サトシに憑依したので冒険してみようと思う(改題) 作:エキバン
オーキド博士の言葉は思い寄らないもので驚いてしまった。
「違う地方に行くって、俺たちまだカントー地方もきちんと旅してないんですよ?」
『うむ、確かにそうじゃ。じゃがワシは君たちをトレーナーとして一歩成長させるためには1日だけでもよいから他の地方のことを知り見聞を広めることも大事なのではないのかと考えたのじゃ』
確かに、カントー地方にはいないポケモンをこの目で見るのも大事かもしれない。
「シゲルやナオキ君はワシの提案を受けたぞ。シゲルはシンオウ地方、ナオキはイッシュ地方に1日だけ行ったぞ」
あいつらに先を越されたか。だったら俺も負けてはいられないな。他の地方にはまだ知らないポケモンがたくさんいると聞くからな、そう考えると非常に楽しみな提案だ。
「サトシ、どこに行く?」
「そうだな、どうせならシゲルとナオキとは違う地方がいいけど……」
となると残りはジョウト、ホウエン、カロス、アローラ、ガラル、etc……いっぱいあるな、どこにしようか。
『まあ行く地方は1つだけでなくてもいいからの、ゆっくり選ぶといい』
オーキド博士太っ腹じゃん、ちょっと尊敬しますよ。
「2人はどこか行きたいところはあるのか?」
「そうねぇ……カロスかしら」
「うん、私もカロスがいいよ」
うむ、リカとカスミはカロス地方をご希望か……よしそれなら!
「決めました。俺たちカロス地方にします」
カントーの旅を一時中断し、カロスでほんの少しだけの短い旅が始まる。
***
この世界で初めて乗った飛行機に揺られること数時間、あっという間にカロスの空へと到達した。
飛行場に着陸した俺たちは、タラップから地上に降り立った。
「着いたぜカロス地方!」
「やったー!」
「いえーい!」
ミアレシティ、「芸術の都」「花の都」と呼ばれている一番の都会。
その大きな都市は空から見ると円状になっている。さらに街は北部のノースサイド、南部のサウスサイド、中心部のメディオプラザに大きく分けられている。街の中心にはシンボルともいえるプリズムタワーが大きくそびえ立つ。
プリズムタワーの足元は円状の広場となっていてさらにその周りをビル群が囲んでいる。
カントーとまったく同じところも存在する。それは人とポケモンが一緒にいること、まるで友人や家族のように親し気で互いに笑い合っている。
カロス有数の企業が本社を構えている
カントーのヤマブキシティとタマムシシティにも匹敵する。
芸術のような建物が立ち並びオシャレな人たちが歩き、レトロな車が通り、美しい自然も同化しているその街並みはまるで映画の世界のようだ。
「素敵! どこも綺麗で華やかできらきらしてるわ!」
「絵画の中に入ったみたい!」
「ねえねえどこ行く?」
「そうだね、まずは――」
目をキラキラ輝かせキャイキャイはしゃぎ出した美少女2人、だけど――
「ストップ!」
「なによ?」
「どうしたの?」
「オーキド博士に言われただろ、まずはカロス地方のポケモン研究家、プラターヌ博士に挨拶に行くんだ」
「「そうでした」」
照れ笑いを浮かべる2人と共に俺は目的地へと向かう。
しばらく歩くと目的の建物が見えた。大きな看板には『プラターヌ研究所』と書かれていた。オーキド研究所のシンプルさとは違ってどこかオシャレに感じる。あ、オーキド博士のことバカにしてないよ。
大きな扉の前でチャイムのボタンを押すとお馴染みの『ピンポーン』という音が鳴る。
「おや、お客さんかい。なにか御用かな?」
成人した男性の声が返ってきた。
「いきなりの訪問で失礼します。俺たちはオーキド博士の元でポケモントレーナーになった者です」
「ああ、君たちがオーキド博士の言っていた3人だね。扉は開いているから入ってくれたまえ」
「「「お邪魔します!」」」
扉が開き中に入ると、玄関はまるで大広間のようで、2階に行くための中央階段がまず目に入る。
すると右の廊下から足音、そこから一人の人物が現れる。
そこに立っているのは長身のスラリとした中年くらいの男性。整った顔立ちは無精ひげがアクセントとなり大人の渋さ引き出しているようだ。服装は青いワイシャツに白衣を纏っている。
「ようこそプラターヌ研究所へ」
客室に案内された俺たちはプラターヌ博士と向かい合っていた。
「それでは改めて自己紹介だね。初めまして、僕がポケモン研究家のプラターヌだよ」
「マサラタウンのサトシです」
「同じくマサラタウンのリカです」
「ハナダシティのカスミです」
「「「よろしくお願いします」」」
「うんうん、3人とも元気いっぱいで素晴らしいよ」
「私たち、カロス地方のことを学びに来たんですけど、まずはどうしたらいいでしょうか?」
「カロス地方ってとっても綺麗で魅力的だって思いました。もっとその魅力を知りたいんです」
リカとカスミの質問にプラターヌ博士は感心したように何度も頷いた。
