とある科学の歪曲時計   作:割り箸戦隊

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第14話

 

最後の施設襲撃から、二日後。

未だに布束からの連絡はなく、久遠を取り巻く環境に変化はなかった。

あれから馬場に【第五位】の生死を調査して貰おうかとも考えたが、上層部の監視を警戒してとりあえずは保留にしている。

 

そして現在、時刻はお昼前。久遠は『知人』に呼び出され、第七学区の噴水広場で待機しているところ。

携帯端末でとある人物と会話しながら、木陰になっているベンチに座っていた。

 

 

「そう、あれは私が十一歳の頃の話だ。当時の私は常々、疑問に思っていたことがあったのだよ」

「……博士。意味不明な昔話は勘弁してくれよ」

「君にわかりやすく伝えようとしているのだ、最後まで聞きたまえ。つまり、私が両親に反抗していた頃の話なのだがな」

 

 

電話相手は【メンバー】のリーダー。博士。

待ち合わせの相手は別にいるのだが、急に連絡が来たと思ったら挨拶もそこそこに、いつもの変人丸出しの昔話が始まってしまった。

【メンバー】の構成員は、偏屈な高齢者の相手も職務内容に含まれるのだ。非常に面倒だが、もうすでに慣れてしまっている。

そんな訳で、久遠は気だるさ全開の態度で話を聞いてやっていたのだった。

 

 

「本当か」

「ああ、本当の話だとも。両親は時折、私に何かをするように命令してくることがあったのだが、その行為が疑問だった」

「ほ、本当かよ」

「うむ、嘘偽りのない事実だ。当時の私は、人間の行動には本人の意思が必要であり、それがなければ人間の行動とは定義できないと考えていたからだ」

「ほ、本当に、なのかよ」

「当時の私の考えではな。故に、疑問だったのだよ。何も理解せずに為す行動に、果たして意味はあるのだろうかとな」

「なぁ博士。それって()()()、なんだよな?」

「……何度同じことを言わせる気なのだ、久遠君」

 

 

ふざけていたら怒られてしまった。

博士の説教が始まりだしたので、久遠は無我の境地に至って聞き流していく。

そもそも『アイツ』が遅れてくるから、こんな罰ゲームみたいなことをしているのだ。

ひたすら博士の説教を聞き流し続ける久遠だったが、やっと話が本筋に戻ってきてくれたらしい。

 

 

「要するに、あとになってからその意図を理解できることもあるのだ。だから、()()()()()()()()()()()()()。これは『警告』だと思ってくれても構わんよ」

「……へぇ。『警告』ね」

「ああ、君を失うのは惜しい。アレイスターもそれを望んではいないだろう」

 

 

博士は自らを『アレイスターの犬』だと宣言するほどのアレイスター信者。どうやら久遠と御坂の施設襲撃はバレているようで、今回は釘をさすために電話してきたみたいだ。

 

 

「なんかさぁ、博士は俺の強度(レベル)をド忘れしてるみたいだけど。【歪曲時計(ワールドクロック)】は超能力者(レベル5)の【第四位】なんだぜ?」

「確かに超能力者(レベル5)は強力な存在だがな。元々、学園都市は上層部の領土だ。逆らうことなどできんよ、君がどうあがいても、だ」

 

 

まあ、バレているのは施設襲撃だけではないのかもしれないが。

そもそも上層部の依頼で【アイテム】が駆り出されていたのに【メンバー】や【スクール】に依頼がなかったのがおかしいのだ。【屍喰部隊】なんて聞いたこともない連中に依頼するくらいなら、どちらかに依頼したら良かったはず。

 

つまり、上層部は久遠と垣根の『同盟』すら把握していた可能性がある。

 

博士と話している内に、広場の入り口に待ち合わせ相手が到着したのが見えた。これでようやくこの気の滅入る会話も終われそうだ。

 

 

