、じゃあお願い」

 

任された俺は走る走る。ピカチュウがまた「何事か」という顔をした。

 

「みんなああああ! 向こうにエリカたちいるからそこ行くぞおお!!」

 

『ピッカチュウ!』

 

合点がいったという顔になったみんなはこっちに向かって走って来た。

 

「俺は荷物持っていくから先に行っててくれ」

 

全員が「はーい」という具合で返事をすると、走ってリカとカスミを追いかけた。

俺は荷物を置いてあるパラソルまで到着した。

 

ふと遥か前方を見た。

波打ち際、そこに立つ一人の水着姿の女性、麦わら帽子を被っている。

 

後ろ姿でもわかるそのスタイルの良さに俺は思わず見惚れた。

 

麦わら帽子を被ったその女性がゆっくりと振り返る。

そこには見覚えのある綺麗な顔があった。

 

「サトシ君……?」

 

「ナツメさん!」

 

そこにいたのはヤマブキジムジムリーダーのナツメさん。

黒のビキニ姿の彼女は豊満な胸が目立ち、キュっとしたくびれ、そこから長い美脚が伸びている。

出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる見事なスタイル。

彼女もジム戦以来の再会だ。

 

「まさかこんなに早く再会するなんて思わなかったわ」

 

「ええ俺もです。ナツメさんがここにいるなんてビックリしました」

 

「あら、私にこんな開放的な海は似合わないってことかしら?」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

慌てて言うとナツメさんはクスリと笑う。

 

「うふふ、ごめんなさい。冗談よ、あなたはそんなこと言わないわよね」

 

彼女の冗談だと分かり、思わず笑ってしまう。

ほんとにこの人は最初に会った時と印象がガラリと変わったな。最初は冷血な人だと思っていたのに今は同じ冷たいでもクールビューティーなとても魅力的な女性だ。

 

「海なんてもう何年も行ってないから休みを取って来てみたの。潮の香りとか海風の感触ってこんなに気持ちいいものなのね」

 

髪をかき上げ微笑みをたたえた瞳で海の向こうを見つめるナツメ。

その光景はまるで一枚の絵画のように美しく神秘的で目が離せない。

 

「「ナツメさん!?」」

 

聞き慣れた声で我に返る。カスミとリカもナツメとも再会したことに驚いていた。

 

「あら、リカさんカスミさんお久しぶりね」

 

リカとカスミが目を見開いた。

2人とも本日2度目の知人との再会だもんな、そりゃ驚くだろう。

 

「まあ、ナツメさんではないですか!」

 

「エリカ……」

 

エリカが両手を口の前で合わせて喜色満面の笑みを浮かべる。

対するナツメはどこかよそよそしい。

 

「2人は知り合い?」

 

「はい、以前ナツメさんが『ジムリーダーのことをもっと勉強したい』とタマムシジムを訪ねてきましたの」

 

確かに同じ地方ジムリーダー同士で交流があるのは何もおかしいことはないな。それに2人は歳も近い女性同士で話もあうのだろうな。

そんなことを考えているとナツメさんが俺の後ろに隠れてしまった。

まるでエリカを避けるように。

 

「あの、ナツメさん?」

 

「……彼女は、エリカは苦手なの」

 

「え、どして?」

 

「いろいろ勉強させてくれたことには感謝してるわ。だけど、話してると距離が異常に近いし、必要以上に触れてくるし、なんだか目が怖いの」

 

あーそれはまあ、エリカの趣味というか趣向というか性癖というか。

 

「もうひどいですわ。(わたくし)はナツメさんと仲良くしたいだけですのに」

 

「そこに邪なものを感じるのよ」

 

ベビィポケモンのように小さくなってプルプル震えるナツメさん。

だが、エリカに対して恐怖とか嫌悪の表情は感じられず、どう接したらいいかわからないのだろうと思う。

よし、ここは俺が友情のキューピットとなろう。

 

「エリカは悪い人じゃないですし、ナツメさんも同じジムリーダーなんだから、俺も仲良くしてほしいです」

 

「まあサトシさん、相変わらずお優しいのですね。嬉しいですわ」

 

「エリカはエリカで自重を覚えてくれよ」

 

「むぅ、まあ確かに無理矢理は良くないですわね」

 

エリカはほんの少し唇を尖らせるが納得してくれた。

 

「そうそう普通に仲良くすればいいんだよ」

 

エリカの手が俺の両手を優しく包み込んでくれた。あ、ひんやりして気持ちいい

 

「ではまずサトシさんともっと仲良くなりたいですわ。それはもう深い深いところまで……うふふふ」

 

笑みを深めるエリカと見つめ合っていると割って入る2人の少女。リカとカスミだ。

 

「「それは結構よ(だよ)」」

 