「うむ、なるほど。カロス地方の魅力だけど、それは君たちが直接カロスの空気を感じることが一番だろう。まずはミアレシティを見学してきたまえ。何か困ったことがあればこの研究所に来てくれ、僕は今日一日はここにいるからね」
「「「はい!」」」
「うん良い返事だ。自分で言っておいてなんだけど、丸投げみたいで申し訳ない。けれど僕の考えでは自分で見て感じてもらうのが一番なんだ」
「はい、プラターヌ博士のお考えは正しいと思います」
「ははっ、ありがとう」
「では行ってきます」
***
プラターヌ研究所を後にした俺たちはミアレシティのストリートで地図を見ながら話し合っていた。
「それじゃあどこ行こっか」
「ねえねえ、このブティックとかどう?」
「うーん、ここのスイーツもいいなぁ」
再びキャイキャイとはしゃぎ出す美少女2人、しかしそうは問屋が卸さないのです。
「ちょいお待ちなさいよ」
「「ん?」」
「あのな、俺たちはあくまでトレーナーとして見聞を広めるためにここに来たんだぞ。遊びに来たんじゃないの」
「わかってるわよ。けど、他の地方の最先端の流行を知るのも立派に見聞を広めることよ」
「そうだよ、どんなことでも学べば無駄にならないんだよ」
「……む、そういうものか?」
言われてみれば、一流のポケモントレーナーはバトルの知識以外にも様々なことを知っているものだ。バトルばかりするのも良くないな。
「ねえねえあのパティスリー、有名なお店よ。行ってみましょう!」
カスミが溌剌と言うとリカも嬉しそうに頷いて急ぎ足で行ってしまった。女の子は甘いものが好きだからな。俺も甘いものは好きだ。わくわくしてきたぞ。
ミアレシティの街中のとある木、そこから生える草がガサリと少し動く、
『ケロ……』
そこからサトシたちを見つめる小さな影がいることに誰も気付くことはなかった。
***
その少女は母親と共にミアレシティに買い物に訪れていた。
「ちゃっちゃと用事済ませてランチにしましょう」
「うん、そのあとはいつものお店でお洋服見たいな」
少女は白のブラウスに黒のテーラードジャケットを羽織り、膝丈までの青のスカート、ブーツを履いている。
母親は黒のシャツにグレーのライダースジャケットを羽織り、デニムのロングパンツを履いている。
「よしじゃあ、行きますか」
ふと視界に入る人たちがいた。1人の少年とその前をあるく2人の少女、3人は楽しそうに談笑しながら歩いていた。
「あれ、あの人……」
少女は走って行く少年を見て、妙な既視感を覚えた。いつかどこかで見たことがある、そんな気がうする。
「どうしたのセレナ? 行くわよ」
「う、うん」
母親に呼ばれた少女――セレナ――は心残りがありながらもその場から立ち去ろうとしていた。
「ねえサトシ!」
「!」
少女の1人が少年の名を呼んだ。その名前を聞いてすべてが繋がった。
――大丈夫?
――ほら、一緒に行こうぜ
――俺、マサラタウンのサトシ!
「ごめんママ先に行ってて!」
「ちょっとセレナどうしたの!」
セレナは少年に向かって走り出した。ここで彼に会わなければこれから先会うことがなくなる。そんな焦燥感に駆られて、ここで彼を逃がしたくない。そんな強い感情が脚を動かしていた。
距離が詰まる。残り数メートル。あと少し、あと少し。セレナは手を伸ばす。
幼いころのたった一度だけの出会い、だけどずっと心の中で輝き続けていた。
その輝きが目の前にいる。だから手を伸ばすんだ。
自分の手が彼の腕を掴む。届いた。
「あなた、マサラタウンのサトシ、君……だよね?」
目の前の少年、数年前の記憶にある姿に比べると当たり前であるが成長している。しかし、その顔立ちは記憶の中の彼そのもの。幼かさが抜け少年へと成長し精悍さもわずかに得たその姿にセレナの胸の奥が高鳴る。
「そう、だけど……君は? 俺のこと知ってるの?」
「っ!」
その言葉に高鳴っていた胸が僅かに痛む。ある程度の覚悟はしていた。「自分のことを覚えていないのかもしれない」ということを、だがいざそう言われるとショックはある。
「サトシ、その子は?」
「知ってる子?」
ずっと会いたかった男の子にばかり気を取られていたセレナは、サトシと一緒にいて親しそうに話す2人の少女を見た。
(サトシの友達? 2人ともすごく可愛い)
サトシの近くにいる2人の少女、片方は白い帽子を被りストレートの綺麗なロングヘア、ノースリーブにミニスカートの動きやすい服装が彼女のスタイルの良さを際立たせている。
もう片方は髪をサイドテールにし、ノースリーブシャツにサスペンダー、デニムのショートパンツのコーディネート。スラリとしながら出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる理想的なスタイルだ。
セレナ自身スタイルには自信があるが、思わず彼女たちに見惚れてしまう。
(もしかして、どっちかがサトシの彼女、とか……?)