「待ち合わせしてた相手が来たからさぁ、もう通話切るよ」

「それに関しても少しばかり苦言があるのだがな。君の不誠実な女遊びは、いずれその身を滅ぼすぞ」

「博士、意味のわからない言いがかりはよしてくれないか。非常に不愉快だ」

 

 

久遠は吐き捨てるように言い放ち、乱暴に通話を切る。

同僚の高齢者を悪く言いたくはないが、あの老人は少し思考回路に異常があるな。と思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久遠を呼びつけてきた、常盤台の制服を着た少女。白井黒子と合流して、二人で場所を変えるために歩いていく。

久遠は昼時なので飲食店に入ることを提案してみたが、彼女は落ち着いた場所で話したいことがあるらしい。

近場で屋外販売していたホットドッグを購入して食べながら、人気のない小さな公園に移動することになった。

白井は購入したホットドッグに口をつけることなく、約束の時間に来られなかったことを謝罪してくる。

なんでも向かう途中で痴話喧嘩をして周囲に迷惑をかけているカップルと遭遇して、それを風紀委員として注意していたのだとか。

 

 

「わたくしがもう少し時間に余裕を持って来れば良かったのですが。本当に申し訳ありませんの」

「俺も知り合いと電話してたしさ。そんなに待ってないよ」

「ですが、待たせてしまったのは事実ですの」

 

 

お前には本当に待たされたからな。そんな本音を隠して、久遠は爽やかに対応してやる。

二人が目的地の小さな公園に到着すると、さっそくとばかりに白井は腰に手を当てて。久遠を真っ直ぐ見ながら言ってきた。

 

 

「まずは、あなたの本性についてお聞きしたいことがあるのですが」

「本性?えっと、なんのことかわからないけど」

「固法先輩からあなたの校内での振る舞いは伺いましたので、そうやって隠そうとしても意味はありませんの」

 

 

固法先輩とやらに全く心当たりはないが、白井が先輩と呼んでいて、さらに久遠の校内での振る舞いを知っている存在らしい。

長点上機学園の風紀委員だろうか。そんな奴に最近、遭遇したような気もする。

久遠は自らの記憶をたどり、やがてメガネとデカイ胸だけを思い出した。

爽やかに偽装した笑顔が消え去り、いつもの冷めた瞳のダルそうな雰囲気に変化する。

 

 

「あの胸囲ばかりが肥え太ってるメガネのことか」

「き、聞いてはいましたが、酷い豹変っぷりですわね」

 

 

白井は脱力して、愕然とした表情をしている。

それにしても、久遠の本性を知った上で接触してくるなんて珍しい女だ。

何人かそんな女の子もいるにはいるが、久遠の容姿に惹かれた、つまり最初からこちらに気がある娘が多い。

しかし、白井は同性の御坂に性的な意味で興奮する変態。異性である久遠に興味なんてないはず。

ならば残る可能性としては、彼女も御坂や佐天みたいな生粋の変人ということだろうか。

 

 

「それでなにが聞きたいんだよ。遅刻魔ちゃんは」

「なっ、遅刻魔などではありませんの。遅れた理由は先ほど説明したはずですわよッ!!」

「遅刻するヤツって、みーんなお前みたいに言い訳するんだよなぁ。そんなくだらない嘘をついてまで、己の醜い所業が認められないのか?」

「わ、わたくしはっ」

「やれやれ、俺の器の大きさに感謝しろよな。他の超能力者(レベル5)だったらとっくにブッ殺されてるよ、お前」

「なっ、なぁッ」

 

 

会話を続けるにつれて、白井は段々と真っ赤になっていく。

久遠の優しい教師のような指摘によって、自らの行いを省みることができれば良いのだが。

それにしても白井の話は見えてこない。仕方なく久遠の方から尋ねてやることにした。

 

 

「で、俺の本性がなんだって?」

「ほ、本当にっ、ありえないレベルの人格破綻者ですわねっ!!」

「残念だが苦情は受け付けてないんだ。話をする気がないならもう帰るけど」

「駄目ですのっ、話の続きをしますわよ!!」

 

 