リカとカスミは若干ほっぺを膨らましてジーッとエリカを見る。

ションボリとするエリカ。

面白いやり取りを見ながら俺はナツメさんに向き直す。

 

「まあなんにせよ、たくさんの人とかかわって仲良くするのは大事ですよ。ナツメさんも、その、いろいろあって大変でしたけど、これからは友人として、同僚のジムリーダーとしてエリカと仲を深めてくれると俺も嬉しいです」

 

ナツメさんはエリカと俺を交互に見ると軽く笑って頷いた。

 

「そうね、サトシの言う通りね。エリカ、よそよそしくしてごめんなさい。これからも友人として付き合ってほしいわ」

 

「はいもちろんです。ジムリーダーとしていっしょに頑張りましょ」

 

エリカとナツメさんの仲が少し良くなった。

よしよし、これで万事解決だ。

 

「それから、まずは貴方との仲をもっと深めたいわ」

 

「俺ですか?」

 

「ええ、だからお願いがあるの」

 

「なんですか?」

 

真剣な顔になるナツメ、彼女が前に進みたいというなら俺にできることならなんでも聞いてあげるつもりだ。

 

「私のことを『ナツメ』と呼び捨てにしてほしいの、エリカにしてるみたいに。それから敬語じゃなくてタメ口もお願いしたいわ」

 

意外なお願いだ。確かに呼び捨てにすると距離がググッと縮まった気はするよな。

 

「エリカよりも年上の私は呼び捨てにしづらいかしら?」

 

「いえ、ナツメさ――ナツメがそうしたいなら、そうするよ」

 

いざ言うと照れくさい。けどナツメは嬉しそうな顔になる。

 

「ありがとう。私の方も『サトシ』って呼び捨てにしたいわ」

 

「もちろん、そうしてくれたら嬉しい」

 

見とれるくらい綺麗な笑顔のナツメ。

 

「ありがとうサトシ。それから――」

 

ナツメはリカとカスミの方を向く。

 

「貴女たちにも、呼び捨てとタメ口をお願いをしていいかしら?」

 

「ええもちろん私たちもOKよ」

 

「これからもよろしくねナツメ」

 

遠慮もわだかまりも何一つない。旅で出会った大事な友人との絆が深まった気がした。

 

 

 

***

 

 

 

ふと気になることがあった。

 

「そういえばナツメは一人でアオプルコに来たのか?」

 

「ええ、ジムトレーナーのみんなはジムを守ってくれてるし、両親もジムのことを引き受けてくれたわ」

 

身近な人間関係も良好でなによりだ。けど俺が言いたいのは別のことだ。

 

「女性一人だとさ、ほらナンパとかあるじゃん」

 

一瞬キョトンとした顔になるナツメ、次の瞬間にはくすりと笑った。

 

「実を言うと、1人の時に結構声かけられたのよね」

 

「やっぱりそうだったんだな、その、嫌な思いしなかったか?」

 

「あら心配してくれてるの? うふふ、嬉しいわ。けど追っ払えたから平気よ」

 

「そうか」

 

「ええ、しつこい男たちには催眠術をかけたわ。『ビーチバレーに全力で青春をかけなさい』って。向こうで頑張ってるわよ」

 

「あれはあんたも絡んでたのか!」

 

昨今のジムリーダーは平気で催眠使ってくるのか。

あまりの恐ろしさに怒らせまいと誓う俺であった。

 

 

 

***

 

 

 

海と砂浜で遊ぶポケモンたちにエリカとナツメ、タマムシジムのジムトレーナーのポケモンたちも加わった。

エリカのラフレシア、ウツドン、モンジャラ。ナツメのフーディン、スリーパー、バリヤード、ヤドラン、タマムシジムの小さな草ポケモンたち。

俺たちのピカチュウをはじめとしたポケモンたちと楽しそうに遊んでいる。

 

種族もタイプも違うポケモンたち、彼ら彼女らが同じ場所で遊んでいる光景はどこか神秘的で永遠に残しておくべきもののように思える。

 

こんな光景をどこでも実現できるようにするのが、トレーナーの役目なのかもしれないな。

 

「サトシー! こっちで遊ぼうよー!」

 

リカが俺を呼んだ。

 

そこでは仲間のカスミとリカが、友人であるエリカと彼女を慕う女性たち、そしてナツメが俺に笑顔を向けて待っていた。

 

今日という日で少しだけ彼女たちとの絆が深まった気がする。

自分にとって大事な人たちの元に、俺は歩き出す。




前々から書きたかった水着回です。
今回からポケモンたちの鳴き声は『』で囲うことにします。

長いことお待たせしてしまった皆さん大変申し訳ないです。
力不足の身ではありますが、これからも応援していただけると嬉しいです。
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