チクリ、と先ほどよりも強い胸の痛みを感じた気がした。記憶の中で輝いていた思い出の少年にもう恋人がいる。長いこと会わなかったのだから仕方のないことかもしれないが、もしそうだとしても確かめたかった。
意を決してセレナは話しかける。
「あ、あの私はアサメタウンのセレナ。いきなり話しかけてごめんなさい」
「私はマサラタウンのリカです。サトシとは旅の仲間なんだ」
「私はハナダシティのカスミ。同じくサトシの仲間よ。それであなたは? サトシの知り合い?」
「は、はい、一度だけだけど、会ったことがあるの。あのサトシ、私のこと、覚えてないかな?」
「えーっと……ごめん、思い出せない。どこで会ったんだ?」
「ほらこれよ、あなたがくれたハンカチ」
「ハンカチ……あっ!」
***
いきなり現れ俺の知り合いだと言うセレナと名乗る女の子。
異国の地で見知らぬ美少女に声をかけられ見つめられ、俺は平静を保つのがやっとだ。
セレナはウェーブのかかった綺麗なブラウンロングヘアの美少女、おしゃれな服装は彼女の抜群のスタイルを引き立てている。
僅かに緊張しながら、俺は見つめてくるセレナのその綺麗な顔を見つめ返す。
俺は頭の中にあるサトシの記憶を探る。目の前の女の子の顔、ハンカチ、それらが繋がりパズルが完成するかのような、一瞬の閃きのような感覚が頭に浮かび、何かが嚙み合う。
「そうだ、あの時の麦わら帽子の女の子!」
「うんうん、そうその子が私なの!」
「思い出した、ごめんな忘れてて」
「セレナ!」
振り返るとおしゃれな服装の女性が少し驚いた顔でこちらに走ってきた。
「あ、ママ」
「『あ、ママ』じゃないわよ。いきなり飛び出して、まったくどうしたの?」
どうやらセレナの母親らしい。たしかに顔立ちは似ているし彼女も美人だな。
「ママ、彼、サトシっていうんだけど――」
かくかくしかじかとセレナは母親に説明した。
「ふむふむ、それじゃあこの子がセレナがずっと言ってた男の子なのね」
「ちょ、ママ! そんなずっとは言ってないから!」
「えー、だってセレナったらサトシ君とのこといっつも話してたじゃない」
「ち、違うの! そんないっつもじゃないの!」
「私は用事があるからその間に4人で遊んで来なさい」
「すみません、せっかく家族のお出かけなのに邪魔してしまって」
「いいのよ、セレナもサトシ君たちと一緒にお買い物したいわよね」
「もうママったら!」
「私のことは気にしなくていいわ。行ってらっしゃい」
***
セレナに連れられてきた建物は大きなブティック、最初に洗練されたデザインの店のロゴが目に入る。続いてショーウィンドウにはマネキンがモデル立ちしながら美麗な洋服を着こなしていた。お店の扉に女性客が入り、しばらくして別の女性客が出て、入って入って出て入って、と激しかった。
「ここがミアレシティでも人気のブティックよ」
セレナは喜色満面といった様子だ。彼女がいかにこのお店に来るのが楽しみだったのかが伝わってくる。
お店の中に入るとリカとカスミは子供のようなキラキラした表情になる。
「うわぁ! すっごい綺麗!」
「カントーじゃ見たことないブランドばっかりだよ!」
たしかに綺麗だし、お店にいる店員さんもお客さんも綺麗な人たちばかり。どことなく上品さが際立つブティックだ。しかし、男の俺はイマイチ心惹かれない。服なんて適当に着られればいいと考えてしまうからな。これは俺がいい加減なだけか?
「ここにはよく来るのか?」
「うん、ミアレシティに来たら必ずお店に入るようにしてるわ」
「ねえねえ、試着してみましょうよ!」
「そうだね、まずはあれとあれとあれ!」
「サトシはそこで待ってなさいよ」
もはや俺のことなど眼中にない乙女たちを前に、俺は何も言えずにいました。
場違いな俺は大人しく座っているしかないのかな。ピカチュウたちと遊んでいよっかな。
***
目の前に広がる色とりどりの綺麗な洋服たち、カロスの有名なブランドによる洗練されたそれらはまるで宝石のように輝いていた。リカとカスミの目はそれらに負けないほど輝き、試着したい服を吟味していた。そこでセレナは切り出した。
「あの、2人に少し聞きたいんだけど」
「なに?」
「どうしたの?」
「2人はその……サトシの彼女だったりするの?」
「「ええっ!?」」
セレナの意を決した質問に対し、リカとカスミは体をのけ反らさんばかりに驚いていた。
その顔はほんのりと赤く染まっていた。
「そ、そんな2人で彼女だなんて……」
「サトシはそんな、ふ、二股なんてしないよ」
「で、でもリカ、そういう形もアリなんじゃない?」
「そ、そうかな……た、確かに私、カスミも一緒なら、嫌じゃないかも……」
「ええ、私もよ。もしかしたらエリカとナツメもそうなるかもしれないけど、そこはよく話し合って……」
さらに赤い顔になったカスミとリカは焦ったり、ニマニマとなったり顔の『かわりもの』が激しくなっている。不穏な発言と共にどこか夢見心地なようにも見える。
はじめて聞く女性の名前も気にはなったが、こちらに意識を戻してもらわないといけない。
「あの……」
「あ、ご、ごめん、えと、私たちはサトシの彼女じゃないよ……」
「今のところは、だけどね」
「そうなんだ」
その言葉で伝わる。
「けど2人はサトシのことが……」
「……うん、そうだね。私、サトシのことが好き」
「ええ、私もサトシが好き。多分これから先、これ以上好きになれる男の人はいないかも」
しばしの沈黙。
「だからって遠慮はいらないよセレナ」
「え?」
「ずっと好きだったんだよね。その気持ちは簡単になくならないよね。それってとっても素敵なことだと思うよ」
「ガンガン行きなさい。じゃないとあのポケモンバカには届かないわよ」
「リカ、カスミ……」
「さあ、その第一歩としてサトシに色んな姿を見せつけるわよ」