そのまま帰ろうとする久遠の服を白井の小さな手が掴んでくる。ようやく話が進みそうなので、そのまま黙って続く言葉を待ってやることにした。

彼女は言いづらそうに目線を動かしたあとで、ゆっくりと重い口を開く。

 

 

「近頃のお姉様は、ずっと何かを思い詰めているようでしたの」

「そうなんだ。思春期だからかな?」

「いいえ、違います。あのご様子はそんな些細な悩みではありませんの」

「それと俺になんの関係があるんだよ」

「……わたくしもあなたの本性を知って、何かの間違いだと思いたいのですが」

 

 

おそらく施設を襲撃してた頃の疲れきった御坂のことなんだろうが、久遠にそれを言ってくる理由がわからない。

御坂は久遠の関与を言いふらすような性格ではないはずだ。

 

 

「一日だけ。たったの一日だけでしたが、お姉様が元気になられた日がありましたの」

「……一日だけ?」

 

 

首を突っ込むつもりはなかったが、つい反射的に聞き返してしまった。

一日だけということは、御坂は久遠と別れた翌日に『絶対能力進化計画』の新たな動きを確認したのだろうか。しばらく実験は延期すると思っていたが、どうやらその予想は外れていたらしい。

『一日』という単語に過剰な反応をしてしまった久遠に、白井は探るような視線を向けてくる。

彼女は半ば確信しているような口ぶりで、久遠に問いかけてきた。

 

 

 

「あの日、電話先で笑っていたのはあなたですわね?」

 

 

 

白井の真剣な眼差し。それはきっと誤魔化すことはできないだろうと思わせるもので。

久遠がどう答えるべきかと迷っていると、彼女は下を向いて少しずつ言葉をかさねてくる。

 

 

わたくしでは頼っていただけませんでしたの。

 

でも、でもあなたならきっと。

 

きっと、お姉様のお力になれると。

 

 

落ち込んだような声色で紡がれる彼女の小さな懇願に、久遠は観念したように深いため息をついて。

  

 

 

「……わかった。とりあえず御坂に会ってみるよ」

 

 

 

おそらく、御坂を説得することになるだろう。

御坂が簡単に諦めてくれるとは思えないが、話だけでもしてやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白井の頼みを引き受けて、あれから数時間。

久遠は御坂を探し始めたのだが、その捜索は困難を極めた。寮にもいないし、電話にも出ない。そもそも彼女の普段の行動範囲すら把握してない。

白井に教えられた場所も全て行ったが、どこにも御坂は居なかった。

 

久遠は行く当てがなくなってしまったので、少し落ち着いて考えてみることにする。

御坂が再び悩むようなことなど、『絶対能力進化計画』関係しか考えられない。

そして御坂は『妹達』を助けるために行動していた。彼女が『絶対能力進化計画』の継続を知ったとしたら、次はどう動くだろうか。

一方通行(アクセラレータ)】と直接戦闘する気はないようだったし、引き継ぎした施設を再び襲撃するのか。それとも別の手段を考えるのか。

 

いまだに布束とも連絡がつかないし。御坂も現在は行方不明。

すでに二人とも上層部に始末されているのではないか。思考はどんどん悪い方向に向かっていき、それを振り払うように走りだす。

上空から時間加速して捜索しよう。普通に探すよりは効率がいいはずだ。

 

 

「……なんで俺はこんなことしてるんだか」

 

 

誰かを心配して、必死で探し回ってるなんて。

そもそも、こんな面倒な頼みを引き受けてるのがおかしいのだ。普段なら即答で断っているはずなのに。

それが何故なのかを考えながら、久遠は加速を行使した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加速した世界で探し続けて。日が沈む頃に、ようやく御坂を発見した場所。

そこは廃棄されて、ほとんどの建物が取り壊された工場の跡地だった。

確か久遠の記憶では、数ヶ月ほど前に倒産した食品関係の工場だった気がする。そこに残された数少ない建物の非常階段に、御坂はふさぎこむように座っていた。

久遠が近づいて来たことに気づいた彼女は、こちらを見ると少し驚いたような表情で声をかけてくる。

 