「メロメロ大作戦だね」
「うん、頑張りましょう!」
同じ男を想う3人、しかし、そこに敵意や悪意は微塵もなく、暖かくて優しい絆のようなものが生まれていた。
***
サトシにとって、この待ち時間は凄まじい苦行だった。レディースのコーナーにいる場違いな男は、周りの女性客の好奇の視線にさらされる。せめて女子が1人でも近くにいれば、しかし3人とも試着中、これもポケモントレーナーの試練と思ってサトシは耐え忍ぶ。
「サトシー! いるー?」
「いるよー」
「そのまま待ってなさいよ」
「へーい」
あとどのくらい待たされるのだろうか。
さらに数分後。
「準備できたよ!」
「私も!」
リカとセレナの声だ。
「よっし、私も完了!」
カスミも準備できたようで、ようやく解放されるという安堵と彼女たちがどんな服装で来るのかという楽しみがあった。
「『せーの』でいくわよ!」
「「「せーのっ!!!」」」
現れたのは先ほどとは違う服を身に着けた3人の美少女。
リカの身を包むのは襟に赤いリボンを巻いた白のブラウスにミニのラッフルスカート、そこから白い美脚が伸びる。
カスミは襟の広いゆったりとしたチュニックにタイトなパンツを合わせている。見える鎖骨がセクシーさを醸し出し、タイトなパンツが綺麗な脚の形を魅せている。これが所謂キレイ系というものなのか。
肩を出したセーターにデニムのミニスカート、頭にオシャレなハットを被っている。丸見えな肩が色っぽく、ミニスカートの下、肉付きの良い白い脚が眩しい。セレナのスタイルの良さが全面に出ているようだ。
「「「どうかな?」」」
「ああ、みんな似合っててすっげえ可愛いし綺麗だ。リカのは可憐さが良く強調されているな。カスミは普段よりも大人びて見えるし、セレナは綺麗でかっこいいぜ」
「ふふーん、まあ当然ね」
「良かった~『変』とか言われたらどうしよって思ってたから」
「ありがとうサトシ」
3人とも顔はほんのり赤い。カスミは誇らしそうに胸を張り、リカは安堵と喜びの笑みを浮かべ、セレナは心から嬉しそうにサトシに熱い視線を送っていた。
「それじゃあ第2弾、いくわよ」
「「はーい」」
シャッと試着室のカーテンが再度しまる。
ここまで来ると慣れたもので最初の時よりは辛さは無く、むしろ彼女たちがどんな変身をするのか楽しみになっている。それほど先ほどの3人の姿はサトシの胸を高鳴らせた。
タンクトップの上にロングベスト、下はデニムのロングパンツを履いてパンクロックなスタイル。普段の大人しいリカとは違う活発なギャップがある。
真白な膝丈のワンピース、そこに麦わら帽子を合わせている。涼し気で清楚な雰囲気は勝気なカスミとのギャップがある。
膝まであるロングタイプのモッズコートが目に入る、コートの下はブラウスにレギュラータイを巻いている。そこにデニムパンツを合わせ、髪をポニーテールに結ぶとボーイッシュなイメージのファッションとなった。先ほどとは打って変わって魅せたファッションに瞠目した。
「その……正直に素直に言うとめちゃくちゃドキッとした」
「3人ともさっきとは違ったギャップのある服だから、今もドキドキしてる」
見惚れるように頬を染めるサトシ。
カスミ、リカ、セレナは先ほど以上に花開くような嬉しそうな顔になる。
気持ちをうまく言葉にできない4人はしばらくその場で時間を過ごした。照れてるような幸せを感じているような暖かい雰囲気がしばらく続いた。
***
美少女3人のミニファッションショーを終えた俺たちは店を出て、セレナのお母さんと合流。近くのカフェでお茶そして、これからどう過ごそうかと話していた。
するとセレナがなにやら思いついた様子だ。
「ねえ、サトシってポケモンバトルが好きなんだよね」
「ああ、カントーではジム巡りもしてバッジも持ってるんだ」
「私ポケモンバトルってどんなのか見てみたい」
「バトル見たことないのか?」
「テレビとかネットとかでたまにくらいかな。間近では見たことないの。ねえいいでしょお母さんサトシたちがバトルしてるとこ見ても」
「いいわよ。私はまだ買い物があるから、その間に行ってらっしゃい。サトシ君、カスミちゃん、リカちゃん、娘のことお願いね」
「「「はい!」」」
「どこだートレーナーさーん、俺とポケモンバトルしてくれー」
ミアレシティから少し離れた原っぱで俺はポケモンバトルの相手を探していた、のだが……誰もいない、トレーナーがどこにもいない。なぜだ、なぜトレーナーとエンカウントしないんだ。
「この辺り、旅をするトレーナーはよく通るみたいだけど、リーグ開催がしばらく先だから少ないのかもね」
セレナさん説明ありがとう、時期外れだとこうもトレーナーは見ないものなのか。
「ぐぬぬ、こうなったら野生のポケモンとバトルをするしか……」
そう思い原っぱのあちこちを見まわしていると、
『ヤコッ』
赤い小さな鳥ポケモンが俺に向かって飛んできた。
「あ、見たことないポケモン!」
ポケモン図鑑で調べると『ヤヤコマ』というポケモンだとわかった。
「へー可愛いわね」
カスミの言う通り、確かに愛嬌のある顔、だが臨戦態勢とばかりにその表情は真剣なものだった。
「よっしゃ、カロスでの初バトル行くぜ! ピカチュウ、君に決めた!」
『ピカチュウ!』
モンスターボールを投げると相棒のピカチュウが飛び出す。
ヤヤコマはピカチュウを鋭く見据え、高速で突撃してきた。
「『でんこうせっか』が来るぞ、かわせ!」
ピカチュウは持ち前の素早さで身を翻し回避する。
ヤヤコマは攻撃が外れると瞬時に方向転換し、ピカチュウに向けてさらに突撃した。
その身は炎に包まれていた。
「次は『ニトロチャージ』か、炎技が使えたのか!」
思わぬ一撃をピカチュウは受けてしまう。
「大丈夫かピカチュウ!」
『ピカ!』
ダメージを受けたがピカチュウは瞬時に建て直した。さすがだぜ相棒!
「よし、ピカチュウ『でんこうせっか』!」
ピカチュウは四足になり高速突進し、助走をつけてジャンプしヤヤコマに一撃を与えた。
「すごい、あのヤヤコマよりも速い」
「そりゃそうよ、サトシのピカチュウのスピードは一級品なんだから」
「サトシとピカチュウはずっと一緒にバトルして強くなっていったんだよ」
ヤヤコマは吹き飛ばされるがなんとか飛び、再び炎と共に突進する『ニトロチャージ』を仕掛けた。
「『アイアンテール』!」
硬化したギザギザの尻尾が迫る炎の塊へとぶつかる。ピカチュウはインパクトの瞬間に思いっきり振り抜きヤヤコマを打ち返した。
「ピカチュウ『10まんボルト』!」
『ピイカチュウウウウウウ!』
ヤヤコマはそのまま森の奥へと逃げてしまった。
さてそろそろ……
俺は確認のために茂みの一つに向かって歩き出す。
「サトシ、どうしたの?」
セレナに返事をせず、俺は茂みの向こうを見る。
思った通り、ポケモンがいた。
「さっきから俺たちの後をつけてるのはお前か?」
***
彼――ケロマツは茂みの奥から少年少女たちの動向伺っていた。
彼はこの世に生れ落ちてより数年、自身を拾ってくれたプラターヌ博士の頼みにより、新人ポケモントレーナーの最初のポケモンとなるはずだった。しかし、彼にとって今まで出会った少年少女たちは、求めるトレーナーではなかった。
今まで多くの新人トレーナーと出会った、しかしどの者たちも自身とは合わない。そう感じて身勝手であることはわかっているが、彼らの元を離れることを選んだ。合わないトレーナーとポケモンではこの先上手くいくはずがない。その度にトレーナーはプラターヌ博士の元へ戻り違うポケモンをパートナーとすること願い出る。
ケロマツの身勝手にプラターヌ博士は怒ることはなかった。
『いつか君が認められるトレーナーが現れるはずだ。それまでゆっくり待つといい』
ケロマツいつもそのことを申し訳ないと思っていた。彼はその言葉に甘えることにした。
しかし、待てど暮らせど「この者だ」と思えるトレーナーは現れない。
そんな時に、気になるポケモントレーナーを見つけた。カロスの人間ではなく、他の地方から来たポケモントレーナーのようだ。
少年の顔はとても輝いていた。これから起こること出会うものすべてに思いをはせているような、まっすぐな瞳。
――ここまでの輝きは初めて見るでござる
しばらくこの少年を見守ることにした。
少年は3人の少女たちとともに人間の町で娯楽を楽しんで過ごしていた。
しばらくして、ミアレシティの外、すなわちポケモンたちの生息する領域に出たのだ。
バトルをする、確信を得たケロマツは彼らの後を追うことにした。
少年は野生のヤヤコマと対峙していた。少年のモンスターボールから出てきたのは黄色い電気ネズミのピカチュウ。
――見事だ
少年の的確な指示、それに対応するピカチュウの洗練された動き、ピカチュウの技の冴え、どれも今まで見てきたトレーナーとは一線を画していた。
ケロマツはその見事な戦いに見惚れていた。
――む? どうしたのだ、少年がこちらに近づいて――
「さっきから俺たちの後をつけてるのはお前か?」
***
水色のカエルのような姿をしたポケモンは俺に見つかったことに驚いているのか、焦ったまま固まってしまった。
「初めて見るポケモンだな、こいつもカロスのポケモンか?」
図鑑を開き、カロス地方のページを見ると……
「へーケロマツっていうのか」
「水タイプ! へー可愛いじゃない」
「ねえサトシ、つけてたってどういうこと?」
カスミがカロス発の水ポケモンに興奮し、リカが質問してきた。
「さっきから誰かに見られてる気がしてたんだ。さっきというよりはミアレシティにいた時からなんだけどさ」
「ええ! 全然気づかなかった」
「まあ悪いことしようとしてるわけじゃなさそうだからほっといたんだけど」
大方、賑やかな人間の集団が気になったのだろう。
『ケ、ケロ!』
するとケロマツは身を翻して森の奥へぴょんぴょん跳んで行ってしまった。
「あ、逃げちゃった」
「えー水ポケモンならゲットしたかったのに~」
リカが呟き、カスミは残念な気持ちを隠さずにケロマツの逃げた方向を見つめている。
確かにあのケロマツの動きはなかなか良かった。俺としても仲間にしたいな。
悲鳴が聞こえたのはその時だ。
「っ!?」
「なに!?」
「今のってポケモンの悲鳴?」
「向こうから聞こえたわ!」
***
その場にいた全員で悲鳴のした方向へと走って行く。
木々をかき分けて走ると、その光景は見えた。
「がはははは! 大量だぜ!」
『ペロペロ~!!』
そこにはいかにも悪人面の大男と子分らしき数人の男たちが下卑た笑いを浮かべていた。
彼らの近くに檻に入れられ怯えているピンクのポケモンたちがいた。
「おいこら悪党、そこまでだ!」
「あのポケモンたち、たしかフェアリータイプのペロッパフ!」
「そのペロッパフたちをどうする気!?」
リカの問いかけに悪党のボスと思しき男は下卑た笑みを浮かべた。
「決まってるだろ。フェアリータイプは珍しいからな。生息が少ない他の地方で売っ払うのさ」
「お前らポケモンハンターか!」
「サトシ、ポケモンハンターって?」
セレナがサトシに問いかける。
「ポケモンを酷い方法で捕まえて人に売ろうとする悪人のことだ」
セレナにこんな汚い連中のことを知られるのは心苦しい、だけど、ポケモンたちの危機だ。
「ポケモンを売り買いなんて許せないわ!」
「ああ? どう許さねえんだよ。邪魔するなら容赦しねえぞ。野郎共やっちまえ!」
ポケモンハンターのボスはシザリガー、マスキッパ、コータスを繰り出した。
ポケモンハンターの下っ端たちはザングース、コジョフー、デルビル、スカンプーを繰り出した。
ポケモンに悪事の片棒担がせる真似しやがって!