 

「アンタ、どうしたのよ」

「御坂を探してたんだよ。白井が心配してたからさ」

「……そっか」

「それにしても、こんな寂れた場所にいるなんてな」

「別にいいでしょ。私がどこにいたって」

 

 

御坂は突き放すようにそう言うと、そのまま黙って下を向いてしまう。

どうやって話を切り出そうか。久遠がかけるべき言葉を選んでいると、どこからかパチパチと小さな音が聞こえてきた。

その音につられて、視線を御坂の方に向ける。彼女は何故か両手の人差し指を近づけて、その間に小規模の電撃を発生させているようだった。

久遠は意味がわからずに沈黙してしまい、その電撃をぼんやりと眺めていた御坂が穏やかな声で話しかけてくる。

 

 

「……ねぇ、アンタが超能力者(レベル5)になった時、どう思った?」

「いや、いきなりそんなこと聞かれても」

「色々とあるでしょ。達成感とか感動とかさ」

「当時は超能力者(レベル5)なんて意識してなかったし、特に何もなかったよ」

「……なによ、つまんないヤツね」

「そいつは悪かったな。で、御坂は違ったのかよ?」

 

 

久遠はその様子に違和感を感じて、御坂をじっと観察することにした。

普段の御坂とは明らかに違う。だが、施設を襲撃していた頃の御坂とも違っている。

この御坂の不思議な雰囲気は、一体なんなのだろうか。

 

 

 

「私はすっごく嬉しかったわよ。ずっとそれが目標だったんだから」

「へぇ、そうなんだ」

 

 

薄暗い景色の中で、パチパチと青白い光を発する小さな電撃。

御坂はそれを眺めながら、昔を懐かしむように語り続けた。

 

 

「……私がこの能力(チカラ)を使えるようになった頃は、これが星の光みたいだなって思ってたのよね」

「そうなのか」

「うん。それでね、もっと強くなったら星空を作れるかもしれないって考えてた」

「……ふぅん」

「だから、強くなりたくて。ずっと努力してきたの」

 

 

久遠が困惑して生返事しかできないでいると、御坂は優しい表情でこちらを見つめてきた。

 

 

「アンタはどうだった?初めて能力(チカラ)を使えるようになった頃」

「俺は、ほとんど覚えてないな。最初は時間を操作してるって認識がなかった気がするけど」

「……なら、認識してからは?」

 

 

こんな質問は、普段の久遠なら絶対に答えたりはしない。

愚かで、臆病だったあの頃のことなんて、思い出したくもない記憶だったから。

それなのに、何故か久遠は質問に答えてしまっていた。

 

 

「学園都市に捨てられる前に、世界を巻き戻せるかもしれないって思ってた。あの頃は能力の有効範囲なんて理解してなかったから」

 

 

御坂は意外なことを聞いたような表情に変わってしまう。『置き去り』なんて暗部の中ではありふれた境遇だが、表の住人にこんな軽く話すような内容ではなかったのかもしれない。

 

 

「ご、ごめん。私、知らなくて」

「そんなことよりお前の話だよ。あれから何があったんだ?」

 

 

御坂が戸惑うような雰囲気に変化したのをきっかけにして、久遠は強引に話を切り替える。御坂はしばらく迷っていたようだったが、やがて淡々と語り始めた。

 

 

『絶対能力進化計画』は久遠達の襲撃に関係なく継続していること。

 

関連施設の引き継ぎ先は183施設にも及ぶこと。

 

そして、『樹形図の設計者』の大破を確認したこと。

 

 

久遠の想定を軽く超えていく話に、だんだんと頭が痛くなってくる。

 

実験の引き継ぎ先はいくらなんでも多すぎるし、こちらの妨害で一日も実験を遅延させられていなかったなんて。

 

さらに『樹形図の設計者』に関する信じられない情報。

御坂はこいつをハッキングして偽装した演算結果を吐き出させようとしたらしいが、そもそも『樹形図の設計者』はとっくの昔に大破していたらしい。

 