「俺がボスを倒す。リカ、カスミ、残りは頼む。行けフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ!」
「うん、気を付けて」
「任せて!」
「セレナ、お前は隠れるんだ」
「う、うん」
「ピカチュウ、セレナのこと守ってくれ」
『ピカ!』
セレナは近くの岩陰に隠れ、そこを守るようにピカチュウが四足で構えた。
「ガキが俺たちの邪魔したこと後悔させてやる!」
ハンターのポケモンたちが一斉に技を放つ。
「後悔するのはそっちだフシギダネ『はっぱカッター』、ヒトカゲ『かえんほうしゃ』、ゼニガメ『みずでっぽう』!」
「ピッピ『コメットパンチ』、バタフリー『エアスラッシュ』!」
「シャワーズ『ハイドロポンプ』、ヒトデマン『パワージェム』!」
サトシ、カスミ、リカのポケモンたちも迎え撃つように技を放つ。フシギダネの葉の刃がシザリガーを切り裂き、ヒトカゲの火炎がマスキッパを焼き、ゼニガメの水流がコータスを圧する。
ピッピの拳がザングースの顔面に直撃し、バタフリーの風がコジョフーに炸裂し、シャワーズの激流がデルビルを押し流し、ヒトデマンの輝石がスカンプーに降り注ぐ。
ポケモンの数は同じでも、地力はサトシたちの方が圧倒していた。
ハンターのボスの顔に焦りが生まれる。
「おい、隠れてる女を取っ捕まえろ、人質にするぞ!」
思いついた手段は非戦闘員と思われる、隠れた少女。子分たちは指示を聞いてポケモンたちを戦わせたまま自ら、セレナに向かって走って行った。
迫りくる悪人にセレナの顔に恐怖が浮かぶ。しかし、そこには彼女を守る小さなナイトがいた。
『ピィカチュウウウ!!』
「「あががががががっ!」」
ピカチュウはサトシの指示通りにセレナを守るため、不届き者たちに得意の『10まんボルト』をお見舞いする。電撃に子分たちはなすすべもなく黒焦げになる。
「俺のピカチュウを甘く見るなよ!」
「すごいわピカチュウ!」
『ピッカチュウ!』
その時、電撃を喰らった子分たちのポケモンであるザングースとコジョフーが自らのトレーナーを守るようにピカチュウに立ち塞がる。トレーナーを想うその行動にサトシの胸は詰まる。しかし、これ以上悪事を働かせるわけにはいかない。終わるまで戦闘不能になってもらう。
「ピカチュウ『10まんボルト』!」
『ピィカチュウウウ!』
ピカチュウから極大の電撃がザングースとコジョフーに向けて放出される。
「今だ!」
ニヤリとボスが笑った瞬間、突如現れたブーピッグが電撃をはじき返す。特殊攻撃を跳ね返す『ミラーコート』だ。
『ブピィ!』
『ピッカアアア!?』
強力な電撃を倍返しされたピカチュウは傷だらけになって倒れる。
「ピカチュウ!」
セレナが悲鳴にも近い声でピカチュウに駆け寄るとボロボロになりながらもピカチュウは立ち上がる。
「やれブーピッグ『サイコキネシス』!」
「ピカチュウ『ひかりのかべ』!」
念動波に対し、ピカチュウは尻尾を光らせて特殊攻撃を半減させる壁を生み出す。これで『サイコキネシス』も威力が下がる。そう思っていた。
『コジョ!』
「なっ『かわらわり』か!」
コジョフーの手刀が『ひかりのかべ」砕く、
襲い掛かるザングースとコジョフー、このまま攻撃せずにいたら後ろのセレナも危険にさらされる。
『ミラーコート』のダメージが大きく、このまま2体を接近戦で相手をすることはできない。
ピカチュウは『10まんボルト』発射した。
直撃の寸前でブーピッグはザングースとコジョフーの前に現れ『ミラーコート』を発動させる。
反射され倍増する攻撃がピカチュウに襲い掛かる。誰もがそう思ったその時、
『ケロ!』
ピカチュウを庇うように飛び出た水色のポケモンがいた。
「「「「なっ!?」」」」
「あれはケロマツ!?」
倍返しされた電撃をもろにうけたケロマツは地面に着地するとボロボロになりながら立ち上がる。
『ケ、ケロォ……』
『ピカ? ピッカチュウ!』
ピカチュウが心配して駆け寄ろうとすると、ケロマツは飛び上がり、首に巻いている泡――ケロムース――をブーピッグ、ザングース、コジョフー目掛けて投げつける。
ケロムースは3体の目に当たり、その視界を塞ぐ。
「な、なにやってんだ! 早く倒しちまえ!」
『ケロケロケロケロケロォ!』
ケロマツはケロムースを間断なくブーピッグ、ザングース、コジョフーへと投げつけると3体は全身がケロムースだらけとなってしまい雪だるまのような姿になった。
すっるとケロマツは標的を残りのハンターのポケモンたちへと切り替え、ケロムースを次々と正確無比な命中精度で投げつけていった。
突如現れたケロマツ、相手の動きを鈍らせるための行動に、サトシたちは一瞬で行動した。
「ピカチュウ『10まんボルト』! フシギダネ『はっぱカッター』! ヒトカゲ『かえんほうしゃ』! ゼニガメ『みずでっぽう』!」
「シャワーズ『ハイドロポンプ』!」
「フシギソウ『リーフストーム』!」
サトシたちはポケモンたちに渾身の一撃を指示する。それらはハンターのポケモンたちにクリーンヒット。一瞬にしてハンターのポケモンたちは全滅した。
その時、遠くからサイレンが聞こえた。こちらにパトカーが向かっていた。
「ポケモンハンター! ポケモン保護法違反の容疑で逮捕します!」
パトカーからジュンサーさんを始めとした警察官が現れる。
どうしてここがわかったんだ?
「さっき連絡したの、間に合って良かった」
「セレナだったのか。ありがとう」
「私も何か役に立ちたかったから」
「ち、ちくしょう、おめえら商品だけでも持って逃げるぞ!」
悔し気な顔になったハンターのボスは部下たちに指示すると、戦闘不能になったポケモンたちを置き去りにして逃げ出した。
「待て!」
サトシ、リカ、カスミ、セレナはペロッパフたちを取り戻すためにジュンサーさんたちと一緒にハンターたちを追った。絶対に逃がすわけにはいかない。
その時、ハンターの下っ端が転んで檻を落としてしまい、その拍子で檻の扉が開きペロッパフたちが勢いよく飛び出してしまった。飛び出した先には崖があった。落ちてしまえばペロッパフたちも怪我は免れない。
「危ない!」
セレナが悲鳴を上げると、飛び出す影。
「うおおおおおおお! 間に合ええええ!!」
サトシは落ちそうなペロッパフたち10体を空中で素早く抱きかかえた。しかし、そこは崖、サトシとペロッパフたちが落ちるのは誰が見ても明らかだった。
「「「サトシっ!!?」」」
少女たちの悲鳴をよそに、サトシはペロッパフたちを抱きしめて落下していた。
(やばい、落ちる。せめて俺の体をクッションに……!)
すると蔓がサトシの体に巻きつく。フシギダネの蔓だ。さらにサトシの腰から光が飛び出す。モンスターボールから出てきたサトシのポケモンたちだ。すでに外に出ていたフシギダネが蔓でサトシを支えると、同様に出ていたヒトカゲとゼニガメ、飛び出したニドリーノが蔓を引っ張り上げる。スピアーが飛行しながらサトシの体を支えていた。
「さ、さんきゅーみんな……」
ポケモンたちに引き上げられたサトシは無傷のペロッパフたちを見て安堵の笑みを浮かべる。
「「サトシっ!」」
駆け寄ったカスミとリカがサトシをもう離さないという気持ちを表すように強く抱きしめた。その眼には涙が浮かんでいる。
「よかった……無事で、よかったよぉ……!」
「また無茶して、ホントに相変わらず、なんだからぁ……」
それをセレナは安堵を浮かべて見ていた。
「サトシ……」
しばらくそうしていると、リカとカスミは抱擁を解いた。
。
「あなたたち、怪我はありませんか?」
ジュンサーさんが俺たちを心配そうに見ていた。
「はい、ご心配をおかけしました。
「ハンターたちは必ず我々が逮捕します。ご協力にはホントに感謝します」
「「「「はい」」」」
見るとペロッパフたちは警察の方々に保護されていた。無事に野生に帰されるみたいで良かった。
ペロッパフたちの無事を確認したあと目に入ったのは、ハンターのポケモンたちだ。みな座り込んで落ち込んでいるように見える。主人に見捨てられたことがショックなのだろうか。元々悪人のポケモンであるが、今は敵意を覚えなかった。
「ジュンサーさん、ハンターのポケモンたちはどうなるんです?」
「一度ここカロスのポケモン協会に送られて、新しいトレーナーのポケモンになるか、野生に帰されることになるわ」
あのポケモンたちが自分から協力して野生のポケモンたちを違法に捕獲していたのか、本当はやりたくなかったけど命令で仕方なくやらされていたのか、それとも何も知らずに従っていたのかはわからない。
ただ、彼らが今後二度と悪いことにかかわらないでほしいという願いはある。
ハンターのポケモンたちから目をそらした俺は今回の一番の功労者に視線を向けた。
「ケロマツ、ありがとう。全部お前のおかげだ」
『ケロ……』
サトシに言われたケロマツは薄く笑うと、そのまま倒れた。
「ケロマツ大丈夫か!?」
サトシは思わずケロマツを抱き上げる。
「ジュンサーさん、ケロマツが……ポケモンセンターまで連れていってください!」
「わかりました。車でお送りします。乗ってください」
「ありがとうございます」
***
俺、リカ、カスミ、セレナはパトカーに乗せられミアレティに向かった。
ふと思いついたことがある。
「ここからだとポケモンセンターよりもプラターヌ研究所の方が近い、行ってもらえますか?」
「わかりました」
ジュンサーさんのパトカーに乗せられた俺たちはプラターヌ研究所に到着した。
飛び出すような勢いでパトカーから降りた俺は研究所に入る。
「すいませんプラターヌ博士! いらっしゃいますか!?」
「やあサトシ君どうしたんだい?」
プラターヌ博士は急いでいる俺をみて驚いた表情になる。
「あの、野生のケロマツが、俺さっきこいつに助けられて、だから助けたいんですお願いします」
「サトシ君落ち着いて、ますはそのケロマツの容態を……なっ、そのケロマツは!」
俺が抱いているケロマツを見てプラターヌ博士は眼を見開いていた。
「え、プラターヌ博士ご存知なんですか?」
「あ、ああ、とにかく治療しよう」
研究所内のポケモン治療器具の中でケロマツは静かに眠っている。このまま安静にしていれば後遺症もなく回復するそうだ。
俺たち4人は客間に案内され、ソファに座っている。テーブルを挟んで向かいのソファにプラターヌ博士が座っている。
「博士、あのケロマツは?」
「うん、そうだね。順を追って説明しよう。僕はこのカロス地方で新人トレーナーにポケモンを渡す役割を担っているんだ。そしてケロマツは新人トレーナーに渡すポケモンの1体なんだよ」
どの地方でも新人トレーナーに渡されるポケモンは草、炎、水タイプだと決まっているのは知っている。つまりケロマツはカントーのゼニガメってことなのか。
けど、どうして新人トレーナーのためのケロマツがあそこにいたんだ?