そして最も頭が痛くなったのが、御坂が実験の継続を知った時の話。

久遠と別れた翌日に、学園都市の街中で出会ったという『研修中の妹達』。これは本当に偶然なんだろうか。

上層部から御坂への警告。いや、それとも闇に引きずり込むための撒き餌のつもりなのか。

 

久遠が頭の中を整理できずにいると、御坂は諦めたように小さく笑って話しかけてきた。

 

 

「どうして、こんなことになっちゃったのかなって。ずっと考えてたのよ」

「……それで?」

「DNAマップを悪用されたのは、私が超能力者(レベル5)だったから。それならさ、私が努力したせいで『妹達(あの子達)』が実験動物みたいに扱われてるのかなって」

「それは違うだろ。お前が望んだ訳じゃないんだから」

「でも、私のDNAマップで一万人も人が殺されてるのよ。だから、私は、もう」

 

 

極限まで追い詰められたようにうつむく御坂。

御坂を適当に慰めて説得するつもりだったが、そんな偽りだらけの言葉なんて届きそうにもない。

久遠が何も言えずに御坂を見つめていると、静かに続きの言葉が放たれた。

 

 

「……私にできる手段はたった一つしか残されてないわ。【一方通行(アクセラレータ)】に無様に敗北して、研究者達に『樹形図の設計者』が間違っていると思わせる」

「前に情報交換した時にさ、御坂はもう挑んで敗北してるって言ってたよな。それって意味あるのか?」

「もし、私が最初の一撃で呆気なく殺されたら?流石に疑問に思うヤツが出てくるはずよ」

 

 

そもそも御坂のクローンが利用されているのは、彼女の能力が多様な戦闘を展開できるから。

その【超電磁砲(レールガン)】があっさり敗北すれば、再演算しようとする者が出てくるはず。しかし『樹形図の設計者』が大破しているから再演算はできないので、『絶対能力進化計画』は凍結する。

御坂は真剣な表情でそう語るが、久遠は自暴自棄になっているようにしか思えなかった。

そもそも『妹達』を助けたいという、本来の目的すら見失ってしまっている。

 

 

「それで実験が中止になったとしても『妹達』は助からないと思うけど」

「なによ。私の考えが間違ってるって言いたいわけ?」

「『妹達』は実験動物扱いなんだろ?だったら実験が凍結しても助からないよ。一万人もいる同一人物のクローンが普通の生活なんてさせて貰える訳がない。あっさり処分されるだけだ」

「ッ、アンタって本当に無神経ね。私にはッ、他に手段がないんだから仕方ないじゃないっ」

「本気で『妹達』を助けたいなら、最低でも御坂は生き残らないと駄目だ。クローン人間の味方をする物好きなんてお前以外にいないからな」

「そんなことわかってるわよっ!!でも、他に、私にはッ」

 

 

涙目になって叫ぶ御坂を見ながら、やっと回り始めた頭で考えていく。

御坂の不思議な雰囲気の正体は『他人のために死を覚悟した人間』のものだったのか。

やはり御坂と関わってから、久遠の何かは変わり始めているのかもしれない。

 

これがきっと、正しい人間の在り方なんだろうと思ってしまえるくらいには。

 

 

 

 

 

「なぁ、御坂」

 

 

 

 

 

これはきっと、何かを得られる選択ではない。

 

おそらく垣根帝督のやり方が、久遠永聖より賢くて。

 

なにより御坂美琴の考え方が、久遠永聖より正しかった。

 

でも、久遠永聖の生き方は、他の誰よりも歪んでいるので。

 

潤んだ瞳で見つめてくる御坂に、久遠は悪魔のような笑みで宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が【一方通行(アクセラレータ)】をぶっ殺してやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

上層部の思惑なんて知ったことか。

 

気に入らないことは、すべて破壊してやればいい。

 

この身に宿る、最凶の【歪曲時計(ワールドクロック)】で。

 

 

 

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