「実は今日、あのケロマツを渡したトレーナーから『ケロマツを返したい』と連絡があったんだ」
「あのケロマツは何度も新人トレーナーの元を離れているんだ。時にトレーナー自身が返しに来て、時にケロマツ自身がトレーナーを捨てて戻ってくる。どうやらあのケロマツは自分が認めたトレーナーじゃないと従いたくないらしい」
「随分気難しいケロマツなんですね」
「けど、私たちのこと助けてくれたから、きっといい子なのよね」
「ええ、ケロマツがいてくれたからみんな無事だったんだわ」
リカとカスミとセレナは心配と安心が混ざったような目で、眠っているケロマツを見ている。
「ああ、あいつはすごいやつだよ」
博士に促され、治療用のカプセルで眠っているケロマツを見ると傷もなくすやすやと寝息を立てていた。
***
俺たちはジュンサーさんを見送るためにプラターヌ研究所から出た。ジュンサーさんはパトカーに乗って走り去って行った。
すると入れ替わるようにセレナのお母さんがこちらに向かって走って来た。
「セレナ?」
「ママ!?」
「あんたどうしたの? ジュンサーさんも一緒だったみたいだけど、なにかあったの?」
俺はさっきの出来事をセレナのお母さんに話した。
するとセレナのお母さんは血相を変えてセレナの肩を抱いた。
「大丈夫だったの!? ケガしてない!? ねえセレナ!」
「う、うんどこもケガしてないよ。サトシたちが守ってくれたから」
「あの、セレナを巻き込んでしまってすいません。元々俺が首を突っ込んだからこうなったんです。本当にごめんなさい」
「いいのよ。あなたがセレナの言った通り、まっすぐな男の子だってことがわかったわ。娘を守ってくれてありがとう」
にこり、と笑うセレナのお母さんに褒められて素直に嬉しかった。
再会できた女の子とこうして出会えて、まさかこんな危険な目にも遭うとは思わなかった。けどなんとか守り切ることができてよかった。
「サトシ」
ふと声をかけたセレナの方を見る。
「リカもカスミも、今日は助けてくれてありがとう。3人ともかっこよかったよ、もちろんポケモンたちも」
満面の笑顔を見せるセレナ、それにつられて俺も、リカもカスミも自然に笑った。
***
プラターヌ研究所に泊めてもらった俺たちは、研究所前でプラターヌ博士に最後の挨拶をしていた。
「それじゃあ俺たちはこれで失礼します」
「「「短い間でしたけどありがとうございました」」」
「ああ、ここで学んだことが君たちのこれからに役立つことを願うよ」
俺たちはお辞儀をし、振り返って歩きだそうとした時、
『ケロ!』
研究所の門扉の足元にケロマツがいた。
「お、ケロマツ元気になったんだな、良かった」
「もしかして見送りしてくれるの?」
『ケロ』
ケロマツは跳ねながら俺に近づくと傍らにあるモンスターボールを頭で押した。まるで俺に差し出すかのように。
「もしかしてサトシ君に着いていきたいのかな?」
『ケロ!』
リカの言葉にケロマツは頷く。
「でもケロマツは新人トレーナーに渡すためのポケモンなんじゃ」
カスミが尋ねるとプラターヌ博士はフッと笑う。
「一番大事なのはそのポケモンが誰と一緒にいたいのかということさ。サトシ君、僕からも頼むよ。ケロマツを連れていってくれ」
俺は膝立ちになりケロマツと視線を交わす。
「ケロマツ、俺でいいのか?」
『ケロ』
ケロマツの表情は固い決心をしたように揺らがないそれだけで十分な返答を得た。そう思った俺はモンスターボールを手に取りケロマツに向けた。
「さあ来いケロマツ!」
ケロマツは俺の手にあるモンスターボールに跳びつき、紅い光に包まれる。ケロマツはモンスターボールの中に収まり、開閉スイッチは僅かに光っただけで止まった。
「ケロマツゲットだぜ!」
新たな地方で出会った新たな仲間、俺は文字通り飛び上がるように嬉しい気持ちになった。
***
ケロマツは俺にとって7体目のポケモンであるため一旦オーキド研究所へ送った。
ミアレシティの空港のターミナルで俺たちはセレナに見送られていた。
「いろいろありがとうセレナ」
「こっちこそありがとう。ポケモントレーナーのこといろいろ知れたと思う」
これでお別れ、寂しいものだが俺たちはカントーでトレーナーとして修業しなければいけない。
するとセレナは意を決したような表情になる。
「あのねサトシ、私ね。バトルをするサトシ、すごくかっこよかった。でもそれ以上に……ポケモンのために一生懸命なサトシがとても素敵だなって思ったの、だから――」
セレナは言葉を区切る。
「サトシ、私がポケモントレーナーになったら……私と旅をしてほしいの。私、サトシといろんなところに旅をしていろんな経験したい」
「ああ、その時が来たらよろしくな」
「うん、よろしくね。カスミとリカもどうかな?」
「もちろんだよ」
「一緒に旅ができるのを楽しみにしてるわ」
それぞれが握手を交わす。
「カスミ、リカ、貴女たちがこれからサトシと一緒にいても、私は負けないからね」
「望むところよ」
「受けて立つわ」
女子同士の会話に男子は入れない、強い決心をした3人を俺は見守る。
「サトシ君、リカちゃん、カスミちゃん、元気でね。またカロスに来たら会いたいわ」
「はい、その時はよろしくお願いします」
セレナのお母さんからも挨拶を頂き、飛行機の時間が近づいてきた。
「それじゃあありがとうございました。またいつか」
「うん、待ってるから!」
***
「さーて、カントーへ帰るぞっと」
「2回目でもう慣れちゃったかもだね」
「ここに来れて良かったわ。オーキド博士には感謝ね」
俺たちは並んで座っている。
ふと、飛行機内のテレビを見ると『ポケモンハンター逮捕』と出ていた。画面には昨日のハンターたちがパトカーに乗せられていた。
このハンターたちだけじゃない、ポケモンに酷いことをする悪人はたくさんいる。けれど、少しでも悪事を止められることがポケモンたちのためになる。
俺は少し安心した。そのまま椅子に体を沈める。
「サトシ、ケロマツゲットできて良かったね」
「他の地方の水タイプなんて羨ましいわ」
「あげないよ」
「わかってるわよ」
そんないつも通りの会話をする俺たち。
飛行機が離陸する。短い間だけでも過ごしたミアレシティが小さくなっていく。
別れを惜しみながらも、次の冒険に思いを馳せる。
今後もサトシが他の地方に一時的に訪れる展開を行います。
この展開の目的は、これからゲットする仲間たちを早いうちにゲットして強くすることです。
ただし、本当の活躍はその地方を本格的に冒険するようになってからになると思います。
それから、ヒロインとなるキャラを自分でも早く出すことです。早く彼女たちとのやり取りを書きたかったです。
賛否あるとは思いますが、これからも見守っていただけると嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました。